Chapter 1
1 神 の 子 イエス・キリストの 福音 のはじめ。
2 預言者 イザヤの 書 に、「見 よ、わたしは 使 をあなたの 先 につかわし、あなたの 道 を 整 えさせるであろう。
3 荒野 で 呼 ばわる 者 の 声 がする、『主 の 道 を 備 えよ、その 道 筋 をまっすぐにせよ』」と 書 いてあるように、
4 バプテスマのヨハネが 荒野 に 現 れて、罪 のゆるしを 得 させる 悔改 めのバプテスマを 宣 べ 伝 えていた。
5 そこで、ユダヤ 全土 とエルサレムの 全 住民 とが、彼 のもとにぞくぞくと 出 て 行 って、自分 の 罪 を 告白 し、ヨルダン 川 でヨハネからバプテスマを 受 けた。
6 このヨハネは、らくだの 毛 ごろもを 身 にまとい、腰 に 皮 の 帯 をしめ、いなごと 野 蜜 とを 食物 としていた。
7 彼 は 宣 べ 伝 えて 言 った、「わたしよりも 力 のあるかたが、あとからおいでになる。わたしはかがんで、そのくつのひもを 解 く 値 うちもない。
8 わたしは 水 でバプテスマを 授 けたが、このかたは、聖霊 によってバプテスマをお 授 けになるであろう」。
9 そのころ、イエスはガリラヤのナザレから 出 てきて、ヨルダン 川 で、ヨハネからバプテスマをお 受 けになった。
10 そして、水 の 中 から 上 がられるとすぐ、天 が 裂 けて、聖霊 がはとのように 自分 に 下 って 来 るのを、ごらんになった。
11 すると 天 から 声 があった、「あなたはわたしの 愛 する 子、わたしの 心 にかなう 者 である」。
12 それからすぐに、御霊 がイエスを 荒野 に 追 いやった。
13 イエスは四十 日 のあいだ 荒野 にいて、サタンの 試 みにあわれた。そして 獣 もそこにいたが、御使 たちはイエスに 仕 えていた。
14 ヨハネが 捕 えられた 後、イエスはガリラヤに 行 き、神 の 福音 を 宣 べ 伝 えて 言 われた、
15 「時 は 満 ちた、神 の 国 は 近 づいた。悔 い 改 めて 福音 を 信 ぜよ」。
16 さて、イエスはガリラヤの 海 べを 歩 いて 行 かれ、シモンとシモンの 兄弟 アンデレとが、海 で 網 を 打 っているのをごらんになった。彼 らは 漁師 であった。
17 イエスは 彼 らに 言 われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間 をとる 漁師 にしてあげよう」。
18 すると、彼 らはすぐに 網 を 捨 てて、イエスに 従 った。
19 また 少 し 進 んで 行 かれると、ゼベダイの 子 ヤコブとその 兄弟 ヨハネとが、舟 の 中 で 網 を 繕 っているのをごらんになった。
20 そこで、すぐ 彼 らをお 招 きになると、父 ゼベダイを 雇人 たちと 一緒 に 舟 において、イエスのあとについて 行 った。
21 それから、彼 らはカペナウムに 行 った。そして 安息日 にすぐ、イエスは 会堂 にはいって 教 えられた。
22 人々 は、その 教 に 驚 いた。律法 学者 たちのようにではなく、権威 ある 者 のように、教 えられたからである。
23 ちょうどその 時、けがれた 霊 につかれた 者 が 会堂 にいて、叫 んで 言 った、
24 「ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの 係 わりがあるのです。わたしたちを 滅 ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神 の 聖者 です」。
25 イエスはこれをしかって、「黙 れ、この 人 から 出 て 行 け」と 言 われた。
26 すると、けがれた 霊 は 彼 をひきつけさせ、大声 をあげて、その 人 から 出 て 行 った。
27 人々 はみな 驚 きのあまり、互 に 論 じて 言 った、「これは、いったい 何事 か。権威 ある 新 しい 教 だ。けがれた 霊 にさえ 命 じられると、彼 らは 従 うのだ」。
28 こうしてイエスのうわさは、たちまちガリラヤの 全 地方、いたる 所 にひろまった。
29 それから 会堂 を 出 るとすぐ、ヤコブとヨハネとを 連 れて、シモンとアンデレとの 家 にはいって 行 かれた。
30 ところが、シモンのしゅうとめが 熱病 で 床 についていたので、人々 はさっそく、そのことをイエスに 知 らせた。
31 イエスは 近寄 り、その 手 をとって 起 されると、熱 が 引 き、女 は 彼 らをもてなした。
32 夕暮 になり 日 が 沈 むと、人々 は 病人 や 悪霊 につかれた 者 をみな、イエスのところに 連 れてきた。
33 こうして、町中 の 者 が 戸口 に 集 まった。
34 イエスは、さまざまの 病 をわずらっている 多 くの 人々 をいやし、また 多 くの 悪霊 を 追 い 出 された。また、悪霊 どもに、物言 うことをお 許 しにならなかった。彼 らがイエスを 知 っていたからである。
35 朝 はやく、夜 の 明 けるよほど 前 に、イエスは 起 きて 寂 しい 所 へ 出 て 行 き、そこで 祈 っておられた。
36 すると、シモンとその 仲間 とが、あとを 追 ってきた。
37 そしてイエスを 見 つけて、「みんなが、あなたを 捜 しています」と 言 った。
38 イエスは 彼 らに 言 われた、「ほかの、附近 の 町々 にみんなで 行 って、そこでも 教 を 宣 べ 伝 えよう。わたしはこのために 出 てきたのだから」。
39 そして、ガリラヤ 全 地 を 巡 りあるいて、諸 会堂 で 教 を 宣 べ 伝 え、また 悪霊 を 追 い 出 された。
40 ひとりのらい 病人 が、イエスのところに 願 いにきて、ひざまずいて 言 った、「みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
41 イエスは 深 くあわれみ、手 を 伸 ばして 彼 にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と 言 われた。
42 すると、らい 病 が 直 ちに 去 って、その 人 はきよくなった。
43 イエスは 彼 をきびしく 戒 めて、すぐにそこを 去 らせ、こう 言 い 聞 かせられた、
44 「何 も 人 に 話 さないように、注意 しなさい。ただ 行 って、自分 のからだを 祭司 に 見 せ、それから、モーセが 命 じた 物 をあなたのきよめのためにささげて、人々 に 証明 しなさい」。
45 しかし、彼 は 出 て 行 って、自分 の 身 に 起 ったことを 盛 んに 語 り、また 言 いひろめはじめたので、イエスはもはや 表立 っては 町 に、はいることができなくなり、外 の 寂 しい 所 にとどまっておられた。しかし、人々 は 方々 から、イエスのところにぞくぞくと 集 まってきた。
Chapter 2
1 幾日 かたって、イエスがまたカペナウムにお 帰 りになったとき、家 におられるといううわさが 立 ったので、
2 多 くの 人々 が 集 まってきて、もはや 戸口 のあたりまでも、すきまが 無 いほどになった。そして、イエスは 御言 を 彼 らに 語 っておられた。
3 すると、人々 がひとりの 中風 の 者 を四 人 の 人 に 運 ばせて、イエスのところに 連 れてきた。
4 ところが、群衆 のために 近寄 ることができないので、イエスのおられるあたりの 屋根 をはぎ、穴 をあけて、中風 の 者 を 寝 かせたまま、床 をつりおろした。
5 イエスは 彼 らの 信仰 を 見 て、中風 の 者 に、「子 よ、あなたの 罪 はゆるされた」と 言 われた。
6 ところが、そこに 幾人 かの 律法 学者 がすわっていて、心 の 中 で 論 じた、
7 「この 人 は、なぜあんなことを 言 うのか。それは 神 をけがすことだ。神 ひとりのほかに、だれが 罪 をゆるすことができるか」。
8 イエスは、彼 らが 内心 このように 論 じているのを、自分 の 心 ですぐ 見 ぬいて、「なぜ、あなたがたは 心 の 中 でそんなことを 論 じているのか。
9 中風 の 者 に、あなたの 罪 はゆるされた、と 言 うのと、起 きよ、床 を 取 りあげて 歩 け、と 言 うのと、どちらがたやすいか。
10 しかし、人 の 子 は 地上 で 罪 をゆるす 権威 をもっていることが、あなたがたにわかるために」と 彼 らに 言 い、中風 の 者 にむかって、
11 「あなたに 命 じる。起 きよ、床 を 取 りあげて 家 に 帰 れ」と 言 われた。
12 すると 彼 は 起 きあがり、すぐに 床 を 取 りあげて、みんなの 前 を 出 て 行 ったので、一同 は 大 いに 驚 き、神 をあがめて、「こんな 事 は、まだ一 度 も 見 たことがない」と 言 った。
13 イエスはまた 海 べに 出 て 行 かれると、多 くの 人々 がみもとに 集 まってきたので、彼 らを 教 えられた。
14 また 途中 で、アルパヨの 子 レビが 収税所 にすわっているのをごらんになって、「わたしに 従 ってきなさい」と 言 われた。すると 彼 は 立 ちあがって、イエスに 従 った。
15 それから 彼 の 家 で、食事 の 席 についておられたときのことである。多 くの 取税人 や 罪人 たちも、イエスや 弟子 たちと 共 にその 席 に 着 いていた。こんな 人 たちが 大 ぜいいて、イエスに 従 ってきたのである。
16 パリサイ 派 の 律法 学者 たちは、イエスが 罪人 や 取税人 たちと 食事 を 共 にしておられるのを 見 て、弟子 たちに 言 った、「なぜ、彼 は 取税人 や 罪人 などと 食事 を 共 にするのか」。
17 イエスはこれを 聞 いて 言 われた、「丈夫 な 人 には 医者 はいらない。いるのは 病人 である。わたしがきたのは、義人 を 招 くためではなく、罪人 を 招 くためである」。
18 ヨハネの 弟子 とパリサイ 人 とは、断食 をしていた。そこで 人々 がきて、イエスに 言 った、「ヨハネの 弟子 たちとパリサイ 人 の 弟子 たちとが 断食 をしているのに、あなたの 弟子 たちは、なぜ 断食 をしないのですか」。
19 するとイエスは 言 われた、「婚礼 の 客 は、花婿 が 一緒 にいるのに、断食 ができるであろうか。花婿 と 一緒 にいる 間 は、断食 はできない。
20 しかし、花婿 が 奪 い 去 られる 日 が 来 る。その 日 には 断食 をするであろう。
21 だれも、真新 しい 布 ぎれを、古 い 着物 に 縫 いつけはしない。もしそうすれば、新 しいつぎは 古 い 着物 を 引 き 破 り、そして、破 れがもっとひどくなる。
22 まただれも、新 しいぶどう 酒 を 古 い 皮 袋 に 入 れはしない。もしそうすれば、ぶどう 酒 は 皮 袋 をはり 裂 き、そして、ぶどう 酒 も 皮 袋 もむだになってしまう。〔だから、新 しいぶどう 酒 は 新 しい 皮 袋 に 入 れるべきである〕」。
23 ある 安息日 に、イエスは 麦畑 の 中 をとおって 行 かれた。そのとき 弟子 たちが、歩 きながら 穂 をつみはじめた。
24 すると、パリサイ 人 たちがイエスに 言 った、「いったい、彼 らはなぜ、安息日 にしてはならぬことをするのですか」。
25 そこで 彼 らに 言 われた、「あなたがたは、ダビデとその 供 の 者 たちとが 食物 がなくて 飢 えたとき、ダビデが 何 をしたか、まだ 読 んだことがないのか。
26 すなわち、大祭司 アビアタルの 時、神 の 家 にはいって、祭司 たちのほか 食 べてはならぬ 供 えのパンを、自分 も 食 べ、また 供 の 者 たちにも 与 えたではないか」。
27 また 彼 らに 言 われた、「安息日 は 人 のためにあるもので、人 が 安息日 のためにあるのではない。
28 それだから、人 の 子 は、安息日 にもまた 主 なのである」。
Chapter 3
1 イエスがまた 会堂 にはいられると、そこに 片手 のなえた 人 がいた。
2 人々 はイエスを 訴 えようと 思 って、安息日 にその 人 をいやされるかどうかをうかがっていた。
3 すると、イエスは 片手 のなえたその 人 に、「立 って、中 へ 出 てきなさい」と 言 い、
4 人々 にむかって、「安息日 に 善 を 行 うのと 悪 を 行 うのと、命 を 救 うのと 殺 すのと、どちらがよいか」と 言 われた。彼 らは 黙 っていた。
5 イエスは 怒 りを 含 んで 彼 らを 見 まわし、その 心 のかたくななのを 嘆 いて、その 人 に「手 を 伸 ばしなさい」と 言 われた。そこで 手 を 伸 ばすと、その 手 は 元 どおりになった。
6 パリサイ 人 たちは 出 て 行 って、すぐにヘロデ 党 の 者 たちと、なんとかしてイエスを 殺 そうと 相談 しはじめた。
7 それから、イエスは 弟子 たちと 共 に 海 べに 退 かれたが、ガリラヤからきたおびただしい 群衆 がついて 行 った。またユダヤから、
8 エルサレムから、イドマヤから、更 にヨルダンの 向 こうから、ツロ、シドンのあたりからも、おびただしい 群衆 が、そのなさっていることを 聞 いて、みもとにきた。
9 イエスは 群衆 が 自分 に 押 し 迫 るのを 避 けるために、小舟 を 用意 しておけと、弟子 たちに 命 じられた。
10 それは、多 くの 人 をいやされたので、病苦 に 悩 む 者 は 皆 イエスにさわろうとして、押 し 寄 せてきたからである。
11 また、けがれた 霊 どもはイエスを 見 るごとに、みまえにひれ 伏 し、叫 んで、「あなたこそ 神 の 子 です」と 言 った。
12 イエスは 御 自身 のことを 人 にあらわさないようにと、彼 らをきびしく 戒 められた。
13 さてイエスは 山 に 登 り、みこころにかなった 者 たちを 呼 び 寄 せられたので、彼 らはみもとにきた。
14 そこで十二 人 をお 立 てになった。彼 らを 自分 のそばに 置 くためであり、さらに 宣教 につかわし、
15 また 悪霊 を 追 い 出 す 権威 を 持 たせるためであった。
16 こうして、この十二 人 をお 立 てになった。そしてシモンにペテロという 名 をつけ、
17 またゼベダイの 子 ヤコブと、ヤコブの 兄弟 ヨハネ、彼 らにはボアネルゲ、すなわち、雷 の 子 という 名 をつけられた。
18 つぎにアンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの 子 ヤコブ、タダイ、熱心 党 のシモン、
19 それからイスカリオテのユダ。このユダがイエスを 裏切 ったのである。イエスが 家 にはいられると、
20 群衆 がまた 集 まってきたので、一同 は 食事 をする 暇 もないほどであった。
21 身内 の 者 たちはこの 事 を 聞 いて、イエスを 取押 えに 出 てきた。気 が 狂 ったと 思 ったからである。
22 また、エルサレムから 下 ってきた 律法 学者 たちも、「彼 はベルゼブルにとりつかれている」と 言 い、「悪霊 どものかしらによって、悪霊 どもを 追 い 出 しているのだ」とも 言 った。
23 そこでイエスは 彼 らを 呼 び 寄 せ、譬 をもって 言 われた、「どうして、サタンがサタンを 追 い 出 すことができようか。
24 もし 国 が 内部 で 分 れ 争 うなら、その 国 は 立 ち 行 かない。
25 また、もし 家 が 内 わで 分 れ 争 うなら、その 家 は 立 ち 行 かないであろう。
26 もしサタンが 内部 で 対立 し 分争 するなら、彼 は 立 ち 行 けず、滅 んでしまう。
27 だれでも、まず 強 い 人 を 縛 りあげなければ、その 人 の 家 に 押 し 入 って 家財 を 奪 い 取 ることはできない。縛 ってからはじめて、その 家 を 略奪 することができる。
28 よく 言 い 聞 かせておくが、人 の 子 らには、その 犯 すすべての 罪 も 神 をけがす 言葉 も、ゆるされる。
29 しかし、聖霊 をけがす 者 は、いつまでもゆるされず、永遠 の 罪 に 定 められる」。
30 そう 言 われたのは、彼 らが「イエスはけがれた 霊 につかれている」と 言 っていたからである。
31 さて、イエスの 母 と 兄弟 たちとがきて、外 に 立 ち、人 をやってイエスを 呼 ばせた。
32 ときに、群衆 はイエスを 囲 んですわっていたが、「ごらんなさい。あなたの 母上 と 兄弟、姉妹 たちが、外 であなたを 尋 ねておられます」と 言 った。
33 すると、イエスは 彼 らに 答 えて 言 われた、「わたしの 母、わたしの 兄弟 とは、だれのことか」。
34 そして、自分 をとりかこんで、すわっている 人々 を 見 まわして、言 われた、「ごらんなさい、ここにわたしの 母、わたしの 兄弟 がいる。
35 神 のみこころを 行 う 者 はだれでも、わたしの 兄弟、また 姉妹、また 母 なのである」。
Chapter 4
1 イエスはまたも、海 べで 教 えはじめられた。おびただしい 群衆 がみもとに 集 まったので、イエスは 舟 に 乗 ってすわったまま、海上 におられ、群衆 はみな 海 に 沿 って 陸地 にいた。
2 イエスは 譬 で 多 くの 事 を 教 えられたが、その 教 の 中 で 彼 らにこう 言 われた、
3 「聞 きなさい、種 まきが 種 をまきに 出 て 行 った。
4 まいているうちに、道 ばたに 落 ちた 種 があった。すると、鳥 がきて 食 べてしまった。
5 ほかの 種 は 土 の 薄 い 石地 に 落 ちた。そこは 土 が 深 くないので、すぐ 芽 を 出 したが、
6 日 が 上 ると 焼 けて、根 がないために 枯 れてしまった。
7 ほかの 種 はいばらの 中 に 落 ちた。すると、いばらが 伸 びて、ふさいでしまったので、実 を 結 ばなかった。
8 ほかの 種 は 良 い 地 に 落 ちた。そしてはえて、育 って、ますます 実 を 結 び、三十 倍、六十 倍、百 倍 にもなった」。
9 そして 言 われた、「聞 く 耳 のある 者 は 聞 くがよい」。
10 イエスがひとりになられた 時、そばにいた 者 たちが、十二 弟子 と 共 に、これらの 譬 について 尋 ねた。
11 そこでイエスは 言 われた、「あなたがたには 神 の 国 の 奥義 が 授 けられているが、ほかの 者 たちには、すべてが 譬 で 語 られる。
12 それは『彼 らは 見 るには 見 るが、認 めず、聞 くには 聞 くが、悟 らず、悔 い 改 めてゆるされることがない』ためである」。
13 また 彼 らに 言 われた、「あなたがたはこの 譬 がわからないのか。それでは、どうしてすべての 譬 がわかるだろうか。
14 種 まきは 御言 をまくのである。
15 道 ばたに 御言 がまかれたとは、こういう 人 たちのことである。すなわち、御言 を 聞 くと、すぐにサタンがきて、彼 らの 中 にまかれた 御言 を、奪 って 行 くのである。
16 同 じように、石地 にまかれたものとは、こういう 人 たちのことである。御言 を 聞 くと、すぐに 喜 んで 受 けるが、
17 自分 の 中 に 根 がないので、しばらく 続 くだけである。そののち、御言 のために 困難 や 迫害 が 起 ってくると、すぐつまずいてしまう。
18 また、いばらの 中 にまかれたものとは、こういう 人 たちのことである。御言 を 聞 くが、
19 世 の 心 づかいと、富 の 惑 わしと、その 他 いろいろな 欲 とがはいってきて、御言 をふさぐので、実 を 結 ばなくなる。
20 また、良 い 地 にまかれたものとは、こういう 人 たちのことである。御言 を 聞 いて 受 けいれ、三十 倍、六十 倍、百 倍 の 実 を 結 ぶのである」。
21 また 彼 らに 言 われた、「ますの 下 や 寝台 の 下 に 置 くために、あかりを 持 ってくることがあろうか。燭台 の 上 に 置 くためではないか。
22 なんでも、隠 されているもので、現 れないものはなく、秘密 にされているもので、明 るみに 出 ないものはない。
23 聞 く 耳 のある 者 は 聞 くがよい」。
24 また 彼 らに 言 われた、「聞 くことがらに 注意 しなさい。あなたがたの 量 るそのはかりで、自分 にも 量 り 与 えられ、その 上 になお 増 し 加 えられるであろう。
25 だれでも、持 っている 人 は 更 に 与 えられ、持 っていない 人 は、持 っているものまでも 取 り 上 げられるであろう」。
26 また 言 われた、「神 の 国 は、ある 人 が 地 に 種 をまくようなものである。
27 夜昼、寝起 きしている 間 に、種 は 芽 を 出 して 育 って 行 くが、どうしてそうなるのか、その 人 は 知 らない。
28 地 はおのずから 実 を 結 ばせるもので、初 めに 芽、つぎに 穂、つぎに 穂 の 中 に 豊 かな 実 ができる。
29 実 がいると、すぐにかまを 入 れる。刈入 れ 時 がきたからである」。
30 また 言 われた、「神 の 国 を 何 に 比 べようか。また、どんな 譬 で 言 いあらわそうか。
31 それは一 粒 のからし 種 のようなものである。地 にまかれる 時 には、地上 のどんな 種 よりも 小 さいが、
32 まかれると、成長 してどんな 野菜 よりも 大 きくなり、大 きな 枝 を 張 り、その 陰 に 空 の 鳥 が 宿 るほどになる」。
33 イエスはこのような 多 くの 譬 で、人々 の 聞 く 力 にしたがって、御言 を 語 られた。
34 譬 によらないでは 語 られなかったが、自分 の 弟子 たちには、ひそかにすべてのことを 解 き 明 かされた。
35 さてその 日、夕方 になると、イエスは 弟子 たちに、「向 こう 岸 へ 渡 ろう」と 言 われた。
36 そこで、彼 らは 群衆 をあとに 残 し、イエスが 舟 に 乗 っておられるまま、乗 り 出 した。ほかの 舟 も 一緒 に 行 った。
37 すると、激 しい 突風 が 起 り、波 が 舟 の 中 に 打 ち 込 んできて、舟 に 満 ちそうになった。
38 ところがイエス 自身 は、舳 の 方 でまくらをして、眠 っておられた。そこで、弟子 たちはイエスをおこして、「先生、わたしどもがおぼれ 死 んでも、おかまいにならないのですか」と 言 った。
39 イエスは 起 きあがって 風 をしかり、海 にむかって、「静 まれ、黙 れ」と 言 われると、風 はやんで、大 なぎになった。
40 イエスは 彼 らに 言 われた、「なぜ、そんなにこわがるのか。どうして 信仰 がないのか」。
41 彼 らは 恐 れおののいて、互 に 言 った、「いったい、この 方 はだれだろう。風 も 海 も 従 わせるとは」。
Chapter 5
1 こうして 彼 らは 海 の 向 こう 岸、ゲラサ 人 の 地 に 着 いた。
2 それから、イエスが 舟 からあがられるとすぐに、けがれた 霊 につかれた 人 が 墓場 から 出 てきて、イエスに 出会 った。
3 この 人 は 墓場 をすみかとしており、もはやだれも、鎖 でさえも 彼 をつなぎとめて 置 けなかった。
4 彼 はたびたび 足 かせや 鎖 でつながれたが、鎖 を 引 きちぎり、足 かせを 砕 くので、だれも 彼 を 押 えつけることができなかったからである。
5 そして、夜昼 たえまなく 墓場 や 山 で 叫 びつづけて、石 で 自分 のからだを 傷 つけていた。
6 ところが、この 人 がイエスを 遠 くから 見 て、走 り 寄 って 拝 し、
7 大声 で 叫 んで 言 った、「いと 高 き 神 の 子 イエスよ、あなたはわたしとなんの 係 わりがあるのです。神 に 誓 ってお 願 いします。どうぞ、わたしを 苦 しめないでください」。
8 それは、イエスが、「けがれた 霊 よ、この 人 から 出 て 行 け」と 言 われたからである。
9 また 彼 に、「なんという 名前 か」と 尋 ねられると、「レギオンと 言 います。大 ぜいなのですから」と 答 えた。
10 そして、自分 たちをこの 土地 から 追 い 出 さないようにと、しきりに 願 いつづけた。
11 さて、そこの 山 の 中腹 に、豚 の 大群 が 飼 ってあった。
12 霊 はイエスに 願 って 言 った、「わたしどもを、豚 にはいらせてください。その 中 へ 送 ってください」。
13 イエスがお 許 しになったので、けがれた 霊 どもは 出 て 行 って、豚 の 中 へはいり 込 んだ。すると、その 群 れは二千 匹 ばかりであったが、がけから 海 へなだれを 打 って 駆 け 下 り、海 の 中 でおぼれ 死 んでしまった。
14 豚 を 飼 う 者 たちが 逃 げ 出 して、町 や 村 にふれまわったので、人々 は 何事 が 起 ったのかと 見 にきた。
15 そして、イエスのところにきて、悪霊 につかれた 人 が 着物 を 着 て、正気 になってすわっており、それがレギオンを 宿 していた 者 であるのを 見 て、恐 れた。
16 また、それを 見 た 人 たちは、悪霊 につかれた 人 の 身 に 起 った 事 と 豚 のこととを、彼 らに 話 して 聞 かせた。
17 そこで、人々 はイエスに、この 地方 から 出 て 行 っていただきたいと、頼 みはじめた。
18 イエスが 舟 に 乗 ろうとされると、悪霊 につかれていた 人 がお 供 をしたいと 願 い 出 た。
19 しかし、イエスはお 許 しにならないで、彼 に 言 われた、「あなたの 家族 のもとに 帰 って、主 がどんなに 大 きなことをしてくださったか、またどんなにあわれんでくださったか、それを 知 らせなさい」。
20 そこで、彼 は 立 ち 去 り、そして 自分 にイエスがしてくださったことを、ことごとくデカポリスの 地方 に 言 いひろめ 出 したので、人々 はみな 驚 き 怪 しんだ。
21 イエスがまた 舟 で 向 こう 岸 へ 渡 られると、大 ぜいの 群衆 がみもとに 集 まってきた。イエスは 海 べにおられた。
22 そこへ、会堂司 のひとりであるヤイロという 者 がきて、イエスを 見 かけるとその 足 もとにひれ 伏 し、
23 しきりに 願 って 言 った、「わたしの 幼 い 娘 が 死 にかかっています。どうぞ、その 子 がなおって 助 かりますように、おいでになって、手 をおいてやってください」。
24 そこで、イエスは 彼 と 一緒 に 出 かけられた。大 ぜいの 群衆 もイエスに 押 し 迫 りながら、ついて 行 った。
25 さてここに、十二 年間 も 長 血 をわずらっている 女 がいた。
26 多 くの 医者 にかかって、さんざん 苦 しめられ、その 持 ち 物 をみな 費 してしまったが、なんのかいもないばかりか、かえってますます 悪 くなる 一方 であった。
27 この 女 がイエスのことを 聞 いて、群衆 の 中 にまぎれ 込 み、うしろから、み 衣 にさわった。
28 それは、せめて、み 衣 にでもさわれば、なおしていただけるだろうと、思 っていたからである。
29 すると、血 の 元 がすぐにかわき、女 は 病気 がなおったことを、その 身 に 感 じた。
30 イエスはすぐ、自分 の 内 から 力 が 出 て 行 ったことに 気 づかれて、群衆 の 中 で 振 り 向 き、「わたしの 着物 にさわったのはだれか」と 言 われた。
31 そこで 弟子 たちが 言 った、「ごらんのとおり、群衆 があなたに 押 し 迫 っていますのに、だれがさわったかと、おっしゃるのですか」。
32 しかし、イエスはさわった 者 を 見 つけようとして、見 まわしておられた。
33 その 女 は 自分 の 身 に 起 ったことを 知 って、恐 れおののきながら 進 み 出 て、みまえにひれ 伏 して、すべてありのままを 申 し 上 げた。
34 イエスはその 女 に 言 われた、「娘 よ、あなたの 信仰 があなたを 救 ったのです。安心 して 行 きなさい。すっかりなおって、達者 でいなさい」。
35 イエスが、まだ 話 しておられるうちに、会堂司 の 家 から 人々 がきて 言 った、「あなたの 娘 はなくなりました。このうえ、先生 を 煩 わすには 及 びますまい」。
36 イエスはその 話 している 言葉 を 聞 き 流 して、会堂司 に 言 われた、「恐 れることはない。ただ 信 じなさい」。
37 そしてペテロ、ヤコブ、ヤコブの 兄弟 ヨハネのほかは、ついて 来 ることを、だれにもお 許 しにならなかった。
38 彼 らが 会堂司 の 家 に 着 くと、イエスは 人々 が 大声 で 泣 いたり、叫 んだりして、騒 いでいるのをごらんになり、
39 内 にはいって、彼 らに 言 われた、「なぜ 泣 き 騒 いでいるのか。子供 は 死 んだのではない。眠 っているだけである」。
40 人々 はイエスをあざ 笑 った。しかし、イエスはみんなの 者 を 外 に 出 し、子供 の 父母 と 供 の 者 たちだけを 連 れて、子供 のいる 所 にはいって 行 かれた。
41 そして 子供 の 手 を 取 って、「タリタ、クミ」と 言 われた。それは、「少女 よ、さあ、起 きなさい」という 意味 である。
42 すると、少女 はすぐに 起 き 上 がって、歩 き 出 した。十二 歳 にもなっていたからである。彼 らはたちまち 非常 な 驚 きに 打 たれた。
43 イエスは、だれにもこの 事 を 知 らすなと、きびしく 彼 らに 命 じ、また、少女 に 食物 を 与 えるようにと 言 われた。
Chapter 6
1 イエスはそこを 去 って、郷里 に 行 かれたが、弟子 たちも 従 って 行 った。
2 そして、安息日 になったので、会堂 で 教 えはじめられた。それを 聞 いた 多 くの 人々 は、驚 いて 言 った、「この 人 は、これらのことをどこで 習 ってきたのか。また、この 人 の 授 かった 知恵 はどうだろう。このような 力 あるわざがその 手 で 行 われているのは、どうしてか。
3 この 人 は 大工 ではないか。マリヤのむすこで、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの 兄弟 ではないか。またその 姉妹 たちも、ここにわたしたちと 一緒 にいるではないか」。こうして 彼 らはイエスにつまずいた。
4 イエスは 言 われた、「預言者 は、自分 の 郷里、親族、家 以外 では、どこででも 敬 われないことはない」。
5 そして、そこでは 力 あるわざを一つもすることができず、ただ 少数 の 病人 に 手 をおいていやされただけであった。
6 そして、彼 らの 不 信仰 を 驚 き 怪 しまれた。それからイエスは、附近 の 村々 を 巡 りあるいて 教 えられた。
7 また十二 弟子 を 呼 び 寄 せ、ふたりずつつかわすことにして、彼 らにけがれた 霊 を 制 する 権威 を 与 え、
8 また 旅 のために、つえ一 本 のほかには 何 も 持 たないように、パンも、袋 も、帯 の 中 に 銭 も 持 たず、
9 ただわらじをはくだけで、下着 も二 枚 は 着 ないように 命 じられた。
10 そして 彼 らに 言 われた、「どこへ 行 っても、家 にはいったなら、その 土地 を 去 るまでは、そこにとどまっていなさい。
11 また、あなたがたを 迎 えず、あなたがたの 話 を 聞 きもしない 所 があったなら、そこから 出 て 行 くとき、彼 らに 対 する 抗議 のしるしに、足 の 裏 のちりを 払 い 落 しなさい」。
12 そこで、彼 らは 出 て 行 って、悔改 めを 宣 べ 伝 え、
13 多 くの 悪霊 を 追 い 出 し、大 ぜいの 病人 に 油 をぬっていやした。
14 さて、イエスの 名 が 知 れわたって、ヘロデ 王 の 耳 にはいった。ある 人々 は「バプテスマのヨハネが、死人 の 中 からよみがえってきたのだ。それで、あのような 力 が 彼 のうちに 働 いているのだ」と 言 い、
15 他 の 人々 は「彼 はエリヤだ」と 言 い、また 他 の 人々 は「昔 の 預言者 のような 預言者 だ」と 言 った。
16 ところが、ヘロデはこれを 聞 いて、「わたしが 首 を 切 ったあのヨハネがよみがえったのだ」と 言 った。
17 このヘロデは、自分 の 兄弟 ピリポの 妻 ヘロデヤをめとったが、そのことで、人 をつかわし、ヨハネを 捕 えて 獄 につないだ。
18 それは、ヨハネがヘロデに、「兄弟 の 妻 をめとるのは、よろしくない」と 言 ったからである。
19 そこで、ヘロデヤはヨハネを 恨 み、彼 を 殺 そうと 思 っていたが、できないでいた。
20 それはヘロデが、ヨハネは 正 しくて 聖 なる 人 であることを 知 って、彼 を 恐 れ、彼 に 保護 を 加 え、またその 教 を 聞 いて 非常 に 悩 みながらも、なお 喜 んで 聞 いていたからである。
21 ところが、よい 機会 がきた。ヘロデは 自分 の 誕生 日 の 祝 に、高官 や 将校 やガリラヤの 重立 った 人 たちを 招 いて 宴会 を 催 したが、
22 そこへ、このヘロデヤの 娘 がはいってきて 舞 をまい、ヘロデをはじめ 列座 の 人 たちを 喜 ばせた。そこで 王 はこの 少女 に「ほしいものはなんでも 言 いなさい。あなたにあげるから」と 言 い、
23 さらに「ほしければ、この 国 の 半分 でもあげよう」と 誓 って 言 った。
24 そこで 少女 は 座 をはずして、母 に「何 をお 願 いしましょうか」と 尋 ねると、母 は「バプテスマのヨハネの 首 を」と 答 えた。
25 するとすぐ、少女 は 急 いで 王 のところに 行 って 願 った、「今 すぐに、バプテスマのヨハネの 首 を 盆 にのせて、それをいただきとうございます」。
26 王 は 非常 に 困 ったが、いったん 誓 ったのと、また 列座 の 人 たちの 手前、少女 の 願 いを 退 けることを 好 まなかった。
27 そこで、王 はすぐに 衛兵 をつかわし、ヨハネの 首 を 持 って 来 るように 命 じた。衛兵 は 出 て 行 き、獄中 でヨハネの 首 を 切 り、
28 盆 にのせて 持 ってきて 少女 に 与 え、少女 はそれを 母 にわたした。
29 ヨハネの 弟子 たちはこのことを 聞 き、その 死体 を 引 き 取 りにきて、墓 に 納 めた。
30 さて、使徒 たちはイエスのもとに 集 まってきて、自分 たちがしたことや 教 えたことを、みな 報告 した。
31 するとイエスは 彼 らに 言 われた、「さあ、あなたがたは、人 を 避 けて 寂 しい 所 へ 行 って、しばらく 休 むがよい」。それは、出入 りする 人 が 多 くて、食事 をする 暇 もなかったからである。
32 そこで 彼 らは 人 を 避 け、舟 に 乗 って 寂 しい 所 へ 行 った。
33 ところが、多 くの 人々 は 彼 らが 出 かけて 行 くのを 見、それと 気 づいて、方々 の 町々 からそこへ、一せいに 駆 けつけ、彼 らより 先 に 着 いた。
34 イエスは 舟 から 上 がって 大 ぜいの 群衆 をごらんになり、飼 う 者 のない 羊 のようなその 有様 を 深 くあわれんで、いろいろと 教 えはじめられた。
35 ところが、はや 時 もおそくなったので、弟子 たちはイエスのもとにきて 言 った、「ここは 寂 しい 所 でもあり、もう 時 もおそくなりました。
36 みんなを 解散 させ、めいめいで 何 か 食 べる 物 を 買 いに、まわりの 部落 や 村々 へ 行 かせてください」。
37 イエスは 答 えて 言 われた、「あなたがたの 手 で 食物 をやりなさい」。弟子 たちは 言 った、「わたしたちが二百デナリものパンを 買 ってきて、みんなに 食 べさせるのですか」。
38 するとイエスは 言 われた、「パンは 幾 つあるか。見 てきなさい」。彼 らは 確 かめてきて、「五つあります。それに 魚 が二ひき」と 言 った。
39 そこでイエスは、みんなを 組々 に 分 けて、青草 の 上 にすわらせるように 命 じられた。
40 人々 は、あるいは百 人 ずつ、あるいは五十 人 ずつ、列 をつくってすわった。
41 それから、イエスは五つのパンと二ひきの 魚 とを 手 に 取 り、天 を 仰 いでそれを 祝福 し、パンをさき、弟子 たちにわたして 配 らせ、また、二ひきの 魚 もみんなにお 分 けになった。
42 みんなの 者 は 食 べて 満腹 した。
43 そこで、パンくずや 魚 の 残 りを 集 めると、十二のかごにいっぱいになった。
44 パンを 食 べた 者 は 男 五千 人 であった。
45 それからすぐ、イエスは 自分 で 群衆 を 解散 させておられる 間 に、しいて 弟子 たちを 舟 に 乗 り 込 ませ、向 こう 岸 のベツサイダへ 先 におやりになった。
46 そして 群衆 に 別 れてから、祈 るために 山 へ 退 かれた。
47 夕方 になったとき、舟 は 海 のまん 中 に 出 ており、イエスだけが 陸地 におられた。
48 ところが 逆風 が 吹 いていたために、弟子 たちがこぎ 悩 んでいるのをごらんになって、夜明 けの四 時 ごろ、海 の 上 を 歩 いて 彼 らに 近 づき、そのそばを 通 り 過 ぎようとされた。
49 彼 らはイエスが 海 の 上 を 歩 いておられるのを 見 て、幽霊 だと 思 い、大声 で 叫 んだ。
50 みんなの 者 がそれを 見 て、おじ 恐 れたからである。しかし、イエスはすぐ 彼 らに 声 をかけ、「しっかりするのだ。わたしである。恐 れることはない」と 言 われた。
51 そして、彼 らの 舟 に 乗 り 込 まれると、風 はやんだ。彼 らは 心 の 中 で、非常 に 驚 いた。
52 先 のパンのことを 悟 らず、その 心 が 鈍 くなっていたからである。
53 彼 らは 海 を 渡 り、ゲネサレの 地 に 着 いて 舟 をつないだ。
54 そして 舟 からあがると、人々 はすぐイエスと 知 って、
55 その 地方 をあまねく 駆 けめぐり、イエスがおられると 聞 けば、どこへでも 病人 を 床 にのせて 運 びはじめた。
56 そして、村 でも 町 でも 部落 でも、イエスがはいって 行 かれる 所 では、病人 たちをその 広場 におき、せめてその 上着 のふさにでも、さわらせてやっていただきたいと、お 願 いした。そしてさわった 者 は 皆 いやされた。
Chapter 7
1 さて、パリサイ 人 と、ある 律法 学者 たちとが、エルサレムからきて、イエスのもとに 集 まった。
2 そして 弟子 たちのうちに、不浄 な 手、すなわち 洗 わない 手 で、パンを 食 べている 者 があるのを 見 た。
3 もともと、パリサイ 人 をはじめユダヤ 人 はみな、昔 の 人 の 言伝 えをかたく 守 って、念入 りに 手 を 洗 ってからでないと、食事 をしない。
4 また 市場 から 帰 ったときには、身 を 清 めてからでないと、食事 をせず、なおそのほかにも、杯、鉢、銅器 を 洗 うことなど、昔 から 受 けついでかたく 守 っている 事 が、たくさんあった。
5 そこで、パリサイ 人 と 律法 学者 たちとは、イエスに 尋 ねた、「なぜ、あなたの 弟子 たちは、昔 の 人 の 言伝 えに 従 って 歩 まないで、不浄 な 手 でパンを 食 べるのですか」。
6 イエスは 言 われた、「イザヤは、あなたがた 偽善者 について、こう 書 いているが、それは 適切 な 預言 である、『この 民 は、口 さきではわたしを 敬 うが、その 心 はわたしから 遠 く 離 れている。
7 人間 のいましめを 教 として 教 え、無意味 にわたしを 拝 んでいる』。
8 あなたがたは、神 のいましめをさしおいて、人間 の 言伝 えを 固執 している」。
9 また、言 われた、「あなたがたは、自分 たちの 言伝 えを 守 るために、よくも 神 のいましめを 捨 てたものだ。
10 モーセは 言 ったではないか、『父 と 母 とを 敬 え』、また『父 または 母 をののしる 者 は、必 ず 死 に 定 められる』と。
11 それだのに、あなたがたは、もし 人 が 父 または 母 にむかって、あなたに 差上 げるはずのこのものはコルバン、すなわち、供 え 物 ですと 言 えば、それでよいとして、
12 その 人 は 父母 に 対 して、もう 何 もしないで 済 むのだと 言 っている。
13 こうしてあなたがたは、自分 たちが 受 けついだ 言伝 えによって、神 の 言 を 無 にしている。また、このような 事 をしばしばおこなっている」。
14 それから、イエスは 再 び 群衆 を 呼 び 寄 せて 言 われた、「あなたがたはみんな、わたしの 言 うことを 聞 いて 悟 るがよい。
15 すべて 外 から 人 の 中 にはいって、人 をけがしうるものはない。かえって、人 の 中 から 出 てくるものが、人 をけがすのである。〔
16 聞 く 耳 のある 者 は 聞 くがよい〕」。
17 イエスが 群衆 を 離 れて 家 にはいられると、弟子 たちはこの 譬 について 尋 ねた。
18 すると、言 われた、「あなたがたも、そんなに 鈍 いのか。すべて、外 から 人 の 中 にはいって 来 るものは、人 を 汚 し 得 ないことが、わからないのか。
19 それは 人 の 心 の 中 にはいるのではなく、腹 の 中 にはいり、そして、外 に 出 て 行 くだけである」。イエスはこのように、どんな 食物 でもきよいものとされた。
20 さらに 言 われた、「人 から 出 て 来 るもの、それが 人 をけがすのである。
21 すなわち 内部 から、人 の 心 の 中 から、悪 い 思 いが 出 て 来 る。不品行、盗 み、殺人、
22 姦淫、貪欲、邪悪、欺 き、好色、妬 み、誹 り、高慢、愚痴。
23 これらの 悪 はすべて 内部 から 出 てきて、人 をけがすのである」。
24 さて、イエスは、そこを 立 ち 去 って、ツロの 地方 に 行 かれた。そして、だれにも 知 れないように、家 の 中 にはいられたが、隠 れていることができなかった。
25 そして、けがれた 霊 につかれた 幼 い 娘 をもつ 女 が、イエスのことをすぐ 聞 きつけてきて、その 足 もとにひれ 伏 した。
26 この 女 はギリシヤ 人 で、スロ・フェニキヤの 生 れであった。そして、娘 から 悪霊 を 追 い 出 してくださいとお 願 いした。
27 イエスは 女 に 言 われた、「まず 子供 たちに 十分 食 べさすべきである。子供 たちのパンを 取 って 小犬 に 投 げてやるのは、よろしくない」。
28 すると、女 は 答 えて 言 った、「主 よ、お 言葉 どおりです。でも、食卓 の 下 にいる 小犬 も、子供 たちのパンくずは、いただきます」。
29 そこでイエスは 言 われた、「その 言葉 で、じゅうぶんである。お 帰 りなさい。悪霊 は 娘 から 出 てしまった」。
30 そこで、女 が 家 に 帰 ってみると、その 子 は 床 の 上 に 寝 ており、悪霊 は 出 てしまっていた。
31 それから、イエスはまたツロの 地方 を 去 り、シドンを 経 てデカポリス 地方 を 通 りぬけ、ガリラヤの 海 べにこられた。
32 すると 人々 は、耳 が 聞 えず 口 のきけない 人 を、みもとに 連 れてきて、手 を 置 いてやっていただきたいとお 願 いした。
33 そこで、イエスは 彼 ひとりを 群衆 の 中 から 連 れ 出 し、その 両 耳 に 指 をさし 入 れ、それから、つばきでその 舌 を 潤 し、
34 天 を 仰 いでため 息 をつき、その 人 に「エパタ」と 言 われた。これは「開 けよ」という 意味 である。
35 すると 彼 の 耳 が 開 け、その 舌 のもつれもすぐ 解 けて、はっきりと 話 すようになった。
36 イエスは、この 事 をだれにも 言 ってはならぬと、人々 に 口止 めをされたが、口止 めをすればするほど、かえって、ますます 言 いひろめた。
37 彼 らは、ひとかたならず 驚 いて 言 った、「このかたのなさった 事 は、何 もかも、すばらしい。耳 の 聞 えない 者 を 聞 えるようにしてやり、口 のきけない 者 をきけるようにしておやりになった」。
Chapter 8
1 そのころ、また 大 ぜいの 群衆 が 集 まっていたが、何 も 食 べるものがなかったので、イエスは 弟子 たちを 呼 び 寄 せて 言 われた、
2 「この 群衆 がかわいそうである。もう三 日間 もわたしと 一緒 にいるのに、何 も 食 べるものがない。
3 もし、彼 らを 空腹 のまま 家 に 帰 らせるなら、途中 で 弱 り 切 ってしまうであろう。それに、なかには 遠 くからきている 者 もある」。
4 弟子 たちは 答 えた、「こんな 荒野 で、どこからパンを 手 に 入 れて、これらの 人々 にじゅうぶん 食 べさせることができましょうか」。
5 イエスが 弟子 たちに、「パンはいくつあるか」と 尋 ねられると、「七つあります」と 答 えた。
6 そこでイエスは 群衆 に 地 にすわるように 命 じられた。そして七つのパンを 取 り、感謝 してこれをさき、人々 に 配 るように 弟子 たちに 渡 されると、弟子 たちはそれを 群衆 に 配 った。
7 また 小 さい 魚 が 少 しばかりあったので、祝福 して、それをも 人々 に 配 るようにと 言 われた。
8 彼 らは 食 べて 満腹 した。そして 残 ったパンくずを 集 めると、七かごになった。
9 人々 の 数 はおよそ四千 人 であった。それからイエスは 彼 らを 解散 させ、
10 すぐ 弟子 たちと 共 に 舟 に 乗 って、ダルマヌタの 地方 へ 行 かれた。
11 パリサイ 人 たちが 出 てきて、イエスを 試 みようとして 議論 をしかけ、天 からのしるしを 求 めた。
12 イエスは、心 の 中 で 深 く 嘆息 して 言 われた、「なぜ、今 の 時代 はしるしを 求 めるのだろう。よく 言 い 聞 かせておくが、しるしは 今 の 時代 には 決 して 与 えられない」。
13 そして、イエスは 彼 らをあとに 残 し、また 舟 に 乗 って 向 こう 岸 へ 行 かれた。
14 弟子 たちはパンを 持 って 来 るのを 忘 れていたので、舟 の 中 にはパン一つしか 持 ち 合 わせがなかった。
15 そのとき、イエスは 彼 らを 戒 めて、「パリサイ 人 のパン 種 とヘロデのパン 種 とを、よくよく 警戒 せよ」と 言 われた。
16 弟子 たちは、これは 自分 たちがパンを 持 っていないためであろうと、互 に 論 じ 合 った。
17 イエスはそれと 知 って、彼 らに 言 われた、「なぜ、パンがないからだと 論 じ 合 っているのか。まだわからないのか、悟 らないのか。あなたがたの 心 は 鈍 くなっているのか。
18 目 があっても 見 えないのか。耳 があっても 聞 えないのか。まだ 思 い 出 さないのか。
19 五つのパンをさいて五千 人 に 分 けたとき、拾 い 集 めたパンくずは、幾 つのかごになったか」。弟子 たちは 答 えた、「十二かごです」。
20 「七つのパンを四千 人 に 分 けたときには、パンくずを 幾 つのかごに 拾 い 集 めたか」。「七かごです」と 答 えた。
21 そこでイエスは 彼 らに 言 われた、「まだ 悟 らないのか」。
22 そのうちに、彼 らはベツサイダに 着 いた。すると 人々 が、ひとりの 盲人 を 連 れてきて、さわってやっていただきたいとお 願 いした。
23 イエスはこの 盲人 の 手 をとって、村 の 外 に 連 れ 出 し、その 両方 の 目 につばきをつけ、両手 を 彼 に 当 てて、「何 か 見 えるか」と 尋 ねられた。
24 すると 彼 は 顔 を 上 げて 言 った、「人 が 見 えます。木 のように 見 えます。歩 いているようです」。
25 それから、イエスが 再 び 目 の 上 に 両手 を 当 てられると、盲人 は 見 つめているうちに、なおってきて、すべてのものがはっきりと 見 えだした。
26 そこでイエスは、「村 にはいってはいけない」と 言 って、彼 を 家 に 帰 された。
27 さて、イエスは 弟子 たちとピリポ・カイザリヤの 村々 へ 出 かけられたが、その 途中 で、弟子 たちに 尋 ねて 言 われた、「人々 は、わたしをだれと 言 っているか」。
28 彼 らは 答 えて 言 った、「バプテスマのヨハネだと、言 っています。また、エリヤだと 言 い、また、預言者 のひとりだと 言 っている 者 もあります」。
29 そこでイエスは 彼 らに 尋 ねられた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと 言 うか」。ペテロが 答 えて 言 った、「あなたこそキリストです」。
30 するとイエスは、自分 のことをだれにも 言 ってはいけないと、彼 らを 戒 められた。
31 それから、人 の 子 は 必 ず 多 くの 苦 しみを 受 け、長老、祭司長、律法 学者 たちに 捨 てられ、また 殺 され、そして三 日 の 後 によみがえるべきことを、彼 らに 教 えはじめ、
32 しかもあからさまに、この 事 を 話 された。すると、ペテロはイエスをわきへ 引 き 寄 せて、いさめはじめたので、
33 イエスは 振 り 返 って、弟子 たちを 見 ながら、ペテロをしかって 言 われた、「サタンよ、引 きさがれ。あなたは 神 のことを 思 わないで、人 のことを 思 っている」。
34 それから 群衆 を 弟子 たちと 一緒 に 呼 び 寄 せて、彼 らに 言 われた、「だれでもわたしについてきたいと 思 うなら、自分 を 捨 て、自分 の 十字架 を 負 うて、わたしに 従 ってきなさい。
35 自分 の 命 を 救 おうと 思 う 者 はそれを 失 い、わたしのため、また 福音 のために、自分 の 命 を 失 う 者 は、それを 救 うであろう。
36 人 が 全 世界 をもうけても、自分 の 命 を 損 したら、なんの 得 になろうか。
37 また、人 はどんな 代価 を 払 って、その 命 を 買 いもどすことができようか。
38 邪悪 で 罪深 いこの 時代 にあって、わたしとわたしの 言葉 とを 恥 じる 者 に 対 しては、人 の 子 もまた、父 の 栄光 のうちに 聖 なる 御使 たちと 共 に 来 るときに、その 者 を 恥 じるであろう」。
Chapter 9
1 また、彼 らに 言 われた、「よく 聞 いておくがよい。神 の 国 が 力 をもって 来 るのを 見 るまでは、決 して 死 を 味 わわない 者 が、ここに 立 っている 者 の 中 にいる」。
2 六日 の 後、イエスは、ただペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを 連 れて、高 い 山 に 登 られた。ところが、彼 らの 目 の 前 でイエスの 姿 が 変 り、
3 その 衣 は 真白 く 輝 き、どんな 布 さらしでも、それほどに 白 くすることはできないくらいになった。
4 すると、エリヤがモーセと 共 に 彼 らに 現 れて、イエスと 語 り 合 っていた。
5 ペテロはイエスにむかって 言 った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは 小屋 を三つ 建 てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。
6 そう 言 ったのは、みんなの 者 が 非常 に 恐 れていたので、ペテロは 何 を 言 ってよいか、わからなかったからである。
7 すると、雲 がわき 起 って 彼 らをおおった。そして、その 雲 の 中 から 声 があった、「これはわたしの 愛 する 子 である。これに 聞 け」。
8 彼 らは 急 いで 見 まわしたが、もはやだれも 見 えず、ただイエスだけが、自分 たちと 一緒 におられた。
9 一同 が 山 を 下 って 来 るとき、イエスは「人 の 子 が 死人 の 中 からよみがえるまでは、いま 見 たことをだれにも 話 してはならない」と、彼 らに 命 じられた。
10 彼 らはこの 言葉 を 心 にとめ、死人 の 中 からよみがえるとはどういうことかと、互 に 論 じ 合 った。
11 そしてイエスに 尋 ねた、「なぜ、律法 学者 たちは、エリヤが 先 に 来 るはずだと 言 っているのですか」。
12 イエスは 言 われた、「確 かに、エリヤが 先 にきて、万事 を 元 どおりに 改 める。しかし、人 の 子 について、彼 が 多 くの 苦 しみを 受 け、かつ 恥 ずかしめられると、書 いてあるのはなぜか。
13 しかしあなたがたに 言 っておく、エリヤはすでにきたのだ。そして 彼 について 書 いてあるように、人々 は 自分 かってに 彼 をあしらった」。
14 さて、彼 らがほかの 弟子 たちの 所 にきて 見 ると、大 ぜいの 群衆 が 弟子 たちを 取 り 囲 み、そして 律法 学者 たちが 彼 らと 論 じ 合 っていた。
15 群衆 はみな、すぐイエスを 見 つけて、非常 に 驚 き、駆 け 寄 ってきて、あいさつをした。
16 イエスが 彼 らに、「あなたがたは 彼 らと 何 を 論 じているのか」と 尋 ねられると、
17 群衆 のひとりが 答 えた、「先生、おしの 霊 につかれているわたしのむすこを、こちらに 連 れて 参 りました。
18 霊 がこのむすこにとりつきますと、どこででも 彼 を 引 き 倒 し、それから 彼 はあわを 吹 き、歯 をくいしばり、からだをこわばらせてしまいます。それでお 弟子 たちに、この 霊 を 追 い 出 してくださるように 願 いましたが、できませんでした」。
19 イエスは 答 えて 言 われた、「ああ、なんという 不 信仰 な 時代 であろう。いつまで、わたしはあなたがたと 一緒 におられようか。いつまで、あなたがたに 我慢 ができようか。その 子 をわたしの 所 に 連 れてきなさい」。
20 そこで 人々 は、その 子 をみもとに 連 れてきた。霊 がイエスを 見 るや 否 や、その 子 をひきつけさせたので、子 は 地 に 倒 れ、あわを 吹 きながらころげまわった。
21 そこで、イエスが 父親 に「いつごろから、こんなになったのか」と 尋 ねられると、父親 は 答 えた、「幼 い 時 からです。
22 霊 はたびたび、この 子 を 火 の 中、水 の 中 に 投 げ 入 れて、殺 そうとしました。しかしできますれば、わたしどもをあわれんでお 助 けください」。
23 イエスは 彼 に 言 われた、「もしできれば、と 言 うのか。信 ずる 者 には、どんな 事 でもできる」。
24 その 子 の 父親 はすぐ 叫 んで 言 った、「信 じます。不 信仰 なわたしを、お 助 けください」。
25 イエスは 群衆 が 駆 け 寄 って 来 るのをごらんになって、けがれた 霊 をしかって 言 われた、「おしとつんぼの 霊 よ、わたしがおまえに 命 じる。この 子 から 出 て 行 け。二 度 と、はいって 来 るな」。
26 すると 霊 は 叫 び 声 をあげ、激 しく 引 きつけさせて 出 て 行 った。その 子 は 死人 のようになったので、多 くの 人 は、死 んだのだと 言 った。
27 しかし、イエスが 手 を 取 って 起 されると、その 子 は 立 ち 上 がった。
28 家 にはいられたとき、弟子 たちはひそかにお 尋 ねした、「わたしたちは、どうして 霊 を 追 い 出 せなかったのですか」。
29 すると、イエスは 言 われた、「このたぐいは、祈 によらなければ、どうしても 追 い 出 すことはできない」。
30 それから 彼 らはそこを 立 ち 去 り、ガリラヤをとおって 行 ったが、イエスは 人 に 気 づかれるのを 好 まれなかった。
31 それは、イエスが 弟子 たちに 教 えて、「人 の 子 は 人々 の 手 にわたされ、彼 らに 殺 され、殺 されてから三 日 の 後 によみがえるであろう」と 言 っておられたからである。
32 しかし、彼 らはイエスの 言 われたことを 悟 らず、また 尋 ねるのを 恐 れていた。
33 それから 彼 らはカペナウムにきた。そして 家 におられるとき、イエスは 弟子 たちに 尋 ねられた、「あなたがたは 途中 で 何 を 論 じていたのか」。
34 彼 らは 黙 っていた。それは 途中 で、だれが一ばん 偉 いかと、互 に 論 じ 合 っていたからである。
35 そこで、イエスはすわって十二 弟子 を 呼 び、そして 言 われた、「だれでも一ばん 先 になろうと 思 うならば、一ばんあとになり、みんなに 仕 える 者 とならねばならない」。
36 そして、ひとりの 幼 な 子 をとりあげて、彼 らのまん 中 に 立 たせ、それを 抱 いて 言 われた。
37 「だれでも、このような 幼 な 子 のひとりを、わたしの 名 のゆえに 受 けいれる 者 は、わたしを 受 けいれるのである。そして、わたしを 受 けいれる 者 は、わたしを 受 けいれるのではなく、わたしをおつかわしになったかたを 受 けいれるのである」。
38 ヨハネがイエスに 言 った、「先生、わたしたちについてこない 者 が、あなたの 名 を 使 って 悪霊 を 追 い 出 しているのを 見 ましたが、その 人 はわたしたちについてこなかったので、やめさせました」。
39 イエスは 言 われた、「やめさせないがよい。だれでもわたしの 名 で 力 あるわざを 行 いながら、すぐそのあとで、わたしをそしることはできない。
40 わたしたちに 反対 しない 者 は、わたしたちの 味方 である。
41 だれでも、キリストについている 者 だというので、あなたがたに 水 一杯 でも 飲 ませてくれるものは、よく 言 っておくが、決 してその 報 いからもれることはないであろう。
42 また、わたしを 信 じるこれらの 小 さい 者 のひとりをつまずかせる 者 は、大 きなひきうすを 首 にかけられて 海 に 投 げ 込 まれた 方 が、はるかによい。
43 もし、あなたの 片手 が 罪 を 犯 させるなら、それを 切 り 捨 てなさい。両手 がそろったままで 地獄 の 消 えない 火 の 中 に 落 ち 込 むよりは、かたわになって 命 に 入 る 方 がよい。〔
44 地獄 では、うじがつきず、火 も 消 えることがない。〕
45 もし、あなたの 片足 が 罪 を 犯 させるなら、それを 切 り 捨 てなさい。両足 がそろったままで 地獄 に 投 げ 入 れられるよりは、片足 で 命 に 入 る 方 がよい。〔
46 地獄 では、うじがつきず、火 も 消 えることがない。〕
47 もし、あなたの 片目 が 罪 を 犯 させるなら、それを 抜 き 出 しなさい。両 眼 がそろったままで 地獄 に 投 げ 入 れられるよりは、片目 になって 神 の 国 に 入 る 方 がよい。
48 地獄 では、うじがつきず、火 も 消 えることがない。
49 人 はすべて 火 で 塩 づけられねばならない。
50 塩 はよいものである。しかし、もしその 塩 の 味 がぬけたら、何 によってその 味 が 取 りもどされようか。あなたがた 自身 の 内 に 塩 を 持 ちなさい。そして、互 に 和 らぎなさい」。
Chapter 10
1 それから、イエスはそこを 去 って、ユダヤの 地方 とヨルダンの 向 こう 側 へ 行 かれたが、群衆 がまた 寄 り 集 まったので、いつものように、また 教 えておられた。
2 そのとき、パリサイ 人 たちが 近 づいてきて、イエスを 試 みようとして 質問 した、「夫 はその 妻 を 出 しても 差 しつかえないでしょうか」。
3 イエスは 答 えて 言 われた、「モーセはあなたがたになんと 命 じたか」。
4 彼 らは 言 った、「モーセは、離縁 状 を 書 いて 妻 を 出 すことを 許 しました」。
5 そこでイエスは 言 われた、「モーセはあなたがたの 心 が、かたくななので、あなたがたのためにこの 定 めを 書 いたのである。
6 しかし、天地 創造 の 初 めから、『神 は 人 を 男 と 女 とに 造 られた。
7 それゆえに、人 はその 父母 を 離 れ、
8 ふたりの 者 は 一体 となるべきである』。彼 らはもはや、ふたりではなく 一体 である。
9 だから、神 が 合 わせられたものを、人 は 離 してはならない」。
10 家 にはいってから、弟子 たちはまたこのことについて 尋 ねた。
11 そこで、イエスは 言 われた、「だれでも、自分 の 妻 を 出 して 他 の 女 をめとる 者 は、その 妻 に 対 して 姦淫 を 行 うのである。
12 また 妻 が、その 夫 と 別 れて 他 の 男 にとつぐならば、姦淫 を 行 うのである」。
13 イエスにさわっていただくために、人々 が 幼 な 子 らをみもとに 連 れてきた。ところが、弟子 たちは 彼 らをたしなめた。
14 それを 見 てイエスは 憤 り、彼 らに 言 われた、「幼 な 子 らをわたしの 所 に 来 るままにしておきなさい。止 めてはならない。神 の 国 はこのような 者 の 国 である。
15 よく 聞 いておくがよい。だれでも 幼 な 子 のように 神 の 国 を 受 けいれる 者 でなければ、そこにはいることは 決 してできない」。
16 そして 彼 らを 抱 き、手 をその 上 において 祝福 された。
17 イエスが 道 に 出 て 行 かれると、ひとりの 人 が 走 り 寄 り、みまえにひざまずいて 尋 ねた、「よき 師 よ、永遠 の 生命 を 受 けるために、何 をしたらよいでしょうか」。
18 イエスは 言 われた、「なぜわたしをよき 者 と 言 うのか。神 ひとりのほかによい 者 はいない。
19 いましめはあなたの 知 っているとおりである。『殺 すな、姦淫 するな、盗 むな、偽証 を 立 てるな。欺 き 取 るな。父 と 母 とを 敬 え』」。
20 すると、彼 は 言 った、「先生、それらの 事 はみな、小 さい 時 から 守 っております」。
21 イエスは 彼 に 目 をとめ、いつくしんで 言 われた、「あなたに 足 りないことが一つある。帰 って、持 っているものをみな 売 り 払 って、貧 しい 人々 に 施 しなさい。そうすれば、天 に 宝 を 持 つようになろう。そして、わたしに 従 ってきなさい」。
22 すると、彼 はこの 言葉 を 聞 いて、顔 を 曇 らせ、悲 しみながら 立 ち 去 った。たくさんの 資産 を 持 っていたからである。
23 それから、イエスは 見 まわして、弟子 たちに 言 われた、「財産 のある 者 が 神 の 国 にはいるのは、なんとむずかしいことであろう」。
24 弟子 たちはこの 言葉 に 驚 き 怪 しんだ。イエスは 更 に 言 われた、「子 たちよ、神 の 国 にはいるのは、なんとむずかしいことであろう。
25 富 んでいる 者 が 神 の 国 にはいるよりは、らくだが 針 の 穴 を 通 る 方 が、もっとやさしい」。
26 すると 彼 らはますます 驚 いて、互 に 言 った、「それでは、だれが 救 われることができるのだろう」。
27 イエスは 彼 らを 見 つめて 言 われた、「人 にはできないが、神 にはできる。神 はなんでもできるからである」。
28 ペテロがイエスに 言 い 出 した、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを 捨 てて、あなたに 従 って 参 りました」。
29 イエスは 言 われた、「よく 聞 いておくがよい。だれでもわたしのために、また 福音 のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子、もしくは 畑 を 捨 てた 者 は、
30 必 ずその百 倍 を 受 ける。すなわち、今 この 時代 では 家、兄弟、姉妹、母、子 および 畑 を 迫害 と 共 に 受 け、また、きたるべき 世 では 永遠 の 生命 を 受 ける。
31 しかし、多 くの 先 の 者 はあとになり、あとの 者 は 先 になるであろう」。
32 さて、一同 はエルサレムへ 上 る 途上 にあったが、イエスが 先頭 に 立 って 行 かれたので、彼 らは 驚 き 怪 しみ、従 う 者 たちは 恐 れた。するとイエスはまた十二 弟子 を 呼 び 寄 せて、自分 の 身 に 起 ろうとすることについて 語 りはじめられた、
33 「見 よ、わたしたちはエルサレムへ 上 って 行 くが、人 の 子 は 祭司長、律法 学者 たちの 手 に 引 きわたされる。そして 彼 らは 死刑 を 宣告 した 上、彼 を 異邦人 に 引 きわたすであろう。
34 また 彼 をあざけり、つばきをかけ、むち 打 ち、ついに 殺 してしまう。そして 彼 は三 日 の 後 によみがえるであろう」。
35 さて、ゼベダイの 子 のヤコブとヨハネとがイエスのもとにきて 言 った、「先生、わたしたちがお 頼 みすることは、なんでもかなえてくださるようにお 願 いします」。
36 イエスは 彼 らに「何 をしてほしいと、願 うのか」と 言 われた。
37 すると 彼 らは 言 った、「栄光 をお 受 けになるとき、ひとりをあなたの 右 に、ひとりを 左 にすわるようにしてください」。
38 イエスは 言 われた、「あなたがたは 自分 が 何 を 求 めているのか、わかっていない。あなたがたは、わたしが 飲 む 杯 を 飲 み、わたしが 受 けるバプテスマを 受 けることができるか」。
39 彼 らは「できます」と 答 えた。するとイエスは 言 われた、「あなたがたは、わたしが 飲 む 杯 を 飲 み、わたしが 受 けるバプテスマを 受 けるであろう。
40 しかし、わたしの 右、左 にすわらせることは、わたしのすることではなく、ただ 備 えられている 人々 だけに 許 されることである」。
41 十 人 の 者 はこれを 聞 いて、ヤコブとヨハネとのことで 憤慨 し 出 した。
42 そこで、イエスは 彼 らを 呼 び 寄 せて 言 われた、「あなたがたの 知 っているとおり、異邦人 の 支配者 と 見 られている 人々 は、その 民 を 治め、また 偉 い 人 たちは、その 民 の 上 に 権力 をふるっている。
43 しかし、あなたがたの 間 では、そうであってはならない。かえって、あなたがたの 間 で 偉 くなりたいと 思 う 者 は、仕 える 人 となり、
44 あなたがたの 間 でかしらになりたいと 思 う 者 は、すべての 人 の 僕 とならねばならない。
45 人 の 子 がきたのも、仕 えられるためではなく、仕 えるためであり、また 多 くの 人 のあがないとして、自分 の 命 を 与 えるためである」。
46 それから、彼 らはエリコにきた。そして、イエスが 弟子 たちや 大 ぜいの 群衆 と 共 にエリコから 出 かけられたとき、テマイの 子、バルテマイという 盲人 のこじきが、道 ばたにすわっていた。
47 ところが、ナザレのイエスだと 聞 いて、彼 は「ダビデの 子 イエスよ、わたしをあわれんでください」と 叫 び 出 した。
48 多 くの 人々 は 彼 をしかって 黙 らせようとしたが、彼 はますます 激 しく 叫 びつづけた、「ダビデの 子 イエスよ、わたしをあわれんでください」。
49 イエスは 立 ちどまって「彼 を 呼 べ」と 命 じられた。そこで、人々 はその 盲人 を 呼 んで 言 った、「喜 べ、立 て、おまえを 呼 んでおられる」。
50 そこで 彼 は 上着 を 脱 ぎ 捨 て、踊 りあがってイエスのもとにきた。
51 イエスは 彼 にむかって 言 われた、「わたしに 何 をしてほしいのか」。その 盲人 は 言 った、「先生、見 えるようになることです」。
52 そこでイエスは 言 われた、「行 け、あなたの 信仰 があなたを 救 った」。すると 彼 は、たちまち 見 えるようになり、イエスに 従 って 行 った。
Chapter 11
1 さて、彼 らがエルサレムに 近 づき、オリブの 山 に 沿 ったベテパゲ、ベタニヤの 附近 にきた 時、イエスはふたりの 弟子 をつかわして 言 われた、
2 「むこうの 村 へ 行 きなさい。そこにはいるとすぐ、まだだれも 乗 ったことのないろばの 子 が、つないであるのを 見 るであろう。それを 解 いて 引 いてきなさい。
3 もし、だれかがあなたがたに、なぜそんな 事 をするのかと 言 ったなら、主 がお 入 り 用 なのです。またすぐ、ここへ 返 してくださいますと、言 いなさい」。
4 そこで、彼 らは 出 かけて 行 き、そして 表通 りの 戸口 に、ろばの 子 がつないであるのを 見 たので、それを 解 いた。
5 すると、そこに 立 っていた 人々 が 言 った、「そのろばの 子 を 解 いて、どうするのか」。
6 弟子 たちは、イエスが 言 われたとおり 彼 らに 話 したので、ゆるしてくれた。
7 そこで、弟子 たちは、そのろばの 子 をイエスのところに 引 いてきて、自分 たちの 上着 をそれに 投 げかけると、イエスはその 上 にお 乗 りになった。
8 すると 多 くの 人々 は 自分 たちの 上着 を 道 に 敷 き、また 他 の 人々 は 葉 のついた 枝 を 野原 から 切 ってきて 敷 いた。
9 そして、前 に 行 く 者 も、あとに 従 う 者 も 共 に 叫 びつづけた、「ホサナ、主 の 御名 によってきたる 者 に、祝福 あれ。
10 今 きたる、われらの 父 ダビデの 国 に、祝福 あれ。いと 高 き 所 に、ホサナ」。
11 こうしてイエスはエルサレムに 着 き、宮 にはいられた。そして、すべてのものを 見 まわった 後、もはや 時 もおそくなっていたので、十二 弟子 と 共 にベタニヤに 出 て 行 かれた。
12 翌日、彼 らがベタニヤから 出 かけてきたとき、イエスは 空腹 をおぼえられた。
13 そして、葉 の 茂 ったいちじくの 木 を 遠 くからごらんになって、その 木 に 何 かありはしないかと 近寄 られたが、葉 のほかは 何 も 見当 らなかった。いちじくの 季節 でなかったからである。
14 そこで、イエスはその 木 にむかって、「今 から 後 いつまでも、おまえの 実 を 食 べる 者 がないように」と 言 われた。弟子 たちはこれを 聞 いていた。
15 それから、彼 らはエルサレムにきた。イエスは 宮 に 入 り、宮 の 庭 で 売 り 買 いしていた 人々 を 追 い 出 しはじめ、両替人 の 台 や、はとを 売 る 者 の 腰掛 をくつがえし、
16 また 器 ものを 持 って 宮 の 庭 を 通 り 抜 けるのをお 許 しにならなかった。
17 そして、彼 らに 教 えて 言 われた、「『わたしの 家 は、すべての 国民 の 祈 の 家 ととなえらるべきである』と 書 いてあるではないか。それだのに、あなたがたはそれを 強盗 の 巣 にしてしまった」。
18 祭司長、律法 学者 たちはこれを 聞 いて、どうかしてイエスを 殺 そうと 計 った。彼 らは、群衆 がみなその 教 に 感動 していたので、イエスを 恐 れていたからである。
19 夕方 になると、イエスと 弟子 たちとは、いつものように 都 の 外 に 出 て 行 った。
20 朝 はやく 道 をとおっていると、彼 らは 先 のいちじくが 根元 から 枯 れているのを 見 た。
21 そこで、ペテロは 思 い 出 してイエスに 言 った、「先生、ごらんなさい。あなたがのろわれたいちじくが、枯 れています」。
22 イエスは 答 えて 言 われた、「神 を 信 じなさい。
23 よく 聞 いておくがよい。だれでもこの 山 に、動 き 出 して、海 の 中 にはいれと 言 い、その 言 ったことは 必 ず 成 ると、心 に 疑 わないで 信 じるなら、そのとおりに 成 るであろう。
24 そこで、あなたがたに 言 うが、なんでも 祈 り 求 めることは、すでにかなえられたと 信 じなさい。そうすれば、そのとおりになるであろう。
25 また 立 って 祈 るとき、だれかに 対 して、何 か 恨 み 事 があるならば、ゆるしてやりなさい。そうすれば、天 にいますあなたがたの 父 も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださるであろう。〔
26 もしゆるさないならば、天 にいますあなたがたの 父 も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださらないであろう〕」。
27 彼 らはまたエルサレムにきた。そして、イエスが 宮 の 内 を 歩 いておられると、祭司長、律法 学者、長老 たちが、みもとにきて 言 った、
28 「何 の 権威 によってこれらの 事 をするのですか。だれが、そうする 権威 を 授 けたのですか」。
29 そこで、イエスは 彼 らに 言 われた、「一つだけ 尋 ねよう。それに 答 えてほしい。そうしたら、何 の 権威 によって、わたしがこれらの 事 をするのか、あなたがたに 言 おう。
30 ヨハネのバプテスマは 天 からであったか、人 からであったか、答 えなさい」。
31 すると、彼 らは 互 に 論 じて 言 った、「もし 天 からだと 言 えば、では、なぜ 彼 を 信 じなかったのか、とイエスは 言 うだろう。
32 しかし、人 からだと 言 えば……」。彼 らは 群衆 を 恐 れていた。人々 が 皆、ヨハネを 預言者 だとほんとうに 思 っていたからである。
33 それで 彼 らは「わたしたちにはわかりません」と 答 えた。するとイエスは 言 われた、「わたしも 何 の 権威 によってこれらの 事 をするのか、あなたがたに 言 うまい」。
Chapter 12
1 そこでイエスは 譬 で 彼 らに 語 り 出 された、「ある 人 がぶどう 園 を 造 り、垣 をめぐらし、また 酒 ぶねの 穴 を 掘 り、やぐらを 立 て、それを 農夫 たちに 貸 して、旅 に 出 かけた。
2 季節 になったので、農夫 たちのところへ、ひとりの 僕 を 送 って、ぶどう 園 の 収穫 の 分 け 前 を 取 り 立 てさせようとした。
3 すると、彼 らはその 僕 をつかまえて、袋 だたきにし、から 手 で 帰 らせた。
4 また 他 の 僕 を 送 ったが、その 頭 をなぐって 侮辱 した。
5 そこでまた 他 の 者 を 送 ったが、今度 はそれを 殺 してしまった。そのほか、なお 大 ぜいの 者 を 送 ったが、彼 らを 打 ったり、殺 したりした。
6 ここに、もうひとりの 者 がいた。それは 彼 の 愛子 であった。自分 の 子 は 敬 ってくれるだろうと 思 って、最後 に 彼 をつかわした。
7 すると、農夫 たちは『あれはあと 取 りだ。さあ、これを 殺 してしまおう。そうしたら、その 財産 はわれわれのものになるのだ』と 話 し 合 い、
8 彼 をつかまえて 殺 し、ぶどう 園 の 外 に 投 げ 捨 てた。
9 このぶどう 園 の 主人 は、どうするだろうか。彼 は 出 てきて、農夫 たちを 殺 し、ぶどう 園 を 他 の 人々 に 与 えるであろう。
10 あなたがたは、この 聖書 の 句 を 読 んだことがないのか。『家 造 りらの 捨 てた 石 が 隅 のかしら 石 になった。
11 これは 主 がなされたことで、わたしたちの 目 には 不思議 に 見 える』」。
12 彼 らはいまの 譬 が、自分 たちに 当 てて 語 られたことを 悟 ったので、イエスを 捕 えようとしたが、群衆 を 恐 れた。そしてイエスをそこに 残 して 立 ち 去 った。
13 さて、人々 はパリサイ 人 やヘロデ 党 の 者 を 数人、イエスのもとにつかわして、その 言葉 じりを 捕 えようとした。
14 彼 らはきてイエスに 言 った、「先生、わたしたちはあなたが 真実 なかたで、だれをも、はばかられないことを 知 っています。あなたは 人 に 分 け 隔 てをなさらないで、真理 に 基 いて 神 の 道 を 教 えてくださいます。ところで、カイザルに 税金 を 納 めてよいでしょうか、いけないでしょうか。納 めるべきでしょうか、納 めてはならないのでしょうか」。
15 イエスは 彼 らの 偽善 を 見抜 いて 言 われた、「なぜわたしをためそうとするのか。デナリを 持 ってきて 見 せなさい」。
16 彼 らはそれを 持 ってきた。そこでイエスは 言 われた、「これは、だれの 肖像、だれの 記号 か」。彼 らは「カイザルのです」と 答 えた。
17 するとイエスは 言 われた、「カイザルのものはカイザルに、神 のものは 神 に 返 しなさい」。彼 らはイエスに 驚嘆 した。
18 復活 ということはないと 主張 していたサドカイ 人 たちが、イエスのもとにきて 質問 した、
19 「先生、モーセは、わたしたちのためにこう 書 いています、『もし、ある 人 の 兄 が 死 んで、その 残 された 妻 に、子 がない 場合 には、弟 はこの 女 をめとって、兄 のために 子 をもうけねばならない』。
20 ここに、七 人 の 兄弟 がいました。長男 は 妻 をめとりましたが、子 がなくて 死 に、
21 次男 がその 女 をめとって、また 子 をもうけずに 死 に、三男 も 同様 でした。
22 こうして、七 人 ともみな 子孫 を 残 しませんでした。最後 にその 女 も 死 にました。
23 復活 のとき、彼 らが 皆 よみがえった 場合、この 女 はだれの 妻 なのでしょうか。七 人 とも 彼女 を 妻 にしたのですが」。
24 イエスは 言 われた、「あなたがたがそんな 思 い 違 いをしているのは、聖書 も 神 の 力 も 知 らないからではないか。
25 彼 らが 死人 の 中 からよみがえるときには、めとったり、とついだりすることはない。彼 らは 天 にいる 御使 のようなものである。
26 死人 がよみがえることについては、モーセの 書 の 柴 の 篇 で、神 がモーセに 仰 せられた 言葉 を 読 んだことがないのか。『わたしはアブラハムの 神、イサクの 神、ヤコブの 神 である』とあるではないか。
27 神 は 死 んだ 者 の 神 ではなく、生 きている 者 の 神 である。あなたがたは 非常 な 思 い 違 いをしている」。
28 ひとりの 律法 学者 がきて、彼 らが 互 に 論 じ 合 っているのを 聞 き、またイエスが 巧 みに 答 えられたのを 認 めて、イエスに 質問 した、「すべてのいましめの 中 で、どれが 第 一のものですか」。
29 イエスは 答 えられた、「第 一のいましめはこれである、『イスラエルよ、聞 け。主 なるわたしたちの 神 は、ただひとりの 主 である。
30 心 をつくし、精神 をつくし、思 いをつくし、力 をつくして、主 なるあなたの 神 を 愛 せよ』。
31 第 二はこれである、『自分 を 愛 するようにあなたの 隣 り 人 を 愛 せよ』。これより 大事 ないましめは、ほかにない」。
32 そこで、この 律法 学者 はイエスに 言 った、「先生、仰 せのとおりです、『神 はひとりであって、そのほかに 神 はない』と 言 われたのは、ほんとうです。
33 また『心 をつくし、知恵 をつくし、力 をつくして 神 を 愛 し、また 自分 を 愛 するように 隣 り 人 を 愛 する』ということは、すべての 燔祭 や 犠牲 よりも、はるかに 大事 なことです」。
34 イエスは、彼 が 適切 な 答 をしたのを 見 て 言 われた、「あなたは 神 の 国 から 遠 くない」。それから 後 は、イエスにあえて 問 う 者 はなかった。
35 イエスが 宮 で 教 えておられたとき、こう 言 われた、「律法 学者 たちは、どうしてキリストをダビデの 子 だと 言 うのか。
36 ダビデ 自身 が 聖霊 に 感 じて 言 った、『主 はわが 主 に 仰 せになった、あなたの 敵 をあなたの 足 もとに 置 くときまでは、わたしの 右 に 座 していなさい』。
37 このように、ダビデ 自身 がキリストを 主 と 呼 んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの 子 であろうか」。大 ぜいの 群衆 は、喜 んでイエスに 耳 を 傾 けていた。
38 イエスはその 教 の 中 で 言 われた、「律法 学者 に 気 をつけなさい。彼 らは 長 い 衣 を 着 て 歩 くことや、広場 であいさつされることや、
39 また 会堂 の 上席、宴会 の 上座 を 好 んでいる。
40 また、やもめたちの 家 を 食 い 倒 し、見 えのために 長 い 祈 をする。彼 らはもっときびしいさばきを 受 けるであろう」。
41 イエスは、さいせん 箱 にむかってすわり、群衆 がその 箱 に 金 を 投 げ 入 れる 様子 を 見 ておられた。多 くの 金持 は、たくさんの 金 を 投 げ 入 れていた。
42 ところが、ひとりの 貧 しいやもめがきて、レプタ二つを 入 れた。それは一コドラントに 当 る。
43 そこで、イエスは 弟子 たちを 呼 び 寄 せて 言 われた、「よく 聞 きなさい。あの 貧 しいやもめは、さいせん 箱 に 投 げ 入 れている 人 たちの 中 で、だれよりもたくさん 入 れたのだ。
44 みんなの 者 はありあまる 中 から 投 げ 入 れたが、あの 婦人 はその 乏 しい 中 から、あらゆる 持 ち 物、その 生活 費 全部 を 入 れたからである」。
Chapter 13
1 イエスが 宮 から 出 て 行 かれるとき、弟子 のひとりが 言 った、「先生、ごらんなさい。なんという 見事 な 石、なんという 立派 な 建物 でしょう」。
2 イエスは 言 われた、「あなたは、これらの 大 きな 建物 をながめているのか。その 石 一つでもくずされないままで、他 の 石 の 上 に 残 ることもなくなるであろう」。
3 またオリブ 山 で、宮 にむかってすわっておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかにお 尋 ねした。
4 「わたしたちにお 話 しください。いつ、そんなことが 起 るのでしょうか。またそんなことがことごとく 成就 するような 場合 には、どんな 前兆 がありますか」。
5 そこで、イエスは 話 しはじめられた、「人 に 惑 わされないように 気 をつけなさい。
6 多 くの 者 がわたしの 名 を 名 のって 現 れ、自分 がそれだと 言 って、多 くの 人 を 惑 わすであろう。
7 また、戦争 と 戦争 のうわさとを 聞 くときにも、あわてるな。それは 起 らねばならないが、まだ 終 りではない。
8 民 は 民 に、国 は 国 に 敵対 して 立 ち 上 がるであろう。またあちこちに 地震 があり、またききんが 起 るであろう。これらは 産 みの 苦 しみの 初 めである。
9 あなたがたは 自分 で 気 をつけていなさい。あなたがたは、わたしのために、衆議所 に 引 きわたされ、会堂 で 打 たれ、長官 たちや 王 たちの 前 に 立 たされ、彼 らに 対 してあかしをさせられるであろう。
10 こうして、福音 はまずすべての 民 に 宣 べ 伝 えられねばならない。
11 そして、人々 があなたがたを 連 れて 行 って 引 きわたすとき、何 を 言 おうかと、前 もって 心配 するな。その 場合、自分 に 示 されることを 語 るがよい。語 る 者 はあなたがた 自身 ではなくて、聖霊 である。
12 また 兄弟 は 兄弟 を、父 は 子 を 殺 すために 渡 し、子 は 両親 に 逆 らって 立 ち、彼 らを 殺 させるであろう。
13 また、あなたがたはわたしの 名 のゆえに、すべての 人 に 憎 まれるであろう。しかし、最後 まで 耐 え 忍 ぶ 者 は 救 われる。
14 荒 らす 憎 むべきものが、立 ってはならぬ 所 に 立 つのを 見 たならば(読者 よ、悟 れ)、そのとき、ユダヤにいる 人々 は 山 へ 逃 げよ。
15 屋上 にいる 者 は、下 におりるな。また 家 から 物 を 取 り 出 そうとして 内 にはいるな。
16 畑 にいる 者 は、上着 を 取 りにあとへもどるな。
17 その 日 には、身重 の 女 と 乳飲 み 子 をもつ 女 とは、不幸 である。
18 この 事 が 冬 おこらぬように 祈 れ。
19 その 日 には、神 が 万物 を 造 られた 創造 の 初 めから 現在 に 至 るまで、かつてなく 今後 もないような 患難 が 起 るからである。
20 もし 主 がその 期間 を 縮 めてくださらないなら、救 われる 者 はひとりもないであろう。しかし、選 ばれた 選民 のために、その 期間 を 縮 めてくださったのである。
21 そのとき、だれかがあなたがたに『見 よ、ここにキリストがいる』、『見 よ、あそこにいる』と 言 っても、それを 信 じるな。
22 にせキリストたちや、にせ 預言者 たちが 起 って、しるしと 奇跡 とを 行 い、できれば、選民 をも 惑 わそうとするであろう。
23 だから、気 をつけていなさい。いっさいの 事 を、あなたがたに 前 もって 言 っておく。
24 その 日 には、この 患難 の 後、日 は 暗 くなり、月 はその 光 を 放 つことをやめ、
25 星 は 空 から 落 ち、天体 は 揺 り 動 かされるであろう。
26 そのとき、大 いなる 力 と 栄光 とをもって、人 の 子 が 雲 に 乗 って 来 るのを、人々 は 見 るであろう。
27 そのとき、彼 は 御使 たちをつかわして、地 のはてから 天 のはてまで、四方 からその 選民 を 呼 び 集 めるであろう。
28 いちじくの 木 からこの 譬 を 学 びなさい。その 枝 が 柔 らかになり、葉 が 出 るようになると、夏 の 近 いことがわかる。
29 そのように、これらの 事 が 起 るのを 見 たならば、人 の 子 が 戸口 まで 近 づいていると 知 りなさい。
30 よく 聞 いておきなさい。これらの 事 が、ことごとく 起 るまでは、この 時代 は 滅 びることがない。
31 天地 は 滅 びるであろう。しかしわたしの 言葉 は 滅 びることがない。
32 その 日、その 時 は、だれも 知 らない。天 にいる 御使 たちも、また 子 も 知 らない、ただ 父 だけが 知 っておられる。
33 気 をつけて、目 をさましていなさい。その 時 がいつであるか、あなたがたにはわからないからである。
34 それはちょうど、旅 に 立 つ 人 が 家 を 出 るに 当 り、その 僕 たちに、それぞれ 仕事 を 割 り 当 てて 責任 をもたせ、門番 には 目 をさましておれと、命 じるようなものである。
35 だから、目 をさましていなさい。いつ、家 の 主人 が 帰 って 来 るのか、夕方 か、夜中 か、にわとりの 鳴 くころか、明 け 方 か、わからないからである。
36 あるいは 急 に 帰 ってきて、あなたがたの 眠 っているところを 見 つけるかも 知 れない。
37 目 をさましていなさい。わたしがあなたがたに 言 うこの 言葉 は、すべての 人々 に 言 うのである」。
Chapter 14
1 さて、過越 と 除酵 との 祭 の二 日 前 になった。祭司長 たちや 律法 学者 たちは、策略 をもってイエスを 捕 えたうえ、なんとかして 殺 そうと 計 っていた。
2 彼 らは、「祭 の 間 はいけない。民衆 が 騒 ぎを 起 すかも 知 れない」と 言 っていた。
3 イエスがベタニヤで、らい 病人 シモンの 家 にいて、食卓 についておられたとき、ひとりの 女 が、非常 に 高価 で 純粋 なナルドの 香油 が 入 れてある 石膏 のつぼを 持 ってきて、それをこわし、香油 をイエスの 頭 に 注 ぎかけた。
4 すると、ある 人々 が 憤 って 互 に 言 った、「なんのために 香油 をこんなにむだにするのか。
5 この 香油 を三百デナリ 以上 にでも 売 って、貧 しい 人 たちに 施 すことができたのに」。そして 女 をきびしくとがめた。
6 するとイエスは 言 われた、「するままにさせておきなさい。なぜ 女 を 困 らせるのか。わたしによい 事 をしてくれたのだ。
7 貧 しい 人 たちはいつもあなたがたと 一緒 にいるから、したいときにはいつでも、よい 事 をしてやれる。しかし、わたしはあなたがたといつも 一緒 にいるわけではない。
8 この 女 はできる 限 りの 事 をしたのだ。すなわち、わたしのからだに 油 を 注 いで、あらかじめ 葬 りの 用意 をしてくれたのである。
9 よく 聞 きなさい。全 世界 のどこででも、福音 が 宣 べ 伝 えられる 所 では、この 女 のした 事 も 記念 として 語 られるであろう」。
10 ときに、十二 弟子 のひとりイスカリオテのユダは、イエスを 祭司長 たちに 引 きわたそうとして、彼 らの 所 へ 行 った。
11 彼 らはこれを 聞 いて 喜 び、金 を 与 えることを 約束 した。そこでユダは、どうかしてイエスを 引 きわたそうと、機会 をねらっていた。
12 除酵祭 の 第 一 日、すなわち 過越 の 小羊 をほふる 日 に、弟子 たちがイエスに 尋 ねた、「わたしたちは、過越 の 食事 をなさる 用意 を、どこへ 行 ってしたらよいでしょうか」。
13 そこで、イエスはふたりの 弟子 を 使 いに 出 して 言 われた、「市内 に 行 くと、水 がめを 持 っている 男 に 出会 うであろう。その 人 について 行 きなさい。
14 そして、その 人 がはいって 行 く 家 の 主人 に 言 いなさい、『弟子 たちと 一緒 に 過越 の 食事 をする 座敷 はどこか、と 先生 が 言 っておられます』。
15 するとその 主人 は、席 を 整 えて 用意 された二 階 の 広間 を 見 せてくれるから、そこにわたしたちのために 用意 をしなさい」。
16 弟子 たちは 出 かけて 市内 に 行 って 見 ると、イエスが 言 われたとおりであったので、過越 の 食事 の 用意 をした。
17 夕方 になって、イエスは十二 弟子 と 一緒 にそこに 行 かれた。
18 そして、一同 が 席 について 食事 をしているとき 言 われた、「特 にあなたがたに 言 っておくが、あなたがたの 中 のひとりで、わたしと 一緒 に 食事 をしている 者 が、わたしを 裏切 ろうとしている」。
19 弟子 たちは 心配 して、ひとりびとり「まさか、わたしではないでしょう」と 言 い 出 した。
20 イエスは 言 われた、「十二 人 の 中 のひとりで、わたしと 一緒 に 同 じ 鉢 にパンをひたしている 者 が、それである。
21 たしかに 人 の 子 は、自分 について 書 いてあるとおりに 去 って 行 く。しかし、人 の 子 を 裏切 るその 人 は、わざわいである。その 人 は 生 れなかった 方 が、彼 のためによかったであろう」。
22 一同 が 食事 をしているとき、イエスはパンを 取 り、祝福 してこれをさき、弟子 たちに 与 えて 言 われた、「取 れ、これはわたしのからだである」。
23 また 杯 を 取 り、感謝 して 彼 らに 与 えられると、一同 はその 杯 から 飲 んだ。
24 イエスはまた 言 われた、「これは、多 くの 人 のために 流 すわたしの 契約 の 血 である。
25 あなたがたによく 言 っておく。神 の 国 で 新 しく 飲 むその 日 までは、わたしは 決 して二 度 と、ぶどうの 実 から 造 ったものを 飲 むことをしない」。
26 彼 らは、さんびを 歌 った 後、オリブ 山 へ 出 かけて 行 った。
27 そのとき、イエスは 弟子 たちに 言 われた、「あなたがたは 皆、わたしにつまずくであろう。『わたしは 羊飼 を 打 つ。そして、羊 は 散 らされるであろう』と 書 いてあるからである。
28 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより 先 にガリラヤへ 行 くであろう」。
29 するとペテロはイエスに 言 った、「たとい、みんなの 者 がつまずいても、わたしはつまずきません」。
30 イエスは 言 われた、「あなたによく 言 っておく。きょう、今夜、にわとりが二 度 鳴 く 前 に、そう 言 うあなたが、三 度 わたしを 知 らないと 言 うだろう」。
31 ペテロは 力 をこめて 言 った、「たといあなたと 一緒 に 死 なねばならなくなっても、あなたを 知 らないなどとは、決 して 申 しません」。みんなの 者 もまた、同 じようなことを 言 った。
32 さて、一同 はゲツセマネという 所 にきた。そしてイエスは 弟子 たちに 言 われた、「わたしが 祈 っている 間、ここにすわっていなさい」。
33 そしてペテロ、ヤコブ、ヨハネを 一緒 に 連 れて 行 かれたが、恐 れおののき、また 悩 みはじめて、彼 らに 言 われた、
34 「わたしは 悲 しみのあまり 死 ぬほどである。ここに 待 っていて、目 をさましていなさい」。
35 そして 少 し 進 んで 行 き、地 にひれ 伏 し、もしできることなら、この 時 を 過 ぎ 去 らせてくださるようにと 祈 りつづけ、そして 言 われた、
36 「アバ、父 よ、あなたには、できないことはありません。どうか、この 杯 をわたしから 取 りのけてください。しかし、わたしの 思 いではなく、みこころのままになさってください」。
37 それから、きてごらんになると、弟子 たちが 眠 っていたので、ペテロに 言 われた、「シモンよ、眠 っているのか、ひと 時 も 目 をさましていることができなかったのか。
38 誘惑 に 陥 らないように、目 をさまして 祈 っていなさい。心 は 熱 しているが、肉体 が 弱 いのである」。
39 また 離 れて 行 って 同 じ 言葉 で 祈 られた。
40 またきてごらんになると、彼 らはまだ 眠 っていた。その 目 が 重 くなっていたのである。そして、彼 らはどうお 答 えしてよいか、わからなかった。
41 三 度目 にきて 言 われた、「まだ 眠 っているのか、休 んでいるのか。もうそれでよかろう。時 がきた。見 よ、人 の 子 は 罪人 らの 手 に 渡 されるのだ。
42 立 て、さあ 行 こう。見 よ、わたしを 裏切 る 者 が 近 づいてきた」。
43 そしてすぐ、イエスがまだ 話 しておられるうちに、十二 弟子 のひとりのユダが 進 みよってきた。また 祭司長、律法 学者、長老 たちから 送 られた 群衆 も、剣 と 棒 とを 持 って 彼 についてきた。
44 イエスを 裏切 る 者 は、あらかじめ 彼 らに 合図 をしておいた、「わたしの 接吻 する 者 が、その 人 だ。その 人 をつかまえて、まちがいなく 引 ひっぱって 行 け」。
45 彼 は 来 るとすぐ、イエスに 近寄 り、「先生」と 言 って 接吻 した。
46 人々 はイエスに 手 をかけてつかまえた。
47 すると、イエスのそばに 立 っていた 者 のひとりが、剣 を 抜 いて 大祭司 の 僕 に 切 りかかり、その 片耳 を 切 り 落 した。
48 イエスは 彼 らにむかって 言 われた、「あなたがたは 強盗 にむかうように、剣 や 棒 を 持 ってわたしを 捕 えにきたのか。
49 わたしは 毎日 あなたがたと 一緒 に 宮 にいて 教 えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。しかし 聖書 の 言葉 は 成就 されねばならない」。
50 弟子 たちは 皆 イエスを 見捨 てて 逃 げ 去 った。
51 ときに、ある 若者 が 身 に 亜麻布 をまとって、イエスのあとについて 行 ったが、人々 が 彼 をつかまえようとしたので、
52 その 亜麻布 を 捨 てて、裸 で 逃 げて 行 った。
53 それから、イエスを 大祭司 のところに 連 れて 行 くと、祭司長、長老、律法 学者 たちがみな 集 まってきた。
54 ペテロは 遠 くからイエスについて 行 って、大祭司 の 中庭 まではいり 込 み、その 下役 どもにまじってすわり、火 にあたっていた。
55 さて、祭司長 たちと 全 議会 とは、イエスを 死刑 にするために、イエスに 不利 な 証拠 を 見 つけようとしたが、得 られなかった。
56 多 くの 者 がイエスに 対 して 偽証 を 立 てたが、その 証言 が 合 わなかったからである。
57 ついに、ある 人々 が 立 ちあがり、イエスに 対 して 偽証 を 立 てて 言 った、
58 「わたしたちはこの 人 が『わたしは 手 で 造 ったこの 神殿 を 打 ちこわし、三 日 の 後 に 手 で 造 られない 別 の 神殿 を 建 てるのだ』と 言 うのを 聞 きました」。
59 しかし、このような 証言 も 互 に 合 わなかった。
60 そこで 大祭司 が 立 ちあがって、まん 中 に 進 み、イエスに 聞 きただして 言 った、「何 も 答 えないのか。これらの 人々 があなたに 対 して 不利 な 証言 を 申 し 立 てているが、どうなのか」。
61 しかし、イエスは 黙 っていて、何 もお 答 えにならなかった。大祭司 は 再 び 聞 きただして 言 った、「あなたは、ほむべき 者 の 子、キリストであるか」。
62 イエスは 言 われた、「わたしがそれである。あなたがたは 人 の 子 が 力 ある 者 の 右 に 座 し、天 の 雲 に 乗 って 来 るのを 見 るであろう」。
63 すると、大祭司 はその 衣 を 引 き 裂 いて 言 った、「どうして、これ 以上、証人 の 必要 があろう。
64 あなたがたはこのけがし 言 を 聞 いた。あなたがたの 意見 はどうか」。すると、彼 らは 皆、イエスを 死 に 当 るものと 断定 した。
65 そして、ある 者 はイエスにつばきをかけ、目隠 しをし、こぶしでたたいて、「言 いあててみよ」と 言 いはじめた。また 下役 どもはイエスを 引 きとって、手 のひらでたたいた。
66 ペテロは 下 で 中庭 にいたが、大祭司 の 女中 のひとりがきて、
67 ペテロが 火 にあたっているのを 見 ると、彼 を 見 つめて、「あなたもあのナザレ 人 イエスと 一緒 だった」と 言 った。
68 するとペテロはそれを 打 ち 消 して、「わたしは 知 らない。あなたの 言 うことがなんの 事 か、わからない」と 言 って、庭口 の 方 に 出 て 行 った。
69 ところが、先 の 女中 が 彼 を 見 て、そばに 立 っていた 人々 に、またもや「この 人 はあの 仲間 のひとりです」と 言 いだした。
70 ペテロは 再 びそれを 打 ち 消 した。しばらくして、そばに 立 っていた 人 たちがまたペテロに 言 った、「確 かにあなたは 彼 らの 仲間 だ。あなたもガリラヤ 人 だから」。
71 しかし、彼 は、「あなたがたの 話 しているその 人 のことは 何 も 知 らない」と 言 い 張 って、激 しく 誓 いはじめた。
72 するとすぐ、にわとりが二 度目 に 鳴 いた。ペテロは、「にわとりが二 度 鳴 く 前 に、三 度 わたしを 知 らないと 言 うであろう」と 言 われたイエスの 言葉 を 思 い 出 し、そして 思 いかえして 泣 きつづけた。
Chapter 15
1 夜 が 明 けるとすぐ、祭司長 たちは 長老、律法 学者 たち、および 全 議会 と 協議 をこらした 末、イエスを 縛 って 引 き 出 し、ピラトに 渡 した。
2 ピラトはイエスに 尋 ねた、「あなたがユダヤ 人 の 王 であるか」。イエスは、「そのとおりである」とお 答 えになった。
3 そこで 祭司長 たちは、イエスのことをいろいろと 訴 えた。
4 ピラトはもう 一度 イエスに 尋 ねた、「何 も 答 えないのか。見 よ、あなたに 対 してあんなにまで 次々 に 訴 えているではないか」。
5 しかし、イエスはピラトが 不思議 に 思 うほどに、もう 何 もお 答 えにならなかった。
6 さて、祭 のたびごとに、ピラトは 人々 が 願 い 出 る 囚人 ひとりを、ゆるしてやることにしていた。
7 ここに、暴動 を 起 し 人殺 しをしてつながれていた 暴徒 の 中 に、バラバという 者 がいた。
8 群衆 が 押 しかけてきて、いつものとおりにしてほしいと 要求 しはじめたので、
9 ピラトは 彼 らにむかって、「おまえたちはユダヤ 人 の 王 をゆるしてもらいたいのか」と 言 った。
10 それは、祭司長 たちがイエスを 引 きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにわかっていたからである。
11 しかし 祭司長 たちは、バラバの 方 をゆるしてもらうように、群衆 を 煽動 した。
12 そこでピラトはまた 彼 らに 言 った、「それでは、おまえたちがユダヤ 人 の 王 と 呼 んでいるあの 人 は、どうしたらよいか」。
13 彼 らは、また 叫 んだ、「十字架 につけよ」。
14 ピラトは 言 った、「あの 人 は、いったい、どんな 悪事 をしたのか」。すると、彼 らは一そう 激 しく 叫 んで、「十字架 につけよ」と 言 った。
15 それで、ピラトは 群衆 を 満足 させようと 思 って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち 打 ったのち、十字架 につけるために 引 きわたした。
16 兵士 たちはイエスを、邸宅、すなわち 総督 官邸 の 内 に 連 れて 行 き、全 部隊 を 呼 び 集 めた。
17 そしてイエスに 紫 の 衣 を 着 せ、いばらの 冠 を 編 んでかぶらせ、
18 「ユダヤ 人 の 王、ばんざい」と 言 って 敬礼 をしはじめた。
19 また、葦 の 棒 でその 頭 をたたき、つばきをかけ、ひざまずいて 拝 んだりした。
20 こうして、イエスを 嘲弄 したあげく、紫 の 衣 をはぎとり、元 の 上着 を 着 せた。それから、彼 らはイエスを 十字架 につけるために 引 き 出 した。
21 そこへ、アレキサンデルとルポスとの 父 シモンというクレネ 人 が、郊外 からきて 通 りかかったので、人々 はイエスの 十字架 を 無理 に 負 わせた。
22 そしてイエスをゴルゴタ、その 意味 は、されこうべ、という 所 に 連 れて 行 った。
23 そしてイエスに、没薬 をまぜたぶどう 酒 をさし 出 したが、お 受 けにならなかった。
24 それから、イエスを 十字架 につけた。そしてくじを 引 いて、だれが 何 を 取 るかを 定 めたうえ、イエスの 着物 を 分 けた。
25 イエスを 十字架 につけたのは、朝 の九 時 ごろであった。
26 イエスの 罪状 書 きには「ユダヤ 人 の 王」と、しるしてあった。
27 また、イエスと 共 にふたりの 強盗 を、ひとりを 右 に、ひとりを 左 に、十字架 につけた。〔
28 こうして「彼 は 罪人 たちのひとりに 数 えられた」と 書 いてある 言葉 が 成就 したのである。〕
29 そこを 通 りかかった 者 たちは、頭 を 振 りながら、イエスをののしって 言 った、「ああ、神殿 を 打 ちこわして三 日 のうちに 建 てる 者 よ、
30 十字架 からおりてきて 自分 を 救 え」。
31 祭司長 たちも 同 じように、律法 学者 たちと 一緒 になって、かわるがわる 嘲弄 して 言 った、「他人 を 救 ったが、自分 自身 を 救 うことができない。
32 イスラエルの 王 キリスト、いま 十字架 からおりてみるがよい。それを 見 たら 信 じよう」。また、一緒 に 十字架 につけられた 者 たちも、イエスをののしった。
33 昼 の十二 時 になると、全 地 は 暗 くなって、三 時 に 及 んだ。
34 そして三 時 に、イエスは 大声 で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と 叫 ばれた。それは「わが 神、わが 神、どうしてわたしをお 見捨 てになったのですか」という 意味 である。
35 すると、そばに 立 っていたある 人々 が、これを 聞 いて 言 った、「そら、エリヤを 呼 んでいる」。
36 ひとりの 人 が 走 って 行 き、海綿 に 酢 いぶどう 酒 を 含 ませて 葦 の 棒 につけ、イエスに 飲 ませようとして 言 った、「待 て、エリヤが 彼 をおろしに 来 るかどうか、見 ていよう」。
37 イエスは 声 高 く 叫 んで、ついに 息 をひきとられた。
38 そのとき、神殿 の 幕 が 上 から 下 まで 真二 つに 裂 けた。
39 イエスにむかって 立 っていた 百卒長 は、このようにして 息 をひきとられたのを 見 て 言 った、「まことに、この 人 は 神 の 子 であった」。
40 また、遠 くの 方 から 見 ている 女 たちもいた。その 中 には、マグダラのマリヤ、小 ヤコブとヨセとの 母 マリヤ、またサロメがいた。
41 彼 らはイエスがガリラヤにおられたとき、そのあとに 従 って 仕 えた 女 たちであった。なおそのほか、イエスと 共 にエルサレムに 上 ってきた 多 くの 女 たちもいた。
42 さて、すでに 夕 がたになったが、その 日 は 準備 の 日、すなわち 安息日 の 前日 であったので、
43 アリマタヤのヨセフが 大胆 にもピラトの 所 へ 行 き、イエスのからだの引 取 りかたを 願 った。彼 は 地位 の 高 い 議員 であって、彼 自身、神 の 国 を 待 ち 望 んでいる 人 であった。
44 ピラトは、イエスがもはや 死 んでしまったのかと 不審 に 思 い、百卒長 を 呼 んで、もう 死 んだのかと 尋 ねた。
45 そして、百卒長 から 確 かめた 上、死体 をヨセフに 渡 した。
46 そこで、ヨセフは 亜麻布 を 買 い 求 め、イエスをとりおろして、その 亜麻布 に 包 み、岩 を 掘 って 造 った 墓 に 納 め、墓 の 入口 に 石 をころがしておいた。
47 マグダラのマリヤとヨセの 母 マリヤとは、イエスが 納 められた 場所 を 見 とどけた。
Chapter 16
1 さて、安息日 が 終 ったので、マグダラのマリヤとヤコブの 母 マリヤとサロメとが、行 ってイエスに 塗 るために、香料 を 買 い 求 めた。
2 そして 週 の 初 めの 日 に、早朝、日 の 出 のころ 墓 に 行 った。
3 そして、彼 らは「だれが、わたしたちのために、墓 の 入口 から 石 をころがしてくれるのでしょうか」と 話 し 合 っていた。
4 ところが、目 をあげて 見 ると、石 はすでにころがしてあった。この 石 は 非常 に 大 きかった。
5 墓 の 中 にはいると、右手 に 真白 な 長 い 衣 を 着 た 若者 がすわっているのを 見 て、非常 に 驚 いた。
6 するとこの 若者 は 言 った、「驚 くことはない。あなたがたは 十字架 につけられたナザレ 人 イエスを 捜 しているのであろうが、イエスはよみがえって、ここにはおられない。ごらんなさい、ここがお 納 めした 場所 である。
7 今 から 弟子 たちとペテロとの 所 へ 行 って、こう 伝 えなさい。イエスはあなたがたより 先 にガリラヤへ 行 かれる。かねて、あなたがたに 言 われたとおり、そこでお 会 いできるであろう、と」。
8 女 たちはおののき 恐 れながら、墓 から 出 て 逃 げ 去 った。そして、人 には 何 も 言 わなかった。恐 ろしかったからである。〔
9 週 の 初 めの 日 の 朝 早 く、イエスはよみがえって、まずマグダラのマリヤに 御 自身 をあらわされた。イエスは 以前 に、この 女 から七つの 悪霊 を 追 い 出 されたことがある。
10 マリヤは、イエスと 一緒 にいた 人々 が 泣 き 悲 しんでいる 所 に 行 って、それを 知 らせた。
11 彼 らは、イエスが 生 きておられる 事 と、彼女 に 御 自身 をあらわされた 事 とを 聞 いたが、信 じなかった。
12 この 後、そのうちのふたりが、いなかの 方 へ 歩 いていると、イエスはちがった 姿 で 御 自身 をあらわされた。
13 このふたりも、ほかの 人々 の 所 に 行 って 話 したが、彼 らはその 話 を 信 じなかった。
14 その 後、イエスは十一 弟子 が 食卓 についているところに 現 れ、彼 らの 不 信仰 と、心 のかたくななことをお 責 めになった。彼 らは、よみがえられたイエスを 見 た 人々 の 言 うことを、信 じなかったからである。
15 そして 彼 らに 言 われた、「全 世界 に 出 て 行 って、すべての 造 られたものに 福音 を 宣 べ 伝 えよ。
16 信 じてバプテスマを 受 ける 者 は 救 われる。しかし、不 信仰 の 者 は 罪 に 定 められる。
17 信 じる 者 には、このようなしるしが 伴 う。すなわち、彼 らはわたしの 名 で 悪霊 を 追 い 出 し、新 しい 言葉 を 語 り、
18 へびをつかむであろう。また、毒 を 飲 んでも、決 して 害 を 受 けない。病人 に 手 をおけば、いやされる」。
19 主 イエスは 彼 らに 語 り 終 ってから、天 にあげられ、神 の 右 にすわられた。
20 弟子 たちは 出 て 行 って、至 る 所 で 福音 を 宣 べ 伝 えた。主 も 彼 らと 共 に 働 き、御言 に 伴 うしるしをもって、その 確 かなことをお 示 しになった。〕