Chapter 1
1 ウヅの 地 にヨブと 名 くる 人 あり 其人 と 爲 完全 かつ 正 くして 神 を 畏 れ 惡 に 遠 ざかる
2 その 生 る 者 は 男 の 子 七 人 女 の 子 三 人
3 その 所有物 は 羊 七 千 駱駝 三 千 牛 五 百 軛 牝驢馬 五 百 僕 も 夥多 しくあり 此人 は 東 の 人 の 中 にて 最 も 大 なる 者 なり
4 その 子等 おのおの 己 の 家 にて 己 の 日 に 宴筵 を 設 くる 事 を 爲 し その三 人 の 姉妹 をも 招 きて 與 に 食飮 せしむ
5 その 宴筵 の 日 はつる 毎 にヨブかならず 彼 らを 召 よせて 潔 む 即 ち 朝 はやく 興 き 彼 ら 一切 の 數 にしたがひて 燔祭 を 獻 ぐ 是 はヨブ 我 子 ら 罪 を 犯 し 心 を 神 を 忘 れたらんも 知 べからずと 謂 てなり ヨブの 爲 ところ 常 に 是 のごとし
6 或 日 神 の 子 等 きたりてヱホバの 前 に 立 つ サタンも 來 りてその 中 にあり
7 ヱホバ、サタンに 言 たまひけるは 汝 何處 より 來 りしや サタン、ヱホバに 應 へて 言 けるは 地 を 行 めぐり 此彼 經 あるきて 來 れり
8 ヱホバ、サタンに 言 たまひけるは 汝 心 をもちひてわが 僕 ヨブを 觀 しや 彼 のごとく 完全 かつ 正 くして 神 を 畏 れ 惡 に 遠 ざかる 人 世 にあらざるなり
9 サタン、ヱホバに 應 へて 言 けるはヨブあにもとむることなくして 神 を 畏 れんや
10 汝 彼 とその 家 およびその 一切 の 所有物 の 周圍 に 藩屏 を 設 けたまふにあらずや 汝 かれが 手 に 爲 ところを 盡 く 成就 せしむるがゆゑにその 所有物 地 に 遍 ねし
11 然 ど 汝 の 手 を 伸 て 彼 の 一切 の 所有物 を 撃 たまへ 然 ば 必 ず 汝 の 面 にむかひて 汝 を 詛 はん
12 ヱホバ、サタンに 言 たまひけるは 視 よ 彼 の 一切 の 所有物 を 汝 の 手 に 任 す 唯 かれの 身 に 汝 の 手 をつくる 勿 れ サタンすなはちヱホバの 前 よりいでゆけり
13 或 日 ヨブの 子 女 等 その 第 一の 兄 の 家 にて 物 食 ひ 酒 飮 ゐたる 時
14 使者 ヨブの 許 に 來 りて 言 ふ 牛 耕 しをり 牝驢馬 その 傍 に 草食 をりしに
15 シバ 人 襲 ひて 之 を 奪 ひ 刄 をもて 少者 を 打 殺 せり 我 ただ 一人 のがれて 汝 に 告 んとて 來 れりと
16 彼 なほ 語 ひをる 中 に 又 一人 きたりて 言 ふ 神 の 火 天 より 降 りて 羊 および 少者 を 焚 て 滅 ぼせり 我 ただ 一人 のがれて 汝 に 告 んとて 來 れりと
17 彼 なほ 語 ひをる 中 に 又 一人 きたりて 言 ふ カルデヤ 人 三隊 に 分 れ 來 て 駱駝 を 襲 ひてこれを 奪 ひ 刄 をもて 少者 を 打 殺 せり 我 ただ 一人 のがれて 汝 に 告 んとて 來 れりと
18 彼 なほ 語 ひをる 中 に 又 一人 來 りて 言 ふ 汝 の 子 女 等 その 第 一の 兄 の 家 にて 物 食 ひ 酒 飮 をりしに
19 荒野 の 方 より 大風 ふき 來 て 家 の 四隅 を 撃 ければ 夫 の 若 き 人々 の 上 に 潰 れおちて 皆 しねり 我 これを 汝 に 告 んとて 只 一人 のがれ 來 れりと
20 是 においてヨブ 起 あがり 外衣 を 裂 き 髮 を 斬 り 地 に 伏 して 拜 し
21 言 ふ 我 裸 にて 母 の 胎 を 出 たり 又 裸 にて 彼處 に 歸 らん ヱホバ 與 へヱホバ 取 たまふなり ヱホバの 御名 は 讚 べきかな
22 この 事 においてヨブは 全 く 罪 を 犯 さず 神 にむかひて 愚 なることを 言 ざりき
Chapter 2
1 或 日 神 の 子等 きたりてヱホバの 前 に 立 つ サタンも 來 りその 中 にありてヱホバの 前 に 立 つ
2 ヱホバ、サタンに 言 たまひけるは 汝 何處 より 來 りしや サタン、ヱホバに 應 へて 言 けるは 地 を 行 めぐり 此彼 經 あるきて 來 れり
3 ヱホバ、サタンに 言 たまひけるは 汝 心 をもちひて 我 僕 ヨブを 見 しや 彼 のごとく 完全 かつ 正 くして 神 を 畏 れ 惡 に 遠 ざかる 人 世 にあらざるなり 汝 われを 勸 めて 故 なきに 彼 を 打惱 さしめしかど 彼 なほ 己 を 完 うして 自 ら 堅 くす
4 サタン、ヱホバに 應 へて 言 けるは 皮 をもて 皮 に 換 るなれば 人 はその 一切 の 所有物 をもて 己 の 生命 に 換 ふべし
5 然 ど 今 なんぢの 手 を 伸 て 彼 の 骨 と 肉 とを 撃 たまへ 然 ば 必 らず 汝 の 面 にむかひて 汝 を 詛 はん
6 ヱホバ、サタンに 言 たまひけるは 彼 を 汝 の 手 に 任 す 只 かれの 生命 を 害 ふ 勿 れと
7 サタンやがてヱホバの 前 よりいでゆきヨブを 撃 てその 足 の 跖 より 頂 までに 惡 き 腫物 を 生 ぜしむ
8 ヨブ 土瓦 の 碎片 を 取 り 其 をもて 身 を 掻 き 灰 の 中 に 坐 りぬ
9 時 にその 妻 かれに 言 けるは 汝 は 尚 も 己 を 完 たうして 自 ら 堅 くするや 神 を 詛 ひて 死 るに 如 ずと
10 然 るに 彼 はこれに 言 ふ 汝 の 言 ところは 愚 なる 婦 の 言 ところに 似 たり 我 ら 神 より 福祉 を 受 るなれば 災禍 をも 亦 受 ざるを 得 んやと 此事 においてはヨブまつたくその 唇 をもて 罪 を 犯 さざりき
11 時 にヨブの三 人 の 友 この 一切 の 災禍 の 彼 に 臨 めるを 聞 き 各々 おのれの 處 よりして 來 れり 即 ちテマン 人 エリパズ、シユヒ 人 ビルダデおよびマアナ 人 ゾパル 是 なり 彼 らヨブを 弔 りかつ 慰 めんとて 互 に 約 してきたりしが
12 目 を 擧 て 遙 に 觀 しに 其 ヨブなるを 見識 がたき 程 なりければ 齊 く 聲 を 擧 て 泣 き 各 おのれの 外衣 を 裂 き 天 にむかひて 塵 を 撒 て 己 の 頭 の 上 にちらし
13 乃 ち 七日 七夜 かれと 偕 に 地 に 坐 しゐて 一言 も 彼 に 言 かくる 者 なかりき 彼 が 苦惱 の 甚 だ 大 なるを 見 たればなり
Chapter 3
1 斯 て 後 ヨブ 口 を 啓 きて 自己 の 日 を 詛 へり
2 ヨブすなはち 言詞 を 出 して 云 く
3 我 が 生 れし 日 亡 びうせよ 男子 胎 にやどれりと 言 し 夜 も 亦 然 あれ
4 その 日 は 暗 くなれ 神 上 よりこれを 顧 みたまはざれ 光 これを 照 す 勿 れ
5 暗闇 および 死蔭 これを 取 もどせ 雲 これが 上 をおほえ 日 を 暗 くする 者 これを 懼 しめよ
6 その 夜 は 黑暗 の 執 ふる 所 となれ 年 の 日 の 中 に 加 はらざれ 月 の 數 に 入 ざれ
7 その 夜 は 孕 むこと 有 ざれ 歡喜 の 聲 その 中 に 興 らざれ
8 日 を 詛 ふ 者 レビヤタンを 激發 すに 巧 なる 者 これを 詛 へ
9 その 夜 の 晨星 は 暗 かれ その 夜 には 光明 を 望 むも 得 ざらしめ 又 東雲 の 眼蓋 を 見 ざらしめよ
10 是 は 我 母 の 胎 の 戸 を 闔 ずまた 我 目 に 憂 を 見 ること 無 らしめざりしによる
11 何 とて 我 は 胎 より 死 て 出 ざりしや 何 とて 胎 より 出 し 時 に 氣息 たえざりしや
12 如何 なれば 膝 ありてわれを 接 しや 如何 なれば 乳房 ありてわれを 養 ひしや
13 否 らずば 今 は 我 偃 て 安 んじかつ 眠 らん 然 ばこの 身 やすらひをり
14 かの 荒墟 を 自己 のために 築 きたりし 世 の 君 等 臣 等 と 偕 にあり
15 かの 黄金 を 有 ち 白銀 を 家 に 充 したりし 牧伯 等 と 偕 にあらん
16 又 人 しれず 墮 る 胎兒 のごとくにして 世 に 出 ず また 光 を 見 ざる 赤子 のごとくならん
17 彼處 にては 惡 き 者 虐遇 を 息 め 倦憊 たる 者 安息 を 得
18 彼處 にては 俘囚人 みな 共 に 安然 に 居 りて 驅使者 の 聲 を 聞 ず
19 小 き 者 も 大 なる 者 も 同 じく 彼處 にあり 僕 も 主 の 手 を 離 る
20 如何 なれば 艱難 にをる 者 に 光 を 賜 ひ 心 苦 しむ 者 に 生命 をたまひしや
21 斯 る 者 は 死 を 望 むなれどもきたらず これをもとむるは 藏 れたる 寳 を 掘 るよりも 甚 だし
22 もし 墳墓 を 尋 ねて 獲 ば 大 に 喜 こび 樂 しむなり
23 その 道 かくれ 神 に 取籠 られをる 人 に 如何 なれば 光明 を 賜 ふや
24 わが 歎息 はわが 食物 に 代 り 我 呻吟 は 水 の 流 れそそぐに 似 たり
25 我 が 戰慄 き 懼 れし 者 我 に 臨 み 我 が 怖懼 れたる 者 この 身 に 及 べり
26 我 は 安然 ならず 穩 ならず 安息 を 得 ず 唯 艱難 のみきたる
Chapter 4
1 時 にテマン 人 エリパズ 答 へて 曰 く
2 人 もし 汝 にむかひて 言詞 を 出 さば 汝 これを 厭 ふや 然 ながら 誰 か 言 で 忍 ぶことを 得 んや
3 さきに 汝 は 衆多 の 人 を 誨 へ 諭 せり 手 の 埀 たる 者 をばこれを 強 くし
4 つまづく 者 をば 言 をもて 扶 けおこし 膝 の 弱 りたる 者 を 強 くせり
5 然 るに 今 この 事 汝 に 臨 めば 汝 悶 え この 事 なんぢに 加 はれば 汝 おぢまどふ
6 汝 は 神 を 畏 こめり 是 なんぢの 依賴 む 所 ならずや 汝 はその 道 を 全 うせり 是 なんぢの 望 ならずや
7 請 ふ 想 ひ 見 よ 誰 か 罪 なくして 亡 びし 者 あらん 義 者 の 絶 れし 事 いづくに 在 や
8 我 の 觀 る 所 によれば 不義 を 耕 へし 惡 を 播 く 者 はその 穫 る 所 も 亦 是 のごとし
9 みな 神 の 氣吹 によりて 滅 びその 鼻 の 息 によりて 消 うす
10 獅子 の 吼 猛 き 獅子 の 聲 ともに 息 み 少 き 獅子 の 牙 折 れ
11 大 獅子 獲 物 なくして 亡 び 小獅子 散失 す
12 前 に 言 の 密 に 我 に 臨 めるありて 我 その 細聲 を 耳 に 聞 得 たり
13 即 ち 人 の 熟睡 する 頃 我 夜 の 異象 によりて 想 ひ 煩 ひをりける 時
14 身 に 恐懼 をもよほして 戰慄 き 骨節 ことごとく 振 ふ
15 時 に 靈 ありて 我 面 の 前 を 過 ければ 我 は 身 の 毛 よだちたり
16 その 物 立 とまりしが 我 はその 状 を 見 わかつことえざりき 唯 一 の 物 の 象 わが 目 の 前 にあり 時 に 我 しづかなる 聲 を 聞 けり 云 く
17 人 いかで 神 より 正義 からんや 人 いかでその 造主 より 潔 からんや
18 彼 はその 僕 をさへに 恃 みたまはず 其 使者 をも 足 ぬ 者 と 見做 たまふ
19 况 んや 土 の 家 に 住 をりて 塵 を 基 とし 蜉蝣 のごとく 亡 ぶる 者 をや
20 是 は 朝 より 夕 までの 間 に 亡 びかへりみる 者 もなくして 永 く 失逝 る
21 その 魂 の 緒 あに 絶 ざらんや 皆 悟 ること 無 して 死 うす
Chapter 5
1 請 ふなんぢ 龥 びて 看 よ 誰 か 汝 に 應 ふる 者 ありや 聖者 の 中 にて 誰 に 汝 むかはんとするや
2 夫 愚 なる 者 は 憤恨 のために 身 を 殺 し 癡 き 者 は 嫉媢 のために 己 を 死 しむ
3 我 みづから 愚 なる 者 のその 根 を 張 るを 見 たりしがすみやかにその 家 を 詛 へり
4 その 子等 は 助援 を 獲 ることなく 門 にて 惱 まさる 之 を 救 ふ 者 なし
5 その 穡 とれる 物 は 饑 たる 人 これを 食 ひ 荊棘 の 籬 の 中 にありてもなほ 之 を 奪 ひいだし 羂 をその 所有物 にむかひて 口 を 張 る
6 災禍 は 塵 より 起 らず 艱難 は 土 より 出 ず
7 人 の 生 れて 艱難 をうくるは 火 の 子 の 上 に 飛 がごとし
8 もし 我 ならんには 我 は 必 らず 神 に 告 求 め 我 事 を 神 に 任 せん
9 神 は 大 にして 測 りがたき 事 を 行 ひたまふ 其 不思議 なる 事 を 爲 たまふこと 數 しれず
10 雨 を 地 の 上 に 降 し 水 を 野 に 遣 り
11 卑 き 者 を 高 く 擧 げ 憂 ふる 者 を 引 興 して 幸福 ならしめたまふ
12 神 は 狡 しき 者 の 謀計 を 敗 り 之 をして 何事 をもその 手 に 成就 ること 能 はざらしめ
13 慧 き 者 をその 自分 の 詭計 によりて 執 へ 邪 なる 者 の 謀計 をして 敗 れしむ
14 彼 らは 晝 も 暗黑 に 遇 ひ 卓午 にも 夜 の 如 くに 摸 り 惑 はん
15 神 は 惱 める 者 を 救 ひてかれらが 口 の 劍 を 免 かれしめ 強 き 者 の 手 を 免 かれしめたまふ
16 是 をもて 弱 き 者 望 あり 惡 き 者 口 を 閉 づ
17 神 の 懲 したまふ 人 は 幸福 なり 然 ば 汝 全能者 の 儆責 を 輕 んずる 勿 れ
18 神 は 傷 け 又 裹 み 撃 ていため 又 その 手 をもて 善 醫 したまふ
19 彼 はなんぢを 六 の 艱難 の 中 にて 救 ひたまふ 七 の 中 にても 災禍 なんぢにのぞまじ
20 饑饉 の 時 にはなんぢを 救 ひて 死 を 免 れしめ 戰爭 の 時 には 劍 の 手 を 免 れしめたまふ
21 汝 は 舌 にて 鞭 たるる 時 にも 隱 るることを 得 壞滅 の 來 る 時 にも 懼 るること 有 じ
22 汝 は 壞滅 と 饑饉 を 笑 ひ 地 の 獸 をも 懼 るること 無 るべし
23 田野 の 石 なんぢと 相 結 び 野 の 獸 なんぢと 和 がん
24 汝 はおのが 幕屋 の 安然 なるを 知 ん 汝 の 住處 を 見 まはるに 缺 たる 者 なからん
25 汝 また 汝 の 子等 の 多 くなり 汝 の 裔 の 地 の 草 の 如 くになるを 知 ん
26 汝 は 遐齡 におよびて 墓 にいらん 宛然 麥束 を 時 にいたりて 運 びあぐるごとくなるべし
27 視 よ 我 らが 尋 ね 明 めし 所 かくのごとし 汝 これを 聽 て 自 ら 知 れよ
Chapter 6
1 ヨブ 應 へて 曰 く
2 願 はくは 我 憤恨 の 善 く 權 られ 我 懊惱 の 之 とむかひて 天秤 に 懸 られんことを
3 然 すれば 是 は 海 の 沙 よりも 重 からん 斯 ればこそ 我 言 躁妄 なりけれ
4 それ 全能者 の 箭 わが 身 にいりわが 魂神 その 毒 を 飮 り 神 の 畏怖 我 を 襲 ひ 攻 む
5 野驢馬 あに 靑草 あるに 鳴 んや 牛 あに 食物 あるに 吽 らんや
6 淡 き 物 あに 鹽 なくして 食 はれんや 蛋 の 白 あに 味 あらんや
7 わが 心 の 觸 ることを 嫌 ふ 物 是 は 我 が 厭 ふ 所 の 食物 のごとし
8 願 はくは 我 求 むる 所 を 得 んことを 願 はくは 神 わが 希 ふ 所 の 物 を 我 に 賜 はらんことを
9 願 はくは 神 われを 滅 ぼすを 善 とし 御手 を 伸 て 我 を 絶 たまはんことを
10 然 るとも 我 は 尚 みづから 慰 むる 所 あり 烈 しき 苦痛 の 中 にありて 喜 ばん 是 は 我 聖者 の 言 に 悖 りしことなければなり
11 我 何 の 氣力 ありてか 尚 俟 ん 我 の 終 いかなれば 我 なほ 耐 へ 忍 ばんや
12 わが 氣力 あに 石 の 氣力 のごとくならんや 我 肉 あに 銅 のごとくならんや
13 わが 助 われの 中 に 無 にあらずや 救拯 我 より 逐 はなされしにあらずや
14 憂患 にしづむ 者 はその 友 これを 憐 れむべし 然 らずば 全能者 を 畏 るることを 廢 ん
15 わが 兄弟 はわが 望 を 充 さざること 溪川 のごとく 溪川 の 流 のごとくに 過 さる
16 是 は 氷 のために 黑 くなり 雪 その 中 に 藏 るれども
17 温暖 になる 時 は 消 ゆき 熱 くなるに 及 てはその 處 に 絶 はつ
18 隊旅客 身 をめぐらして 去 り 空曠處 にいたりて 亡 ぶ
19 テマの 隊旅客 これを 望 みシバの 旅客 これを 慕 ふ
20 彼等 これを 望 みしによりて 愧恥 を 取 り 彼處 に 至 りてその 面 を 赧 くす
21 かく 汝等 も 今 は 虚 しき 者 なり 汝 らは 怖 ろしき 事 を 見 れば 則 ち 懼 る
22 我 あに 汝等 我 に 予 へよと 言 しこと 有 んや 汝 らの 所有物 の 中 より 物 を 取 て 我 ために 饋 れと 言 しこと 有 んや
23 また 敵人 の 手 より 我 を 救 ひ 出 せと 言 しことあらんや 虐 ぐる 者 の 手 より 我 を 贖 へと 言 しことあらんや
24 我 を 敎 へよ 然 らば 我 默 せん 請 ふ 我 の 過 てる 所 を 知 せよ
25 正 しき 言 は 如何 に 力 あるものぞ 然 ながら 汝 らの 規諫 る 所 は 何 の 規諫 とならんや
26 汝 らは 言 を 規正 んと 想 ふや 望 の 絶 たる 者 の 語 る 所 は 風 のごときなり
27 汝 らは 孤子 のために 籤 を 掣 き 汝 らの 友 をも 商貨 にするならん
28 今 ねがはくは 我 に 向 へ 我 は 汝 らの 面 の 前 に 僞 はらず
29 請 ふ 再 びせよ 不義 あらしむる 勿 れ 請 ふ 再 びせよ 此事 においては 我 正義 し
30 我 舌 に 不義 あらんや 我 口 惡 き 物 を 辨 へざらんや
Chapter 7
1 それ 人 の 世 にあるは 戰鬪 にあるがごとくならずや 又 其 日 は 傭人 の 日 のごとくなるにあらずや
2 奴僕 の 暮 を 冀 がふが 如 く 傭人 のその 價 を 望 むがごとく
3 我 は 苦 しき 月 を 得 させられ 憂 はしき 夜 をあたへらる
4 我 臥 ば 乃 はち 言 ふ 何時 夜 あけて 我 おきいでんかと 曙 まで 頻 に 輾轉 ぶ
5 わが 肉 は 蟲 と 土塊 とを 衣服 となし 我 皮 は 愈 てまた 腐 る
6 わが 日 は 機 の 梭 よりも 迅速 なり 我 望 む 所 なくし 之 を 送 る
7 想 ひ 見 よ わが 生命 が 氣息 なる 而已 我 目 は 再 び 福祉 を 見 ること 有 じ
8 我 を 見 し 者 の 眼 かさねて 我 を 見 ざらん 汝 目 を 我 にむくるも 我 は 已 に 在 ざるべし
9 雲 の 消 て 逝 がごとく 陰府 に 下 れる 者 は 重 ねて 上 りきたらじ
10 彼 は 再 びその 家 に 歸 らず 彼 の 郷里 も 最早 かれを 認 めじ
11 然 ば 我 はわが 口 を 禁 めず 我 心 の 痛 によりて 語 ひ わが 神魂 の 苦 しきによりて 歎 かん
12 我 あに 海 ならんや 鰐 ならんや 汝 なにとて 我 を 守 らせおきたまふぞ
13 わが 牀 われを 慰 め わが 寢床 わが 愁 を 解 んと 思 ひをる 時 に
14 汝 夢 をもて 我 を 驚 かし 異象 をもて 我 を 懼 れしめたまふ
15 是 をもて 我 心 は 氣息 の 閉 んことを 願 ひ 我 この 骨 よりも 死 を 冀 がふ
16 われ 生命 を 厭 ふ 我 は 永 く 生 るをことを 願 はず 我 を 捨 おきたまへ 我 日 は 氣 のごときなり
17 人 を 如何 なる 者 として 汝 これを 大 にし 之 を 心 に 留
18 朝 ごとに 之 を 看 そなはし 時 わかず 之 を 試 みたまふや
19 何時 まで 汝 われに 目 を 離 さず 我 が 津 を 咽 む 間 も 我 を 捨 おきたまはざるや
20 人 を 鑒 みたまふ 者 よ 我 罪 を 犯 したりとて 汝 に 何 をか 爲 ん 何 ぞ 我 を 汝 の 的 となして 我 にこの 身 を 厭 はしめたまふや
21 汝 なんぞ 我 の 愆 を 赦 さず 我 罪 を 除 きたまはざるや 我 いま 土 の 中 に 睡 らん 汝 我 を 尋 ねたまふとも 我 は 在 ざるべし
Chapter 8
1 時 にシユヒ 人 ビルダデ 答 へて 曰 く
2 何時 まで 汝 かかる 事 を 言 や 何時 まで 汝 の 口 の 言語 を 大風 のごとくにするや
3 神 あに 審判 を 曲 たまはんや 全能者 あに 公義 を 曲 たまはんや
4 汝 の 子等 かれに 罪 を 獲 たるにや 之 をその 愆 の 手 に 付 したまへり
5 汝 もし 神 に 求 め 全能者 に 祈 り
6 清 くかつ 正 しうしてあらば 必 ず 今 汝 を 顧 み 汝 の 義 き 家 を 榮 えしめたまはん
7 然 らば 汝 の 始 は 微小 くあるとも 汝 の 終 は 甚 だ 大 ならん
8 請 ふ 汝 過 にし 代 の 人 に 問 へ 彼 らの 父祖 の 尋究 めしところの 事 を 學 べ
9 (我 らは 昨日 より 有 しのみにて 何 をも 知 ず 我 らが 世 にある 日 は 影 のごとし)
10 彼等 なんぢを 敎 へ 汝 を 諭 し 言 をその 心 より 出 さざらんや
11 葦 あに 泥 なくして 長 んや 萩 あに 水 なくしてそだたんや
12 是 はその 靑 くして 未 だ 刈 ざる 時 にも 他 の 一切 の 草 よりは 早 く 槁 る
13 神 を 忘 るる 者 の 道 は 凡 て 是 のごとく 悖 る 者 の 望 は 空 しくなる
14 その 恃 む 所 は 絶 れ その 倚 ところは 蜘蛛網 のごとし
15 その 家 に 倚 かからんとすれば 家 立 ず 之 に 堅 くとりすがるも 保 たじ
16 彼 日 の 前 に 靑緑 を 呈 はし その 枝 を 園 に 蔓延 らせ
17 その 根 を 石堆 に 盤 みて 石 の 屋 を 眺 むれども
18 若 その 處 より 取 のぞかれなばその 處 これを 認 めずして 我 は 汝 を 見 たる 事 なしと 言 ん
19 視 よその 道 の 喜樂 是 のごとし 而 してまた 他 の 者 地 より 生 いでん
20 それ 神 は 完全 人 を 棄 たまはず また 惡 き 者 の 手 を 執 りたまはず
21 遂 に 哂笑 をもて 汝 の 口 に 充 し 歡喜 を 汝 の 唇 に 置 たまはん
22 汝 を 惡 む 者 は 羞恥 を 着 せられ 惡 き 者 の 住所 は 無 なるべし
Chapter 9
1 ヨブこたへて 言 けるは
2 我 まことに 其 事 の 然 るを 知 り 人 いかでか 神 の 前 に 義 かるべけん
3 よし 人 は 神 と 辨爭 はんとするとも 千 の 一 も 答 ふること 能 はざるべし
4 神 は 心 慧 く 力 強 くましますなり 誰 か 神 に 逆 ひてその 身 安 からんや
5 彼 山 を 移 したまふに 山 しらず 彼 震怒 をもて 之 を 飜倒 したまふ
6 彼 地 を 震 ひてその 所 を 離 れしめたまへばその 柱 ゆるぐ
7 日 に 命 じたまへば 日 いでず 又 星辰 を 封 じたまふ
8 唯 かれ 獨 天 を 張 り 海 の 濤 を 覆 たまふ
9 また 北斗 參宿 昴宿 および 南方 の 密室 を 造 りたまふ
10 大 なる 事 を 行 ひたまふこと 測 られず 奇 しき 業 を 爲 たまふこと 數 しれず
11 視 よ 彼 わが 前 を 過 たまふ 然 るに 我 これを 見 ず 彼 すすみゆき 賜 ふ 然 るに 我 之 を 曉 ず
12 彼 奪 ひ 去 賜 ふ 誰 か 能 之 を 沮 まん 誰 か 之 に 汝 何 を 爲 やと 言 ことを 得 爲 ん
13 神 其 震怒 を 息 賜 はず ラハブを 助 る 者 等 之 が 下 に 屈 む
14 然 ば 我 爭 か 彼 に 回答 を 爲 ことを 得 ん 爭 われ 言 を 選 びて 彼 と 論 ふ 事 をえんや
15 假令 われ 義 かるとも 彼 に 回答 をせじ 彼 は 我 を 審判 く 者 なれば 我 彼 に 哀 き 求 ん
16 假令 我 彼 を 呼 て 彼 われに 答 たまふともわが 言 を 聽 いれ 賜 ひしとは 我 信 ぜざるなり
17 彼 は 大風 をもて 我 を 撃碎 き 故 なくして 我 に 衆多 の 傷 を 負 せ
18 我 に 息 をつかさしめず 苦 き 事 をもて 我 身 に 充 せ 賜 ふ
19 強 き 者 の 力量 を 言 んか 視 よ 此 にあり 審判 の 事 ならんか 誰 か 我 を 喚 出 すことを 得 爲 ん
20 假令 われ 義 かるとも 我 口 われを 惡 しと 爲 ん 假令 われ 完全 かるとも 尚 われを 罪 ありとせん
21 我 は 全 し 然 ども 我 はわが 心 を 知 ず 我 生命 を 賤 む
22 皆 同一 なり 故 に 我 は 言 ふ 神 は 完全 者 と 惡 者 とを 等 しく 滅 したまふと
23 災禍 の 俄然 に 人 を 誅 す 如 き 事 あれば 彼 は 辜 なき 者 の 苦痛 を 笑 ひ 見 たまふ
24 世 は 惡 き 者 の 手 に 交 されてあり 彼 またその 裁判 人 の 面 を 蔽 ひたまふ 若 彼 ならずば 是 誰 の 行爲 なるや
25 わが 日 は 驛使 よりも 迅 く 徒 に 過 さりて 福祉 を 見 ず
26 其 はしること 葦舟 のごとく 物 を 攫 まんとて 飛 かける 鷲 のごとし
27 たとひ 我 わが 愁 を 忘 れ 面色 を 改 めて 笑 ひをらんと 思 ふとも
28 尚 この 諸 の 苦痛 のために 戰慄 くなり 我 思 ふに 汝 われを 釋 し 放 ちたまはざらん
29 我 は 罪 ありとせらるるなれば 何 ぞ 徒然 に 勞 すべけんや
30 われ 雪 水 をもて 身 を 洗 ひ 灰汁 をもて 手 を 潔 むるとも
31 汝 われを 汚 はしき 穴 の 中 に 陷 いれたまはん 而 して 我 衣 も 我 を 厭 ふにいたらん
32 神 は 我 のごとく 人 にあらざれば 我 かれに 答 ふべからず 我 ら 二箇 して 共 に 裁判 に 臨 むべからず
33 また 我 らの 間 には 我 ら 二箇 の 上 に 手 を 置 べき 仲保 あらず
34 願 くは 彼 その 杖 を 我 より 取 はなし その 震怒 をもて 我 を 懼 れしめたまはざれ
35 然 らば 我 言語 て 彼 を 畏 れざらん 其 は 我 みづから 斯 る 者 と 思 はざればなり
Chapter 10
1 わが 心 生命 を 厭 ふ 然 ば 我 わが 憂愁 を 包 まず 言 あらはし わが 魂神 の 苦 きによりて 語 はん
2 われ 神 に 申 さん 我 を 罪 ありしとしたまふ 勿 れ 何故 に 我 とあらそふかを 我 に 示 したまへ
3 なんぢ 虐遇 を 爲 し 汝 の 手 の 作 を 打 棄 て 惡 き 者 の 謀計 を 照 すことを 善 としたまふや
4 汝 は 肉眼 を 有 たまふや 汝 の 觀 たまふ 所 は 人 の 觀 るがごとくなるや
5 なんぢの 日 は 人間 の 日 のごとく 汝 の 年 は 人 の 日 のごとくなるや
6 何 とて 汝 わが 愆 を 尋 ねわが 罪 をしらべたまふや
7 されども 汝 はすでに 我 の 罪 なきを 知 たまふ また 汝 の 手 より 救 ひいだし 得 る 者 なし
8 汝 の 手 われをいとなみ 我 をことごとく 作 れり 然 るに 汝 今 われを 滅 ぼしたまふなり
9 請 ふ 記念 たまへ 汝 は 土塊 をもてすてるがごとくに 我 を 作 りたまへり 然 るに 復 われを 塵 に 歸 さんとしたまふや
10 汝 は 我 を 乳 のごとく 斟 ぎ 牛酪 のごとくに 凝 しめたまひしに 非 ずや
11 汝 は 皮 と 肉 とを 我 に 着 せ 骨 と 筋 とをもて 我 を 編 み
12 生命 と 恩惠 とをわれに 授 け 我 を 眷顧 てわが 魂神 を 守 りたまへり
13 然 はあれど 汝 これらの 事 を 御 心 に 藏 しおきたまへり 我 この 事 汝 の 心 にあるを 知 る
14 我 もし 罪 を 犯 さば 汝 われをみとめてわが 罪 を 赦 したまはじ
15 我 もし 行状 あしからば 禍 あらん 假令 われ 義 かるとも 我 頭 を 擧 じ 其 は 我 は 衷 に 羞耻 充 ち 眼 にわが 患難 を 見 ればなり
16 もし 頭 を 擧 なば 獅子 のごとくに 汝 われを 追 打 ち 我 身 の 上 に 復 なんぢの 奇 しき 能力 をあらはしたまはん
17 汝 はしばしば 證 する 者 を 入 かへて 我 を 攻 め 我 にむかひて 汝 の 震怒 を 増 し 新手 に 新手 を 加 へて 我 を 攻 めたまふ
18 何 とて 汝 われを 胎 より 出 したまひしや 然 らずば 我 は 息 絶 え 目 に 見 らるること 無 く
19 曾 て 有 ざりし 如 くならん 即 ち 我 は 胎 より 墓 に 持 ゆかれん
20 わが 日 は 幾時 も 无 きに 非 ずや 願 くは 彼 姑 らく 息 て 我 を 離 れ 我 をして 少 しく 安 んぜしめんことを
21 我 が 往 て 復 返 ることなきその 先 に 斯 あらしめよ 我 は 暗 き 地 死 の 蔭 の 地 に 往 ん
22 この 地 は 暗 くして 晦冥 に 等 しく 死 の 蔭 にして 區分 なし 彼處 にては 光明 も 黑暗 のごとし
Chapter 11
1 是 においてナアマ 人 ゾパル 答 へて 言 けるは
2 言語 多 からば 豈 答 へざるを 得 んや 口 おほき 人 あに 義 とせられんや
3 汝 も 空 しき 言 あに 人 をして 口 を 閉 しめんや 汝 嘲 らば 人 なんぢをして 羞 しめざらんや
4 汝 は 言 ふ 我 敎 は 正 し 我 は 汝 の 目 の 前 に 潔 しと
5 願 くは 神 言 を 出 し 汝 にむかひて 口 を 開 き
6 智慧 の 秘密 をなんぢに 示 してその 知識 の 相 倍 するを 顯 したまはんことを 汝 しれ 神 はなんぢの 罪 よりも 輕 くなんぢを 處置 したまふなり
7 なんぢ 神 の 深事 を 窮 むるを 得 んや 全能者 を 全 く 窮 むることを 得 んや
8 その 高 きことは 天 のごとし 汝 なにを 爲 し 得 んや 其 深 きことは 陰府 のごとし 汝 なにを 知 えんや
9 その 量 は 地 よりも 長 く 海 よりも 濶 し
10 彼 もし 行 めぐりて 人 を 執 へて 召集 めたまふ 時 は 誰 か 能 くこれを 阻 まんや
11 彼 は 僞 る 人 を 善 く 知 りたまふ 又 惡事 は 顧 みること 無 して 見 知 たまふなり
12 虚 しき 人 は 悟性 なし その 生 るるよりして 野驢馬 の 駒 のごとし
13 汝 もし 彼 にむかひて 汝 の 心 を 定 め 汝 の 手 を 舒 べ
14 手 に 罪 のあらんには 之 を 遠 く 去 れ 惡 をなんぢの 幕屋 に 留 むる 勿 れ
15 然 すれば 汝 面 を 擧 て 玷 なかるべく 堅 く 立 て 懼 るる 事 なかるべし
16 すなはち 汝 憂愁 を 忘 れん 汝 のこれを 憶 ゆることは 流 れ 去 し 水 のごとくならん
17 なんぢの 生存 らふる 日 は 眞晝 よりも 輝 かん 假令 暗 き 事 あるとも 是 は 平旦 のごとくならん
18 なんぢは 望 あるに 因 て 安 んじ 汝 の 周圍 を 見 めぐりて 安然 に 寐 るにいたらん
19 なんぢは 何 にも 懼 れさせらるること 無 して 偃 やまん 必 ず 衆多 の 者 なんぢを 悦 こばせんと 務 むべし
20 然 ど 惡 き 者 は 目 曚 み 逃遁處 を 失 なはん 其 望 は 氣 の 斷 ると 等 しかるべし
Chapter 12
1 ヨブこたへて 言 ふ
2 なんぢら 而已 まことに 人 なり 智慧 は 汝 らと 共 に 死 ん
3 我 もなんぢらと 同 じく 心 あり 我 はなんぢらの 下 に 立 ず 誰 か 汝 らの 言 し 如 き 事 を 知 ざらんや
4 我 は 神 に 龥 はりて 聽 るる 者 なるに 今 その 友 に 嘲 けらるる 者 となれり 嗚呼 正 しくかつ 完 たき 人 あざけらる
5 安逸 なる 者 は 思 ふ 輕侮 は 不幸 なる 者 に 附 そひ 足 のよろめく 者 を 俟 と
6 掠奪 ふ 者 の 天 幕 は 繁榮 え 神 を 怒 らせ 自己 の 手 に 神 を 携 ふる 者 は 安泰 なり
7 今 請 ふ 獸 に 問 へ 然 ば 汝 に 敎 へん 天空 の 鳥 に 問 へ 然 ばなんぢに 語 らん
8 地 に 言 へ 然 ばなんぢに 敎 へん 海 の 魚 もまた 汝 に 述 べし
9 誰 かこの 一切 の 者 に 依 てヱホバの 手 のこれを 作 りしなるを 知 ざらんや
10 一切 の 生物 の 生氣 および 一切 の 人 の 靈魂 ともに 彼 の 手 の 中 にあり
11 耳 は 説話 を 辨 へざらんや その 状 あたかも 口 の 食物 を 味 ふがごとし
12 老 たる 者 の 中 には 智慧 あり 壽長者 の 中 には 穎悟 あり
13 智慧 と 權能 は 神 に 在 り 智謀 と 穎悟 も 彼 に 屬 す
14 視 よ 彼 毀 てば 再 び 建 ること 能 はず 彼 人 を 閉 こむれば 開 き 出 すことを 得 ず
15 視 よ 彼 水 を 止 むれば 則 ち 涸 れ 水 を 出 せば 則 ち 地 を 滅 ぼす
16 權能 と 穎悟 は 彼 に 在 り 惑 はさるる 者 も 惑 はす 者 も 共 に 彼 に 屬 す
17 彼 は 議士 を 裸體 にして 擄 へゆき 審判人 をして 愚 なる 者 とならしめ
18 王 等 の 權威 を 解 て 反 て 之 が 腰 に 繩 をかけ
19 祭司 等 を 裸體 にして 擄 へゆき 權力 ある 者 を 滅 ぼし
20 言 爽 なる 者 の 言語 を 取 除 き 老 たる 者 の 了知 を 奪 ひ
21 侯伯 たる 者等 に 恥辱 を 蒙 らせ 強 き 者 の 帶 を 解 き
22 暗中 より 隱 れたる 事等 を 顯 し 死 の 蔭 を 光明 に 出 し
23 國々 を 大 にしまた 之 を 滅 ぼし 國々 を 廣 くしまた 之 を 舊 に 歸 し
24 地 の 民 の 長 たる 者等 の 了知 を 奪 ひ これを 路 なき 荒野 に 吟行 はしむ
25 彼 らは 光明 なき 暗 にたどる 彼 また 彼 らを 醉 る 人 のごとくによろめかしむ
Chapter 13
1 視 よわが 目 これを 盡 く 觀 わが 耳 これを 聞 て 通逹 れり
2 汝 らが 知 るところは 我 もこれを 知 る 我 は 汝 らに劣らず
3 然 りと 雖 ども 我 は 全能者 に 物 言 ん 我 は 神 と 論 ぜんことをのぞむ
4 汝 らは 只 謊言 を 造 り 設 くる 者 汝 らは 皆 無用 の 醫師 なり
5 願 くは 汝 ら 全 く 默 せよ 然 するは 汝 らの 智慧 なるべし
6 請 ふわが 論 ずる 所 を 聽 き 我 が 唇 にて 辨爭 ふ 所 を 善 く 聽 け
7 神 のために 汝 ら 惡 き 事 を 言 や 又 かれのために 虚僞 を 述 るや
8 汝 ら 神 の 爲 に 偏 るや またかれのために 爭 はんとするや
9 神 もし 汝 らを 鑒察 たまはば 豈 善 らんや 汝等 人 を 欺 むくごとくに 彼 を 欺 むき 得 んや
10 汝等 もし 密 に 私 しするあらば 彼 かならず 汝 らを 責 ん
11 その 威光 なんぢらを 懼 れしめざらんや 彼 を 懼 るる 畏懼 なんぢらに 臨 まざらんや
12 なんぢらの 諭言 は 灰 に 譬 ふべし なんぢらの 城 は 土 の 城 となる
13 默 して 我 にかかはらざれ 我 言語 んとす 何事 にもあれ 我 に 來 らば 來 れ
14 我 なんぞ 我 肉 をわが 齒 の 間 に 置 き わが 生命 をわが 手 に 置 かんや
15 彼 われを 殺 すとも 我 は 彼 に 依賴 まん 唯 われは 吾道 を 彼 の 前 に 明 かにせんとす
16 彼 また 終 に 我 救拯 とならん 邪曲 なる 者 は 彼 の 前 にいたること 能 はざればなり
17 なんぢら 聽 よ 我 言 を 聽 け 我 が 述 る 所 をなんぢらの 耳 に 入 しめよ
18 視 よ 我 すでに 吾 事 を 言竝 べたり 必 ず 義 しとせられんと 自 ら 知 る
19 誰 か 能 われと 辨論 ふ 者 あらん 若 あらば 我 は 口 を 緘 て 死 ん
20 惟 われに 二 の 事 を 爲 たまはざれ 然 ば 我 なんぢの 面 をさけて 隱 れじ
21 なんぢの 手 を 我 より 離 したまへ 汝 の 威嚴 をもて 我 を 懼 れしめたまはざれ
22 而 して 汝 われを 召 たまへ 我 こたへん 又 われにも 言 はしめて 汝 われに 答 へたまへ
23 我 の 愆 われの 罪 いくばくなるや 我 の 背反 と 罪 とを 我 に 知 しめたまへ
24 何 とて 御顏 を 隱 し 我 をもて 汝 の 敵 となしたまふや
25 なんぢは 吹 廻 さるる 木 の 葉 を 威 し 干 あがりたる 籾殼 を 追 たまふや
26 汝 は 我 につきて 苦 き 事等 を 書 しるし 我 をして 我 が 幼稚時 の 罪 を 身 に 負 しめ
27 わが 足 を 足械 にはめ 我 すべての 道 を 伺 ひ 我 足 の 周圍 に 限界 をつけたまふ
28 我 は 腐 れたる 者 のごとくに 朽 ゆき 蠹 に 食 るる 衣服 に 等 し
Chapter 14
1 婦 の 產 む 人 はその 日 少 なくして 艱難 多 し
2 その 來 ること 花 のごとくにして 散 り 其 馳 ること 影 のごとくにして 止 まらず
3 なんぢ 是 のごとき 者 に 汝 の 目 を 啓 きたまふや 汝 われを 汝 の 前 にひきて 審判 したまふや
4 誰 か 清 き 物 を 汚 れたる 物 の 中 より 出 し 得 る 者 あらん 一人 も 無 し
5 その 日 旣 に 定 まり その 月 の 數 なんぢに 由 り 汝 これが 區域 を 立 て 越 ざらしめたまふなれば
6 是 に 目 を 離 して 安息 を 得 させ 之 をして 傭人 のその 日 を 樂 しむがごとくならしめたまへ
7 それ 木 には 望 あり 假令 砍 るるとも 復 芽 を 出 してその 枝 絶 ず
8 たとひ 其 根 地 の 中 に 老 い 幹 土 に 枯 るとも
9 水 の 潤霑 にあへば 即 ち 芽 をふき 枝 を 出 して 若樹 に 異 ならず
10 然 ど 人 は 死 れば 消 うす 人 氣 絶 なば 安 に 在 んや
11 水 は 海 に 竭 き 河 は 涸 てかわく
12 是 のごとく 人 も 寢臥 てまた 興 ず 天 の 盡 るまで 目 覺 ず 睡眠 を 醒 さざるなり
13 願 はくは 汝 われを 陰府 に 藏 し 汝 の 震怒 の 息 むまで 我 を 掩 ひ 我 ために 期 を 定 め 而 して 我 を 念 ひたまへ
14 人 もし 死 ばまた 生 んや 我 はわが 征戰 の 諸 日 の 間 望 みをりて 我 が 變更 の 來 るを 待 ん
15 なんぢ 我 を 呼 たまはん 而 して 我 こたへん 汝 かならず 汝 の 手 の 作 を 顧 みたまはん
16 今 なんぢは 我 に 歩履 を 數 へたまふ 我 罪 を 汝 うかがひたまはざらんや
17 わが 愆 は 凡 て 嚢 の 中 に 封 じてあり 汝 わが 罪 を 縫 こめたまふ
18 それ 山 も 倒 れて 終 に 崩 れ 巖石 も 移 りてその 處 を 離 る
19 水 は 石 を 鑿 ち 浪 は 地 の 塵 を 押 流 す 汝 は 人 の 望 を 斷 たまふ
20 なんぢは 彼 を 永 く 攻 なやまして 去 ゆかしめ 彼 の 面容 の 變 らせて 逐 やりたまふ
21 その 子 尊貴 なるも 彼 は 之 を 知 ず 卑賤 なるもまた 之 を 曉 らざるなり
22 只 己 みづからその 肉 に 痛苦 を 覺 え 己 みづからその 心 に 哀 く 而已
Chapter 15
1 テマン 人 エリパズ 答 へて 曰 く
2 智者 あに 虚 しき 知識 をもて 答 へんや 豈 東風 をその 腹 に 充 さんや
3 あに 裨 なき 談 益 なき 詞 をもて 辨論 はんや
4 まことに 汝 は 神 を 畏 るる 事 を 棄 て その 前 に 祷 ることを 止 む
5 なんぢの 罪 なんぢの 口 を 敎 ふ 汝 はみづから 擇 びて 狡猾人 の 舌 を 用 ふ
6 なんぢの 口 みづから 汝 の 罪 を 定 む 我 には 非 ず 汝 の 唇 なんぢの 惡 きを 證 す
7 汝 あに 最初 に 世 に 生 れたる 人 ならんや 山 よりも 前 に 出來 しならんや
8 神 の 御謀議 を 聞 しならんや 智慧 を 獨 にて 藏 めをらんや
9 なんぢが 知 る 所 は 我 らも 知 ざらんや 汝 が 曉 るところは 我 らの 心 にも 在 ざらんや
10 我 らの 中 には 白髮 の 人 および 老 たる 人 ありて 汝 の 父 よりも 年 高 し
11 神 の 慰藉 および 夫 の 柔 かき 言詞 を 汝 小 しとするや
12 なんぢ 何 ぞかく 心 狂 ふや 何 ぞかく 目 をしばたたくや
13 なんぢ 是 のごとく 神 に 對 ひて 氣 をいらだて 斯 る 言詞 をなんぢの 口 よりいだすは 如何 ぞや
14 人 は 如何 なる 者 ぞ 如何 してか 潔 からん 婦 の 產 し 者 は 如何 なる 者 ぞ 如何 してか 義 からん
15 それ 神 はその 聖者 にすら 信 を 置 たまはず 諸 の 天 もその 目 の 前 には 潔 からざるなり
16 况 んや 罪 を 取 ること 水 を 飮 がごとくする 憎 むべき 穢 れたる 人 をや
17 我 なんぢに 語 る 所 あらん 聽 よ 我 見 たる 所 を 述 ん
18 是 すなはち 智者 等 が 父祖 より 受 て 隱 すところ 無 く 傳 へ 來 し 者 なり
19 彼 らに 而已 この 地 は 授 けられて 外國人 は 彼等 の 中 に 往來 せしこと 無 りき
20 惡 き 人 はその 生 る 日 の 間 つねに 悶 へ 苦 しむ 強暴人 の 年 は 數 へて 定 めおかる
21 その 耳 には 常 に 懼怖 しき 音 きこえ 平安 の 時 にも 滅 ぼす 者 これに 臨 む
22 彼 は 幽暗 を 出 得 るとは 信 ぜず 目 ざされて 劒 に 付 さる
23 彼 食物 は 何處 にありやと 言 つつ 尋 ねありき 黑暗日 の 備 へられて 己 の 側 にあるを 知 る
24 患難 と 苦痛 とはかれを 懼 れしめ 戰鬪 の 準備 をなせる 王 のごとくして 彼 に 打 勝 ん
25 彼 は 手 を 伸 て 神 に 敵 し 傲 りて 全能者 に 悖 り
26 頸 を 強 くし 厚 き 楯 の 面 を 向 て 之 に 馳 かかり
27 面 に 肉 を 滿 せ 腰 に 脂 を 凝 し
28 荒 されたる 邑々 に 住居 を 設 けて 人 の 住 べからざる 家 石堆 となるべき 所 に 居 る
29 是故 に 彼 は 富 ず その 貨物 は 永 く 保 たず その 所有物 は 地 に 蔓延 ず
30 また 自己 は 黑暗 を 出 づるに 至 らず 火燄 その 枝 葉 を 枯 さん 而 してその 身 は 神 の 口 の 氣吹 によりて 亡 ゆかん
31 彼 は 虚妄 を 恃 みて 自 ら 欺 くべからず 其 報 は 虚妄 なるべければなり
32 彼 の 日 の 來 らざる 先 に 其 事 成 べし 彼 の 枝 は 緑 ならじ
33 彼 は 葡萄 の 樹 のその 熟 せざる 果 を 振 落 すがごとく 橄欖 の 樹 のその 花 を 落 すがごとくなるべし
34 邪曲 なる 者 の 宗族 は 零落 れ 賄賂 の 家 は 火 に 焚 ん
35 彼等 は 惡念 を 孕 み 虚妄 を 生 み その 胎 にて 詭計 を 調 ふ
Chapter 16
1 ヨブ 答 へて 曰 く
2 斯 る 事 は 我 おほく 聞 り 汝 らはみな 人 を 慰 めんとして 却 つて 人 を 煩 はす 者 なり
3 虚 しき 言語 あに 終極 あらんや 汝 なにに 勵 されて 應答 をなすや
4 我 もまた 汝 らの 如 くに 言 ことを 得 もし 汝 らの 身 わが 身 と 處 を 換 なば 我 は 言語 を 練 て 汝 らを 攻 め 汝 らにむかひて 首 を 搖 ことを 得
5 また 口 をもて 汝 らを 強 くし 唇 の 慰藉 をもて 汝 らの 憂愁 を 解 ことを 得 るなり
6 たとひ 我 言 を 出 すとも 我 憂愁 は 解 ず 默 するとても 何 ぞ 我 身 の 安 くなること 有 んや
7 彼 いま 已 に 我 を 疲 らしむ 汝 わが 宗族 をことごとく 荒 せり
8 なんぢ 我 をして 皺 らしめたり 是 われに 向 ひて 見證 をなすなり 又 わが 痩 おとろへたる 状貌 わが 面 の 前 に 現 はれ 立 て 我 を 攻 む
9 かれ 怒 てわれを 撕裂 きかつ 窘 しめ 我 にむかひて 齒 を 噛鳴 し 我 敵 となり 目 を 鋭 して 我 を 看 る
10 彼 ら 我 にむかひて 口 を 張 り 我 を 賤 しめてわが 頬 を 打 ち 相 集 まりて 我 を 攻 む
11 神 われを 邪曲 なる 者 に 交 し 惡 き 者 の 手 に 擲 ちたまへり
12 我 は 安穩 なる 身 なりしに 彼 いたく 我 を 打惱 まし 頸 を 執 へて 我 をうちくだき 遂 に 我 を 立 て 鵠 となしたまひ
13 その 射手 われを 遶 り 圍 めり やがて 情 もなく 我 腰 を 射 透 し わが 膽 を 地 に 流 れ 出 しめたまふ
14 彼 はわれを 打敗 りて 破壞 に 破壞 を 加 へ 勇士 のごとく 我 に 奔 かかりたまふ
15 われ 麻布 をわが 肌 に 縫 つけ 我 角 を 塵 にて 汚 せり
16 我 面 は 泣 て 頳 くなり 我 目縁 には 死 の 蔭 あり
17 然 れども 我 手 には 不義 あること 無 く わが 祈祷 は 清 し
18 地 よ 我 血 を 掩 ふなかれ 我 號呼 は 休 む 處 を 得 ざれ
19 視 よ 今 にても 我 證 となる 者 天 にあり わが 眞實 を 表明 す 者 高 き 處 にあり
20 わが 朋友 は 我 を 嘲 けれども 我 目 は 神 にむかひて 涙 を 注 ぐ
21 願 くは 彼 人 のために 神 と 論辨 し 人 の 子 のためにこれが 朋友 と 論辨 せんことを
22 數年 すぎさらば 我 は 還 らぬ 旅 路 に 往 べし
Chapter 17
1 わが 氣息 は 已 にくさり 我 日 すでに 盡 なんとし 墳墓 われを 待 つ
2 まことに 嘲弄者 等 わが 傍 に 在 り 我 目 は 彼 らの 辨爭 ふを 常 に 見 ざるを 得 ず
3 願 くは 質 を 賜 ふて 汝 みづから 我 の 保證 となりたまへ 誰 か 他 にわが 手 をうつ 者 あらんや
4 汝 彼 らの 心 を 閉 て 悟 るところ 無 らしめたまへり 必 ず 彼 らをして 愈 らしめたまはじ
5 朋友 を 交付 して 掠奪 に 遭 しむる 者 は 其 子等 の 目 潰 るべし
6 彼 われを 世 の 民 の 笑柄 とならしめたまふ 我 は 面 に 唾 せらるべき 者 となれり
7 かつまた 我 目 は 憂愁 によりて 昏 み 肢體 は 凡 て 影 のごとし
8 義 しき 者 は 之 に 驚 き 無辜者 は 邪曲 なる 者 を 見 て 憤 ほる
9 然 ながら 義 しき 者 はその 道 を 堅 く 持 ち 手 の 潔淨 き 者 はますます 力 を 得 るなり
10 請 ふ 汝 ら 皆 ふたたび 來 れ 我 は 汝 らの 中 に 一人 も 智 き 者 あるを 見 ざるなり
11 わが 日 は 已 に 過 ぎ わが 計 る 所 わが 心 に 冀 ふ 所 は 已 に 敗 れたり
12 彼 ら 夜 を 晝 に 變 ふ 黑暗 の 前 に 光明 ちかづく
13 我 もし 俟 つところ 有 ば 是 わが 家 たるべき 陰府 なるのみ 我 は 黑暗 にわが 牀 を 展 ぶ
14 われ 朽腐 に 向 ひては 汝 はわが 父 なりと 言 ひ 蛆 に 向 ひては 汝 は 我 母 わが 姉妹 なりと 言 ふ
15 然 ばわが 望 はいづくにかある 我 望 は 誰 かこれを 見 る 者 あらん
16 是 は 下 りて 陰府 の 關 に 到 らん 之 と 齊 しく 我 身 は 塵 の 中 に 臥靜 まるべし
Chapter 18
1 シユヒ 人 ビルダデこたへて 曰 く
2 汝等 いつまで 言語 を 獵求 むることをするや 汝 ら 先 曉 るべし 然 る 後 われら 辨論 はん
3 われら 何 ぞ 獸畜 とおもはるべけんや 何 ぞ 汝 らの 目 に 汚穢 たる 者 と 見 らるべけんや
4 なんぢ 怒 りて 身 を 裂 く 者 よ 汝 のためとて 地 あに 棄 られんや 磐 あに 其處 より 移 されんや
5 惡 き 者 の 光明 は 滅 され 其 火 の 焔 は 照 じ
6 その 天 幕 の 内 なる 光明 は 暗 くなり 其 が 上 の 燈火 は 滅 さるべし
7 またその 強 き 歩履 は 狹 まり 其 計 るところは 自分 を 陷 いる
8 すなはち 其 足 に 逐 れて 網 に 到 り また 陷阱 の 上 を 歩 むに
9 索 はその 踵 に 纒 り 羂 これを 執 ふ
10 索 かれを 執 ふるために 地 に 隱 しあり 羂 かれを 陷 しいるるために 路 に 設 けあり
11 怖 ろしき 事 四方 において 彼 を 懼 れしめ 其 足 にしたがひて 彼 をおふ
12 その 力 は 餓 ゑ 其 傍 には 災禍 そなはり
13 その 膚 の 肢 は 蝕壞 らる 即 ち 死 の 初子 これが 肢 を 蝕壞 るなり
14 やがて 彼 はその 恃 める 天 幕 より 曳 離 されて 懼怖 の 王 の 許 に 驅 やられん
15 彼 に 屬 せざる 者 かれの 天 幕 に 住 み 硫礦 かれの 家 の 上 に 降 ん
16 下 にてはその 根 枯 れ 上 にてはその 枝 砍 る
17 彼 の 跡 は 地 に 絶 え 彼 の 名 は 街衢 に 傳 はらじ
18 彼 は 光明 の 中 より 黑暗 に 逐 やられ 世 の 中 より 驅 出 されん
19 彼 はその 民 の 中 に 子 も 無 く 孫 も 有 じ また 彼 の 住所 には 一人 も 遺 る 者 なからん
20 之 が 日 を 見 るにおいて 後 に 來 る 者 は 駭 ろき 先 に 出 し 者 は 怖 おそれん
21 かならず 惡 き 人 の 住所 は 是 のごとく 神 を 知 ざる 者 の 所 は 是 のごとくなるべし
Chapter 19
1 ヨブこたへて 曰 く
2 汝 ら 我 心 をなやまし 言語 をもて 我 を 打 くだくこと 何時 までぞや
3 なんぢら 已 に 十次 も 我 を 辱 しめ 我 を 惡 く 待 ひてなほ 愧 るところ 無 し
4 假令 われ 眞 に 過 ちたらんもその 過 は 我 の 身 に 止 れり
5 なんぢら 眞 に 我 に 向 ひて 誇 り 我 身 に 羞 べき 行爲 ありと 證 するならば
6 神 われを 虐 げその 網羅 をもて 我 を 包 みたまへりと 知 るべし
7 我 虐 げらるると 叫 べども 答 なく 呼 はり 求 むれども 審理 なし
8 彼 わが 路 の 周圍 に 垣 を 結 めぐらして 逾 る 能 はざらしめ 我 が 行 く 途 に 黑暗 を 蒙 むらしめ
9 わが 光榮 を 褫 ぎ 我 冠冕 を 首 より 奪 ひ
10 四方 より 我 を 毀 ちて 失 しめ 我 望 を 樹 のごとくに 根 より 拔 き
11 我 にむかひて 震怒 を 燃 し 我 を 敵 の 一人 と 見 たまへり
12 その 軍旅 ひとしく 進 み 途 を 高 くして 我 に 攻寄 せ わが 天 幕 の 周圍 に 陣 を 張 り
13 彼 わが 兄弟 等 をして 遠 くわれを 離 れしめたまへり 我 を 知 る 人々 は 全 く 我 に 疎 くなりぬ
14 わが 親戚 は 往來 を 休 め わが 朋友 はわれを 忘 れ
15 わが 家 に 寄寓 る 者 およびわが 婢 等 は 我 を 見 て 外人 のごとくす 我 かれらの 前 にては 異國人 のごとし
16 われわが 僕 を 喚 どもこたへず 我 口 をもて 彼 に 請 はざるを 得 ざるなり
17 わが 氣息 はわが 妻 に 厭 はれ わが 臭氣 はわが 同胎 の 子等 に 嫌 はる
18 童子 等 さへも 我 を 侮 どり 我 起 あがれば 即 ち 我 を 嘲 ける
19 わが 親 しき 友 われを 惡 みわが 愛 したる 人々 ひるがへりてわが 敵 となれり
20 わが 骨 はわが 皮 と 肉 とに 貼 り 我 は 僅 に 齒 の 皮 を 全 うして 逃 れしのみ
21 わが 友 よ 汝等 われを 恤 れめ 我 を 恤 れめ 神 の 手 われを 撃 り
22 汝 らなにとて 神 のごとくして 我 を 攻 め わが 肉 に 饜 ことなきや
23 望 むらくは 我 言 の 書 留 られんことを 望 むらくは 我 言 書 に 記 されんことを
24 望 むらくは 鐡 の 筆 と 鉛 とをもて 之 を 永 く 磐石 に 鐫 つけおかんことを
25 われ 知 る 我 を 贖 ふ 者 は 活 く 後 の 日 に 彼 かならず 地 の 上 に 立 ん
26 わがこの 皮 この 身 の 朽 はてん 後 われ 肉 を 離 れて 神 を 見 ん
27 我 みづから 彼 を 見 たてまつらん 我 目 かれを 見 んに 識 らぬ 者 のごとくならじ 我 が 心 これを 望 みて 焦 る
28 なんぢら 若 われら 如何 に 彼 を 攻 んかと 言 ひ また 事 の 根 われに 在 りと 言 ば
29 劍 を 懼 れよ 忿怒 は 劍 の 罰 をきたらす 斯 なんぢら 遂 に 審判 のあるを 知 ん
Chapter 20
1 ナアマ 人 ゾパルこたへて 曰 く
2 これに 因 てわれ 答 をなすの 思念 を 起 し 心 しきりに 之 がために 急 る
3 我 を 辱 しむる 警語 を 我 聞 ざるを 得 ず 然 しながらわが 了知 の 性 われをして 答 ふることを 得 せしむ
4 なんぢ 知 ずや 古昔 より 地 に 人 の 置 れしより 以來
5 惡 き 人 の 勝誇 は 暫時 にして 邪曲 なる 者 の 歡樂 は 時 の 間 のみ
6 その 高 天 に 逹 しその 首 雲 に 及 ぶとも
7 終 には 己 の 糞 のごとくに 永 く 亡絶 べし 彼 を 見識 る 者 は 言 ん 彼 は 何處 にありやと
8 彼 は 夢 の 如 く 過 さりて 復 見 るべからず 夜 の 幻 のごとく 追 はらはれん
9 彼 を 見 たる 目 かさねてかれを 見 ることあらず 彼 の 住 たる 處 も 再 びかれを 見 ること 無 らん
10 その 子等 は 貧 しき 者 に 寛待 を 求 めん 彼 もまたその 取 し 貨財 を 手 づから 償 さん
11 その 骨 に 少壯氣勢 充 り 然 れどもその 氣勢 もまた 塵 の 中 に 彼 とおなじく 臥 ん
12 かれ 惡 を 口 に 甘 しとして 舌 の 底 に 藏 め
13 愛 みて 捨 ず 之 を 口 の 中 に 含 みをる
14 然 どその 食物 膓 の 中 にて 變 り 腹 の 内 にて 蝮 の 毒 とならん
15 かれ 貨財 を 呑 たれども 復 之 を 吐 いださん 神 これを 彼 の 腹 より 推 いだしたまふべし
16 かれは 蝮 の 毒 を 吸 ひ 虺 の 舌 に 殺 されん
17 かれは 蜂 蜜 と 牛酪 の 湧 て 流 るる 河川 を 視 ざらん
18 その 勞苦 て 獲 たる 物 は 之 を 償 して 自 ら 食 はず 又 それを 求 めたる 所有 よりは 快樂 を 得 じ
19 是 は 彼 貧 しき 者 を 虐遇 げて 之 を 棄 たればなり 假令 家 を 奪 ひとるとも 之 を 改 め 作 ることを 得 ざらん
20 かれはその 腹 に 飽 ことを 知 ざるが 故 に 自己 の 深 く 喜 ぶ 物 をも 保 つこと 能 はじ
21 かれが 遺 して 食 はざる 物 とては 一 も 無 し 是 によりてその 福祉 は 永 く 保 たじ
22 その 繁榮 の 眞盛 において 彼 は 艱難 に 迫 られ 乏 しき 者 すべて 手 をこれが 上 に 置 ん
23 かれ 腹 を 充 さんとすれば 神 烈 しき 震怒 をその 上 に 下 し その 食 する 時 にこれをその 上 に 降 したまふ
24 かれ 鐡 の 器 を 避 れば 銅 の 弓 これを 射 透 す
25 是 に 於 て 之 をその 身 より 拔 ば 閃 く 鏃 その 膽 より 出 きたりて 畏懼 これに 臨 む
26 各種 の 黑暗 これが 寳物 ををほろぼすために 蓄 へらる 又 人 の 吹 おこせしに 非 る 火 かれを 焚 き その 天 幕 に 遺 りをる 者 をも 焚 ん
27 天 かれの 罪 を 顯 はし 地 興 りて 彼 を 攻 ん
28 その 家 の 儲蓄 は 亡 て 神 の 震怒 の 日 に 流 れ 去 ん
29 是 すなはち 惡 き 人 が 神 より 受 る 分 神 のこれに 定 めたまへる 數 なり
Chapter 21
1 ヨブこたへて 曰 く
2 請 ふ 汝等 わが 言 を 謹 んで 聽 き 之 をもて 汝 らの 慰藉 に 代 よ
3 先 われに 容 して 言 しめよ 我 が 言 る 後 なんぢ 嘲 るも 可 し
4 わが 怨言 は 世 の 人 の 上 につきて 起 れる 者 ならんや 我 なんぞ 氣 をいらだつ 可 らざらんや
5 なんぢら 我 を 視 て 驚 き 手 を 口 にあてよ
6 われ 思 ひまはせば 畏 しくなりて 身體 しきりに 戰慄 く
7 惡 き 人 何 とて 生 ながらへ 老 かつ 勢力 強 くなるや
8 その 子等 はその 周圍 にありてその 前 に 堅 く 立 ち その 子孫 もその 目 の 前 に 堅 く 立 べし
9 またその 家 は 平安 にして 畏懼 なく 神 の 杖 その 上 に 臨 まじ
10 その 牡牛 は 種 を 與 へて 過 らず その 牝 牛 は 子 を 產 てそこなふ 事 なし
11 彼等 はその 少 き 者等 を 外 に 出 すこと 群 のごとし その 子等 は 舞 をどる
12 彼等 は 鼓 と 琴 とをもて 歌 ひ 笛 の 音 に 由 て 樂 み
13 その 日 を 幸福 に 暮 し まばたくまに 陰府 にくだる
14 然 はあれども 彼等 は 神 に 言 らく 我 らを 離 れ 賜 へ 我 らは 汝 の 道 をしることを 好 まず
15 全能者 は 何 者 なれば 我 らこれに 事 ふべき 我儕 これに 祈 るとも 何 の 益 を 得 んやと
16 視 よ 彼 らの 福祿 は 彼 らの 力 に 由 にあらざるなり 惡 人 の 希圖 は 我 の 與 する 所 にあらず
17 惡 人 のその 燈火 を 滅 るる 事 幾度 ありしか その 滅亡 のこれに 臨 む 事 神 の 怒 りて 之 に 艱苦 を 蒙 らせたまふ 事 幾度 有 しか
18 かれら 風 の 前 の 藁 の 如 く 暴風 に 吹 さらるる 籾殼 の 如 くなること 幾度 有 しか
19 神 かれの 愆 を 積 たくはへてその 子孫 に 報 いたまふか 之 を 彼 自己 の 身 に 報 い 知 しむるに 如 ず
20 かれをして 自 らその 滅亡 を 目 に 視 させ かつ 全能者 の 震怒 を 飮 しめよ
21 その 月 の 數 すでに 盡 るに 於 ては 何 ぞその 後 の 家 に 關 はる 所 あらん
22 神 は 天 にある 者等 をさへ 審判 たまふなれば 誰 か 能 これに 知識 を 敎 へんや
23 或 人 は 繁榮 を 極 め 全 く 平穩 にかつ 安康 にして 死 に
24 その 器 に 乳 充 ち その 骨 の 髓 は 潤 ほへり
25 また 或 人 は 心 を 苦 しめて 死 し 終 に 福祉 をあぢはふる 事 なし
26 是等 は 倶 に 齊 しく 塵 に 臥 して 蛆 におほはる
27 我 まことに 汝 らの 思念 を 知 り 汝 らが 我 を 攻撃 んとするの 計略 を 知 る
28 なんぢらは 言 ふ 王 侯 の 家 は 何 に 在 る 惡 人 の 住所 は 何 にあると
29 汝 らは 路 往 く 人々 に 詢 ざりしや 彼等 の 證據 を 曉 らざるや
30 すなはち 滅亡 の 日 に 惡 人 遺 され 烈 しき 怒 の 日 に 惡 人 たづさへ 出 さる
31 誰 か 能 かれに 打 向 ひて 彼 の 行爲 を 指 示 さんや 誰 か 能 彼 の 爲 たる 所 を 彼 に 報 ゆることを 爲 ん
32 彼 は 舁 れて 墓 に 到 り 塚 の 上 にて 守護 ることを 爲 す
33 谷 の 土塊 も 彼 には 快 し 一切 の 人 その 後 に 從 ふ 其 前 に 行 る 者 も 數 へがたし
34 旣 に 是 の 如 くなるに 汝等 なんぞ 徒 に 我 を 慰 さめんとするや 汝 らの 答 ふる 所 はただ 虚僞 のみ
Chapter 22
1 是 においてテマン 人 エリパズこたへて 曰 く
2 人 神 を 益 する 事 をえんや 智人 も 唯 みづから 益 する 而已 なるぞかし
3 なんぢ 義 かるとも 全能者 に 何 の 歡喜 かあらん なんぢ 行爲 を 全 たふするとも 彼 に 何 の 利益 かあらん
4 彼 汝 の 畏懼 の 故 によりて 汝 を 責 め 汝 を 鞫 きたまはんや
5 なんぢの 惡 大 なるにあらずや 汝 の 罪 はきはまり 無 し
6 即 はち 汝 は 故 なくその 兄弟 の 物 を 抑 へて 質 となし 裸 なる 者 の 衣服 を 剥 て 取 り
7 渇 く 者 に 水 を 與 へて 飮 しめず 饑 る 者 に 食物 を 施 こさず
8 力 ある 者 土地 を 得 貴 き 者 その 中 に 住 む
9 なんぢは 寡婦 に 手 を 空 しうして 去 しむ 孤子 の 腕 は 折 る
10 是 をもて 網羅 なんぢを 環 り 畏懼 にはかに 汝 を 擾 す
11 なんぢ 黑暗 を 見 ずや 洪水 のなんぢを 覆 ふを 見 ずや
12 神 は 天 の 高 に 在 すならずや 星辰 の 巓 ああ 如何 に 高 きぞや
13 是 によりて 汝 は 言 ふ 神 なにをか 知 しめさん 豈 よく 黑雲 の 中 より 審判 するを 得 たまはんや
14 濃雲 かれを 蔽 へば 彼 は 見 たまふ 所 なし 唯 天 の 蒼穹 を 歩 みたまふ
15 なんぢ 古昔 の 世 の 道 を 行 なはんとするや 是 あしき 人 の 踐 たりし 者 ならずや
16 彼等 は 時 いまだ 至 らざるに 打絶 れ その 根基 は 大水 に 押 流 されたり
17 彼 ら 神 に 言 けらく 我儕 を 離 れたまへ 全能者 われらのために 何 を 爲 ことを 得 んと
18 しかるに 彼 は 却 つて 佳物 を 彼 らの 家 に 盈 したまへり 但 し 惡人 の 計畫 は 我 に 與 する 所 にあらず
19 義 しき 者 は 之 を 見 て 喜 び 無辜者 は 彼 らを 笑 ふ
20 曰 く 我 らの 仇 は 誠 に 滅 ぼされ 其 盈餘 れる 物 は 火 にて 焚 つくさる
21 請 ふ 汝 神 と 和 らぎて 平安 を 得 よ 然 らば 福祿 なんぢに 來 らん
22 請 ふかれの 口 より 敎晦 を 受 け その 言語 をなんぢの 心 に 藏 めよ
23 なんぢもし 全能者 に 歸向 り 且 なんぢの 家 より 惡 を 除 き 去 ば 汝 の 身 再 び 興 されん
24 なんぢの 寳 を 土 の 上 に 置 き オフルの 黄金 を 谿河 の 石 の 中 に 置 け
25 然 れば 全能者 なんぢの 寳 となり 汝 のために 白銀 となりたまふべし
26 而 してなんぢは 又 全能者 を 喜 び 且 神 にむかひて 面 をあげん
27 なんぢ 彼 に 祈 らば 彼 なんぢに 聽 たまはん 而 して 汝 その 誓願 をつくのひ 果 さん
28 なんぢ 事 を 爲 んと 定 めなばその 事 なんぢに 成 ん 汝 の 道 には 光 照 ん
29 其 卑 く 降 る 時 は 汝 いふ 昇 る 哉 と 彼 は 謙遜者 を 拯 ひたまふべし
30 かれは 罪 なきに 非 ざる 者 をも 拯 ひたまはん 汝 の 手 の 潔淨 によりて 斯 る 者 も 拯 はるべし
Chapter 23
1 ヨブこたへて 曰 く
2 我 は 今日 にても 尚 つぶやきて 服 せず わが 禍災 はわが 嘆息 よりも 重 し
3 ねがはくは 神 をたづねて 何處 にか 遇 まつるを 知 り 其 御座 に 參 いたらんことを
4 我 この 愁訴 をその 御前 に 陳 べ 口 を 極 めて 辨論 はん
5 我 その 我 に 答 へたまふ 言 を 知 り また 其 われに 言 たまふ 所 を 了 らん
6 かれ 大 なる 能 をもて 我 と 爭 ひたまはんや 然 らじ 反 つて 我 を 眷 みたまふべし
7 彼處 にては 正義人 かれと 辨爭 ふことを 得 斯 せば 我 を 鞫 く 者 の 手 を 永 く 免 かるべし
8 しかるに 我 東 に 往 くも 彼 いまさず 西 に 往 くも 亦 見 たてまつらず
9 北 に 工作 きたまへども 遇 まつらず 南 に 隱 れ 居 たまへば 望 むべからず
10 わが 平生 の 道 は 彼 知 たまふ 彼 われを 試 みたまはば 我 は 金 のごとくして 出 きたらん
11 わが 足 は 彼 の 歩履 に 堅 く 隨 がへり 我 はかれの 道 を 守 りて 離 れざりき
12 我 はかれの 唇 の 命令 に 違 はず 我 が 法 よりも 彼 の 口 の 言語 を 重 ぜり
13 かれは 一 に 居 る 者 にまします 誰 か 能 かれをして 意 を 變 しめん 彼 はその 心 に 慾 する 所 をかならず 爲 たまふ
14 然 ば 我 に 向 ひて 定 めし 事 を 必 らず 成就 たまはん 是 のごとき 事 を 多 く 彼 は 爲 たまふなり
15 是故 に 我 かれの 前 に 慄 ふ 我 考 ふれば 彼 を 懼 る
16 神 わが 心 を 弱 くならしめ 全能者 われをして 懼 れしめたまふ
17 かく 我 は 暗 の 來 らぬ 先 わが 面 を 黑暗 の 覆 ふ 前 に 打絶 れざりき
Chapter 24
1 なにゆゑに 全能者 時期 を 定 めおきたまはざるや 何故 に 彼 を 知 る 者 その 日 を 見 ざるや
2 人 ありて 地界 を 侵 し 群畜 を 奪 ひて 牧 ひ
3 孤子 の 驢馬 を 驅去 り 寡婦 の 牛 を 取 て 質 となし
4 貧 しき 者 を 路 より 推退 け 世 の 受難者 をして 盡 く 身 を 匿 さしむ
5 視 よ 彼 らは 荒野 にをる 野驢馬 のごとく 出 て 業 を 爲 て 食 を 求 め 野原 よりその 子等 のために 食物 を 得
6 圃 にて 惡 き 者 の 麥 を 刈 り またその 葡萄 の 遺餘 を 摘 む
7 かれらは 衣服 なく 裸 にして 夜 を 明 し 覆 ふて 寒氣 を 禦 ぐべき 物 なし
8 山 の 暴風 に 濡 れ 庇 はるるところ 無 して 岩 を 抱 く
9 孤子 を 母 の 懷 より 奪 ふ 者 あり 貧 しき 者 の 身 につける 物 を 取 て 質 となす 者 あり
10 貧 き 者 衣服 なく 裸 にて 歩 き 饑 つつ 麥束 を 擔 ふ
11 人 の 垣 の 内 にて 油 を 搾 め また 渇 きつつ 酒醡 を 踐 む
12 邑 の 中 より 人々 の 呻吟 たちのぼり 傷 けられたる 者 の 叫喚 おこる 然 れども 神 はその 怪事 を 省 みたまはず
13 また 光明 に 背 く 者 あり 光 の 道 を 知 ず 光 の 路 に 止 らず
14 人 を 殺 す 者 昧爽 に 興 いで 受難者 や 貧 しき 者 を 殺 し 夜 は 盜賊 のごとくす
15 姦淫 する 者 は 我 を 見 る 目 はなからんと 言 てその 目 に 昏暮 をうかがひ 待 ち 而 してその 面 に 覆 ふ 物 を 當 つ
16 また 夜分 家 を 穿 つ 者 あり 彼等 は 晝 は 閉 こもり 居 て 光明 を 知 らず
17 彼 らには 晨 は 死 の 蔭 のごとし 是 死 の 蔭 の 怖 ろしきを 知 ばなり
18 彼 は 水 の 面 に 疾 ながるる 物 の 如 し その 產業 は 世 の 中 に 詛 はる その 身 重 ねて 葡萄圃 の 路 に 向 はず
19 亢旱 および 炎熱 は 雪 水 を 直 に 乾涸 す 陰府 が 罪 を 犯 せし 者 におけるも 亦 かくのごとし
20 これを 宿 せし 腹 これを 忘 れ 蛆 これを 好 みて 食 ふ 彼 は 最早 世 におぼえらるること 無 く その 惡 は 樹 を 折 るが 如 くに 折 る
21 是 すなはち 孕 まず 產 ざりし 婦人 をなやまし 寡婦 を 憐 れまざる 者 なり
22 神 はその 權能 をもて 強 き 人々 を 保存 へさせたまふ 彼 らは 生命 あらじと 思 ふ 時 にも 復 興 る
23 神 かれらに 安泰 を 賜 へば 彼 らは 安 らかなり 而 してその 目 をもて 彼 らの 道 を 見 そなはしたまふ
24 かれらは 旺盛 になり 暫時 が 間 に 無 なり 卑 くなりて 一切 の 人 のごとくに 沒 し 麥 の 穗 のごとくに 斷 る
25 すでに 是 のごとくなれば 誰 か 我 の 謬 まれるを 示 してわが 言語 を 空 しくすることを 得 ん
Chapter 25
1 時 にシユヒ 人 ビルダデこたへて 曰 く
2 神 は 大權 を 握 りたまふ 者 畏 るべき 者 にましまし 高 き 處 に 平和 を 施 したまふ
3 その 軍旅 數 ふることを 得 んや 其 光明 なに 物 をか 照 さざらん
4 然 ば 誰 か 神 の 前 に 正義 かるべき 婦人 の 產 し 者 いかでか 清 かるべき
5 視 よ 月 も 輝 かず 星 も 其 目 には 清明 ならず
6 いはんや 蛆 のごとき 人 蟲 のごとき 人 の 子 をや
Chapter 26
1 ヨブこたへて 曰 く
2 なんぢ 能力 なき 者 を 如何 に 助 けしや 氣力 なきものを 如何 に 救 ひしや
3 智慧 なき 者 を 如何 に 誨 へしや 穎悟 の 道 を 如何 に 多 く 示 ししや
4 なんぢ 誰 にむかひて 言語 を 出 ししや なんぢより 出 しは 誰 が 靈 なるや
5 陰靈 水 またその 中 に 居 る 者 の 下 に 慄 ふ
6 かれの 御前 には 陰府 も 顯露 なり 滅亡 の 坑 も 蔽 ひ 匿 す 所 なし
7 彼 は 北 の 天 を 虚空 に 張 り 地 を 物 なき 所 に 懸 けたまふ
8 水 を 濃雲 の 中 に 包 みたまふてその 下 の 雲 裂 ず
9 御寳座 の 面 を 隱 して 雲 をその 上 に 展 べ
10 水 の 面 に 界 を 設 けて 光 と 暗 とに 限 を 立 たまふ
11 かれ 叱咤 たまへば 天 の 柱 震 ひかつ 怖 る
12 その 權能 をもて 海 を 靜 め その 智慧 をもてラハブを 撃碎 き
13 その 氣嘘 をもて 天 を 輝 かせ 其 手 をもて 逃 る 蛇 を 衝 とほしたまふ
14 視 よ 是等 はただその 御工作 の 端 なるのみ 我 らが 聞 ところの 者 は 如何 にも 微細 なる 耳語 ならずや 然 どその 權能 の 雷轟 に 至 りては 誰 かこれを 曉 らんや
Chapter 27
1 ヨブまた 語 を 繼 ぎていはく
2 われに 義 しき 審判 を 施 したまはざる 神 わが 心魂 をなやまし 給 ふ 全能者 此 神 は 活 く
3 (わが 生命 なほ 全 くわれの 衷 にあり 神 の 氣息 なほわが 鼻 にあり)
4 わが 口 は 惡 を 言 ず わが 舌 は 謊言 を 語 らじ
5 我 決 めて 汝等 を 是 とせじ 我 に 死 るまで 我 が 罪 なきを 言 ことを 息 じ
6 われ 堅 くわが 正義 を 持 ちて 之 を 棄 じ 我 は 今 まで一 日 も 心 に 責 られし 事 なし
7 我 に 敵 する 者 は 惡 き 者 と 成 り 我 を 攻 る 者 は 義 からざる 者 と 成 るべし
8 邪曲 なる 者 もし 神 に 絶 れその 魂神 を 脱 とらるるに 於 ては 何 の 望 かあらん
9 かれ 艱難 に 罹 る 時 に 神 その 呼號 を 聽 いれたまはんや
10 かれ 全能者 を 喜 こばんや 常 に 神 を 龥 んや
11 われ 神 の 御手 を 汝等 に 敎 へん 全能者 の 道 を 汝等 に 隱 さじ
12 視 よ 汝等 もみな 自 らこれを 觀 たり 然 るに 何 ぞ 斯 愚蒙 をきはむるや
13 惡 き 人 の 神 に 得 る 分 強暴 の 人 の 全能者 より 受 る 業 は 是 なり
14 その 子等 蕃 れば 劍 に 殺 さる その 子孫 は 食物 に 飽 ず
15 その 遺 れる 者 は 疫病 に 斃 れて 埋 められ その 妻 等 は 哀哭 をなさず
16 かれ 銀 を 積 こと 塵 のごとく 衣服 を 備 ふること 土 のごとくなるとも
17 その 備 ふる 者 は 義 き 人 これを 着 ん またその 銀 は 無辜者 これを 分 ち 取 ん
18 その 建 る 家 は 蟲 の 巣 のごとく また 番人 の 造 る 茅家 のごとし
19 彼 は 富 る 身 にて 寢臥 し 重 ねて 興 ること 無 し また 目 を 開 けば 即 ちその 身 きえ 亡 す
20 懼 ろしき 事 大水 のごとく 彼 に 追及 き 夜 の 暴風 かれを 奪 ひ 去 る
21 東風 かれを 颺 げて 去 り 彼 をその 處 より 吹 はらふ
22 神 かれを 射 て 恤 まず 彼 その 手 より 逃 れんともがく
23 人 かれに 對 ひて 手 を 鳴 し 嘲 りわらひてその 處 をいでゆかしむ
Chapter 28
1 白銀 掘 いだす 坑 あり 煉 るところの 黄金 は 出處 あり
2 鐡 は 土 より 取 り 銅 は 石 より 鎔 して 獲 るなり
3 人 すなはち 黑暗 を 破 り 極 より 極 まで 尋 ね 窮 めて 黑暗 および 死蔭 の 石 を 求 む
4 その 穴 を 穿 つこと 深 くして 上 に 住 む 人 と 遠 く 相 離 れ その 上 を 歩 む 者 まつたく 之 を 覺 えず 是 のごとく 身 を 縋下 げ 遙 に 人 と 隔 りて 空 に 懸 る
5 地 その 上 は 食物 を 出 し 其 下 は 火 に 覆 へさるるがごとく 覆 へる
6 その 石 の 中 には 碧 の 玉 のある 處 あり 黄金 の 沙 またその 内 にあり
7 その 逕 は 鷙鳥 もこれを 知 ず 鷹 の 目 もこれを 看 ず
8 鷙 き 獸 も 未 だこれを 踐 ず 猛 き 獅子 も 未 だこれを 通 らず
9 人 堅 き 磐 に 手 を 加 へまた 山 を 根 より 倒 し
10 岩 に 河 を 掘 り 各種 の 貴 き 物 を 目 に 見 とめ
11 水路 を 塞 ぎて 漏 ざらしめ 隱 れたる 寳物 を 光明 に 取 いだすなり
12 然 ながら 智慧 は 何處 よりか 覓 め 得 ん 明哲 の 在 る 所 は 何處 ぞや
13 人 その 價 を 知 ず 人 のすめる 地 に 獲 べからず
14 淵 は 言 ふ 我 の 内 に 在 ずと 海 は 言 ふ 我 と 偕 ならずと
15 精金 も 之 に 換 るに 足 ず 銀 も 秤 りてその 價 となすを 得 ず
16 オフルの 金 にてもその 價 を 量 るべからず 貴 き 靑玉 も 碧玉 もまた 然 り
17 黄金 も 玻璃 もこれに 並 ぶ 能 はず 精金 の 器皿 も 之 に 換 るに 足 ず
18 珊瑚 も 水晶 も 論 にたらず 智慧 を 得 るは 眞珠 を 得 るに 勝 る
19 エテオビアより 出 る 黄玉 もこれに 並 ぶあたはず 純金 をもてするともその 價 を 量 るべからず
20 然 ば 智慧 は 何處 より 來 るや 明哲 の 在 る 所 は 何處 ぞや
21 是 は 一切 の 生物 の 目 に 隱 れ 天空 の 鳥 にも 見 えず
22 滅亡 も 死 も 言 ふ 我等 はその 風聲 を 耳 に 聞 し 而已
23 神 その 道 を 曉 り 給 ふ 彼 その 所 を 知 りたまふ
24 そは 彼 は 地 の 極 までも 觀 そなはし 天 が 下 を 看 きはめたまへばなり
25 風 にその 重量 を 與 へ 水 を 度 りてその 量 を 定 めたまひし 時
26 雨 のために 法 を 立 て 雷霆 の 光 のために 途 を 設 けたまひし 時
27 智慧 を 見 て 之 を 顯 はし 之 を 立 て 試 みたまへり
28 また 人 に 言 たまはく 視 よ 主 を 畏 るるは 是 智慧 なり 惡 を 離 るるは 明哲 なり
Chapter 29
1 ヨブまた 語 をつぎて 曰 く
2 嗚呼 過 にし 年 月 のごとくならまほし 神 の 我 を 護 りたまへる 日 のごとくならまほし
3 かの 時 には 彼 の 燈火 わが 首 の 上 に 輝 やき 彼 の 光明 によりて 我 黑暗 を 歩 めり
4 わが 壯 なりし 日 のごとくならまほし 彼時 には 神 の 恩惠 わが 幕屋 の 上 にありき
5 かの 時 には 全能者 なほ 我 とともに 在 し わが 子女 われの 周圍 にありき
6 乳 ながれてわが 足 跡 を 洗 ひ 我 が 傍 なる 磐 油 を 灌 ぎいだせり
7 かの 時 には 我 いでて 邑 の 門 に 上 りゆき わが 座 を 街衢 に 設 けたり
8 少 き 者 は 我 を 見 て 隱 れ 老 たる 者 は 起 あがりて 立 ち
9 牧伯 たる 者 も 言談 ずしてその 口 に 手 を 當 て
10 貴 き 者 も 聲 ををさめてその 舌 を 上顎 に 貼 たりき
11 我 事 を 耳 に 聞 る 者 は 我 を 幸福 なりと 呼 び 我 を 目 に 見 たる 者 はわがために 證據 をなしぬ
12 是 は 我 助力 を 求 むる 貧 しき 者 を 拯 ひ 孤子 および 助 くる 人 なき 者 を 拯 ひたればなり
13 亡 びんとせし 者 われを 祝 せり 我 また 寡婦 の 心 をして 喜 び 歌 はしめたり
14 われ 正義 を 衣 また 正義 の 衣 る 所 となれり 我 が 公義 は 袍 のごとく 冠冕 のごとし
15 われは 盲目 の 目 となり 跛者 の 足 となり
16 貧 き 者 の 父 となり 知 ざる 者 の 訴訟 の 由 を 究 め
17 惡 き 者 の 牙 を 折 り その 齒 の 間 より 獲 物 を 取 いだせり
18 我 すなはち 言 けらく 我 はわが 巣 に 死 ん 我 が 日 は 砂 の 如 く 多 からん
19 わが 根 は 水 の 邊 に 蔓 り 露 わが 枝 に 終夜 おかん
20 わが 榮光 はわが 身 に 新 なるべくわが 弓 はわが 手 に 何時 も 強 からんと
21 人々 われに 聽 き 默 して 我 が 敎 を 俟 ち
22 わが 言 し 後 は 彼等 言 を 出 さず 我 説 ところは 彼等 に 甘露 のごとく
23 かれらは 我 を 望 み 待 つこと 雨 のごとく 口 を 開 きて 仰 ぐこと 春 の 雨 のごとくなりき
24 われ 彼等 にむかひて 笑 ふとも 彼等 は 敢 て 眞實 とおもはず 我 面 の 光 を 彼等 は 除 くことをせざりき
25 われは 彼等 のために 道 を 擇 び その 首 として 座 を 占 め 軍 中 の 王 のごとくして 居 り また 哀哭者 を 慰 さむる 人 のごとくなりき
Chapter 30
1 然 るに 今 は 我 よりも 年少 き 者等 われを 笑 ふ 彼等 の 父 は 我 が 賤 しめて 群 の 犬 と 並 べ 置 くことをもせざりし 者 なり
2 またかれらの 手 の 力 もわれに 何 の 用 をかなさん 彼 らは 其 氣力 すでに 衰 へたる 者 なり
3 かれらは 缺乏 と 饑 とによりて 痩 おとろへ 荒 かつ 廢 れたる 暗 き 野 にて 乾 ける 地 を 咬 む
4 すなはち 灌木 の 中 にて 藜 を 摘 み 苕 の 根 を 食物 となす
5 彼 らは 人 の 中 より 逐 いださる 盜賊 を 追 ふがごとくに 人 かれらを 追 て 呼 はる
6 彼等 は 懼 ろしき 谷 に 住 み 土坑 および 磐穴 に 居 り
7 灌木 の 中 に 嘶 なき 荊棘 の 下 に 偃 す
8 彼 らは 愚蠢 なる 者 の 子 卑 むべき 者 の 子 にして 國 より 撃 いださる
9 しかるに 今 は 我 かれらの 歌謠 に 成 り 彼 らの 嘲哢 となれり
10 かれら 我 を 厭 ふて 遠 く 我 を 離 れ またわが 面 に 唾 することを 辭 まず
11 神 わが 綱 を 解 て 我 をなやましたまへば 彼等 もわが 前 にその 韁 を 縱 せり
12 この 輩 わが 右 に 起 あがり わが 足 を 推 のけ 我 にむかひて 滅亡 の 路 を 築 く
13 彼 らは 自 ら 便 なき 者 なれども 尚 わが 逕 を 毀 ち わが 滅亡 を 促 す
14 かれらは 石垣 の 大 なる 崩口 より 入 がごとくに 進 み 來 り 破壞 の 中 にてわが 上 に 乗 かかり
15 懼 ろしき 事 わが 身 に 臨 み 風 のごとくに 我 が 尊榮 を 吹 はらふ わが 福祿 は 雲 のごとくに 消失 す
16 今 はわが 心 われの 衷 に 鎔 て 流 れ 患難 の 日 かたく 我 を 執 ふ
17 夜 にいれば 我 骨 刺 れて 身 を 離 る わが 身 を 噬 む 者 つひに 休 むこと 無 し
18 わが 疾病 の 大 なる 能 によりてわが 衣服 は 醜 き 樣 に 變 り 裏衣 の 襟 の 如 くに 我 身 に 固 く 附 く
19 神 われを 泥 の 中 に 投 こみたまひて 我 は 塵灰 に 等 しくなれり
20 われ 汝 にむかひて 呼 はるに 汝 答 へたまはず 我 立 をるに 汝 只 われをながめ 居 たまふ
21 なんぢは 我 にむかひて 無情 なりたまひ 御手 の 能力 をもて 我 を 攻撃 たまふ
22 なんぢ 我 を 擧 げ 風 の 上 に 乗 て 負去 しめ 大風 の 音 とともに 消亡 しめたまふ
23 われ 知 る 汝 はわれを 死 に 歸 らしめ 一切 の 生物 の 終 に 集 る 家 に 歸 らしめたまはん
24 かれは 必 ず 荒垤 にむかひて 手 を 舒 たまふこと 有 じ 假令 人 滅亡 に 陷 るとも 是等 の 事 のために 號呼 ぶことをせん
25 苦 みて 日 を 送 る 者 のために 我 哭 ざりしや 貧 しき 者 のために 我 心 うれへざりしや
26 われ 吉事 を 望 みしに 凶事 きたり 光明 を 待 しに 黑暗 きたれり
27 わが 膓 沸 かへりて 安 からず 患難 の 日 我 に 追及 ぬ
28 われは 日 の 光 を 蒙 らずして 哀 しみつつ 歩 き 公會 の 中 に 立 て 助 を 呼 もとむ
29 われは 山 犬 の 兄弟 となり 駝鳥 の 友 となれり
30 わが 皮 は 黑 くなりて 剥 落 ち わが 骨 は 熱 によりて 焚 け
31 わが 琴 は 哀 の 音 となり わが 笛 は 哭 の 聲 となれり
Chapter 31
1 我 わが 目 と 約 を 立 たり 何 ぞ 小艾 を 慕 はんや
2 然 せば 上 より 神 の 降 し 給 ふ 分 は 如何 なるべきぞ 高 處 より 全能者 の 與 へ 給 ふ 業 は 如何 なるべきぞ
3 惡 き 人 には 滅亡 きたらざらんや 善 らぬ 事 を 爲 す 者 には 常 ならぬ 災禍 あらざらんや
4 彼 わが 道 を 見 そなはし わが 歩履 をことごとく 數 へたまはざらんや
5 我 虚誕 とつれだちて 歩 みし 事 ありや わが 足 虚僞 に 奔從 がひし 事 ありや
6 請 ふ 公平 き 權衡 をもて 我 を 稱 れ 然 ば 神 われの 正 しきを 知 たまはん
7 わが 歩履 もし 道 を 離 れ わが 心 もしわが 目 に 隨 がひて 歩 み わが 手 にもし 汚 のつきてあらば
8 我 が 播 たるを 人 食 ふも 善 し わが 產物 を 根 より 拔 るるも 善 し
9 われもし 婦人 のために 心 まよへる 事 あるか 又 は 我 もしわが 隣 の 門 にありて 伺 ひし 事 あらば
10 わが 妻 ほかの 人 のために 臼 磨 き ほかの 人々 かれの 上 に 寢 るも 善 し
11 其 は 是 は 重 き 罪 にして 裁判人 に 罰 せらるべき 惡事 なればなり
12 是 はすなはち 滅亡 にまでも 燬 いたる 火 にしてわが 一切 の 產 をことごとく 絶 さん
13 わが 僕 あるひは 婢 の 我 と 辯爭 ひし 時 に 我 もし 之 が 權理 を 輕 んぜし 事 あらば
14 神 の 起 あがりたまふ 時 には 如何 せんや 神 の 臨 みたまふ 時 には 何 と 答 へまつらんや
15 われを 胎内 に 造 りし 者 また 彼 をも 造 りたまひしならずや われらを 腹 の 内 に 形 造 りたまひし 者 は 唯一 の 者 ならずや
16 我 もし 貧 き 者 にその 願 ふところを 獲 しめず 寡婦 をしてその 目 おとろへしめし 事 あるか
17 または 我 獨 みづから 食物 を 啖 ひて 孤子 にこれを 啖 はしめざりしこと 有 るか
18 (却 つて 彼 らは 我 が 若 き 時 より 我 に 育 てられしこと 父 におけるが 如 し 我 は 胎内 を 出 てより 以來 寡 を 導 びく 事 をせり)
19 われ 衣服 なくして 死 んとする 者 あるひは 身 を 覆 ふ 物 なくして 居 る 人 を 見 し 時 に
20 その 腰 もし 我 を 祝 せず また 彼 もしわが 羊 の 毛 にて 温 まらざりし 事 あるか
21 われを 助 くる 者 の 門 にをるを 見 て 我 みなしごに 向 ひて 手 を 上 し 事 あるか
22 然 ありしならば 肩骨 よりしてわが 肩 おち 骨 とはなれてわが 腕 折 よ
23 神 より 出 る 災禍 は 我 これを 懼 る その 威光 の 前 には 我 能力 なし
24 我 もし 金 をわが 望 となし 精金 にむかひて 汝 わが 所賴 なりと 言 しこと 有 か
25 我 もしわが 富 の 大 なるとわが 手 に 物 を 多 く 獲 たることを 喜 びしことあるか
26 われ 日 の 輝 くを 見 または 月 の 輝 わたりて 歩 むを 見 し 時
27 心 竊 にまよひて 手 を 口 に 接 しことあるか
28 是 もまた 裁判人 に 罪 せらるべき 惡事 なり 我 もし 斯 なせし 事 あらば 上 なる 神 に 背 しなり
29 我 もし 我 を 惡 む 者 の 滅亡 るを 喜 び 又 は 其 災禍 に 罹 るによりて 自 ら 誇 りし 事 あるか
30 (我 は 之 が 生命 を 呪 ひ 索 めて 我 口 に 罪 を 犯 さしめし 如 き 事 あらず)
31 わが 天 幕 の 人 は 言 ずや 彼 の 肉 に 飽 ざる 者 いづこにか 在 んと
32 旅人 は 外 に 宿 らず わが 門 を 我 は 街衢 にむけて 啓 けり
33 我 もしアダムのごとくわが 罪 を 蔽 ひ わが 惡事 を 胸 に 隱 せしことあるか
34 すなはち 大衆 を 懼 れ 宗族 の 輕蔑 に 怖 ぢて 口 を 閉 ぢ 門 を 出 ざりしごとき 事 あるか
35 嗚呼 われの 言 ところを 聽 わくる 者 あらまほし(我 が 花押 ここに 在 り 願 くは 全能者 われに 答 へたまへ)我 を 訴 ふる 者 みづから 訴訟状 を 書 け
36 われ 必 らず 之 を 肩 に 負 ひ 冠冕 のごとくこれを 首 に 結 ばん
37 我 わが 歩履 の 數 を 彼 に 述 ん 君王 たる 者 のごとくして 彼 に 近 づかん
38 わが 田圃 號呼 りて 我 を 攻 め その 阡陌 ことごとく 泣 さけぶあるか
39 若 われ 金 を 出 さずしてその 產物 を 食 ひ またはその 所有主 をして 生命 を 失 はしめし 事 あらば
40 小麥 の 代 に 蒺藜 生 いで 大 麥 のかはりに 雜草 おひ 出 るとも 善 し ヨブの 詞 をはりぬ
Chapter 32
1 ヨブみづから 見 て 己 の 正義 とするに 因 て 此 三 人 の 者 之 に 答 ふる 事 を 止 む
2 時 にラムの 族 ブジ 人 バラケルの 子 エリフ 怒 を 發 せり ヨブ 神 よりも 己 を 正 しとするに 因 て 彼 ヨブにむかひて 怒 を 發 せり
3 またヨブの三 人 の 友 答 ふるに 詞 なくして 猶 ヨブを 罪 ありとせしによりて 彼 らにむかひて 怒 を 發 せり
4 エリフはヨブに 言 ふことをひかへて 俟 をりぬ 是 は 自己 よりも 彼等 年 老 たればなり
5 茲 にエリフこの三 人 の 口 に 答 ふる 詞 の 有 ざるを 見 て 怒 を 發 せり
6 ブジ 人 バラケルの 子 エリフすなはち 答 へて 曰 く 我 は 年少 く 汝等 は 年 老 たり 是 をもて 我 はばかりて 我 意見 をなんぢらに 陳 ることを 敢 てせざりき
7 我 意 へらく 日 を 重 ねたる 者 宜 しく 言 を 出 すべし 年 を 積 たる 者 宜 しく 智慧 を 敎 ふべしと
8 但 し 人 の 衷 には 靈 あり 全能者 の 氣息 人 に 聰明 を 與 ふ
9 大 なる 人 すべて 智慧 あるに 非 ず 老 たる 者 すべて 道理 に 明白 なるに 非 ず
10 然 ば 我 言 ふ 我 に 聽 け 我 もわが 意見 を 陳 ん
11 視 よ 我 は 汝 らの 言語 を 俟 ち なんぢらの 辯論 を 聽 き なんぢらが 言 ふべき 言語 を 尋 ね 盡 すを 待 り
12 われ 細 に 汝 らに 聽 しが 汝 らの 中 にヨブを 駁折 る 者 一人 も 無 く また 彼 の 言詞 に 答 ふる 者 も 無 し
13 おそらくは 汝等 いはん 我 ら 智慧 を 見 得 たり 彼 に 勝 つ 者 は 唯 神 のみ 人 は 能 はずと
14 彼 はその 言語 を 我 に 向 て 發 さざりき 我 はまた 汝 らの 言 ふ 所 をもて 彼 に 答 へじ
15 彼 らは 愕 ろきて 復 答 ふる 所 なく 言語 かれらの 衷 に 浮 ばず
16 彼等 ものいはず 立 とどまりて 重 ねて 答 へざればとて 我 あに 俟 をるべけんや
17 我 も 自 らわが 分 を 答 へわが 意見 を 吐露 さん
18 われには 言 滿 ち わが 衷 の 心 しきりに 迫 る
19 わが 腹 は 口 を 啓 かざる 酒 のごとし 新 しき 皮嚢 のごとく 今 にも 裂 んとす
20 われ 説 いだして 胸 を 安 んぜんとす われ 口 を 啓 きて 答 へん
21 かならず 我 は 人 に 偏 らず 人 に 諂 はじ
22 我 は 諂 らふことを 知 ず もし 諂 らはば 我 の 造化主 ただちに 我 を 絶 たまふべし
Chapter 33
1 然 ばヨブよ 請 ふ 我 が 言 ふ 事 を 聽 け わが 一切 の 言語 に 耳 を 傾 むけよ
2 視 よ 我 口 を 啓 き 舌 を 口 の 中 に 動 かす
3 わが 言 ふ 所 は 正義 き 心 より 出 づ わが 唇 あきらかにその 知識 を 陳 ん
4 神 の 靈 われを 造 り 全能者 の 氣息 われを 活 しむ
5 汝 もし 能 せば 我 に 答 へよ わが 前 に 言 をいひつらねて 立 て
6 我 も 汝 とおなじく 神 の 者 なり 我 もまた 土 より 取 てつくられしなり
7 わが 威嚴 はなんぢを 懼 れしめず わが 勢 はなんぢを 壓 せず
8 汝 わが 聽 くところにて 言談 り 我 なんぢの 言語 の 聲 を 聞 けり 云 く
9 われは 潔淨 くして 愆 なし 我 は 辜 なく 惡 き 事 わが 身 にあらず
10 視 よ 彼 われを 攻 る 釁隙 を 尋 ね われを 己 の 敵 と 算 へ
11 わが 脚 を 桎 に 夾 めわが 一切 の 擧動 に 目 を 着 たまふと
12 視 よ 我 なんぢに 答 へん なんぢ 此事 において 正義 からず 神 は 人 よりも 大 なる 者 にいませり
13 彼 その 凡 て 行 なふところの 理由 を 示 したまはずとて 汝 かれにむかひて 辯爭 そふは 何 ぞや
14 まことに 神 は 一度 二度 と 告示 したまふなれど 人 これを 曉 らざるなり
15 人 熟睡 する 時 または 床 に 睡 る 時 に 夢 あるひは 夜 の 間 の 異象 の 中 にて
16 かれ 人 の 耳 をひらき その 敎 ふるところを 印 して 堅 うし
17 斯 して 人 にその 惡 き 業 を 離 れしめ 傲慢 を 人 の 中 より 除 き
18 人 の 魂靈 を 護 りて 墓 に 至 らしめず 人 の 生命 を 護 りて 劍 にほろびざらしめたまふ
19 人 床 にありて 疼痛 に 攻 られ その 骨 の 中 に 絶 ず 戰鬪 のあるあり
20 その 氣 食物 を 厭 ひ その 魂靈 うまき 物 をも 嫌 ふ
21 その 肉 は 痩 おちて 見 えず その 骨 は 見 えざりし 者 までも 顯露 になり
22 その 魂靈 は 墓 に 近 より その 生命 は 滅 ぼす 者 に 近 づく
23 しかる 時 にもし 彼 とともに 一箇 の 使者 あり 千 の 中 の 一箇 にして 中保 となり 正 しき 道 を 人 に 示 さば
24 神 かれを 憫 れみて 言 給 はん 彼 を 救 ひて 墓 にくだること 無 らしめよ 我 すでに 收贖 の 物 を 得 たりと
25 その 肉 は 小兒 の 肉 よりも 瑞々 しくなり その 若 き 時 の 形状 に 歸 らん
26 かれ 若 し 神 に 祷 らば 神 かれを 顧 りみ 彼 をしてその 御面 を 喜 こび 見 ることを 得 せしめたまはん 神 は 人 の 正義 に 報 をなしたまふべし
27 かれ 人 の 前 に 歌 ひて 言 ふ 我 は 罪 を 犯 し 正 しきを 抂 たり 然 ど 報 を 蒙 らず
28 神 わが 魂靈 を 贖 ひて 墓 に 下 らしめず わが 生命 光明 を 見 ん
29 そもそも 神 は 是等 のもろもろの 事 をしばしば 人 におこなひ
30 その 魂靈 を 墓 より 牽 かへし 生命 の 光明 をもて 彼 を 照 したまふ
31 ヨブよ 耳 を 傾 むけて 我 に 聽 け 請 ふ 默 せよ 我 かたらん
32 なんぢもし 言 ふべきことあらば 我 にこたへよ 請 ふ 語 れ 我 なんぢを 義 とせんと 慾 すればなり
33 もし 無 ば 我 に 聽 け 請 ふ 默 せよ 我 なんぢに 智慧 を 敎 へん
Chapter 34
1 エリフまた 答 へて 曰 く
2 なんぢら 智慧 ある 者 よ 我 言 を 聽 け 知識 ある 者 よ 我 に 耳 を 傾 むけよ
3 口 の 食物 を 味 はふごとく 耳 は 言詞 を 辨 まふ
4 われら 自 ら 是非 を 究 め われらもろともに 善惡 を 明 らかにせん
5 それヨブは 言 ふ 我 は 義 し 神 われに 正 しき 審判 を 施 こしたまはず
6 われは 義 しかれども 僞 る 者 とせらる 我 は 愆 なけれどもわが 身 の 矢創 愈 がたしと
7 何人 かヨブのごとくならん 彼 は 罵言 を 水 のごとくに 飮 み
8 惡 き 事 を 爲 す 者等 と 交 はり 惡人 とともに 歩 むなり
9 すなはち 彼 いへらく 人 は 神 と 親 しむとも 身 に 益 なしと
10 然 ばなんぢら 心 ある 人々 よ 我 に 聽 け 神 は 惡 を 爲 すことを 決 めて 無 く 全能者 は 不義 を 行 ふこと 決 めて 無 し
11 却 つて 人 の 所爲 をその 身 に 報 い 人 をしてその 行爲 にしたがひて 獲 るところあらしめたまふ
12 かならず 神 は 惡 き 事 をなしたまはず 全能者 は 審判 を 抂 たまはざるなり
13 たれかこの 地 を 彼 に 委 ねし 者 あらん 誰 か 全 世界 を 定 めし 者 あらん
14 神 もしその 心 を 己 にのみ 用 ひ その 靈 と 氣息 とを 己 に 收回 したまはば
15 もろもろの 血肉 ことごとく 亡 び 人 も 亦 塵 にかへるべし
16 なんぢもし 曉 ることを 得 ば 請 ふ 我 に 聽 けわが 言詞 の 聲 に 耳 を 側 だてよ
17 公義 を 惡 む 者 あに 世 ををさむるを 得 んや なんぢあに 至義 き 者 を 惡 しとすべけんや
18 王 たる 者 にむかひて 汝 は 邪曲 なりと 言 ひ 牧伯 たる 者 にむかひて 汝 らは 惡 しといふべけんや
19 まして 君王 たる 者 をも 偏視 ず 貧 しき 者 に 超 て 富 る 者 をかへりみるごとき 事 をせざる 者 にむかひてをや 斯 爲 たまふは 彼等 みな 同 じくその 御手 の 作 るところなればなり
20 彼 らは 瞬 く 時間 に 死 に 民 は 夜 の 間 に 滅 びて 消失 せ 力 ある 者 も 人 手 によらずして 除 かる
21 それ 神 の 目 は 人 の 道 の 上 にあり 神 は 人 の 一切 の 歩履 を 見 そなはす
22 惡 を 行 なふ 者 の 身 を 匿 すべき 黑暗 も 無 く 死蔭 も 无 し
23 神 は 人 をして 審判 を 受 しむるまでに 長 くその 人 を 窺 がふに 及 ばず
24 權勢 ある 者 をも 査 ぶることを 須 ひずして 打 ほろぼし 他 の 人々 を 立 て 之 に 替 たまふ
25 かくの 如 く 彼 らの 所爲 を 知 り 夜 の 間 に 彼 らを 覆 がへしたまへば 彼 らは 乃 て 滅 ぶ
26 人 の 觀 るところにて 彼等 を 惡人 のごとく 撃 たまふ
27 是 は 彼 ら 背 きて 之 に 從 はずその 道 を 全 たく 顧 みざるに 因 る
28 かれら 是 のごとくして 遂 に 貧 しき 者 の 號呼 を 彼 の 許 に 逹 らしめ 患難者 の 號呼 を 彼 に 聽 しむ
29 かれ 平安 を 賜 ふ 時 には 誰 か 惡 しと 言 ふことをえんや 彼 面 をかくしたまふ 時 には 誰 かこれを 見 るを 得 んや 一國 におけるも 一人 におけるも 凡 て 同 じ
30 かくのごとく 邪曲 なる 者 をして 世 を 治 むること 無 らしめ 民 の 機檻 となることなからしむ
31 人 は 宜 しく 神 に 申 すべし 我 は 已 に 懲 しめられたり 再度 惡 き 事 を 爲 じ
32 わが 見 ざる 所 は 請 ふ 我 にをしへたまへ 我 もし 惡 き 事 を 爲 たるならば 重 ねて 之 をなさじと
33 かれ 豈 なんぢの 好 むごとくに 應報 をなしたまはんや 然 るに 汝 はこれを 咎 む 然 ばなんぢ 自 ら 之 を 選 ぶべし 我 は 爲 じ 汝 の 知 るところを 言 へ
34 心 ある 人々 は 我 に 言 ん 我 に 聽 ところの 智慧 ある 人々 は 言 ん
35 ヨブの 言 ふ 所 は 辨知 なし その 言詞 は 明哲 からずと
36 ねがはくはヨブ 終 まで 試 みられんことを 其 は 惡 き 人 のごとくに 應答 をなせばなり
37 まことに 彼 は 自己 の 罪 に 愆 を 加 へわれらの 中間 にありて 手 を 拍 ちかつ 言詞 を 繁 くして 神 に 逆 らふ
Chapter 35
1 エリフまた 答 へて 曰 く
2 なんぢは 言 ふ 我 が 義 しきは 神 に 愈 れりと なんぢ 之 を 正 しとおもふや
3 すなはち 汝 いへらく 是 は 我 に 何 の 益 あらんや 罪 を 犯 すに 較 ぶれば 何 の 愈 るところか 有 んと
4 われ 言詞 をもて 汝 およびなんぢにそへる 汝 の 友等 に 答 へん
5 天 を 仰 ぎて 見 よ 汝 の 上 なる 高 き 空 を 望 め
6 なんぢ 罪 を 犯 すとも 神 に 何 の 害 か 有 ん 愆 を 熾 んにするとも 神 に 何 を 爲 えんや
7 汝 正義 かるとも 神 に 何 を 與 るを 得 んや 神 なんぢの 手 より 何 をか 受 たまはん
8 なんぢの 惡 は 只 なんぢに 同 じき 人 を 損 ぜん 而已 なんぢの 善 は 只 人 の 子 を 益 せんのみ
9 暴虐 の 甚 だしきに 因 て 叫 び 權勢 ある 者 の 腕 に 壓 れて 呼 はる 人々 あり
10 然 れども 一人 として 我 を 造 れる 神 は 何處 にいますやといふ 者 なし 彼 は 人 をして 夜 の 中 に 歌 を 歌 ふに 至 らしめ
11 地 の 獸畜 よりも 善 くわれらを 敎 へ 空 の 鳥 よりも 我 らを 智 からしめたまふ 者 なり
12 惡 き 者等 の 驕傲 ぶるに 因 て 斯 のごとく 人々 叫 べども 應 ふる 者 あらず
13 虚 しき 語 は 神 かならず 之 を 聽 たまはず 全能者 これを 顧 みたまはじ
14 汝 は 我 かれを 見 たてまつらずと 言 といへども 審判 は 神 の 前 にあり この 故 に 汝 彼 を 待 べきなり
15 今 かれ 震怒 をもて 罰 することを 爲 ず 罪愆 を 深 く 心 に 留 たまはざる(が 如 くなる)に 因 て
16 ヨブ 口 を 啓 きて 虚 しき 事 を 述 べ 無知 の 言語 を 繁 くす
Chapter 36
1 エリフまた 言詞 を 繼 て 曰 く
2 暫 らく 我 に 容 せ 我 なんぢに 示 すこと 有 ん 尚 神 のために 言 ふべき 事 あればなり
3 われ 廣 くわが 知識 を 取 り 我 の 造化主 に 正義 を 歸 せんとす
4 わが 言語 は 眞實 に 虚僞 ならず 知識 の 完全 き 者 なんぢの 前 にあり
5 視 よ 神 は 權能 ある 者 にましませども 何 をも 藐視 めたまはず その 了知 の 能力 は 大 なり
6 惡 しき 者 を 生 し 存 ず 艱難者 のために 審判 を 行 ひたまふ
7 義 しき 者 に 目 を 離 さず 位 にある 王 等 とともに 永遠 に 坐 せしめて 之 を 貴 くしたまふ
8 もし 彼 ら 鏈索 に 繋 がれ 艱難 の 繩 にかかる 時 は
9 彼 らの 所行 と 愆尤 とを 示 してその 驕 れるを 知 せ
10 彼 らの 耳 を 開 きて 敎 を 容 れしめ かつ 惡 を 離 れて 歸 れよと 彼 らに 命 じたまふ
11 もし 彼 ら 聽 したがひて 之 に 事 へなば 繁昌 てその 日 を 送 り 樂 しくその 年 を 渉 らん
12 若 かれら 聽 したがはずば 刀劍 にて 亡 び 知識 を 得 ずして 死 なん
13 しかれども 心 の 邪曲 なる 者等 は 忿怒 を 蓄 はへ 神 に 縛 しめらるるとも 祈 ることを 爲 ず
14 かれらは 年 わかくして 死亡 せ 男娼 とその 生命 をひとしうせん
15 神 は 艱難者 を 艱難 によりて 救 ひ 之 が 耳 を 虐遇 によりて 開 きたまふ
16 然 ば 神 また 汝 を 狹 きところより 出 して 狹 からぬ 廣 き 所 に 移 したまふあらん 而 して 汝 の 席 に 陳 ぬる 物 は 凡 て 肥 たる 物 ならん
17 今 は 惡人 の 鞫罰 なんぢの 身 に 充 り 審判 と 公義 となんぢを 執 ふ
18 なんぢ 忿怒 に 誘 はれて 嘲笑 に 陷 いらざるやう 愼 しめよ 收贖 の 大 なるが 爲 に 自 ら 誤 るなかれ
19 なんぢの 號叫 なんぢを 艱難 の 中 より 出 さんや 如何 に 力 を 盡 すとも 所益 あらじ
20 世 の 人 のその 處 より 絶 る 其 夜 を 慕 ふなかれ
21 愼 しみて 惡 に 傾 むくなかれ 汝 は 艱難 よりも 寧 ろ 之 を 取 んとせり
22 それ 神 はその 權能 をもて 大 なる 事 を 爲 したまふ 誰 か 能 く 彼 のごとくに 敎晦 を 埀 んや
23 たれか 彼 のためにその 道 を 定 めし 者 あらんや 誰 かなんぢは 惡 き 事 をなせりと 言 ふことを 得 ん
24 なんぢ 神 の 御所爲 を 讚歎 ふることを 忘 れざれ これ 世 の 人 の 歌 ひ 崇 むる 所 なり
25 人 みな 之 を 仰 ぎ 觀 る 遠 き 方 より 人 これを 視 たてまつるなり
26 神 は 大 なる 者 にいまして 我儕 かれを 知 たてまつらず その 御年 の 數 は 計 り 知 るべからず
27 かれ 水 を 細 にして 引 あげたまへば 霧 の 中 に 滴 り 出 て 雨 となるに
28 雲 これを 降 せて 人々 の 上 に 沛然 に 灌 ぐなり
29 たれか 能 く 雲 の 舒展 る 所以 またその 幕屋 の 響 く 所以 を 了知 んや
30 視 よ 彼 その 光明 を 自己 の 周圍 に 繞 らし また 海 の 底 をも 蔽 ひたまひ
31 これらをもて 民 を 鞫 き また 是等 をもて 食物 を 豐饒 に 賜 ひ
32 電光 をもてその 兩手 を 包 み その 電光 に 命 じて 敵 を 撃 しめたまふ
33 その 鳴聲 かれを 顯 はし 家畜 すらも 彼 の 來 ますを 知 らすなり
Chapter 37
1 之 がためにわが 心 わななき その 處 を 動 き 離 る
2 神 の 聲 の 響 およびその 口 より 出 る 轟聲 を 善 く 聽 け
3 これを 天 が 下 に 放 ち またその 電光 を 地 の 極 にまで 至 らせたまふ
4 その 後 聲 ありて 打 響 き 彼 威光 の 聲 を 放 ちて 鳴 わたりたまふ その 御聲 聞 えしむるに 當 りては 電光 を 押 へおきたまはず
5 神 奇 しくも 御聲 を 放 ちて 鳴 わたり 我儕 の 知 ざる 大 なる 事 を 行 ひたまふ
6 かれ 雪 にむかひて 地 に 降 れと 命 じたまふ 雨 すなはちその 權能 の 大 雨 にも 亦 しかり
7 斯 かれ 一切 の 人 の 手 を 封 じたまふ 是 すべての 人 にその 御工作 を 知 しめんがためなり
8 また 獸 は 穴 にいりてその 洞 に 居 る
9 南方 の 密室 より 暴風 きたり 北 より 寒氣 きたる
10 神 の 氣吹 によりて 氷 いできたり 水 の 寛 狹 くせらる
11 かれ 水 をもて 雲 に 搭載 せまた 電光 の 雲 を 遠 く 散 したまふ
12 是 は 神 の 導引 によりて 週 る 是 は 彼 の 命 ずるところを 盡 く 世界 の 表面 に 爲 んがためなり
13 その 之 を 來 らせたまふは 或 は 懲罰 のため あるひはその 地 のため 或 は 恩惠 のためなり
14 ヨブよ 是 を 聽 け 立 ちて 神 の 奇妙 き 工作 を 考 がへよ
15 神 いかに 是等 に 命 を 傳 へその 雲 の 光明 をして 輝 やかせたまふか 汝 これを 知 るや
16 なんぢ 雲 の 平衡 知識 の 全 たき 者 の 奇妙 き 工作 を 知 るや
17 南 風 によりて 地 の 穩 かになる 時 なんぢの 衣服 は 熱 くなるなり
18 なんぢ 彼 とともに 彼 の 堅 くして 鑄 たる 鏡 のごとくなる 蒼穹 を 張 ることを 能 せんや
19 われらが 彼 に 言 ふべき 事 を 我 らに 敎 へよ 我 らは 暗昧 して 言詞 を 列 ぬること 能 はざるなり
20 われ 語 ることありと 彼 に 告 ぐべけんや 人 あに 滅 ぼさるることを 望 まんや
21 人 いまは 雲霄 に 輝 やく 光明 を 見 ること 能 はず 然 れど 風 きたりて 之 を 吹清 む
22 北 より 黄金 いできたる 神 には 畏 るべき 威光 あり
23 全能者 はわれら 測 りきはむることを 得 ず 彼 は 能 おほいなる 者 にいまし 審判 をも 公義 をも 抂 たまはざるなり
24 この 故 に 人々 かれを 畏 る 彼 はみづから 心 に 有智 とする 者 をかへりみたまはざるなり
Chapter 38
1 茲 にヱホバ 大風 の 中 よりヨブに 答 へて 宣 まはく
2 無智 の 言詞 をもて 道 を 暗 からしむる 此 者 は 誰 ぞや
3 なんぢ 腰 ひきからげて 丈夫 のごとくせよ 我 なんぢに 問 ん 汝 われに 答 へよ
4 地 の 基 を 我 が 置 たりし 時 なんぢは 何處 にありしや 汝 もし 穎悟 あらば 言 へ
5 なんぢ 若 知 んには 誰 が 度量 を 定 めたりしや 誰 が 準繩 を 地 の 上 に 張 りたりしや
6 その 基 は 何 の 上 に 奠 れたりしや その 隅石 は 誰 が 置 たりしや
7 かの 時 には 晨星 あひともに 歌 ひ 神 の 子 等 みな 歡 びて 呼 はりぬ
8 海 の 水 ながれ 出 で 胎内 より 涌 いでし 時 誰 が 戸 をもて 之 を 閉 こめたりしや
9 かの 時 我 雲 をもて 之 が 衣服 となし 黑暗 をもて 之 が 襁褓 となし
10 これに 我 法度 を 定 め 關 および 門 を 設 けて
11 曰 く 此 までは 來 るべし 此 を 越 べからず 汝 の 高 浪 ここに 止 まるべしと
12 なんぢ 生 れし 日 より 以來 朝 にむかひて 命 を 下 せし 事 ありや また 黎明 にその 所 を 知 しめ
13 これをして 地 の 縁 を 取 へて 惡 き 者 をその 上 より 振 落 さしめたりしや
14 地 は 變 りて 土 に 印 したるごとくに 成 り 諸 の 物 は 美 はしき 衣服 のごとくに 顯 る
15 また 惡人 はその 光明 を 奪 はれ 高 く 擧 たる 手 は 折 らる
16 なんぢ 海 の 泉源 にいたりしことありや 淵 の 底 を 歩 みしことありや
17 死 の 門 なんぢのために 開 けたりしや 汝 死蔭 の 門 を 見 たりしや
18 なんぢ 地 の 廣 を 看 きはめしや 若 これを 盡 く 知 ば 言 へ
19 光明 の 在 る 所 に 往 く 路 は 孰 ぞや 黑暗 の 在 る 所 は 何處 ぞや
20 なんぢ 之 をその 境 に 導 びき 得 るや その 家 の 路 を 知 をるや
21 なんぢ 之 を 知 ならん 汝 はかの 時 すでに 生 れをり また 汝 の 經 たる 日 の 數 も 多 ければなり
22 なんぢ 雪 の 庫 にいりしや 雹 の 庫 を 見 しや
23 これ 我 が 艱難 の 時 にために 蓄 はへ 戰爭 および 戰鬪 の 日 のために 蓄 はへ 置 くものなり
24 光明 の 發散 る 道 東風 の 地 に 吹 わたる 所 の 路 は 何處 ぞや
25 誰 が 大 雨 を 灌 ぐ 水路 を 開 き 雷電 の 光 の 過 る 道 を 開 き
26 人 なき 地 にも 人 なき 荒野 にも 雨 を 降 し
27 荒 かつ 廢 れたる 處々 を 潤 ほし かつ 若菜蔬 を 生出 しむるや
28 雨 に 父 ありや 露 の 珠 は 誰 が 生 る 者 なるや
29 氷 は 誰 が 胎 より 出 るや 空 の 霜 は 誰 が 產 むところなるや
30 水 かたまりて 石 のごとくに 成 り 淵 の 面 こほる
31 なんぢ 昴宿 の 鏈索 を 結 びうるや 參宿 の 繋繩 を 解 うるや
32 なんぢ十二 宮 をその 時 にしたがひて 引 いだし 得 るや また 北斗 とその 子星 を 導 びき 得 るや
33 なんぢ 天 の 常經 を 知 るや 天 をして 其 權力 を 地 に 施 こさしむるや
34 なんぢ 聲 を 雲 に 擧 げ 滂沛 の 水 をして 汝 を 掩 はしむるを 得 るや
35 なんぢ 閃電 を 遣 はして 往 しめ なんぢに 答 へて 我儕 は 此 にありと 言 しめ 得 るや
36 胸 の 中 の 智慧 は 誰 が 與 へし 者 ぞ 心 の 内 の 聰明 は 誰 が 授 けし 者 ぞ
37 たれか 能 く 智慧 をもて 雲 を 數 へんや たれか 能 く 天 の 瓶 を 傾 むけ
38 塵 をして 一塊 に 流 れあはしめ 土塊 をしてあひかたまらしめんや
39 なんぢ 牝 獅子 のために 食物 を 獵 や また 小獅子 の 食氣 を 滿 すや
40 その 洞穴 に 伏 し 森の 中 に 隱 れ 伺 がふ 時 なんぢこの 事 を 爲 うるや
41 また 鴉 の 子 神 にむかひて 呼 はり 食物 なくして 徘徊 る 時 鴉 に 餌 を 與 ふる 者 は 誰 ぞや
Chapter 39
1 なんぢ 岩 間 の 山羊 が 子 を 產 む 時 をしるや また 麀鹿 の 產 に 臨 むを 見 しや
2 なんぢ 是等 の 在胎 の 月 を 數 へうるや また 是等 が 產 む 時 を 知 るや
3 これらは 身 を 鞠 めて 子 を 產 みその 痛苦 を 出 す
4 またその 子 は 強 くなりて 野 に 育 ち 出 ゆきて 再 たびその 親 にかへらず
5 誰 が 野驢馬 を 放 ちて 自由 にせしや 誰 が 野驢馬 の 繋繩 を 解 しや
6 われ 野 をその 家 となし 荒野 をその 住所 となせり
7 是 は 邑 の 喧閙 を 賤 しめ 馭者 の 號呼 を 聽 いれず
8 山 を 走 まはりて 草 を 食 ひ 各種 の 靑 き 物 を 尋 ぬ
9 兕 肯 て 汝 に 事 へ なんぢの 飼草槽 の 傍 にとどまらんや
10 なんぢ 兕 に 綱 附 て 阡陌 をあるかせ 得 んや 是 あに 汝 にしたがひて 谷 に 馬鈀 を 牽 んや
11 その 力 おほいなればとて 汝 これに 恃 まんや またなんぢの 工事 をこれに 任 せんや
12 なんぢこれにたよりて 己 が 穀物 を 運 びかへらせ 之 を 打禾塲 にあつめしめんや
13 駝鳥 は 歡然 にその 翼 を 皷 ふ 然 どもその 羽 と 毛 とはあに 鶴 にしかんや
14 是 はその 卵 を 土 の 中 に 棄 おき これを 砂 の 中 にて 暖 たまらしめ
15 足 にてその 潰 さるべきと 野 の 獸 のこれを 踐 むべきとを 思 はず
16 これはその 子 に 情 なくして 宛然 おのれの 子 ならざるが 如 くし その 劬勞 の 空 しくなるも 繋念 ところ 無 し
17 是 は 神 これに 智慧 を 授 けず 穎悟 を 與 へざるが 故 なり
18 その 身 をおこして 走 るにおいては 馬 をもその 騎手 をも 嘲 けるべし
19 なんぢ 馬 に 力 を 與 へしや その 頸 に 勇 ましき 鬣 を 粧 ひしや
20 なんぢ 之 を 蝗蟲 のごとく 飛 しむるや その 嘶 なく 聲 の 響 は 畏 るべし
21 谷 を 踋爬 て 力 に 誇 り 自 ら 進 みて 兵士 に 向 ふ
22 懼 るることを 笑 ひて 驚 ろくところ 無 く 劍 にむかふとも 退 ぞかず
23 矢筒 その 上 に 鳴 り 鎗 に 矛 あひきらめく
24 猛 りつ 狂 ひつ 地 を 一呑 にし 喇叭 の 聲 鳴 わたるも 立 どまる 事 なし
25 喇叭 の 鳴 ごとにハーハーと 言 ひ 遠方 より 戰鬪 を 嗅 つけ 將帥 の 大 聲 および 吶喊聲 を 聞 しる
26 鷹 の 飛 かけり その 羽翼 を 舒 て 南 に 向 ふは 豈 なんぢの 智慧 によるならんや
27 鷲 の 翔 のぼり 高 き 處 に 巣 を 營 なむは 豈 なんぢの 命令 に 依 んや
28 これは 岩 の 上 に 住所 を 構 へ 岩 の 尖所 または 峻險 き 所 に 居 り
29 其處 よりして 攫 むべき 物 をうかがふ その 目 のおよぶところ 遠 し
30 その 子等 もまた 血 を 吸 ふ 凡 そ 殺 されし 者 のあるところには 是 そこに 在 り
Chapter 40
1 ヱホバまたヨブに 對 へて 言 たまはく
2 非難 する 者 ヱホバと 爭 はんとするや 神 と 論 ずる 者 これに 答 ふべし
3 ヨブ 是 においてヱホバに 答 へて 曰 く
4 嗚呼 われは 賤 しき 者 なり 何 となんぢに 答 へまつらんや 唯 手 をわが 口 に 當 んのみ
5 われ 已 に 一度 言 たり 復 いはじ 已 に 再度 せり 重 ねて 述 じ
6 是 に 於 てヱホバまた 大風 の 中 よりヨブに 應 へて 言 たまはく
7 なんぢ 腰 ひきからげて 丈夫 のごとくせよ 我 なんぢに 問 ん なんぢ 我 にこたへよ
8 なんぢ 我 審判 を 廢 んとするや 我 を 非 として 自身 を 是 とせんとするや
9 なんぢ 神 のごとき 腕 ありや 神 のごとき 聲 をもて 轟 きわたらんや
10 さればなんぢ 威光 と 尊貴 とをもて 自 ら 飾 り 榮光 と 華美 とをもて 身 に 纒 へ
11 なんぢの 溢 るる 震怒 を 洩 し 高 ぶる 者 を 視 とめて 之 をことごとく 卑 くせよ
12 すなはち 高 ぶる 者 を 見 てこれを 盡 く 鞠 ませ また 惡人 を 立所 に 踐 つけ
13 これを 塵 の 中 に 埋 め これが 面 を 隱 れたる 處 に 閉 こめよ
14 さらば 我 もなんぢを 讚 てなんぢの 右 の 手 なんぢを 救 ひ 得 ると 爲 ん
15 今 なんぢ 我 がなんぢとともに 造 りたりし 河馬 を 視 よ 是 は 牛 のごとく 草 を 食 ふ
16 觀 よその 力 は 腰 にあり その 勢力 は 腹 の 筋 にあり
17 その 尾 の 搖 く 樣 は 香柏 のごとく その 腿 の 筋 は 彼此 に 盤互 ふ
18 その 骨 は 銅 の 管 ごとくその 肋骨 は 鐡 の 棒 のごとし
19 これは 神 の 工 の 第 一なる 者 にして 之 を 造 りし 者 これに 劍 を 賦 けたり
20 山 もこれがために 食物 を 產出 し もろもろの 野獸 そこに 遊 ぶ
21 これは 蓮 の 樹 の 下 に 臥 し 葦蘆 の 中 または 沼 の 裏 に 隱 れをる
22 蓮 の 樹 その 蔭 をもてこれを 覆 ひ また 河 の 柳 これを 環 りかこむ
23 たとひ 河 荒 くなるとも 驚 ろかず ヨルダンその 口 に 注 ぎかかるも 惶 てず
24 その 目 の 前 にて 誰 か 之 を 執 ふるを 得 ん 誰 か 羂 をその 鼻 に 貫 ぬくを 得 ん
Chapter 41
1 なんぢ 鈎 をもて 鱷 を 釣 いだすことを 得 んや その 舌 を 糸 にひきかくることを 得 んや
2 なんぢ 葦 の 繩 をその 鼻 に 通 し また 鈎 をその 齶 に 衝 とほし 得 んや
3 是 あに 頻 になんぢに 願 ふことをせんや 柔 かになんぢに 言談 んや
4 あに 汝 と 契約 を 爲 んや なんぢこれを 執 て 永 く 僕 と 爲 しおくを 得 んや
5 なんぢ 鳥 と 戲 むるる 如 くこれとたはむれ また 汝 の 婦人 等 のために 之 を 繋 ぎおくを 得 んや
6 また 漁夫 の 社會 これを 商貨 と 爲 して 商賣人 の 中間 に 分 たんや
7 なんぢ 漁叉 をもてその 皮 に 滿 し 魚矛 をもてその 頭 を 衝 とほし 得 んや
8 手 をこれに 下 し 見 よ 然 ばその 戰鬪 をおぼえて 再 びこれを 爲 ざるべし
9 視 よその 望 は 虚 し 之 を 見 てすら 倒 るるに 非 ずや
10 何人 も 之 に 激 する 勇氣 あるなし 然 ば 誰 かわが 前 に 立 うる 者 あらんや
11 誰 か 先 に 我 に 與 へしところありて 我 をして 之 に 酬 いしめんとする 者 あらん 普天 の 下 にある 者 はことごとく 我有 なり
12 我 また 彼者 の 肢體 とその 著 るしき 力 とその 美 はしき 身 の 構造 とを 言 では 措 じ
13 誰 かその 外甲 を 剥 ん 誰 かその 雙齶 の 間 に 入 ん
14 誰 かその 面 の 戸 を 開 きえんや その 周圍 の 齒 は 畏 るべし
15 その 並列 る 鱗甲 は 之 が 誇 るところ その 相 闔 たる 樣 は 堅 く 封 じたるがごとく
16 此 と 彼 とあひ 接 きて 風 もその 中間 にいるべからず
17 一々 あひ 連 なり 堅 く 膠 て 離 すことを 得 ず
18 嚔 すれば 即 はち 光 發 す その 目 は 曙光 の 眼瞼(を 開 く)に 似 たり
19 その 口 よりは 炬火 いで 火 花 發 し
20 その 鼻 の 孔 よりは 煙 いできたりて 宛然 葦 を 焚 く 釜 のごとし
21 その 氣息 は 炭 火 を 爇 し 火燄 その 口 より 出 づ
22 力氣 その 頸 に 宿 る 懼 るる 者 その 前 に 彷徨 まよふ
23 その 肉 の 片 は 密 に 相 連 なり 堅 く 身 に 着 て 動 かす 可 らず
24 その 心 の 堅硬 こと 石 のごとく その 堅硬 こと 下磨 のごとし
25 その 身 を 興 す 時 は 勇士 も 戰慄 き 恐怖 によりて 狼狽 まどふ
26 劍 をもて 之 を 撃 とも 利 ず 鎗 も 矢 も 漁叉 も 用 ふるところ 無 し
27 是 は 鐡 を 見 ること 稿 のごとくし 銅 を 見 ること 朽 木 のごとくす
28 弓箭 もこれを 逃 しむること 能 はず 投石機 の 石 も 稿屑 と 見做 る
29 棒 も 是 には 稿屑 と 見 ゆ 鎗 の 閃 めくを 是 は 笑 ふ
30 その 下 腹 には 瓦礫 の 碎片 を 連 ね 泥 の 上 に 麥打車 を 引 く
31 淵 をして 鼎 のごとく 沸 かへらしめ 海 をして 香油 の 釜 のごとくならしめ
32 己 が 後 に 光 る 道 を 遺 せば 淵 は 白髮 をいただけるかと 疑 がはる
33 地 の 上 には 是 と 並 ぶ 者 なし 是 は 恐怖 なき 身 に 造 られたり
34 是 は 一切 の 高大 なる 者 を 輕視 ず 誠 に 諸 の 誇 り 高 ぶる 者 の 王 たるなり
Chapter 42
1 ヨブ 是 に 於 てヱホバに 答 へて 曰 く
2 我 知 る 汝 は 一切 の 事 をなすを 得 たまふ また 如何 なる 意志 にても 成 あたはざる 無 し
3 無知 をもて 道 を 蔽 ふ 者 は 誰 ぞや 斯 われは 自 ら 了解 らざる 事 を 言 ひ 自 ら 知 ざる 測 り 難 き 事 を 述 たり
4 請 ふ 聽 たまへ 我 言 ふところあらん 我 なんぢに 問 まつらん 我 に 答 へたまへ
5 われ 汝 の 事 を 耳 にて 聞 ゐたりしが 今 は 目 をもて 汝 を 見 たてまつる
6 是 をもて 我 みづから 恨 み 塵灰 の 中 にて 悔 ゆ
7 ヱホバ 是等 の 言語 をヨブに 語 りたまひて 後 ヱホバ、テマン 人 エリパズに 言 たまひけるは 我 なんぢと 汝 の 二人 の 友 を 怒 る 其 はなんぢらが 我 に 關 て 言 述 べたるところはわが 僕 ヨブの 言 たることのごとく 正當 からざればなり
8 然 ば 汝 ら 牡牛 七頭 牡羊 七頭 を 取 てわが 僕 ヨブに 至 り 汝 らの 身 のために 燔祭 を 獻 げよ わが 僕 ヨブなんぢらのために 祈 らん われかれを 嘉納 べければ 之 によりて 汝 らの 愚 を 罰 せざらん 汝 らの 我 について 言 述 たるところは 我 僕 ヨブの 言 たることのごとく 正當 からざればなり
9 是 においてテマン 人 エリパズ、シユヒ 人 ビルダデ、ナアマ 人 ゾパル 往 てヱホバの 自己 に 宣 まひしごとく 爲 ければヱホバすなはちヨブを 嘉納 たまへり
10 ヨブその 友 のために 祈 れる 時 ヱホバ、ヨブの 艱難 をときて 舊 に 復 ししかしてヱホバつひにヨブの 所有物 を二 倍 に 増 たまへり
11 是 において 彼 の 諸 の 兄弟 諸 の 姉妹 およびその 舊 相 識 る 者等 ことごとく 來 りて 彼 とともにその 家 にて 飮食 を 爲 しかつヱホバの 彼 に 降 したまひし 一切 の 災難 につきて 彼 をいたはり 慰 さめ また 各 金 一ケセタと 金 の 環 一箇 を 之 に 贈 れり
12 ヱホバかくのごとくヨブをめぐみてその 終 を 初 よりも 善 したまへり 即 ち 彼 は 綿羊 一 萬 四千 匹 駱駝 六千 匹 牛 一千 軛 牝驢馬 一千 匹 を 有 り
13 また 男子 七 人 女子 三 人 ありき
14 かれその 第 一の 女 をエミマと 名 け 第 二をケジアと 名 け 第 三をケレンハツプクと 名 けたり
15 全國 の 中 にてヨブの 女子 等 ほど 美 しき 婦人 は 見 えざりき その 父 之 にその 兄弟 等 とおなじく 產業 をあたへたり
16 この 後 ヨブは 百 四十 年 いきながらへてその 子 その 孫 と 四代 までを 見 たり
17 かくヨブは 年 老 い 日 滿 て 死 たりき