Chapter 1
1 ダビデの 子 ヱルサレムの 王 傳道 者 の 言
2 傳道 者 言 く 空 の 空 空 の 空 なる 哉 都 て 空 なり
3 日 の 下 に 人 の 勞 して 爲 ところの 諸 の 動作 はその 身 に 何 の 益 かあらん
4 世 は 去 り 世 は 來 る 地 は 永久 に 長存 なり
5 日 は 出 で 日 は 入 り またその 出 し 處 に 喘 ぎゆくなり
6 風 は 南 に 行 き 又 轉 りて 北 にむかひ 旋轉 に 旋 りて 行 き 風 復 その 旋轉 る 處 にかへる。
7 河 はみな 海 に 流 れ 入 る 海 は 盈 ること 無 し 河 はその 出 きたれる 處 に 復 還 りゆくなり
8 萬 の 物 は 勞苦 す 人 これを 言 つくすことあたはず 目 は 見 に 飽 ことなく 耳 は 聞 に 充 ること 無 し
9 曩 に 有 し 者 はまた 後 にあるべし 曩 に 成 し 事 はまた 後 に 成 べし 日 の 下 には 新 しき 者 あらざるなり
10 見 よ 是 は 新 しき 者 なりと 指 て 言 べき 物 あるや 其 は 我等 の 前 にありし 世々 に 旣 に 久 しくありたる 者 なり
11 己前 のものの 事 はこれを 記憶 ることなし 以後 のものの 事 もまた 後 に 出 る 者 これをおぼゆることあらじ
12 われ 傳道 者 はヱルサレムにありてイスラエルの 王 たりき
13 我 心 を 盡 し 智慧 をもちひて 天 が 下 に 行 はるる 諸 の 事 を 尋 ねかつ 考覈 たり 此 苦 しき 事件 は 神 が 世 の 人 にさづけて 之 に 身 を 勞 せしめたまふ 者 なり
14 我 日 の 下 に 作 ところの 諸 の 行爲 を 見 たり 嗚呼 皆 空 にして 風 を 捕 ふるがごとし
15 曲 れる 者 は 直 からしむるあたはず 缺 たる 者 は 數 をあはするあたはず
16 我 心 の 中 に 語 りて 言 ふ 嗚呼 我 は 大 なる 者 となれり 我 より 先 にヱルサレムにをりしすべての 者 よりも 我 は 多 くの 智慧 を 得 たり 我 心 は 智慧 と 知識 を 多 く 得 たり
17 我 心 を 盡 して 智慧 を 知 んとし 狂妄 と 愚癡 を 知 んとしたりしが 是 も 亦 風 を 捕 ふるがごとくなるを 暁 れり
18 夫 智慧 多 ければ 憤激 多 し 知識 を 増 す 者 は 憂患 を 増 す
Chapter 2
1 我 わが 心 に 言 けらく 來 れ 我 試 みに 汝 をよろこばせんとす 汝 逸樂 をきはめよと 嗚呼 是 もまた 空 なりき
2 我 笑 を 論 ふ 是 は 狂 なり 快樂 を 論 ふ 是 何 の 爲 ところあらんやと
3 我 心 に 智慧 を 懐 きて 居 つつ 酒 をもて 肉身 を 肥 さんと 試 みたり 又 世 の 人 は 天 が 下 において 生涯 如何 なる 事 をなさば 善 らんかを 知 んために 我 は 愚 なる 事 を 行 ふことをせり
4 我 は 大 なる 事業 をなせり 我 はわが 爲 に 家 を 建 て 葡萄園 を 設 け
5 園 をつくり 囿 をつくり 又 菓 のなる 諸 の 樹 を 其處 に 植 ゑ
6 また 水 の 塘池 をつくりて 樹木 の 生 茂 れる 林 に 其 より 水 を 灌 がしめたり
7 我 は 僕 婢 を 買 得 たり また 家 の 子 あり 我 はまた 凡 て 我 より 前 にヱルサレムにをりし 者 よりも 衆多 の 牛 羊 を 有 り
8 我 は 金銀 を 積 み 王等 と 國々 の 財寶 を 積 あげたり また 歌 詠之 男女 を 得 世 の 人 の 樂 なる 妻 妾 を 多 くえたり
9 斯 我 は 大 なる 者 となり 我 より 前 にヱルサレムにをりし 諸 の 人 よりも 大 になりぬ 吾 智慧 もまたわが 身 を 離 れざりき
10 凡 そわが 目 の 好 む 者 は 我 これを 禁 ぜす 凡 そわが 心 の 悦 ぶ 者 は 我 これを 禁 ぜざりき 即 ち 我 はわが 諸 の 勞苦 によりて 快樂 を 得 たり 是 は 我 が 諸 の 勞苦 によりて 得 たるところの 分 なり
11 我 わが 手 にて 爲 たる 諸 の 事業 および 我 が 勞 して 事 を 爲 たる 勞苦 を 顧 みるに 皆 空 にして 風 を 捕 ふるが 如 くなりき 日 の 下 には 益 となる 者 あらざるなり
12 我 また 身 を 轉 らして 智慧 と 狂妄 と 愚癡 とを 觀 たり 抑 王 に 嗣 ぐところの 人 は 如何 なる 事 を 爲 うるや その 旣 になせしところの 事 に 過 ざるべし
13 光明 の 黑暗 にまさるがごとく 智慧 は 愚癡 に 勝 るなり 我 これを 暁 れり
14 智者 の 目 はその 頭 にあり 愚者 は 黑暗 に 歩 む 然 ど 我 しる 其 みな 遇 ふところの 事 は 同一 なり
15 我 心 に 謂 けらく 愚者 の 遇 ふところの 事 に 我 もまた 遇 ふべければ 我 なんぞ 智慧 のまさる 所 あらんや 我 また 心 に 謂 り 是 も 亦 空 なるのみと
16 夫 智者 も 愚者 と 均 しく 永 く 世 に 記念 らるることなし 來 らん 世 にいたれば 皆 早 く 旣 に 忘 らるるなり 嗚呼 智者 の 愚者 とおなじく 死 るは 是 如何 なる 事 ぞや
17 是 に 於 て 我 世 にながらふることを 厭 へり 凡 そ 日 の 下 に 爲 ところの 事 は 我 に 惡 く 見 ればなり 即 ち 皆 空 にして 風 を 捕 ふるがごとし
18 我 は 日 の 下 にわが 勞 して 諸 の 動作 をなしたるを 恨 む 其 は 我 の 後 を 嗣 ぐ 人 にこれを 遺 さざるを 得 ざればなり
19 其人 の 智 愚 は 誰 かこれを 知 らん 然 るにその 人 は 日 の 下 に 我 が 勞 して 爲 し 智慧 をこめて 爲 たる 諸 の 工作 を 管理 るにいたらん 是 また 空 なり
20 我 身 をめぐらし 日 の 下 にわが 勞 して 爲 たる 諸 の 動作 のために 望 を 失 へり
21 今 茲 に 人 あり 智慧 と 知識 と 才能 をもて 勞 して 事 をなさんに 終 には 之 がために 勞 せざる 人 に 一切 を 遺 してその 所有 となさしめざるを 得 ざるなり 是 また 空 にして 大 に 惡 し
22 夫 人 はその 日 の 下 に 勞 して 爲 ところの 諸 の 動作 とその 心 勞 によりて 何 の 得 ところ 有 るや
23 その 世 にある 日 には 常 に 憂患 あり その 勞苦 は 苦 し その 心 は 夜 の 間 も 安 んずることあらず 是 また 空 なり
24 人 の 食 飮 をなしその 勞苦 によりて 心 を 樂 しましむるは 幸福 なる 事 にあらず 是 もまた 神 の 手 より 出 るなり 我 これを 見 る
25 誰 かその 食 ふところその 歓樂 を 極 むるところに 於 て 我 にまさる 者 あらん
26 神 はその 心 に 適 ふ 人 には 智慧 と 知識 と 喜樂 を 賜 ふ 然 れども 罪 を 犯 す 人 には 勞苦 を 賜 ひて 斂 めかつ 積 ことを 爲 さしむ 是 は 其 を 神 の 心 に 適 ふ 人 に 與 へたまはんためなり 是 もまた 空 にして 風 を 捕 ふるがごとし
Chapter 3
1 天 が 下 の 萬 の 事 には 期 あり 萬 の 事務 には 時 あり
2 生 るるに 時 あり 死 るに 時 あり 植 るに 時 あり 植 たる 者 を 抜 に 時 あり
3 殺 すに 時 あり 醫 すに 時 あり 毀 つに 時 あり 建 るに 時 あり
4 泣 に 時 あり 笑 ふに 時 あり 悲 むに 時 あり 躍 るに 時 あり
5 石 を 擲 つに 時 あり 石 を 斂 むるに 時 あり 懐 くに 時 あり 懐 くことをせざるに 時 あり
6 得 に 時 あり 失 ふに 時 あり 保 つに 時 あり 棄 るに 時 あり
7 裂 に 時 あり 縫 に 時 あり 默 すに 時 あり 語 るに 時 あり
8 愛 しむに 時 あり 惡 むに 時 あり 戰 ふに 時 あり 和 ぐに 時 あり
9 働 く 者 はその 勞 して 爲 ところよりして 何 の 益 を 得 んや
10 我 神 が 世 の 人 にさづけて 身 をこれに 勞 せしめたまふところの 事件 を 視 たり
11 神 の 爲 したまふところは 皆 その 時 に 適 ひて 美麗 しかり 神 はまた 人 の 心 に 永遠 をおもふの 思念 を 賦 けたまへり 然 ば 人 は 神 のなしたまふ 作爲 を 始 より 終 まで 知 明 むることを 得 ざるなり
12 我 知 る 人 の 中 にはその 世 にある 時 に 快樂 をなし 善 をおこなふより 外 に 善事 はあらず
13 また 人 はみな 食 飮 をなしその 勞苦 によりて 逸樂 を 得 べきなり 是 すなはち 神 の 賜物 たり
14 我 知 る 凡 て 神 のなしたまふ 事 は 限 なく 存 せん 是 は 加 ふべき 所 なく 是 は 減 すべきところ 無 し 神 の 之 をなしたまふは 人 をしてその 前 に 畏 れしめんがためなり
15 昔 ありたる 者 は 今 もあり 後 にあらん 者 は 旣 にありし 者 なり 神 はその 遂 やられし 者 を 索 めたまふ
16 我 また 日 の 下 を 見 るに 審判 をおこなふ 所 に 邪曲 なる 事 あり 公義 を 行 ふところに 邪曲 なる 事 あり
17 我 すなはち 心 に 謂 けらく 神 は 義者 と 惡者 とを 鞫 きたまはん 彼處 において 萬 の 事 と 萬 の 所爲 に 時 あるなり
18 我 また 心 に 謂 けらく 是 事 あるは 是 世 の 人 のためなり 即 ち 神 は 斯 世 の 人 を 撿 して 之 にその 獣 のごとくなることを 自 ら 暁 らしめ 給 ふなり
19 世 の 人 に 臨 むところの 事 はまた 獣 にも 臨 む この 二者 に 臨 むところの 事 は 同一 にして 是 も 死 ば 彼 も 死 るなり 皆 同一 の 呼吸 に 依 れり 人 は 獣 にまさる 所 なし 皆 空 なり
20 皆 一 の 所 に 往 く 皆 塵 より 出 で 皆 塵 にかへるなり
21 誰 か 人 の 魂 の 上 に 昇 り 獣 の 魂 の 地 にくだることを 知 ん
22 然 ば 人 はその 動作 によりて 逸樂 をなすに 如 はなし 是 その 分 なればなり 我 これを 見 る その 身 の 後 の 事 は 誰 かこれを 携 へゆきて 見 さしむる 者 あらんや
Chapter 4
1 茲 に 我 身 を 轉 して 日 の 下 に 行 はるる 諸 の 虐遇 を 視 たり 嗚呼 虐 げらる 者 の 涙 ながる 之 を 慰 むる 者 あらざるなり また 虐 ぐる 者 の 手 には 權力 あり 彼等 はこれを 慰 むる 者 あらざるなり
2 我 は 猶 生 る 生者 よりも 旣 に 死 たる 死 者 をもて 幸 なりとす
3 またこの 二者 よりも 幸 なるは 未 だ 世 にあらずして 日 の 下 におこなはるる 惡 事 を 見 ざる 者 なり
4 我 また 諸 の 勞苦 と 諸 の 工事 の 精巧 とを 觀 るに 是 は 人 のたがひに 嫉 みあひて 成 せる 者 たるなり 是 も 空 にして 風 を 捕 ふるが 如 し
5 愚 なる 者 は 手 を 束 ねてその 身 の 肉 を 食 ふ
6 片 手 に 物 を 盈 て 平穩 にあるは 兩手 に 物 を 盈 て 勞苦 て 風 を 捕 ふるに 愈 れり
7 我 また 身 をめぐらし 日 の 下 に 空 なる 事 のあるを 見 たり
8 茲 に 人 あり 只 獨 にして 伴侶 もなく 子 もなく 兄弟 もなし 然 るにその 勞苦 は 都 て 窮 なくの 目 は 富 に 飽 ことなし 彼 また 言 ず 嗚呼 我 は 誰 がために 勞 するや 何 とて 我 は 心 を 樂 ませざるやと 是 もまた 空 にして 勞力 の 苦 き 者 なり
9 二人 は 一人 に 愈 る 其 はその 勞苦 のために 善 報 を 得 ればなり
10 即 ちその 跌倒 る 時 には 一箇 の 人 その 伴侶 を 扶 けおこすべし 然 ど 孤身 にして 跌倒 る 者 は 憐 なるかな 之 を 扶 けおこす 者 なきなり
11 又 二人 ともに 寝 れば 温暖 なり 一人 ならば 爭 で 温暖 ならんや
12 人 もしその 一人 を 攻撃 ば 二人 してこれに 當 るべし 三根 の 繩 は 容易 く 斷 ざるなり
13 貧 くして 賢 き 童子 は 老 て 愚 にして 諌 を 納 れざる 王 に 愈 る
14 彼 は 牢獄 より 出 て 王 となれり 然 どその 國 に 生 れし 時 は 貧 かりき
15 我 日 の 下 にあゆむところの 群生 が 彼 王 に 続 てこれに 代 りて 立 ところの 童子 とともにあるを 觀 たり
16 民 はすべて 際限 なし その 前 にありし 者 みな 然 り 後 にきたる 者 また 彼 を 悦 ばず 是 も 空 にして 風 を 捕 ふるがごとし
Chapter 5
1 汝 ヱホバの 室 にいたる 時 にはその 足 を 愼 め 進 みよりて 聽聞 は 愚 なる 者 の 犠牲 にまさる 彼等 はその 惡 をおこなひをることを 知 ざるなり
2 汝 神 の 前 にありては 軽々 し 口 を 開 くなかれ 心 を 攝 めて 妄 に 言 をいだすなかれ 其 は 神 は 天 にいまし 汝 は 地 にをればなり 然 ば 汝 の 言詞 を 少 からしめよ
3 夫 夢 は 事 の 繁多 によりて 生 じ 愚 なる 者 の 聲 は 言 の 衆多 によりて 識 るなり
4 汝 神 に 誓願 をかけなば 之 を 還 すことを 怠 るなかれ 神 は 愚 なる 者 を 悦 びたまはざるなり 汝 はそのかけし 誓願 を 還 すべし
5 誓願 をかけてこれを 還 さざるよりは 寧 ろ 誓願 をかけざるは 汝 に 善 し
6 汝 の 口 をもて 汝 の 身 に 罪 を 犯 さしむるなかれ 亦 使者 の 前 に 其 は 過誤 なりといふべからず 恐 くは 神 汝 の 言 を 怒 り 汝 の 手 の 所爲 を 滅 したまはん
7 夫 夢 多 ければ 空 なる 事 多 し 言詞 の 多 きもまた 然 り 汝 ヱホバを 畏 め
8 汝 國 の 中 に 貧 き 者 を 虐遇 る 事 および 公道 と 公義 を 枉 ることあるを 見 るもその 事 あるを 怪 むなかれ 其 はその 位 高 き 人 よりも 高 き 者 ありてその 人 を 伺 へばなり 又 其 等 よりも 高 き 者 あるなり
9 國 の 利益 は 全 く 是 にあり 即 ち 王 者 が 農事 に 勤 むるにあるなり
10 銀 を 好 む 者 は 銀 に 飽 こと 無 し 豊富 ならんことを 好 む 者 は 得 るところ 有 らず 是 また 空 なり
11 貨財 増 せばこれを 食 む 者 も 増 すなり その 所有主 は 唯 目 にこれを 看 るのみ その 外 に 何 の 益 かあらん
12 勞 する 者 はその 食 ふところは 多 きも 少 きも 快 く 睡 るなり 然 れども 富 者 はその 貨財 の 多 きがために 睡 ることを 得 せず
13 我 また 日 の 下 に 患 の 大 なる 者 あるを 見 たり すなはち 財寶 のこれを 蓄 ふる 者 の 身 に 害 をおよぼすことある 是 なり
14 その 財寶 はまた 災難 によりて 失落 ことあり 然 ばその 人 子 を 擧 ることあらんもその 手 には 何 物 もあることなし
15 人 は 母 の 胎 より 出 て 來 りしごとくにまた 裸體 にして 皈 りゆくべし その 勞苦 によりて 得 たる 者 を 毫厘 も 手 にとりて 携 へゆくことを 得 ざるなり
16 人 は 全 くその 來 りしごとくにまた 去 ゆかざるを 得 ず 是 また 患 の 大 なる 者 なり 抑 風 を 追 て 勞 する 者 何 の 益 をうること 有 んや
17 人 は 生命 の 涯 黑暗 の 中 に 食 ふことを 爲 す また 憂愁 多 かり 疾病 身 にあり 憤怒 あり
18 視 よ 我 は 斯 觀 たり 人 の 身 にとりて 善 かつ 美 なる 者 は 神 にたまはるその 生命 の 極 食 飮 をなし 且 その 日 の 下 に 勞 して 働 ける 勞苦 によりて 得 るところの 福禄 を 身 に 享 るの 事 なり 是 その 分 なればなり
19 何人 によらず 神 がこれに 富 と 財 を 與 へてそれに 食 ことを 得 せしめ またその 分 を 取 りその 勞苦 によりて 快樂 を 得 ることをせさせたまふあれば その 事 は 神 の 賜物 たるなり
20 かかる 人 はその 年齢 の 日 を 憶 ゆること 深 からず 其 は 神 これが 心 の 喜 ぶところにしたがひて 應 ることを 爲 したまへばなり
Chapter 6
1 我 觀 るに 日 の 下 に 一件 の 患 あり 是 は 人 の 間 に 恒 なる 者 なり
2 すなはち 神 富 と 財 と 貴 を 人 にあたへて その 心 に 慕 ふ 者 を 一件 もこれに 缺 ることなからしめたまひながらも 神 またその 人 に 之 を 食 ふことを 得 せしめたまはずして 他人 のこれを 食 ふことあり 是 空 なり 惡 き 疾 なり
3 假令 人 百 人 の 子 を 擧 けまた 長壽 してその 年齢 の 日 多 からんも 若 その 心 景福 に 滿足 せざるか 又 は 葬 らるることを 得 ざるあれば 我 言 ふ 流 產 の 子 はその 人 にまさるたり
4 夫 流 產 の 子 はその 來 ること 空 しくして 黑暗 の 中 に 去 ゆきその 名 は 黑暗 の 中 にかくるるなり
5 又 是 は 日 を 見 ることなく 物 を 知 ることなければ 彼 よりも 安泰 なり
6 人 の 壽命 千 年 に 倍 するとも 福祉 を 蒙 れるにはあらず 皆 一所 に 往 くにあらずや
7 人 の 勞苦 は 皆 その 口 のためなり その 心 はなほも 飽 ざるところ 有 り
8 賢 者 なんぞ 愚者 に 勝 るところあらんや また 世人 の 前 に 歩行 ことを 知 ところの 貧者 も 何 の 勝 るところ 有 んや
9 目 に 觀 る 事物 は 心 のさまよひ 歩 くに 愈 るなり 是 また 空 にして 風 を 捕 ふるがごとし
10 嘗 て 在 し 者 は 久 しき 前 にすでにその 名 を 命 られたり 即 ち 是 は 人 なりと 知 る 然 ば 是 はかの 自己 よりも 力 強 き 者 と 爭 ふことを 得 ざるなり
11 衆多 の 言論 ありて 虚浮 き 事 を 増 す 然 ど 人 に 何 の 益 あらんや
12 人 はその 虚空 き 生命 の 日 を 影 のごとくに 送 るなり 誰 かこの 世 において 如何 なる 事 か 人 のために 善 き 者 なるやを 知 ん 誰 かその 身 の 後 に 日 の 下 にあらんところの 事 を 人 に 告 うる 者 あらんや
Chapter 7
1 名 は 美 膏 に 愈 り 死 る 日 は 生 るる 日 に 愈 る
2 哀傷 の 家 に 入 は 宴樂 の 家 に 入 に 愈 る 其 は 一切 の 人 の 終 かくのごとくなればなり 生 る 者 またこれをその 心 にとむるあらん
3 悲哀 は 嬉笑 に 愈 る 其 は 面 に 憂色 を 帶 るなれば 心 も 善 にむかへばなり
4 賢 き 者 の 心 は 哀傷 の 家 にあり 愚 なる 者 の 心 は 喜樂 の 家 にあり
5 賢 き 者 の 勸責 を 聽 は 愚 なる 者 の 歌詠 を 聽 に 愈 るなり
6 愚 なる 者 の 笑 は 釜 の 下 に 焚 る 荊棘 の 聲 のごとし 是 また 空 なり
7 賢 き 人 も 虐待 る 事 によりて 狂 するに 至 るあり 賄賂 は 人 の 心 を 壞 なふ
8 事 の 終 はその 始 よりも 善 し 容忍 心 ある 者 は 傲慢 心 ある 者 に 勝 る
9 汝 氣 を 急 くして 怒 るなかれ 怒 は 愚 なる 者 の 胸 にやどるなり
10 昔 の 今 にまさるは 何故 ぞやと 汝 言 なかれ 汝 の 斯 る 問 をなすは 是 智慧 よりいづる 者 にあらざるなり
11 智慧 の 上 に 財產 をかぬれば 善 し 然 れば 日 を 見 る 者等 に 利益 おほかるべし
12 智慧 も 身 の 護庇 となり 銀子 も 身 の 護庇 となる 然 ど 智惠 はまたこれを 有 る 者 に 生命 を 保 しむ 是 知識 の 殊勝 たるところなり
13 汝 神 の 作爲 を 考 ふべし 神 の 曲 たまひし 者 は 誰 かこれを 直 くすることを 得 ん
14 幸福 ある 日 には 樂 め 禍患 ある 日 には 考 へよ 神 はこの 二者 をあひ 交錯 て 降 したまふ 是 は 人 をしてその 後 の 事 を 知 ることなからしめんためなり
15 我 この 空 の 世 にありて 各樣 の 事 を 見 たり 義人 の 義 をおこなひて 亡 ぶるあり 惡人 の 惡 をおこなひて 長壽 あり
16 汝 義 に 過 るなかれまた 賢 に 過 るなかれ 汝 なんぞ 身 を 滅 すべけんや
17 汝 惡 に 過 るなかれまた 愚 なる 勿 れ 汝 なんぞ 時 いたらざるに 死 べけんや
18 汝 此 を 執 は 善 しまた 彼 にも 手 を 放 すなかれ 神 を 畏 む 者 はこの 一切 の 者 の 中 より 逃 れ 出 るなり
19 智慧 の 智者 を 幇 くることは 邑 の 豪雄 者 十 人 にまさるなり
20 正義 して 善 をおこなひ 罪 を 犯 すことなき 人 は 世 にあることなし
21 人 の 言出 す 言詞 には 凡 て 心 をとむる 勿 れ 恐 くは 汝 の 僕 の 汝 を 詛 ふを 聞 こともあらん
22 汝 も 屡 人 を 詛 ふことあるは 汝 の 心 に 知 ところなり
23 我 智慧 をもてこの 一切 の 事 を 試 み 我 は 智者 とならんと 謂 たりしが 遠 くおよばざるなり
24 事物 の 理 は 遠 くして 甚 だ 深 し 誰 かこれを 究 むることを 得 ん
25 我 は 身 をめぐらし 心 をもちひて 物 を 知 り 事 を 探 り 智慧 と 道理 を 索 めんとし 又 惡 の 愚 たると 愚癡 の 狂妄 たるを 知 んとせり
26 我 了 れり 婦人 のその 心 羅 と 網 のごとくその 手 縲絏 のごとくなる 者 は 是 死 よりも 苦 き 者 なり 神 の 悦 びたまふ 者 は 之 を 避 ることを 得 ん 罪人 は 之 に 執 らるべし
27 傳道 者 言 ふ 視 よ 我 その 數 を 知 んとして 一々 に 算 へてつひに 此事 を 了 る
28 我 なほ 尋 ねて 得 ざる 者 は 是 なり 我 千 人 の 中 には 一箇 の 男子 を 得 たれども その 數 の 中 には 一箇 の 女子 をも 得 ざるなり
29 我 了 れるところは 唯 是 のみ 即 ち 神 は 人 を 正直 者 に 造 りたまひしに 人 衆多 の 計略 を 案出 せしなり
Chapter 8
1 誰 か 智者 に 如 ん 誰 か 事物 の 理 を 解 ことを 得 ん 人 の 智慧 はその 人 の 面 に 光輝 あらしむ 又 その 粗暴 面 も 變改 べし
2 我 言 ふ 王 の 命 を 守 るべし 旣 に 神 をさして 誓 ひしことあれば 然 るべきなり
3 早 まりて 王 の 前 を 去 ることなかれ 惡 き 事 につのること 勿 れ 其 は 彼 は 凡 てその 好 むところを 爲 ばなり
4 王 の 言語 には 權力 あり 然 ば 誰 か 之 に 汝 何 をなすやといふことを 得 ん
5 命令 を 守 る 者 は 禍患 を 受 るに 至 らず 智者 の 心 は 時期 と 判斷 を 知 なり
6 萬 の 事務 には 時 あり 判斷 あり 是 をもて 人 大 なる 禍患 をうくるに 至 るあり
7 人 は 後 にあらんところの 事 を 知 ず また 誰 か 如何 なる 事 のあらんかを 之 に 告 る 者 あらん
8 霊魂 を 掌管 て 霊魂 を 留 めうる 人 あらず 人 はその 死 る 日 には 權力 あること 旡 し 此 戰爭 には 釋放 たるる 者 あらず 又 罪 惡 はこれを 行 ふ 者 を 救 ふことを 得 せざるなり
9 我 この 一切 の 事 を 見 また 日 の 下 におこなはるる 諸 の 事 に 心 を 用 ひたり 時 としては 此人 彼人 を 治 めてこれに 害 を 蒙 らしむることあり
10 我 見 しに 惡人 の 葬 られて 安息 にいるあり また 善 をおこなふ 者 の 聖所 を 離 れてその 邑 に 忘 らるるに 至 るあり 是 また 空 なり
11 惡 き 事 の 報 速 にきたらざるが 故 に 世人 心 を 専 にして 惡 をおこなふ
12 罪 を 犯 す 者 百次 惡 をなして 猶 長命 あれども 我 知 る 神 を 畏 みてその 前 に 畏怖 をいだく 者 には 幸福 あるべし
13 但 し 惡人 には 幸福 あらず またその 生命 も 長 からずして 影 のごとし 其 は 神 の 前 に 畏怖 をいだくことなければなり
14 我 日 の 下 に 空 なる 事 のおこなはるるを 見 たり 即 ち 義人 にして 惡人 の 遭 べき 所 に 遭 ふ 者 あり 惡人 にして 義人 の 遭 べきところに 遭 ふ 者 あり 我 謂 り 是 もまた 空 なり
15 是 に 於 て 我 喜樂 を 讃 む 其 は 食 飮 して 樂 むよりも 好 き 事 は 日 の 下 にあらざればなり 人 の 勞 して 得 る 物 の 中 是 こそはその 日 の 下 にて 神 にたまはる 生命 の 日 の 間 その 身 に 離 れざる 者 なれ
16 茲 に 我 心 をつくして 智慧 を 知 らんとし 世 に 爲 ところの 事 を 究 めんとしたり 人 は 夜 も 晝 もその 目 をとぢて 眠 ることをせざるなり
17 我 神 の 諸 の 作爲 を 見 しが 人 は 日 の 下 におこなはるるところの 事 を 究 むるあたはざるなり 人 これを 究 めんと 勞 するもこれを 究 むることを 得 ず 且 又 智者 ありてこれを 知 ると 思 ふもこれを 究 むることあたはざるなり
Chapter 9
1 我 はこの 一切 の 事 に 心 を 用 ひてこの 一切 の 事 を 明 めんとせり 即 ち 義 き 者 と 賢 き 者 およびかれらの 爲 ところは 神 の 手 にあるなるを 明 めんとせり 愛 むや 惡 むやは 人 これを 知 ることなし 一切 の 事 はその 前 にあるなり
2 諸 の 人 に 臨 む 所 は 皆 同じ 義 き 者 にも 惡 き 者 にも 善 者 にも 淨 者 にも 穢 れたる 者 にも 犠牲 を 献 ぐる 者 にも 犠牲 を 献 げぬ 者 にもその 臨 むところの 事 は 同一 なり 善 人 も 罪人 に 異 ならず 誓 をなす 者 も 誓 をなすことを 畏 るる 者 に 異 ならず
3 諸 の 人 に 臨 むところの 事 の 同一 なるは 是 日 の 下 におこなはるる 事 の 中 の 惡 き 者 たり 抑 人 の 心 には 惡 き 事 充 をり その 生 る 間 は 心 に 狂妄 を 懐 くあり 後 には 死 者 の 中 に 往 くなり
4 凡 活 る 者 の 中 に 列 る 者 は 望 あり 其 は 生 る 犬 は 死 る 獅子 に 愈 ればなり
5 生者 はその 死 んことを 知 る 然 ど 死 る 者 は 何 事 をも 知 ずまた 應報 をうくることも 重 てあらず その 記憶 らるる 事 も 遂 に 忘 れらるるに 至 る
6 またその 愛 も 惡 も 嫉 も 旣 に 消 うせて 彼等 は 日 の 下 におこなはるる 事 に 最早 何時 までも 關係 ことあらざるなり
7 汝 往 て 喜悦 をもて 汝 のパンを 食 ひ 樂 き 心 をも 汝 の 酒 を 飮 め 其 は 神 久 しく 汝 の 行爲 を 嘉納 たまへばなり
8 汝 の 衣服 を 常 に 白 からしめよ 汝 の 頭 に 膏 を 絶 しむるなかれ
9 日 の 下 に 汝 が 賜 はるこの 汝 の 空 なる 生命 の 日 の 間 汝 その 愛 する 妻 とともに 喜 びて 度生 せ 汝 の 空 なる 生命 の 日 の 間 しかせよ 是 は 汝 が 世 にありて 受 る 分 汝 が 日 の 下 に 働 ける 勞苦 によりて 得 る 者 なり
10 凡 て 汝 の 手 に 堪 ることは 力 をつくしてこれを 爲 せ 其 は 汝 の 往 んところの 陰府 には 工作 も 計謀 も 知識 も 智慧 もあることなければなり
11 我 また 身 をめぐらして 日 の 下 を 觀 るに 迅速 者 走 ることに 勝 にあらず 強者 戰爭 に 勝 にあらず 智慧 者 食物 を 獲 にあらず 明哲 人 財貨 を 得 にあらず 知識 人 恩顧 を 得 にあらず 凡 て 人 に 臨 むところの 事 は 時 ある 者 偶然 なる 者 なり
12 人 はまたその 時 を 知 ず 魚 の 禍 の 網 にかかり 鳥 の 鳥羅 にかかるが 如 くに 世 の 人 もまた 禍患 の 時 の 計 らざるに 臨 むに 及 びてその 禍患 にかかるなり
13 我 日 の 下 に 是 事 を 觀 て 智慧 となし 大 なる 事 となせり
14 すなはち 茲 に 一箇 の 小 き 邑 ありて その 中 の 人 は 鮮 かりしが 大 なる 王 これに 攻 きたりてこれを 圍 みこれに 向 ひて 大 なる 雲梯 を 建 たり
15 時 に 邑 の 中 に 一人 の 智慧 ある 貧 しき 人 ありてその 智慧 をもて 邑 を 救 へり 然 るに 誰 ありてその 貧 しき 人 を 記念 もの 無 りし
16 是 において 我 言 り 智慧 は 勇力 に 愈 る 者 なりと 但 しかの 貧 しき 人 の 智慧 は 藐視 られその 言詞 は 聽 れざりしなり
17 靜 に 聽 る 智者 の 言 は 愚者 の 君長 たる 者 の 號呼 に 愈 る
18 智慧 は 軍 の 器 に 勝 れり 一人 の 惡人 は 許多 の 善事 を 壞 ふなり
Chapter 10
1 死 し 蝿 は 和香者 の 膏 を 臭 くしこれを 腐 らす 少許 の 愚癡 は 智慧 と 尊榮 よりも 重 し
2 智者 の 心 はその 右 に 愚者 の 心 はその 左 に 行 くなり
3 愚者 は 出 て 途 を 行 にあたりてその 心 たらず 自己 の 愚 なることを 一切 の 人 に 告 ぐ
4 君長 たる 者 汝 にむかひて 腹 たつとも 汝 の 本處 を 離 るる 勿 れ 温順 は 大 なる 愆 を 生 ぜしめざるなり
5 我 日 の 下 に 一 の 患事 あるを 見 たり 是 は 君長 たる 者 よりいづる 過誤 に 似 たり
6 すなはち 愚 なる 者 高 き 位 に 置 かれ 貴 き 者 卑 き 處 に 坐 る
7 我 また 僕 たる 者 が 馬 に 乗 り 王侯 たる 者 が 僕 のごとく 地 の 上 に 歩 むを 觀 たり
8 坑 を 掘 る 者 はみづから 之 におちいり 石垣 を 毀 つ 者 は 蛇 に 咬 れん
9 石 を 打 くだく 者 はそれがために 傷 を 受 け 木 を 割 る 者 はそれがために 危難 に 遭 ん
10 鐵 の 鈍 くなれるあらんにその 刃 を 磨 ざれば 力 を 多 く 之 にもちひざるを 得 ず 智慧 は 功 を 成 に 益 あるなり
11 蛇 もし 呪術 を 聽 ずして 咬 ば 呪術師 は 用 なし
12 智者 の 口 の 言語 は 恩徳 あり 愚者 の 唇 はその 身 を 呑 ほろぼす
13 愚者 の 口 の 言 は 始 は 愚 なり またその 言 は 終 は 狂妄 にして 惡 し
14 愚者 は 言詞 を 衆 くす 人 は 後 に 有 ん 事 を 知 ず 誰 かその 身 の 後 にあらんところの 事 を 述 るを 得 ん
15 愚者 の 勞苦 はその 身 を 疲 らす 彼 は 邑 にいることをも 知 ざるなり
16 その 王 は 童子 にしてその 侯伯 は 朝 に 食 をなす 國 よ 汝 は 禍 なるかな
17 その 王 は 貴族 の 子 またその 侯伯 は 酔 樂 むためならず 力 を 補 ふために 適 宜 き 時 に 食 をなす 國 よ 汝 は 福 なるかな
18 懶惰 ところよりして 屋背 は 落 ち 手 を 垂 をるところよりして 家屋 は 漏 る
19 食事 をもて 笑 ひ 喜 ぶの 物 となし 酒 をもて 快樂 を 取 れり 銀子 は 何 事 にも 應 ずるなり
20 汝 心 の 中 にても 王 たる 者 を 詛 ふなかれ また 寝室 にても 富 者 を 詛 なかれ 天空 の 鳥 その 聲 を 傳 へ 羽翼 ある 者 その 事 を 布 べければなり
Chapter 11
1 汝 の 糧食 を 水 の 上 に 投 げよ 多 くの 日 の 後 に 汝 ふたたび 之 を 得 ん
2 汝 一箇 の 分 を 七 また 八 にわかて 其 は 汝 如何 なる 災害 の 地 にあらんかを 知 ざればなり
3 雲 もし 雨 の 充 るあれば 地 に 注 ぐ また 樹 もし 南 か 北 に 倒 るるあればその 樹 は 倒 れたる 處 にあるべし
4 風 を 伺 ふ 者 は 種播 ことを 得 ず 雲 を 望 む 者 は 刈 ことを 得 ず
5 汝 は 風 の 道 の 如何 なるを 知 ず また 孕 める 婦 の 胎 にて 骨 の 如何 に 生長 つを 知 ず 斯 汝 は 萬事 を 爲 たまふ 神 の 作爲 を 知 ことなし
6 汝 朝 に 種 を 播 け 夕 にも 手 を 歇 るなかれ 其 はその 實 る 者 は 此 なるか 彼 なるか 又 は 二者 ともに 美 なるや 汝 これを 知 ざればなり
7 夫 光明 は 快 き 者 なり 目 に 日 を 見 るは 樂 し
8 人 多 くの 年 生 ながらへてその 中 凡 て 幸福 なるもなほ 幽暗 の 日 を 憶 ふべきなり 其 はその 數 も 多 かるべければなり 凡 て 來 らんところの 事 は 皆 空 なり
9 少者 よ 汝 の 少 き 時 に 快樂 をなせ 汝 の 少 き 日 に 汝 の 心 を 悦 ばしめ 汝 の 心 の 道 に 歩 み 汝 の 目 に 見 るところを 爲 せよ 但 しその 諸 の 行爲 のために 神 汝 を 鞫 きたまはんと 知 べし
10 然 ば 汝 の 心 より 憂 を 去 り 汝 の 身 より 惡 き 者 を 除 け 少 き 時 と 壯 なる 時 はともに 空 なればなり
Chapter 12
1 汝 の 少 き 日 に 汝 の 造主 を 記 えよ 即 ち 惡 き 日 の 來 り 年 のよりて 我 は 早 何 も 樂 むところ 無 しと 言 にいたらざる 先
2 また 日 や 光明 や 月 や 星 の 暗 くならざる 先 雨 の 後 に 雲 の 返 らざる 中 に 汝 然 せよ
3 その 日 いたる 時 は 家 を 守 る 者 は 慄 ひ 力 ある 人 は 屈 み 磨 碎 者 は 寡 きによりて 息 み 窓 より 窺 ふ 者 は 目 昏 むなり
4 磨 こなす 聲 低 くなれば 衢 の 門 は 閉 づ その 人 は 鳥 の 聲 に 起 あがり 歌 の 女子 はみな 身 を 卑 くす
5 かかる 人々 は 高 き 者 を 恐 る 畏 しき 者 多 く 途 にあり 巴旦杏 は 花 咲 くまた 蝗 もその 身 に 重 くその 嗜 欲 は 廢 る 人 永遠 の 家 にいたらんとすれば 哭婦 衢 にゆきかふ
6 然 る 時 には 銀 の 紐 は 解 け 金 の 盞 は 碎 け 吊瓶 は 泉 の 側 に 壞 れ 轆轤 は 井 の 傍 に 破 ん
7 而 して 塵 は 本 の 如 くに 土 に 皈 り 霊魂 はこれを 賦 けし 神 にかへるべし
8 傳道 者 云 ふ 空 の 空 なるかな 皆 空 なり
9 また 傳道 者 は 智慧 あるが 故 に 恒 に 知識 を 民 に 敎 へたり 彼 は 心 をもちひて 尋 ね 究 め 許多 の 箴言 を 作 れり
10 傳道 者 は 務 めて 佳美 き 言詞 を 求 めたり その 書 しるしたる 者 は 正直 して 眞實 の 言語 なり
11 智者 の 言語 は 刺 鞭 のごとく 會衆 の 師 の 釘 たる 釘 のごとくにして 一人 の 牧者 より 出 し 者 なり
12 わが 子 よ 是等 より 訓誡 をうけよ 多 く 書 をつくれば 竟 なし 多 く 學 べば 體 疲 る
13 事 の 全體 の 皈 する 所 を 聽 べし 云 く 神 を 畏 れその 誡命 を 守 れ 是 は 諸 の 人 の 本 分 たり
14 神 は 一切 の 行爲 ならびに 一切 の 隠 れたる 事 を 善 惡 ともに 審判 たまふなり