Chapter 1
1 太初 に 言 あり、言 は 神 と 偕 にあり、言 は 神 なりき。
2 この 言 は 太初 に 神 とともに 在 り、
3 萬 の 物 これに 由 りて 成 り、成 りたる 物 に 一 つとして 之 によらで 成 りたるはなし。
4 之 に 生命 あり、この 生命 は 人 の 光 なりき。
5 光 は 暗黒 に 照 る、而 して 暗黒 は 之 を 悟 らざりき。
6 神 より 遣 されたる 人 いでたり、その 名 をヨハネといふ。
7 この 人 は 證 のために 來 れり、光 に 就 きて 證 をなし、また 凡 ての 人 の 彼 によりて 信 ぜん 爲 なり。
8 彼 は 光 にあらず、光 に 就 きて 證 せん 爲 に 來 れるなり。
9 もろもろの 人 をてらす 眞 の 光 ありて、世 にきたれり。
10 彼 は 世 にあり、世 は 彼 に 由 りて 成 りたるに、世 は 彼 を 知 らざりき。
11 かれは 己 の 國 にきたりしに、己 の 民 は 之 を 受 けざりき。
12 されど 之 を 受 けし 者、即 ちその 名 を 信 ぜし 者 には、神 の 子 となる 權 をあたへ 給 へり。
13 かかる 人 は 血脈 によらず、肉 の 欲 によらず、人 の 欲 によらず、ただ、神 によりて 生 れしなり。
14 言 は 肉體 となりて 我 らの 中 に 宿 りたまへり、我 らその 榮光 を 見 たり、實 に 父 の 獨子 の 榮光 にして、恩惠 と 眞理 とにて 滿 てり。
15 ヨハネ 彼 につきて 證 をなし、呼 はりて 言 ふ『「わが 後 にきたる 者 は 我 に 勝 れり、我 より 前 にありし 故 なり」と、我 が 曾 ていへるは 此 の 人 なり』
16 我 らは 皆 その 充 ち 滿 ちたる 中 より 受 けて、恩惠 に 恩惠 を 加 へらる。
17 律法 はモーセによりて 與 へられ、恩惠 と 眞理 とはイエス・キリストによりて 來 れるなり。
18 未 だ 神 を 見 し 者 なし、ただ 父 の 懷裡 にいます 獨子 の 神 のみ 之 を 顯 し 給 へり。
19 さてユダヤ 人、エルサレムより 祭司 とレビ 人 とをヨハネの 許 に 遣 して『なんぢは 誰 なるか』と 問 はせし 時、ヨハネの 證 はかくのごとし。
20 乃 ち 言 ひあらはして 諱 まず『我 はキリストにあらず』と 言 ひあらはせり。
21 また 問 ふ『さらば 何、エリヤなるか』答 ふ『然 らず』問 ふ『かの 預言者 なるか』答 ふ『いな』
22 ここに 彼 ら 言 ふ『なんぢは 誰 なるか、我 らを 遣 しし 人々 に 答 へ 得 るやうにせよ、なんぢ 己 につきて 何 と 言 ふか』
23 答 へて 言 ふ『我 は 預言者 イザヤの 云 へるが 如 く「主 の 道 を 直 くせよと、荒野 に 呼 はる 者 の 聲」なり』
24 かの 遣 されたる 者 はパリサイ 人 なりき。
25 また 問 ひて 言 ふ『なんぢ 若 しキリストに 非 ず、またエリヤにも、かの 預言者 にも 非 ずば、何 故 バプテスマを 施 すか』
26 ヨハネ 答 へて 言 ふ『我 は 水 にてバプテスマを 施 す。なんじらの 中 に 汝 らの 知 らぬもの 一人 たてり。
27 即 ち 我 が 後 にきたる 者 なり、我 はその 鞋 の 紐 を 解 くにも 足 らず』
28 これらの 事 は、ヨハネのバプテスマを 施 しゐたりしヨルダンの 向 なるベタニヤにてありしなり。
29 明 くる 日 ヨハネ、イエスの 己 が 許 にきたり 給 ふを 見 ていふ『視 よ、これぞ 世 の 罪 を 除 く 神 の 羔羊。
30 われ 曾 て「わが 後 に 來 る 人 あり、我 にまされり、我 より 前 にありし 故 なり」と 云 ひしは 此 の 人 なり。
31 我 もと 彼 を 知 らざりき。然 れど 彼 のイスラエルに 顯 れんために、我 きたりて 水 にてバプテスマを 施 すなり』
32 ヨハネまた 證 をなして 言 ふ『われ 見 しに、御靈 鴿 のごとく 天 より 降 りて、その 上 に 止 れり。
33 我 もと 彼 を 知 らざりき。されど 我 を 遣 し 水 にてバプテスマを 施 させ 給 ふもの、我 に 告 げて「なんぢ 御靈 くだりて 或 人 の 上 に 止 るを 見 ん、これぞ 聖 靈 にてバプテスマを 施 す 者 なる」といひ 給 へり。
34 われ 之 を 見 て、その 神 の 子 たるを 證 せしなり』
35 明 くる 日 ヨハネまた 二人 の 弟子 とともに 立 ちて、
36 イエスの 歩 み 給 ふを 見 ていふ『視 よ、これぞ 神 の 羔羊』
37 かく 語 るをききて、二人 の 弟子 イエスに 從 ひゆきたれば、
38 イエス 振反 りて、その 從 ひきたるを 見 て 言 ひたまふ『何 を 求 むるか』彼 等 いふ『ラビ(釋 きていへば 師)いづこに 留 り 給 ふか』
39 イエス 言 ひ 給 ふ『きたれ、さらば 見 ん』彼 ら 往 きてその 留 りたまふ 所 を 見、この 日 ともに 留 れり、時 は 第十時 ごろなりき。
40 ヨハネより 聞 きてイエスに 從 ひし 二人 のうち 一人 は、シモン・ペテロの 兄弟 アンデレなり。
41 この 人 まづ 其 の 兄弟 シモンに 遇 ひ『われらメシヤ(釋 けばキリスト)に 遇 へり』と 言 ひて、
42 彼 をイエスの 許 に 連 れきたれり。イエス 之 に 目 を 注 めて 言 ひ 給 ふ『なんぢはヨハネの 子 シモンなり、汝 ケパ(釋 けばペテロ)と 稱 へらるべし』
43 明 くる 日 イエス、ガリラヤに 往 かんとし、ピリポにあひて 言 ひ 給 ふ『われに 從 へ』
44 ピリポはアンデレとペテロとの 町 なるベツサイダの 人 なり。
45 ピリポ、ナタナエルに 遇 ひて 言 ふ『我 らはモーセが 律法 に 録 ししところ、預言者 たちが 録 しし 所 の 者 に 遇 へり、ヨセフの 子 ナザレのイエスなり』
46 ナタナエル 言 ふ『ナザレより 何 の 善 き 者 か 出 づべき』ピリポいふ『來 りて 見 よ』
47 イエス、ナタナエルの 己 が 許 にきたるを 見、これを 指 して 言 ひたまふ『視 よ、これ 眞 にイスラエル 人 なり、その 衷 に 虚僞 なし』
48 ナタナエル 言 ふ『如何 にして 我 を 知 り 給 ふか』イエス 答 えて 言 ひたまふ『ピリポの 汝 を 呼 ぶまへに、我 なんぢが 無花果 の 樹 の 下 に 居 るを 見 たり』
49 ナタナエル 答 ふ『ラビ、なんぢは 神 の 子 なり、汝 はイスラエルの 王 なり』
50 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『われ 汝 が 無花果 の 樹 の 下 にをるを 見 たりと 言 ひしに 因 りて 信 ずるか、汝 これよりも 更 に 大 なる 事 を 見 ん』
51 また 言 ひ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、天 ひらけて、人 の 子 のうへに 神 の 使 たちの 昇 り 降 りするを 汝 ら 見 るべし』
Chapter 2
1 三日 めにガリラヤのカナに 婚禮 ありて、イエスの 母 そこに 居 り、
2 イエスも 弟子 たちと 共 に 婚禮 に 招 かれ 給 ふ。
3 葡萄酒 つきたれば、母 イエスに 言 ふ『かれらに 葡萄酒 なし』
4 イエス 言 ひ 給 ふ『をんなよ、我 と 汝 となにの 關係 あらんや、我 が 時 は 未 だ 來 らず』
5 母 僕 どもに『何 にても 其 の 命 ずる 如 くせよ』と 言 ひおく。
6 彼處 にユダヤ 人 の 潔 の 例 にしたがひて、四 五 斗 入 りの 石甕 六個 ならべあり。
7 イエス 僕 に『水 を 甕 に 滿 せ』といひ 給 へば、口 まで 滿 す。
8 また 言 ひ 給 ふ『いま 汲 み 取 りて 饗宴 長 に 持 ちゆけ』乃 ち 持 ちゆけり。
9 饗宴 長、葡萄酒 になりたる 水 を 嘗 めて、その 何處 より 來 りしかを 知 らざれば(水 を 汲 みし 僕 どもは 知 れり)新郎 を 呼 びて 言 ふ、
10 『おほよそ 人 は 先 よき 葡萄酒 を 出 し、醉 のまはる 頃 ほひ 劣 れるものを 出 すに、汝 はよき 葡萄酒 を 今 まで 留 め 置 きたり』
11 イエス 此 の 第一 の 徴 をガリラヤのカナにて 行 ひ、その 榮光 を 顯 し 給 ひたれば、弟子 たち 彼 を 信 じたり。
12 この 後 イエス 及 びその 母・兄弟・弟子 たちカペナウムに 下 りて、そこに 數日 留 りたり。
13 かくてユダヤ 人 の 過越 の 祭 ちかづきたれば、イエス、エルサレムに 上 り 給 ふ。
14 宮 の 内 に 牛・羊・鴿 を 賣 るもの、兩替 する 者 の 坐 するを 見 て、
15 繩 を 鞭 につくり、羊 をも 牛 をもみな 宮 より 逐 ひ 出 し、兩替 する 者 の 金 を 散 し、その 臺 を 倒 し、
16 鴿 をうる 者 に 言 ひ 給 ふ『これらの 物 を 此處 より 取 り 去 れ、わが 父 の 家 を 商賣 の 家 とすな』
17 弟子 たち『なんじの 家 をおもふ 熱心 われを 食 はん』と 録 されたるを 憶 ひ 出 せり。
18 ここにユダヤ 人 こたへてイエスに 言 ふ『なんぢ 此 等 の 事 をなすからには、我 らに 何 の 徴 を示すか』
19 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢら 此 の 宮 をこぼて、われ 三日 の 間 に 之 を 起 さん』
20 ユダヤ 人 いふ『この 宮 を 建 つるには 四十 六 年 を 經 たり、なんぢは 三日 のうちに 之 を 起 すか』
21 これはイエス 己 が 體 の 宮 をさして 言 ひ 給 へるなり。
22 然 れば 死人 の 中 より 甦 へり 給 ひしのち、弟子 たち 斯 く 言 ひ 給 ひしことを 憶 ひ 出 して、聖書 とイエスの 言 ひ 給 ひし 言 とを 信 じたり。
23 過越 のまつりの 間、イエス、エルサレムに 在 すほどに、多 くの 人々 その 爲 し 給 へる 徴 を 見 て 御名 を 信 じたり。
24 されどイエス 己 を 彼 らに 任 せ 給 はざりき。それは 凡 ての 人 を 知 り、
25 また 人 の 衷 にある 事 を 知 りたまへば、人 に 就 きて 證 する 者 を 要 せざる 故 なり。
Chapter 3
1 ここにパリサイ 人 にて 名 をニコデモといふ 人 あり、ユダヤ 人 の 宰 なり。
2 夜 イエスの 許 に 來 りて 言 ふ『ラビ、我 らは 汝 の 神 より 來 る 師 なるを 知 る。神 もし 偕 に 在 さずば、汝 が 行 ふこれらの 徴 は 誰 もなし 能 はぬなり』
3 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 に 告 ぐ、人 あらたに 生 れずば、神 の 國 を 見 ること 能 はず』
4 ニコデモ 言 ふ『人 はや 老 いぬれば、爭 で 生 るる 事 を 得 んや、再 び 母 の 胎 に 入 りて 生 るることを 得 んや』
5 イエス 答 へ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 に 告 ぐ、人 は 水 と 靈 とによりて 生 れずば、神 の 國 に 入 ること 能 はず、
6 肉 によりて 生 るる 者 は 肉 なり、靈 によりて 生 るる 者 は 靈 なり。
7 なんぢら 新 に 生 るべしと 我 が 汝 に 言 ひしを 怪 しむな。
8 風 は 己 が 好 むところに 吹 く、汝 その 聲 を 聞 けども、何處 より 來 り 何處 へ 往 くを 知 らず。すべて 靈 によりて 生 るる 者 も 斯 くのごとし』
9 ニコデモ 答 へて 言 ふ『いかで 斯 かる 事 どものあり 得 べき』
10 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢはイスラエルの 師 にして、猶 かかる 事 どもを 知 らぬか。
11 誠 にまことに 汝 に 告 ぐ、我 ら 知 ることを 語 り、また 見 しことを 證 す、然 るに 汝 らその 證 を 受 けず。
12 われ 地 のことを 言 ふに 汝 ら 信 ぜずば、天 のことを 言 はんには 爭 で 信 ぜんや。
13 天 より 降 りし 者、即 ち 人 の 子 の 他 には、天 に 昇 りしものなし。
14 モーセ 荒野 にて 蛇 を 擧 げしごとく、人 の 子 もまた 必 ず 擧 げらるべし。
15 すべて 信 ずる 者 の 彼 によりて 永遠 の 生命 を 得 ん 爲 なり』
16 それ 神 はその 獨子 を 賜 ふほどに 世 を 愛 し 給 へり、すべて 彼 を 信 ずる 者 の 亡 びずして、永遠 の 生命 を 得 んためなり。
17 神 その 子 を 世 に 遣 したまへるは、世 を 審 かん 爲 にあらず、彼 によりて 世 の 救 はれん 爲 なり。
18 彼 を 信 ずる 者 は 審 かれず、信 ぜぬ 者 は 既 に 審 かれたり。神 の 獨子 の 名 を 信 ぜざりしが 故 なり。
19 その 審判 は 是 なり。光、世 にきたりしに、人 その 行爲 の 惡 しきによりて、光 よりも 暗黒 を 愛 したり。
20 すべて 惡 を 行 ふ 者 は 光 をにくみて 光 に 來 らず、その 行爲 の 責 められざらん 爲 なり。
21 眞 をおこなふ 者 は 光 にきたる、その 行爲 の 神 によりて 行 ひたることの 顯 れん 爲 なり。
22 この 後 イエス、弟子 たちとユダヤの 地 にゆき、其處 にともに 留 りてバプテスマを 施 し 給 ふ。
23 ヨハネもサリムに 近 きアイノンにてバプテスマを 施 しゐたり、其處 に 水 おほくある 故 なり。人々 つどひ 來 りてバプテスマを 受 く。
24 ヨハネは 未 だ 獄 に 入 れられざりしなり。
25 ここにヨハネの 弟子 たちと 一人 のユダヤ 人 との 間 に、潔 につきて 論 起 りたれば、
26 彼 らヨハネの 許 に 來 りて 言 ふ『ラビ、視 よ、汝 とともにヨルダンの 彼方 にありし 者、なんぢが 證 せし 者、バプテスマを 施 し、人 みなその 許 に 往 くなり』
27 ヨハネ 答 へて 言 ふ『人 は 天 より 與 へられずば、何 をも 受 くること 能 はず。
28 「我 はキリストにあらず」唯「その 前 に 遣 されたる 者 なり」と 我 が 言 ひしことに 就 きて 證 する 者 は 汝 らなり。
29 新婦 をもつ 者 は 新郎 なり、新郎 の 友 は、立 ちて 新郎 の 聲 をきくとき 大 に 喜 ぶ、この 我 が 勸喜 いま 滿 ちたり。
30 彼 は 必 ず 盛 になり、我 は 衰 ふべし』
31 上 より 來 るものは 凡 ての 物 の 上 にあり、地 より 出 づるものは 地 の 者 にして、その 語 ることも 地 の 事 なり。天 より 來 るものは 凡 ての 物 の 上 にあり。
32 彼 その 見 しところ 聞 きしところを 證 したまふに、誰 もその 證 を 受 けず。
33 その 證 を 受 くる 者 は、印 して 神 を 眞 なりとす。
34 神 の 遣 し 給 ひし 者 は 神 の 言 をかたる、神、御靈 を 賜 ひて 量 りなければなり。
35 父 は 御子 を 愛 し、萬物 をその 手 に 委 ね 給 へり。
36 御子 を 信 ずる 者 は 永遠 の 生命 をもち、御子 に 從 はぬ 者 は 生命 を 見 ず、反 つて 神 の 怒 その 上 に 止 るなり。
Chapter 4
1 主、おのれの 弟子 を 造 り、之 にバプテスマを 施 すこと、ヨハネよりも 多 しと、パリサイ 人 に 聞 えたるを 知 り 給 ひし 時、
2 (その 實 イエス 自 らバプテスマを 施 ししにあらず、その 弟子 たちなり)
3 ユダヤを 去 りて 復 ガリラヤに 往 き 給 ふ。
4 サマリヤを 經 ざるを 得 ず。
5 サマリヤのスカルといふ 町 にいたり 給 へるが、この 町 はヤコブその 子 ヨセフに 與 へし 土地 に 近 くして、
6 此處 にヤコブの 泉 あり。イエス 旅路 に 疲 れて 泉 の 傍 らに 坐 し 給 ふ、時 は 第六 時 頃 なりき。
7 サマリヤの 或 女、水 を 汲 まんとて 來 りたれば、イエス 之 に『われに 飮 ませよ』と 言 ひたまふ。
8 弟子 たちは 食物 を 買 はんとて 町 にゆきしなり。
9 サマリヤの 女 いふ『なんぢはユダヤ 人 なるに、如何 なればサマリヤの 女 なる 我 に、飮 むことを 求 むるか』これはユダヤ 人 とサマリヤ 人 とは 交 りせぬ 故 なり。
10 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢ 若 し 神 の 賜物 を 知 り、また「我 に 飮 ませよ」といふ 者 の 誰 なるを 知 りたらんには、之 に 求 めしならん、さらば 汝 に 活 ける 水 を 與 へしものを』
11 女 いふ『主 よ、なんぢは 汲 む 物 を 持 たず、井 は 深 し、その 活 ける 水 は 何處 より 得 しぞ。
12 汝 はこの 井 を 我 らに 與 へし 我 らの 父 ヤコブよりも 大 なるか、彼 も、その 子 らも、その 家畜 も、これより 飮 みたり』
13 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『すべて 此 の 水 をのむ 者 は、また 渇 かん。
14 されど 我 があたふる 水 を 飮 む 者 は、永遠 に 渇 くことなし。わが 與 ふる 水 は 彼 の 中 にて 泉 となり、永遠 の 生命 の 水 湧 きいづべし』
15 女 いふ『主 よ、わが 渇 くことなく、又 ここに 汲 みに 來 ぬために、その 水 を 我 にあたへよ』
16 イエス 言 ひ 給 ふ『ゆきて 夫 をここに 呼 びきたれ』
17 女 こたへて 言 ふ『われに 夫 なし』イエス 言 ひ 給 ふ『夫 なしといふは 宜 なり。
18 夫 は 五 人 までありしが、今 ある 者 はなんぢの 夫 にあらず。無 しと 云 へるは 眞 なり』
19 女 いふ『主 よ、我 なんぢを 預言者 とみとむ。
20 我 らの 先祖 たちは 此 の 山 にて 拜 したるに、汝 らは 拜 すべき 處 をエルサレムなりと 言 ふ』
21 イエス 言 ひ 給 ふ『をんなよ、我 が 言 ふことを 信 ぜよ、此 の 山 にもエルサレムにもあらで、汝 ら 父 を 拜 する 時 きたるなり。
22 汝 らは 知 らぬ 者 を 拜 し、我 らは 知 る 者 を 拜 す、救 はユダヤ 人 より 出 づればなり。
23 されど 眞 の 禮拜者 の、靈 と 眞 とをもて 父 を 拜 する 時 きたらん、今 すでに 來 れり。父 はかくのごとく 拜 する 者 を 求 めたまふ。
24 神 は 靈 なれば、拜 する 者 も 靈 と 眞 とをもて 拜 すべきなり』
25 女 いふ『我 はキリストと 稱 ふるメシヤの 來 ることを 知 る、彼 きたらば 諸般 のことを 我 らに 告 げん』
26 イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢと 語 る 我 はそれなり』
27 時 に 弟子 たち 歸 りきたりて、女 と 語 り 給 ふを 怪 しみたれど、何 を 求 め 給 ふか、何 故 かれと 語 り 給 ふかと 問 ふもの 誰 もなし。
28 ここに 女 その 水瓶 を 遺 しおき、町 にゆきて 人々 にいふ、
29 『來 りて 見 よ、わが 爲 しし 事 をことごとく 我 に 告 げし 人 を。この 人 あるいはキリストならんか』
30 人々 町 を 出 でてイエスの 許 にゆく。
31 この 間 に 弟子 たち 請 ひて 言 ふ『ラビ、食 し 給 へ』
32 イエス 言 ひたまふ『我 には 汝 らの 知 らぬ 我 が 食 する 食物 あり』
33 弟子 たち 互 にいふ『たれか 食 する 物 を 持 ち 來 りしか』
34 イエス 言 ひ 給 ふ『われを 遣 し 給 へる 物 の 御意 を 行 ひ、その 御業 をなし 遂 ぐるは、是 わが 食物 なり。
35 なんぢら 收穫時 の 來 るには、なほ 四月 ありと 言 はずや。我 なんぢらに 告 ぐ、目 をあげて 畑 を 見 よ、はや 黄 ばみて 收穫時 になれり。
36 刈 る 者 は 價 を 受 けて 永遠 の 生命 の 實 を 集 む。播 く 者 と 刈 る 者 とともに 喜 ばん 爲 なり。
37 俚諺 に、彼 は 播 き 此 は 刈 るといへるは、斯 において 眞 なり。
38 我 なんぢらを 遣 して、勞 せざりしものを 刈 らしむ。他 の 人々 さきに 勞 し、汝 らはその 勞 を 收 むるなり』
39 此 の 町 の 多 くのサマリヤ 人、女 の『わが 爲 しし 事 をことごとく 告 げし』と 證 したる 言 によりてイエスを 信 じたり。
40 かくてサマリヤ 人 御許 にきたりて、此 の 町 に 留 らんことを 請 ひたれば、此處 に 二日 とどまり 給 ふ。
41 御言 によりて 猶 もおほくの 人 信 じたり。
42 かくて 女 に 言 ふ『今 われらの 信 ずるは、汝 のかたる 言 によるにあらず、親 しく 聽 きて、これは 眞 に 世 の 救主 なりと 知 りたる 故 なり』
43 二日 の 後、イエスここを 去 りてガリラヤに 往 き 給 ふ。
44 イエス 自 ら 證 して、預言者 は 己 が 郷 にて 尊 ばるる 事 なしと 言 ひ 給 へり。
45 かくてガリラヤに 往 き 給 へば、ガリラヤ 人 これを 迎 へたり。前 に 彼 らも 祭 に 上 り、その 祭 の 時 にエルサレムにて 行 ひ 給 ひし 事 を 見 たる 故 なり。
46 イエス 復 ガリラヤのカナに 往 き 給 ふ、ここは 前 に 水 を 葡萄酒 になし 給 ひし 處 なり。時 に 王 の 近臣 あり、その 子 カペナウムにて 病 みゐたれば、
47 イエスのユダヤよりガリラヤに 來 り 給 へるを 聞 き、御許 にゆきて、カペナウムに 下 りその 子 を 醫 し 給 はんことを 請 ふ、子 は 死 ぬばかりなりしなり。
48 ここにイエス 言 ひ 給 ふ『なんぢら 徴 と 不思議 とを 見 ずば、信 ぜじ』
49 近臣 いふ『主 よ、わが 子 の 死 なぬ 間 に 下 り 給 へ』
50 イエス 言 ひ 給 ふ『かへれ、汝 の 子 は 生 くるなり』彼 はイエスの 言 ひ 給 ひしことを 信 じて 歸 りしが、
51 下 る 途中、僕 ども 往 き 遇 ひて、その 子 の 生 きたることを 告 ぐ。
52 その 癒 えはじめし 時 を 問 ひしに『昨日 の 第七 時 に 熱 去 れり』といふ。
53 父 その 時 の、イエスが『なんぢの 子 は 生 くるなり』と 言 ひ 給 ひし 時 と 同 じきを 知 り、而 して 己 も 家 の 者 もみな 信 じたり。
54 是 はイエス、ユダヤよりガリラヤに 往 きて 爲 し 給 へる 第二 の 徴 なり。
Chapter 5
1 この 後 ユダヤ 人 の 祭 ありて、イエス、エルサレムに 上 り 給 ふ。
2 エルサレムにある 羊 門 のほとりに、ヘブル 語 にてベテスダといふ 池 あり、之 にそひて 五 つの 廊 あり。
3 その 内 に 病 める 者、盲人、跛者、痩 せ 衰 へたる 者 ども 夥多 しく 臥 しゐたり。(水 の 動 くを 待 てるなり。
4 それは 御使 のをりをり 降 りて 水 を 動 かすことあれば、その 動 きたるのち 最先 に 池 にいる 者 は、如何 なる 病 にても 癒 ゆる 故 なり)
5 爰 に 三十 八 年 病 になやむ 人 ありしが、
6 イエスその 臥 し 居 るを 見、かつその 病 の 久 しきを 知 り、之 に『なんぢ 癒 えんことを 願 ふか』と 言 ひ 給 へば、
7 病 める 者 こたふ『主 よ、水 の 動 くとき、我 を 池 に 入 るる 者 なし、我 が 往 くほどに、他 の 人 さきだち 下 るなり』
8 イエス 言 ひ 給 ふ『起 きよ、床 を 取 りあげて 歩 め』
9 この 人 ただちに 癒 え、床 を 取 りあげて 歩 めり。その 日 は 安息 日 に 當 りたれば、
10 ユダヤ 人 醫 されたる 人 にいふ『安息 日 なり、床 を 取 りあぐるは 宜 しからず』
11 答 ふ『われを 醫 ししその 人「床 を 取 りあげて 歩 め」と 云 へり』
12 かれら 問 ふ『「取 りあげて 歩 め」と 言 ひし 人 は 誰 なるか』
13 されど 醫 されし 者 は、その 誰 なるを 知 らざりき、そこに 群衆 ゐたればイエス 退 き 給 ひしに 因 る。
14 この 後 イエス 宮 にて 彼 に 遇 ひて 言 ひたまふ『視 よ、なんぢ 癒 えたり。再 び 罪 を 犯 すな、恐 らくは 更 に 大 なる 惡 しきこと 汝 に 起 らん』
15 この 人 ゆきてユダヤ 人 に、おのれを 醫 したる 者 のイエスなるを 告 ぐ。
16 ここにユダヤ 人、かかる 事 を 安息 日 になすとて、イエスを 責 めたれば、
17 イエス 答 へ 給 ふ『わが 父 は 今 にいたるまで 働 き 給 ふ、我 もまた 働 くなり』
18 此 に 由 りてユダヤ 人 いよいよイエスを 殺 さんと 思 ふ。それは 安息 日 を 破 るのみならず、神 を 我 が 父 といひて、己 を 神 と 等 しき 者 になし 給 ひし 故 なり。
19 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、子 は 父 のなし 給 ふことを 見 て 行 ふほかは、自 ら 何事 をも 爲 し 得 ず、父 のなし 給 ふことは 子 もまた 同 じく 爲 すなり。
20 父 は 子 を 愛 して、その 爲 す 所 をことごとく 子 に 示 したまふ。また 更 に 大 なる 業 を 示 し 給 はん、汝 等 をして 怪 しましめん 爲 なり。
21 父 の 死 にし 者 を 起 して 活 し 給 ふごとく、子 もまた 己 が 欲 する 者 を 活 すなり。
22 父 は 誰 をも 審 き 給 はず、審判 をさへみな 子 に 委 ね 給 へり。
23 これ 凡 ての 人 の 父 を 敬 ふごとくに 子 を 敬 はん 爲 なり。子 を 敬 はぬ 者 は、之 を 遣 し 給 ひし 父 をも 敬 はぬなり。
24 誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、わが 言 をききて 我 を 遣 し 給 ひし 者 を 信 ずる 人 は、永遠 の 生命 をもち、かつ 審判 に 至 らず、死 より 生命 に 移 れるなり。
25 誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、死 にし 人、神 の 子 の 聲 をきく 時 きたらん、今 すでに 來 れり、而 して 聞 く 人 は 活 くべし。
26 これ 父 みづから 生命 を 有 ち 給 ふごとく、子 にも 自 ら 生命 を 有 つことを 得 させ、
27 また 人 の 子 たるに 因 りて、審判 する 權 を 與 へ 給 ひしなり。
28 汝 ら 之 を 怪 しむな、墓 にある 者 みな 神 の 子 の 聲 をききて 出 づる 時 きたらん。
29 善 をなしし 者 は 生命 に 甦 へり、惡 を 行 ひし 者 は 審判 に 甦 へるべし。
30 我 みづから 何事 もなし 能 はず、ただ 聞 くままに 審 くなり。わが 審判 は 正 し、それは 我 が 意 を 求 めずして、我 を 遣 し 給 ひし 者 の 御意 を 求 むるに 因 る。
31 我 もし 己 につきて 證 せば、我 が 證 は 眞 ならず。
32 我 につきて 證 する 者 は 他 にあり、その 我 につきて 證 する 證 の 眞 なるを 我 は 知 る。
33 なんぢら 前 に 人 をヨハネに 遣 ししに、彼 は 眞 につきて 證 せり。
34 我 は 人 よりの 證 を 受 くる 事 をせねど、唯 なんぢらの 救 はれん 爲 に 之 を 言 ふ。
35 かれは 燃 えて 輝 く 燈火 なりしが、汝 等 その 光 にありて 暫時 よろこぶ 事 をせり。
36 されど 我 にはヨハネの 證 よりも 大 なる 證 あり。父 の 我 にあたへて 成 し 遂 げしめ 給 ふわざ、即 ち 我 がおこなふ 業 は、我 につきて 父 の 我 を 遣 し 給 ひたるを 證 し、
37 また 我 をおくり 給 ひし 父 も、我 につきて 證 し 給 へり。汝 らは 未 だその 御聲 を 聞 きし 事 なく、その 御形 を 見 し 事 なし。
38 その 御言 は 汝 らの 衷 にとどまらず、その 遣 し 給 ひし 者 を 信 ぜぬに 因 りて 知 らるるなり。
39 汝 らは 聖書 に 永遠 の 生命 ありと 思 ひて 之 を 査 ぶ、されどこの 聖書 は 我 につきて 證 するものなり。
40 然 るに 汝 ら 生命 を 得 んために 我 に 來 るを 欲 せず。
41 我 は 人 よりの 譽 をうくる 事 をせず、
42 ただ 汝 らの 衷 に 神 を 愛 する 事 なきを 知 る。
43 我 はわが 父 の 名 によりて 來 りしに、汝 等 われを 受 けず、もし 他 の 人 おのれの 名 によりて 來 らば 之 を 受 けん。
44 互 に 譽 をうけて、唯一 の 神 よりの 譽 を 求 めぬ 汝 らは、爭 で 信 ずることを 得 んや。
45 われ 父 に 汝 らを 訴 へんとすと 思 ふな、訴 ふるもの 一人 あり、汝 らが 頼 とするモーセなり。
46 若 しモーセを 信 ぜしならば、我 を 信 ぜしならん、彼 は 我 につきて 録 したればなり。
47 されど 彼 の 書 を 信 ぜずば、爭 で 我 が 言 を 信 ぜんや』
Chapter 6
1 この 後 イエス、ガリラヤの 海、即 ちテベリヤの 海 の 彼方 にゆき 給 へば、
2 大 なる 群衆 これに 從 ふ、これは 病 みたる 者 に 行 ひたまへる 徴 を 見 し 故 なり。
3 イエス 山 に 登 りて、弟子 たちと 共 にそこに 坐 し 給 ふ。
4 時 はユダヤ 人 の 祭 なる 過越 に 近 し。
5 イエス 眼 をあげて 大 なる 群衆 のきたるを 見 て、ピリポに 言 ひ 給 ふ『われら 何處 よりパンを 買 ひて、此 の 人々 に 食 はすべきか』
6 かく 言 ひ 給 ふはピリポを 試 むるためにて、自 ら 爲 さんとする 事 を 知 り 給 ふなり。
7 ピリポ 答 へて 言 ふ『二 百 デナリのパンありとも、人々 すこしづつ 受 くるになほ 足 らじ』
8 弟子 の 一人 にてシモン・ペテロの 兄弟 なるアンデレ 言 ふ
9 『ここに 一人 の 童子 あり、大麥 のパン 五 つと 小 き 肴 二 つとをもてり、されど 此 の 多 くの 人 には 何 にかならん』
10 イエス 言 ひたまふ『人々 を 坐 せしめよ』その 處 に 多 くの 草 ありて 人々 坐 せしが、その 數 おほよそ 五 千 人 なりき。
11 ここにイエス、パンを 取 りて 謝 し、坐 したる 人々 に 分 ちあたへ、また 肴 をも 然 なして、その 欲 するほど 與 へ 給 ふ。
12 人々 の 飽 きたるのち 弟子 たちに 言 ひたまふ『廢 るもののなきように 擘 きたる 餘 をあつめよ』
13 乃 ち 集 めたるに、五 つの 大麥 のパンの 擘 きたるを 食 ひしものの 餘、十二 の 筐 に 滿 ちたり。
14 人々 その 爲 し 給 ひし 徴 を 見 ていふ『實 にこれは 世 に 來 るべき 預言者 なり』
15 イエス 彼 らが 來 りて 己 をとらへ、王 となさんとするを 知 り、復 ひとりにて 山 に 遁 れたまふ。
16 夕 になりて 弟子 たち 海 にくだり、
17 船 にのり 海 を 渡 りて、カペナウムに 往 かんとす。既 に 暗 くなりたるに、イエス 未 だ 來 りたまはず。
18 大風 ふきて 海 ややに 荒出 づ。
19 かくて 四 五 十 丁 こぎ 出 でしに、イエスの 海 の 上 をあゆみ、船 に 近 づき 給 ふを 見 て 懼 れたれば、
20 イエス 言 ひたまふ『我 なり、懼 るな』
21 乃 ちイエスを 船 に 歓 び 迎 へしに、船 は 直 ちに 往 かんとする 地 に 著 けり。
22 明 くる 日、海 のかなたに 立 てる 群衆 は、一艘 のほかに 船 なく、又 イエスは 弟子 たちと 共 に 乘 りたまはず、弟子 たちのみ 出 でゆきしを 見 たり。
23 (時 にテベリヤより 數艘 の 船、主 の 謝 して 人々 にパンを 食 はせ 給 ひし 處 の 近 くに 來 る)
24 ここに 群衆 はイエスも 居給 はず、弟子 たちも 居 らぬを 見 て、その 船 に 乘 り、イエスを 尋 ねてカペナウムに 往 けり。
25 遂 に 海 の 彼方 にてイエスに 遇 ひて 言 ふ『ラビ、何時 ここに 來 り 給 ひしか』
26 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、汝 らが 我 を 尋 ぬるは、徴 を 見 し 故 ならで、パンを 食 ひて 飽 きたる 故 なり。
27 朽 ちる 糧 のためならで、永遠 の 生命 にまで 至 る 糧 のために 働 け。これは 人 の 子 の 汝 らに 與 へんとするものなり、父 なる 神 は 印 して 彼 を 證 し 給 ひたるに 因 る』
28 ここに 彼 ら 言 ふ『われら 神 の 業 を 行 はんには 何 をなすべきか』
29 イエス 答 へて 言 ひたまふ『神 の 業 はその 遣 し 給 へる 者 を 信 ずる 是 なり』
30 彼 ら 言 ふ『さらば 我 らが 見 て 汝 を 信 ぜしために、何 の 徴 をなすか、何 を 行 ふか。
31 我 らの 先祖 は 荒野 にてマナを 食 へり、録 して「天 よりパンを 彼 らに 與 へて 食 はしめたり」と 云 へるが 如 し』
32 イエス 言 ひ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、モーセは 天 よりのパンを 汝 らに 與 へしにあらず、されど 我 が 父 は 天 よりの 眞 のパンを 與 へたまふ。
33 神 のパンは 天 より 降 りて 生命 を 世 に 與 ふるものなり』
34 彼 等 いふ『主 よ、そのパンを 常 に 與 へよ』
35 イエス 言 ひ 給 ふ『われは 生命 のパンなり、我 にきたる 者 は 飢 ゑず、我 を 信 ずる 者 はいつまでも 渇 くことなからん。
36 されど 汝 らは 我 を 見 てなほ 信 ぜず、我 さきに 之 を 告 げたり。
37 父 の 我 に 賜 ふものは 皆 われに 來 らん、我 にきたる 者 は 我 これを 退 けず。
38 夫 わが 天 より 降 りしは、我 が 意 をなさん 爲 にあらず、我 を 遣 し 給 ひし 者 の 御意 をなさん 爲 なり。
39 我 を 遣 し 給 ひし 者 の 御意 は、すべて 我 に 賜 ひし 者 を、我 その 一 つをも 失 はずして、終 の 日 に 甦 へらする 是 なり。
40 わが 父 の 御意 は、すべて 子 を 見 て 信 ずる 者 の 永遠 の 生命 を 得 る 是 なり。われ 終 の 日 にこれを 甦 へらすべし』
41 ここにユダヤ 人 ら、イエスの『われは 天 より 降 りしパンなり』と 言 ひ 給 ひしにより、
42 呟 きて 言 ふ『これはヨセフの 子 イエスならずや、我等 はその 父 母 を 知 る、何 ぞ 今「われは 天 より 降 れり」と 言 ふか』
43 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢら 呟 き 合 ふな、
44 我 を 遣 しし 父 ひき 給 はずば、誰 も 我 に 來 ること 能 はず、我 これを 終 の 日 に 甦 へらすべし。
45 預言者 たちの 書 に「彼 らみな 神 に 教 へられん」と 録 されたり。すべて 父 より 聽 きて 學 びし 者 は 我 にきたる。
46 これは 父 を 見 し 者 ありとにあらず、ただ 神 よりの 者 のみ 父 を 見 たり。
47 まことに 誠 になんぢらに 告 ぐ、信 ずる 者 は 永遠 の 生命 をもつ。
48 我 は 生命 のパンなり。
49 汝 らの 先祖 は、荒野 にてマナを 食 ひしが 死 にたり。
50 天 より 降 るパンは、食 ふ 者 をして 死 ぬる 事 なからしむるなり。
51 我 は 天 より 降 りし 活 けるパンなり、人 このパンを 食 はば 永遠 に 活 くべし。我 が 與 ふるパンは 我 が 肉 なり、世 の 生命 のために 之 を 與 へん』
52 ここにユダヤ 人 たがひに 爭 ひて 言 ふ『この 人 はいかで 己 が 肉 を 我 らに 與 へて 食 はしむることを 得 ん』
53 イエス 言 ひ 給 ふ『まことに 誠 になんぢらに 告 ぐ、人 の 子 の 肉 を 食 はず、その 血 を 飮 まずば、汝 らに 生命 なし。
54 わが 肉 をくらひ、我 が 血 をのむ 者 は、永遠 の 生命 をもつ、われ 終 の 日 にこれを 甦 へらすべし。
55 夫 わが 肉 は 眞 の 食物、わが 血 は 眞 の 飮物 なり。
56 わが 肉 をくらひ 我 が 血 をのむ 者 は、我 に 居 り、我 もまた 彼 に 居 る。
57 活 ける 父 の 我 をつかはし、我 の 父 によりて 活 くるごとく、我 をくらふ 者 も 我 によりて 活 くべし。
58 天 より 降 りしパンは、先祖 たちが 食 ひてなほ 死 にし 如 きものにあらず、此 のパンを 食 ふものは 永遠 に 活 きん』
59 此 等 のことはイエス、カペナウムにて 教 ふるとき、會堂 にて 言 ひ 給 ひしなり。
60 弟子 たちの 中 おほくの 者 これを 聞 きて 言 ふ『こは 甚 だしき 言 なるかな、誰 か 能 く 聽 き 得 べき』
61 イエス 弟子 たちの 之 に 就 きて 呟 くを 自 ら 知 りて 言 ひ 給 ふ『このことは 汝 らを 躓 かするか。
62 さらば 人 の 子 のもと 居 りし 處 に 昇 るを 見 ば 如何 に。
63 活 すものは 靈 なり、肉 は 益 する 所 なし、わが 汝 らに 語 りし 言 は、靈 なり、生命 なり。
64 されど 汝 らの 中 に 信 ぜぬ 者 どもあり』イエス 初 より、信 ぜぬ 者 どもは 誰、おのれを 賣 る 者 は 誰 なるかを 知 り 給 へるなり。
65 かくて 言 ひたまふ『この 故 に 我 さきに 汝 らに 告 げて、父 より 賜 はりたる 者 ならずば 我 に 來 るを 得 ずと 言 ひしなり』
66 ここにおいて、弟子 たちのうち 多 くの 者 かへり 去 りて、復 イエスと 共 に 歩 まざりき。
67 イエス 十二 弟子 に 言 ひ 給 ふ『なんじらも 去 らんとするか』
68 シモン・ペテロ 答 ふ『主 よ、われら 誰 にゆかん、永遠 の 生命 の 言 は 汝 にあり。
69 又 われらは 信 じかつ 知 る、なんぢは 神 の 聖者 なり』
70 イエス 答 へ 給 ふ『われ 汝 ら 十二 人 を 選 びしにあらずや、然 るに 汝 らの 中 の 一人 は 惡魔 なり』
71 イスカリオテのシモンの 子 ユダを 指 して 言 ひ 給 へるなり、彼 は 十二 弟子 の 一人 なれど、イエスを 賣 らんとする 者 なり。
Chapter 7
1 この 後 イエス、ガリラヤのうちを 巡 りゐ 給 ふ、ユダヤ 人 の 殺 さんとするに 因 りて、ユダヤのうちを 巡 ることを 欲 し 給 はぬなり。
2 ユダヤ 人 の 假廬 の 祭 ちかづきたれば、
3 兄弟 たちイエスに 言 ふ『なんぢの 行 ふ 業 を 弟子 たちにも 見 せんために、此處 を 去 りてユダヤに 往 け。
4 誰 にても 自 ら 顯 れんことを 求 めて、隱 に 業 をなす 者 なし。汝 これらの 事 を 爲 すからには、己 を 世 にあらはせ』
5 是 その 兄弟 たちもイエスを 信 ぜぬ 故 なり。
6 ここにイエス 言 ひ 給 ふ『わが 時 はいまだ 到 らず、汝 らの 時 は 常 に 備 れり。
7 世 は 汝 らを 憎 むこと 能 はねど 我 を 憎 む、我 は 世 の 所作 の 惡 しきを 證 すればなり。
8 なんぢら 祭 に 上 れ、わが 時 いまだ 滿 たねば、我 は 今 この 祭 にのぼらず』
9 かく 言 ひて 尚 ガリラヤに 留 り 給 ふ。
10 而 して 兄弟 たちの 祭 にのぼりたる 後、あらはならで 潜 びやかに 上 り 給 ふ。
11 祭 にあたりユダヤ 人 らイエスを 尋 ねて『かれは 何處 に 居 るか』と 言 ふ。
12 また 群衆 のうちに 囁 く 者 おほくありて、或 は『イエスは 善 き 人 なり』といひ、或 は『いな、群衆 を 惑 すなり』と 言 ふ。
13 されどユダヤ 人 を 懼 るるに 因 りて、誰 もイエスのことを 公然 に 言 はず。
14 祭 も、はや 半 となりし 頃、イエス 宮 にのぼりて 教 へ 給 へば、
15 ユダヤ 人 あやしみて 言 ふ『この 人 は 學 びし 事 なきに、如何 にして 書 を 知 るか』
16 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『わが 教 はわが 教 にあらず、我 を 遣 し 給 ひし 者 の 教 なり。
17 人 もし 御意 を 行 はんと 欲 せば、此 の 教 の 神 よりか、我 が 己 より 語 るかを 知 らん。
18 己 より 語 るものは 己 の 榮光 をもとむ、己 を 遣 しし 者 の 榮光 を 求 むる 者 は 眞 なり、その 中 に 不義 なし。
19 モーセは 汝 らに 律法 を 與 へしにあらずや、されど 汝 等 のうちに 律法 を 守 る 者 なし。汝 ら 何 ゆゑ 我 を 殺 さんとするか』
20 群衆 こたふ『なんぢは 惡鬼 に 憑 かれたり、誰 が 汝 を 殺 さんとするぞ』
21 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『われ 一 つの 業 をなしたれば、汝 等 みな 怪 しめり。
22 モーセは 汝 らに 割禮 を 命 じたり(これはモーセより 起 りしとにあらず、先祖 より 起 りしなり)この 故 に 汝 ら 安息 日 にも 人 に 割禮 を 施 す。
23 モーセの 律法 の 廢 らぬために、安息 日 に 人 の 割禮 を 受 くる 事 あらば、何 ぞ 安息 日 に 人 の 全身 を 健 かにせしとて 我 を 怒 るか。
24 外貌 によりて 裁 くな、正 しき 審判 にて 審 け』
25 ここにエルサレムの 或 人々 いふ『これは 人々 の 殺 さんとする 者 ならずや。
26 視 よ、公然 に 語 るに、之 に 對 して 何 をも 言 ふ 者 なし、司 たちは 此 の 人 のキリストたるを 眞 に 認 めしならんか。
27 されど 我 らは 此 の 人 の 何處 よりかを 知 る、キリストの 來 る 時 には、その 何處 よりかを 知 る 者 なし』
28 ここにイエス 宮 にて 教 へつつ 呼 はりて 言 ひ 給 ふ『なんぢら 我 を 知 り、亦 わが 何處 よりかを 知 る。されど 我 は 己 より 來 るにあらず、眞 の 者 ありて 我 を 遣 し 給 へり。汝 らは 彼 を 知 らず、
29 我 は 彼 を 知 る。我 は 彼 より 出 で、彼 は 我 を 遣 し 給 ひしに 因 りてなり』
30 ここに 人々 イエスを 捕 へんと 謀 りたれど、彼 の 時 いまだ 到 らぬ 故 に 手出 する 者 なかりき。
31 かくて 群衆 のうち 多 くの 人々 イエスを 信 じて『キリスト 來 るとも、此 の 人 の 行 ひしより 多 く 徴 を 行 はんや』と 言 ふ。
32 イエスにつきて 群衆 のかく 囁 くことパリサイ 人 の 耳 に 入 りたれば、祭司長・パリサイ 人 ら 彼 を 捕 へんとて 下役 どもを 遣 ししに、
33 イエス 言 ひ 給 ふ『我 なほ 暫 く 汝 らと 偕 に 居 り、而 してのち 我 を 遣 し 給 ひし 者 の 御許 に 往 く。
34 汝 ら 我 を 尋 ねん、されど 逢 はざるべし、汝 等 わが 居 る 處 に 往 くこと 能 はず』
35 ここにユダヤ 人 ら 互 に 云 ふ『この 人 われらの 逢 ひ 得 ぬいづこに 往 かんとするか、ギリシヤ 人 のうちに 散 りをる 者 に 往 きて、ギリシヤ 人 を 教 へんとするか。
36 その 言 に「なんぢら 我 を 尋 ねん、然 れど 逢 はざるべし、汝 ら 我 がをる 處 に 往 くこと 能 はず」と 云 へるは 何 ぞや』
37 祭 の 終 の 大 なる 日 に、イエス 立 ちて 呼 はりて 言 ひたまふ『人 もし 渇 かば 我 に 來 りて 飮 め。
38 我 を 信 ずる 者 は、聖書 に 云 へるごとく、その 腹 より 活 ける 水、川 となりて 流 れ 出 づべし』
39 これは 彼 を 信 ずる 者 の 受 けんとする 御靈 を 指 して 言 ひ 給 ひしなり。イエス 未 だ 榮光 を 受 け 給 はざれば、御靈 いまだ 降 らざりしなり。
40 此 等 の 言 をききて 群衆 のうちの 或 人 は『これ 眞 にかの 預言者 なり』といひ、
41 或 人 は『これキリストなり』と 言 ひ、又 ある 人 は『キリストいかでガリラヤより 出 でんや、
42 聖書 に、キリストはダビデの 裔 またダビデの 居 りし 村 ベツレヘムより 出 づと 云 へるならずや』と 言 ふ。
43 斯 くイエスの 事 によりて、群衆 のうちに 紛爭 おこりたり。
44 その 中 には、イエスを 捕 へんと 欲 する 者 もありしが、手出 する 者 なかりき。
45 而 して 下役 ども、祭司長・パリサイ 人 らの 許 に 歸 りたれば、彼 ら 問 ふ『なに 故 かれを 曳 き 來 らぬか』
46 下役 ども 答 ふ『この 人 の 語 るごとく 語 りし 人 は 未 だなし』
47 パリサイ 人 等 これに 答 ふ『なんぢらも 惑 されしか、
48 司 たち 又 はパリサイ 人 のうちに、一人 だに 彼 を 信 ぜし 者 ありや、
49 律法 を 知 らぬこの 群衆 は 詛 はれたる 者 なり』
50 彼 等 のうちの 一人 にてさきにイエスの 許 に 來 りしニコデモ 言 ふ、
51 『われらの 律法 は、先 その 人 に 聽 き、その 爲 すところを 知 るにあらずば、審 く 事 をせんや』
52 かれら 答 へて 言 ふ『なんぢもガリラヤより 出 でしか、査 べ 見 よ、預言者 はガリラヤより 起 る 事 なし』
53 [斯 くておのおの 己 が 家 に 歸 れり。
Chapter 8
1 イエス、オリブ 山 にゆき 給 ふ。
2 夜明 ごろ、また 宮 に 入 りしに、民 みな 御許 に 來 りたれば、坐 して 教 へ 給 ふ。
3 ここに 學者・パリサイ 人 ら、姦淫 のとき 捕 へられたる 女 を 連 れきたり、眞中 に 立 ててイエスに 言 ふ、
4 『師 よ、この 女 は 姦淫 のをり、そのまま 捕 へられたるなり。
5 モーセは 律法 に、斯 かる 者 を 石 にて 撃 つべき 事 を 我 らに 命 じたるが、汝 は 如何 に 言 ふか』
6 かく 云 へるは、イエスを 試 みて、訴 ふる 種 を 得 んとてなり。イエス 身 を 屈 め、指 にて 地 に 物 書 き 給 ふ。
7 かれら 問 ひて 止 まざれば、イエス 身 を 起 して『なんぢらの 中、罪 なき 者 まづ 石 を 擲 て』と 言 ひ、
8 また 身 を 屈 めて 地 に 物 書 きたまふ。
9 彼 等 これを 聞 きて 良心 に 責 められ、老人 をはじめ 若 き 者 まで 一人 一人 いでゆき、唯 イエスと 中 に 立 てる 女 とのみ 遺 れり。
10 イエス 身 を 起 して、女 のほかに 誰 も 居 らぬを 見 て 言 ひ 給 ふ『をんなよ、汝 を 訴 へたる 者 どもは 何處 にをるぞ、汝 を 罪 する 者 なきか』
11 女 いふ『主 よ、誰 もなし』イエス 言 ひ 給 ふ『われも 汝 を 罪 せじ、往 け、この 後 ふたたび 罪 を 犯 すな』]
12 かくてイエスまた 人々 に 語 りて 言 ひ 給 ふ『われは 世 の 光 なり、我 に 從 ふ 者 は 暗 き 中 を 歩 まず、生命 の 光 を 得 べし』
13 パリサイ 人 ら 言 ふ『なんぢは 己 につきて 證 す、なんぢの 證 は 眞 ならず』
14 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『われ 自 ら 己 につきて 證 すとも、我 が 證 は 眞 なり、我 は 何處 より 來 り 何處 に 往 くを 知 る 故 なり。汝 らは 我 が 何處 より 來 り、何處 に 往 くを 知 らず、
15 なんぢらは 肉 によりて 審 く、我 は 誰 をも 審 かず。
16 されど 我 もし 審 かば、我 が 審判 は 眞 なり、我 は 一人 ならず、我 と 我 を 遣 し 給 ひし 者 と 偕 なるに 因 る。
17 また 汝 らの 律法 に、二人 の 證 は 眞 なりと 録 されたり。
18 我 みづから 己 につきて 證 をなし、我 を 遣 し 給 ひし 父 も 我 につきて 證 をなし 給 ふ』
19 ここに 彼 ら 言 ふ『なんぢの 父 は 何處 にあるか』イエス 答 へ 給 ふ『なんぢらは 我 をも 我 が 父 をも 知 らず、我 を 知 りしならば、我 が 父 をも 知 りしならん』
20 イエス 宮 の 内 にて 教 へし 時、これらの 事 を 賽錢函 の 傍 らにて 語 り 給 ひしが、彼 の 時 いまだ 到 らぬ 故 に、誰 も 捕 ふる 者 なかりき。
21 かくてまた 人々 に 言 ひ 給 ふ『われ 往 く、なんぢら 我 を 尋 ねん。されど 己 が 罪 のうちに 死 なん、わが 往 くところに 汝 ら 來 ること 能 はず』
22 ユダヤ 人 ら 言 ふ『「わが 往 く 處 に 汝 ら 來 ること 能 はず」と 云 へるは、自殺 せんとてか』
23 イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢらは 下 より 出 で、我 は 上 より 出 づ、汝 らは 此 の 世 より 出 で、我 は 此 の 世 より 出 でず。
24 之 によりて 我 なんぢらは 己 が 罪 のうちに 死 なんと 云 へるなり。汝 等 もし 我 の 夫 なるを 信 ぜずば、罪 のうちに 死 ぬべし』
25 彼 ら 言 ふ『なんぢは 誰 なるか』イエス 言 ひ 給 ふ『われは 正 しく 汝 らに 告 げ 來 りし 所 の 者 なり。
26 われ 汝 らに 就 きて 語 るべきこと 審 くべきこと 多 し、而 して 我 を 遣 し 給 ひし 者 は 眞 なり、我 は 彼 に 聽 きしその 事 を 世 に 告 ぐるなり』
27 これは 父 をさして 言 ひ 給 へるを、彼 らは 悟 らざりき。
28 ここにイエス 言 ひ 給 ふ『なんぢら 人 の 子 を 擧 げしのち、我 の 夫 なるを 知 り、又 わが 己 によりて 何事 をも 爲 さず、ただ 父 の 我 に 教 へ 給 ひしごとく、此 等 のことを 語 りたるを 知 らん。
29 我 を 遣 し 給 ひし 者 は、我 とともに 在 す。我 つねに 御意 に 適 ふことを 行 ふによりて、我 を 獨 おき 給 はず』
30 此 等 のことを 語 り 給 へるとき、多 くの 人々 イエスを 信 じたり。
31 ここにイエス 己 を 信 じたるユダヤ 人 に 言 ひたまふ『汝 等 もし 常 に 我 が 言 に 居 らば、眞 にわが 弟子 なり。
32 また 眞理 を 知 らん、而 して 眞理 は 汝 らに 自由 を 得 さすべし』
33 かれら 答 ふ『われはアブラハムの 裔 にして、未 だ 人 の 奴隷 となりし 事 なし。如何 なれば「なんぢら 自由 を 得 べし」と 言 ふか』
34 イエス 答 へ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、すべて 罪 を 犯 す 者 は 罪 の 奴隷 なり。
35 奴隷 はとこしへに 家 に 居 らず、子 は 永遠 に 居 るなり。
36 この 故 に 子 もし 汝 らに 自由 を 得 させば、汝 ら 實 に 自由 とならん。
37 我 は 汝 らがアブラハムの 裔 なるを 知 る、されど 我 が 言 なんぢらの 衷 に 留 らぬ 故 に、我 を 殺 さんと 謀 る。
38 我 はわが 父 の 許 にて 見 しことを 語 り、汝 らは 又 なんぢらの 父 より 聞 きしことを 行 ふ』
39 かれら 答 へて 言 ふ『われらの 父 はアブラハムなり』イエス 言 ひ 給 ふ『もしアブラハムの 子 ならば、アブラハムの 業 をなさん。
40 然 るに 汝 らは 今、神 より 聽 きたる 眞理 を 汝 らに 告 ぐる 者 なる 我 を 殺 さんと 謀 る。アブラハムは 斯 かることを 爲 さざりき。
41 汝 らは 汝 らの 父 の 業 を 爲 すなり』かれら 言 ふ『われら 淫行 によりて 生 れず、我 らの 父 はただ 一人、即 ち 神 なり』
42 イエス 言 ひたまふ『神 もし 汝 らの 父 ならば、汝 ら 我 を 愛 せん、われ 神 より 出 でて 來 ればなり。我 は 己 より 來 るにあらず、神 われを 遣 し 給 へり。
43 何 故 わが 語 ることを 悟 らぬか、是 わが 言 をきくこと 能 はぬに 因 る。
44 汝 らは 己 が 父 惡魔 より 出 でて、己 が 父 の 慾 を 行 はんことを 望 む。彼 は 最初 より 人殺 なり、また 眞 その 中 になき 故 に 眞 に 立 たず、彼 は 虚僞 をかたる 毎 に 己 より 語 る、それは 虚僞 者 にして 虚僞 の 父 なればなり。
45 然 るに 我 は 眞 を 告 ぐるによりて、汝 ら 我 を 信 ぜず、
46 汝 等 のうち 誰 か 我 を 罪 ありとして 責 め 得 る。われ 眞 を 告 ぐるに、我 を 信 ぜぬは 何 故 ぞ。
47 神 より 出 づる 者 は 神 の 言 をきく、汝 らの 聽 かぬは 神 より 出 でぬに 因 る』
48 ユダヤ 人 こたへて 言 ふ『なんぢはサマリヤ 人 にて 惡鬼 に 憑 かれたる 者 なりと、我 らが 云 へるは 宜 ならずや』
49 イエス 答 へ 給 ふ『われは 惡鬼 に 憑 かれず、反 つて 我 が 父 を 敬 ふ、なんぢらは 我 を 輕 んず。
50 我 はおのれの 榮光 を 求 めず、之 を 求 めかつ 審判 し 給 ふ 者 あり。
51 誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、人 もし 我 が 言 を 守 らば、永遠 に 死 を 見 ざるべし』
52 ユダヤ 人 いふ『今 ぞなんぢが 惡鬼 に 憑 かれたるを 知 る。アブラハムも 預言者 たちも 死 にたり、然 るに 汝 は「人 もし 我 が 言 を 守 らば、永遠 に 死 を 味 はざるべし」と 云 ふ。
53 汝 われらの 父 アブラハムよりも 大 なるか、彼 は 死 に、預言者 たちも 死 にたり、汝 はおのれを 誰 とするか』
54 イエス 答 へたまふ『我 もし 己 に 榮光 を 歸 せば、我 が 榮光 は 空 し。我 に 榮光 を 歸 する 者 は 我 が 父 なり、即 ち 汝 らが 己 の 神 と 稱 ふる 者 なり。
55 然 るに 汝 らは 彼 を 知 らず、我 は 彼 を 知 る。もし 彼 を 知 らずと 言 はば、汝 らの 如 く 僞 者 たるべし。されど 我 は 彼 を 知 り、且 その 御言 を 守 る。
56 汝 らの 父 アブラハムは、我 が 日 を 見 んとて 樂 しみ 且 これを 見 て 喜 べり』
57 ユダヤ 人 いふ『なんぢ 未 だ 五十歳 にもならぬにアブラハムを 見 しか』
58 イエス 言 ひ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、アブラハムの 生 れいでぬ 前 より 我 は 在 るなり』
59 ここに 彼 ら 石 をとりてイエスに 擲 たんとしたるに、イエス 隱 れて 宮 を 出 で 給 へり。
Chapter 9
1 イエス 途 往 くとき、生 れながらの 盲人 を 見 給 ひたれば、
2 弟子 たち 問 ひて 言 ふ『ラビ、この 人 の 盲目 にて 生 れしは、誰 の 罪 によるぞ、己 のか、親 のか』
3 イエス 答 へ 給 ふ『この 人 の 罪 にも 親 の 罪 にもあらず、ただ 彼 の 上 に 神 の 業 の 顯 れん 爲 なり。
4 我 を 遣 し 給 ひし 者 の 業 を 我 ら 晝 の 間 になさざる 可 からず。夜 きたらん、その 時 は 誰 も 働 くこと 能 はず。
5 われ 世 にをる 間 は 世 の 光 なり』
6 かく 言 ひて 地 に 唾 し、唾 にて 泥 をつくり、之 を 盲人 の 目 にぬりて 言 ひ 給 ふ、
7 『ゆきてシロアム(釋 けば 遣 されたる 者)の 池 にて 洗 へ』乃 ちゆきて 洗 ひたれば、見 ゆることを 得 て 歸 れり。
8 ここに 隣 人 および 前 に 彼 の 乞食 なるを 見 し 者 ども 言 ふ『この 人 は 坐 して 物 乞 ひゐたるにあらずや』
9 或 人 は『夫 なり』といひ、或 人 は『否、ただ 似 たるなり』といふ。かの 者『われは 夫 なり』と 言 ひたれば、
10 人々 いふ『さらば 汝 の 目 は 如何 にして 開 きたるか』
11 答 ふ『イエスといふ 人、泥 をつくり 我 が 目 に 塗 りて 言 ふ「シロアムに 往 きて 洗 へ」と、乃 ち 往 きて 洗 ひたれば、物 見 ることを 得 たり』
12 彼 ら『その 人 は 何處 に 居 るか』と 言 へば『知 らず』と 答 ふ。
13 人々 さきに 盲目 なりし 者 をパリサイ 人 らの 許 に 連 れきたる。
14 イエスの 泥 をつくりて 其 の 人 の 目 をあけし 日 は 安息 日 なりき。
15 パリサイ 人 らも 亦 いかにして 物 見 ることを 得 しかと 問 ひたれば、彼 いふ『かの 人 わが 目 に 泥 をぬり、我 これを 洗 ひて 見 ゆることを 得 たり』
16 パリサイ 人 の 中 なる 或 人 は『かの 人、安息 日 を 守 らぬ 故 に、神 より 出 でし 者 にあらず』と 言 ひ、或 人 は『罪 ある 人 いかで 斯 かる 徴 をなし 得 んや』と 言 ひて 互 に 相 爭 ひたり。
17 ここにまた 盲目 なりし 人 に 言 ふ『なんぢの 目 をあけしに 因 り、汝 は 彼 に 就 きて 如何 にいふか』彼 いふ『預言者 なり』
18 ユダヤ 人 ら、彼 が 盲目 なりしに 見 ゆるやうになりしことを、未 だ 信 ぜずして、目 の 開 きたる 人 の 兩親 を 呼 び、
19 問 ひて 言 ふ『これは 盲目 にて 生 れしと 言 ふ 汝 らの 子 なりや、さらば 今 いかにして 見 ゆるか』
20 兩親 こたへて 言 ふ『かれの 我 が 子 なることと、盲目 にて 生 れたる 事 とを 知 る。
21 されど 今 いかにして 見 ゆるかを 知 らず、又 その 目 をあけしは 誰 なるか、我 らは 知 らず、彼 に 問 へ、年 長 けたれば 自 ら 己 がことを 語 らん』
22 兩親 のかく 言 ひしはユダヤ 人 を 懼 れたるなり。ユダヤ 人 ら 相 議 りて『若 しイエスをキリストと 言 ひ 顯 す 者 あらば、除名 すべし』と 定 めたるに 因 る。
23 兩親 の『かれ 年 長 けたれば 彼 に 問 へ』と 云 へるは 此 の 故 なり。
24 かれら 盲目 なりし 人 を 再 び 呼 びて 言 ふ『神 に 榮光 を 歸 せよ、我等 はかの 人 の 罪人 たるを 知 る』
25 答 ふ『かれ 罪人 なるか、我 は 知 らず、ただ 一 つの 事 をしる、即 ち 我 さきに 盲目 たりしが、今 見 ゆることを 得 たる 是 なり』
26 彼 ら 言 ふ『かれは 汝 に 何 をなししか、如何 にして 目 をあけしか』
27 答 ふ『われ 既 に 汝 らに 告 げたれど 聽 かざりき。何 ぞまた 聽 かんとするか、汝 らもその 弟子 とならんことを 望 むか』
28 かれら 罵 りて 言 ふ『なんぢは 其 の 弟子 なり、我等 モーセの 弟子 なり。
29 モーセに 神 の 語 り 給 ひしことを 知 れど、此 の 人 の 何處 よりかを 知 らず』
30 答 へて 言 ふ『その 何處 よりかを 知 らずとは 怪 しき 事 なり、彼 わが 目 をあけしに。
31 神 は 罪人 に 聽 き 給 はねど、敬虔 にして 御意 をおこなふ 人 に 聽 き 給 ふことを 我 らは 知 る。
32 世 の 太初 より、盲目 にて 生 れし 者 の 目 をあけし 人 あるを 聞 きし 事 なし。
33 かの 人 もし 神 より 出 でずば、何事 をも 爲 し 得 ざらん』
34 かれら 答 へて『なんぢ 全 く 罪 のうちに 生 れながら、我 らを 教 ふるか』と 言 ひて、遂 に 彼 を 追 ひ 出 せり。
35 イエスその 追 ひ 出 されしことを 聞 き、彼 に 逢 ひて 言 ひ 給 ふ『なんぢ 人 の 子 を 信 ずるか』
36 答 へて 言 ふ『主 よ、それは 誰 なる 乎、われ 信 ぜまほし』
37 イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢ 彼 を 見 たり、汝 と 語 る 者 は 夫 なり』
38 ここに 彼『主 よ、我 は 信 ず』といひて 拜 せり。
39 イエス 言 ひ 給 ふ『われ 審判 の 爲 にこの 世 に 來 れり。見 えぬ 人 は 見 え、見 ゆる 人 は 盲目 とならん 爲 なり』
40 パリサイ 人 の 中 イエスと 共 に 居 りし 者、これを 聞 きて 言 ふ『我 らも 盲目 なるか』
41 イエス 言 ひ 給 ふ『もし 盲目 なりしならば、罪 なかりしならん、されど 見 ゆと 言 ふ 汝 らの 罪 は 遺 れり』
Chapter 10
1 『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、羊 の 檻 に 門 より 入 らずして、他 より 越 ゆる 者 は、盜人 なり、強盜 なり。
2 門 より 入 る 者 は、羊 の 牧者 なり。
3 門守 は 彼 のために 開 き、羊 はその 聲 をきき、彼 は 己 の 羊 の 名 を 呼 びて 牽 きいだす。
4 悉 とく 其 の 羊 をいだしし 時、これに 先 だちゆく、羊 その 聲 を 知 るによりて 從 ふなり。
5 他 の 者 には 從 はず、反 つて 逃 ぐ、他 の 者 どもの 聲 を 知 らぬ 故 なり』
6 イエスこの 譬 を 言 ひ 給 へど、彼 らその 何事 をかたり 給 ふかを 知 らざりき。
7 この 故 にイエス 復 いひ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、我 は 羊 の 門 なり。
8 すべて 我 より 前 に 來 りし 者 は、盜人 なり、強盜 なり、羊 は 之 に 聽 かざりき。
9 我 は 門 なり、おほよそ 我 によりて 入 る 者 は 救 はれ、かつ 出入 をなし、草 を 得 べし。
10 盜人 のきたるは 盜 み、殺 し、亡 さんとするの 他 なし。わが 來 るは 羊 に 生命 を 得 しめ、かつ 豐 に 得 しめん 爲 なり。
11 我 は 善 き 牧者 なり、善 き 牧者 は 羊 のために 生命 を 捨 つ。
12 牧者 ならず、羊 も 己 がものならぬ 雇人 は、豺狼 のきたるを 見 れば 羊 を 棄 てて 逃 ぐ、――豺狼 は 羊 をうばひ 且 ちらす――
13 彼 は 雇人 にて、その 羊 を 顧 みぬ 故 なり。
14 我 は 善 き 牧者 にして、我 がものを 知 り、我 がものは 我 を 知 る、
15 父 の 我 を 知 り、我 の 父 を 知 るが 如 し、我 は 羊 のために 生命 を 捨 つ。
16 我 には 亦 この 檻 のものならぬ 他 の 羊 あり、之 をも 導 かざるを 得 ず、彼 らは 我 が 聲 をきかん、遂 に 一 つの 群 ひとりの 牧者 となるべし。
17 之 によりて 父 は 我 を 愛 し 給 ふ、それは 我 ふたたび 生命 を 得 んために 生命 を 捨 つる 故 なり。
18 人 これを 我 より 取 るにあらず、我 みづから 捨 つるなり。我 は 之 をすつる 權 あり、復 これを 得 る 權 あり、我 この 命令 をわが 父 より 受 けたり』
19 これらの 言 によりて 復 ユダヤ 人 のうちに 紛爭 おこり、
20 その 中 なる 多 くの 者 いふ『かれは 惡鬼 に 憑 かれて 氣 狂 へり、何 ぞ 之 にきくか』
21 他 の 者 ども 言 ふ『これは 惡鬼 に 憑 かれたる 者 の 言 にあらず、惡鬼 は 盲人 の 目 をあけ 得 んや』
22 その 頃 エルサレムに 宮 潔 の 祭 あり、時 は 冬 なり。
23 イエス 宮 の 内、ソロモンの 廊 を 歩 みたまふに、
24 ユダヤ 人 ら 之 を 取圍 みて 言 ふ『何時 まで 我 らの 心 を 惑 しむるか、汝 キリストならば 明白 に 告 げよ』
25 イエス 答 へ 給 ふ『われ 既 に 告 げたれど 汝 ら 信 ぜず、わが 父 の 名 によりて 行 ふわざは、我 に 就 きて 證 す。
26 されど 汝 らは 信 ぜず、我 が 羊 ならぬ 故 なり。
27 わが 羊 はわが 聲 をきき、我 は 彼 らを 知 り、彼 らは 我 に 從 ふ。
28 我 かれらに 永遠 の 生命 を 與 ふれば、彼 らは 永遠 に 亡 ぶることなく、又 かれらを 我 が 手 より 奪 ふ 者 あらじ。
29 彼 らを 我 にあたへ 給 ひし 我 が 父 は、一切 のものよりも 大 なれば、誰 にても 父 の 御手 よりは 奪 ふこと 能 はず。
30 我 と 父 とは 一 つなり』
31 ユダヤ 人 また 石 を 取 りあげてイエスを 撃 たんとす。
32 イエス 答 へ 給 ふ『われは 父 によりて 多 くの 善 き 業 を 汝 らに 示 したり、その 孰 の 業 ゆゑに 我 を 石 にて 撃 たんとするか』
33 ユダヤ 人 こたふ『なんぢを 石 にて 撃 つは 善 きわざの 故 ならず、瀆言 の 故 にして、なんぢ 人 なるに、己 を 神 とする 故 なり』
34 イエス 答 へ 給 ふ『なんぢらの 律法 に「われ 言 ふ、汝 らは 神 なり」と 録 されたるに 非 ずや。
35 かく 神 の 言 を 賜 はりし 人々 を 神 と 云 へり。聖書 は 廢 るべきにあらず、
36 然 るに 父 の 潔 め 別 ちて 世 に 遣 し 給 ひし 者 が「われは 神 の 子 なり」と 言 へばとて、何 ぞ「瀆言 を 言 ふ」といふか。
37 我 もし 我 が 父 のわざを 行 はずば、我 を 信 ずな、
38 もし 行 はば、假令 われを 信 ぜずとも、その 業 を 信 ぜよ。さらば 父 の 我 にをり、我 の 父 に 居 ることを 知 りて 悟 らん』
39 かれら 復 イエスを 捕 へんとせしが、その 手 より 脱 れて 去 り 給 へり。
40 かくてイエス 復 ヨルダンの 彼方、ヨハネの 最初 にバプテスマを 施 したる 處 にいたり、其處 にとどまり 給 ひしが、
41 多 くの 人 みもとに 來 りて『ヨハネは 何 の 徴 をも 行 はざりしかど、この 人 に 就 きてヨハネの 言 ひし 事 は、ことごとく 眞 なりき』と 言 ふ。
42 而 して 多 くの 人 かしこにてイエスを 信 じたり。
Chapter 11
1 ここに 病 める 者 あり、ラザロと 云 ふ、マリヤとその 姉妹 マルタとの 村 ベタニヤの 人 なり。
2 此 のマリヤは、主 に 香 油 をぬり、頭髮 にて 御足 を 拭 ひし 者 にして、病 めるラザロはその 兄弟 なり。
3 姉妹 ら 人 をイエスに 遣 して『主、視 よ、なんぢの 愛 し 給 ふもの 病 めり』と 言 はしむ。
4 之 を 聞 きてイエス 言 ひ 給 ふ『この 病 は 死 に 至 らず、神 の 榮光 のため、神 の 子 のこれに 由 りて 榮光 を 受 けんためなり』
5 イエスはマルタと、その 姉妹 と、ラザロとを 愛 し 給 へり。
6 ラザロの 病 みたるを 聞 きて、その 居給 ひし 處 になほ 二日 とどまり、
7 而 してのち 弟子 たちに 言 ひ 給 ふ『われら 復 ユダヤに 往 くべし』
8 弟子 たち 言 ふ『ラビ、この 程 もユダヤ 人、なんぢを 石 にて 撃 たんとせしに、復 かしこに 往 き 給 ふか』
9 イエス 答 へたまふ『一日 に 十二 時 あるならずや、人 もし 晝 あるかば、此 の 世 の 光 を 見 るゆゑに 躓 くことなし。
10 夜 あるかば、光 その 人 になき 故 に 躓 くなり』
11 かく 言 ひて 復 その 後 いひ 給 ふ『われらの 友 ラザロ 眠 れり、されど 我 よび 起 さん 爲 に 往 くなり』
12 弟子 たち 言 ふ『主 よ、眠 れるならば 癒 ゆべし』
13 イエスは 彼 が 死 にたることを 言 ひ 給 ひしなれど、弟子 たちは 寢 ねて 眠 れるを 言 ひ 給 ふと 思 へるなり。
14 ここにイエス 明白 に 言 ひ 給 ふ『ラザロは 死 にたり。
15 我 かしこに 居 らざりし 事 を 汝 等 のために 喜 ぶ、汝 等 をして 信 ぜしめんとてなり。されど 我 ら 今 その 許 に 往 くべし』
16 デドモと 稱 ふるトマス、他 の 弟子 たちに 言 ふ『われらも 往 きて 彼 と 共 に 死 ぬべし』
17 さてイエス 來 り 見 給 へば、ラザロの 墓 にあること 既 に 四日 なりき。
18 ベタニヤはエルサレムに 近 くして、二 十 五 丁 ばかりの 距離 なるが、
19 數多 のユダヤ 人、マルタとマリヤとをその 兄弟 の 事 につき 慰 めんとて 來 れり。
20 マルタはイエス 來給 ふと 聞 きて 出 で 迎 へたれど、マリヤはなほ 家 に 坐 し 居 たり。
21 マルタ、イエスに 言 ふ『主 よ、もし 此處 に 在 ししならば、我 が 兄弟 は 死 なざりしものを。
22 されど 今 にても 我 は 知 る、何事 を 神 に 願 ひ 給 ふとも、神 は 與 へ 給 はん』
23 イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢの 兄弟 は 甦 へるべし』
24 マルタ 言 ふ『をはりの 日、復活 のときに 甦 へるべきを 知 る』
25 イエス 言 ひ 給 ふ『我 は 復活 なり、生命 なり、我 を 信 ずる 者 は 死 ぬとも 生 きん。
26 凡 そ 生 きて 我 を 信 ずる 者 は、永遠 に 死 なざるべし。汝 これを 信 ずるか』
27 彼 いふ『主 よ 然 り、我 なんぢは 世 に 來 るべきキリスト、神 の 子 なりと 信 ず』
28 かく 言 ひて 後、ゆきて 竊 にその 姉妹 マリヤを 呼 びて『師 きたりて 汝 を 呼 びたまふ』と 言 ふ。
29 マリヤ 之 をきき、急 ぎ 起 ちて 御許 に 往 けり。
30 イエスは 未 だ 村 に 入 らず、尚 マルタの 迎 へし 處 に 居給 ふ。
31 マリヤと 共 に 家 に 居 りて 慰 め 居 たるユダヤ 人、その 急 ぎ 立 ちて 出 でゆくを 見、かれは 歎 かんとて 墓 に 往 くと 思 ひて 後 に 隨 へり。
32 かくてマリヤ、イエスの 居給 ふ 處 にいたり、之 を 見 てその 足下 に 伏 し『主 よ、もし 此處 に 在 ししならば、我 が 兄弟 は 死 なざりしものを』と 言 ふ。
33 イエスかれが 泣 き 居 り、共 に 來 りしユダヤ 人 も 泣 き 居 るを 見 て、心 を 傷 め 悲 しみて 言 ひ 給 ふ、
34 『かれを 何處 に 置 きしか』彼 ら 言 ふ『主 よ、來 りて 見 給 へ』
35 イエス 涙 をながし 給 ふ。
36 ここにユダヤ 人 ら 言 ふ『視 よ、いかばかり 彼 を 愛 せしぞや』
37 その 中 の 或 者 ども 言 ふ『盲人 の 目 をあけし 此 の 人 にして、彼 を 死 なざらしむること 能 はざりしか』
38 イエスまた 心 を 傷 めつつ 墓 にいたり 給 ふ。墓 は 洞 にして 石 を 置 きて 塞 げり。
39 イエス 言 ひ 給 ふ『石 を 除 けよ』死 にし 人 の 姉妹 マルタ 言 ふ『主 よ、彼 ははや 臭 し、四日 を 經 たればなり』
40 イエス 言 ひ 給 ふ『われ 汝 に、もし 信 ぜば 神 の 榮光 を 見 んと 言 ひしにあらずや』
41 ここに 人々 石 を 除 けたり。イエス 目 を 擧 げて 言 ひたまふ『父 よ、我 にきき 給 ひしを 謝 す。
42 常 にきき 給 ふを 我 は 知 る。然 るに 斯 く 言 ふは、傍 らに 立 つ 群衆 の 爲 にして、汝 の 我 を 遣 し 給 ひしことを 之 に 信 ぜしめんとてなり』
43 斯 く 言 ひてのち、聲 高 く『ラザロよ、出 で 來 れ』と 呼 はり 給 へば、
44 死 にしもの 布 にて 足 と 手 とを 卷 かれたるまま 出 で 來 る、顏 も 手拭 にて 包 まれたり。イエス『これを 解 きて 往 かしめよ』と 言 ひ 給 ふ。
45 かくてマリヤの 許 に 來 りて、イエスの 爲 し 給 ひし 事 を 見 たる 多 くのユダヤ 人、かれを 信 じたりしが、
46 或 者 はパリサイ 人 に 往 きて、イエスの 爲 し 給 ひし 事 を 告 げたり。
47 ここに 祭司長・パリサイ 人 ら 議會 を 開 きて 言 ふ『われら 如何 に 爲 すべきか、此 の 人 おほくの 徴 を 行 ふなり。
48 もし 彼 をこのまま 捨 ておかば、人々 みな 彼 を 信 ぜん、而 してロマ 人 きたりて、我 らの 土地 と 國人 とを 奪 はん』
49 その 中 の 一人 にて 此 の 年 の 大 祭司 なるカヤパ 言 ふ『なんぢら 何 をも 知 らず。
50 ひとりの 人、民 のために 死 にて、國人 すべての 滅 びぬは、汝 らの 益 なるを 思 はぬなり』
51 これは 己 より 云 へるに 非 ず、この 年 の 大 祭司 なれば、イエスの 國人 のため、
52 又 ただに 國人 の 爲 のみならず、散 りたる 神 の 子 らを 一 つに 集 めん 爲 に 死 に 給 ふことを 預言 したるなり。
53 彼 等 この 日 よりイエスを 殺 さんと 議 れり。
54 されば 此 の 後 イエス 顯 にユダヤ 人 のなかを 歩 み 給 はず、此處 を 去 りて、荒野 にちかき 處 なるエフライムといふ 町 に 往 き、弟子 たちと 偕 に 其處 に 留 りたまふ。
55 ユダヤ 人 の 過越 の 祭 近 づきたれば、多 くの 人々 身 を 潔 めんとて、祭 のまへに 田舍 よりエルサレムに 上 れり。
56 彼 らイエスをたづね、宮 に 立 ちて 互 に 言 ふ『なんぢら 如何 に 思 ふか、彼 は 祭 に 來 らぬか』
57 祭司長・パリサイ 人 らは、イエスを 捕 へんとて、その 在處 を 知 る 者 あらば、告 げ 出 づべく 預 て 命令 したりしなり。
Chapter 12
1 過越 の 祭 の 六日 前 に、イエス、ベタニヤに 來 り 給 ふ、ここは 死人 の 中 より 甦 へらせ 給 ひしラザロの 居 る 處 なり。
2 此處 にてイエスのために 饗宴 を 設 け、マルタは 事 へ、ラザロはイエスと 共 に 席 に 著 ける 者 の 中 にあり。
3 マリヤは 價 高 き 混 りなきナルドの 香 油 一斤 を 持 ち 來 りて、イエスの 御足 にぬり、己 が 頭髮 にて 御足 を 拭 ひしに、香 油 のかをり 家 に 滿 ちたり。
4 御弟子 の 一人 にて、イエスを 賣 らんとするイスカリオテのユダ 言 ふ、
5 『何 ぞこの 香 油 を 三 百 デナリに 賣 りて、貧 しき 者 に 施 さざる』
6 かく 云 へるは 貧 しき 者 を 思 ふ 故 にあらず、おのれ 盜人 にして、財嚢 を 預 り、その 中 に 納 むる 物 を 掠 めゐたればなり。
7 イエス 言 ひ 給 ふ『この 女 の 爲 すに 任 せよ、我 が 葬 りの 日 のために 之 を 貯 へたるなり。
8 貧 しき 者 は 常 に 汝 らと 偕 に 居 れども、我 は 常 に 居 らぬなり』
9 ユダヤの 多 くの 民 ども、イエスの 此處 に 居給 ふことを 知 りて 來 る、これはイエスの 爲 のみにあらず、死人 の 中 より 甦 へらせ 給 ひしラザロを 見 んとてなり。
10 かくて 祭司長 ら、ラザロをも 殺 さんと 議 る。
11 彼 のために 多 くのユダヤ 人 さり 往 きてイエスを 信 ぜし 故 なり。
12 明 くる 日、祭 に 來 りし 多 くの 民 ども、イエスのエルサレムに 來 り 給 ふをきき、
13 棕梠 の 枝 をとりて 出 で 迎 へ、『「ホサナ、讃 むべきかな、主 の 御名 によりて 來 る 者」イスラエルの 王』と 呼 はる。
14 イエスは 小驢馬 を 得 て 之 に 乘 り 給 ふ。これは 録 して、
15 『シオンの 娘 よ、懼 るな。視 よ、なんぢの 王 は 驢馬 の 子 に 乘 りて 來 り 給 ふ』と 有 るが 如 し。
16 弟子 たちは 最初 これらの 事 を 悟 らざりしが、イエスの 榮光 を 受 け 給 ひし 後 に、これらの 事 のイエスに 就 きて 録 されたると、人々 が 斯 く 爲 ししとを 思 ひ 出 せり。
17 ラザロを 墓 より 呼 び 起 し、死人 の 中 より 甦 へらせ 給 ひし 時 に、イエスと 偕 に 居 りし 群衆、證 をなせり。
18 群衆 のイエスを 迎 へたるは、かかる 徴 を 行 ひ 給 ひしことを 聞 きたるに 因 りてなり。
19 パリサイ 人 ら 互 に 言 ふ『見 るべし、汝 らの 謀 ることの 益 なきを。視 よ、世 は 彼 に 從 へり』
20 禮拜 せんとて 祭 に 上 りたる 者 の 中 に、ギリシヤ 人 數人 ありしが、
21 ガリラヤなるベツサイダのピリポに 來 り、請 ひて 言 ふ『君 よ、われらイエスに 謁 えんことを 願 ふ』
22 ピリポ 往 きてアンデレに 告 げ、アンデレとピリポと 共 に 往 きてイエスに 告 ぐ。
23 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『人 の 子 の 榮光 を 受 くべき 時 きたれり。
24 誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、一粒 の 麥、地 に 落 ちて 死 なずば、唯一 つにて 在 らん、もし 死 なば、多 くの 果 を 結 ぶべし。
25 己 が 生命 を 愛 する 者 は、これを 失 ひ、この 世 にてその 生命 を 憎 む 者 は、之 を 保 ちて 永遠 の 生命 に 至 るべし。
26 人 もし 我 に 事 へんとせば、我 に 從 へ、わが 居 る 處 に 我 に 事 ふる 者 もまた 居 るべし。人 もし 我 に 事 ふることをせば、我 が 父 これを 貴 び 給 はん。
27 今 わが 心 さわぐ、われ 何 を 言 ふべきか。父 よ、この 時 より 我 を 救 ひ 給 へ、されど 我 この 爲 にこの 時 に 到 れり。
28 父 よ、御名 の 榮光 をあらはし 給 へ』ここに 天 より 聲 いでて 言 ふ『われ 既 に 榮光 をあらはしたり、復 さらに 顯 さん』
29 傍 らに 立 てる 群衆 これを 聞 きて『雷霆 鳴 れり』と 言 ひ、ある 人々 は『御使 かれに 語 れるなり』と 言 ふ。
30 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『この 聲 の 來 りしは、我 が 爲 にあらず、汝 らの 爲 なり。
31 今 この 世 の 審判 は 來 れり、今 この 世 の 君 は 逐 ひ 出 さるべし。
32 我 もし 地 より 擧 げられなば、凡 ての 人 をわが 許 に 引 きよせん』
33 かく 言 ひて、己 が 如何 なる 死 にて 死 ぬるかを 示 し 給 へり。
34 群衆 こたふ『われら 律法 によりて、キリストは 永遠 に 存 へ 給 ふと 聞 きたるに、汝 いかなれば 人 の 子 は 擧 げらるべしと 言 ふか、その 人 の 子 とは 誰 なるか』
35 イエス 言 ひ 給 ふ『なほ 暫 し 光 は 汝 らの 中 にあり、光 のある 間 に 歩 みて、暗黒 に 追及 かれぬやうにせよ、暗 き 中 を 歩 む 者 は 往方 を 知 らず。
36 光 の 子 とならんために、光 のある 間 に 光 を 信 ぜよ』イエス 此 等 のことを 語 りてのち、彼 らを 避 けて 隱 れ 給 へり。
37 かく 多 くの 徴 を 人々 の 前 におこなひ 給 ひたれど、なほ 彼 を 信 ぜざりき。
38 これ 預言者 イザヤの 言 の 成就 せん 爲 なり。曰 く『主 よ、我 らに 聞 きたる 言 を 誰 か 信 ぜし。主 の 御腕 は 誰 にあらはれし』
39 彼 らが 信 じ 得 ざりしは 此 の 故 なり。即 ちイザヤまた 云 へらく、
40 『彼 らの 眼 を 暗 くし、心 を 頑固 にし 給 へり。これ 目 にて 見、心 にて 悟 り、ひるがへりて、我 に 醫 さるる 事 なからん 爲 なり』
41 イザヤの 斯 く 云 へるは、その 榮光 を 見 し 故 にて、イエスに 就 きて 語 りしなり。
42 されど 司 たちの 中 にもイエスを 信 じたるもの 多 かりしが、パリサイ 人 の 故 によりて 言 ひ 顯 すことをせざりき、除名 せられん 事 を 恐 れたるなり。
43 彼 らは 神 の 譽 よりも 人 の 譽 を 愛 でしなり。
44 イエス 呼 はりて 言 ひ 給 ふ『われを 信 ずる 者 は 我 を 信 ずるにあらず、我 を 遣 し 給 ひし 者 を 信 じ、
45 我 を 見 る 者 は 我 を 遣 し 給 ひし 者 を 見 るなり。
46 我 は 光 として 世 に 來 れり、すべて 我 を 信 ずる 者 の 暗黒 に 居 らざらん 爲 なり。
47 人 たとひ 我 が 言 をききて 守 らずとも、我 は 之 を 審 かず。夫 わが 來 りしは 世 を 審 かん 爲 にあらず、世 を 救 はん 爲 なり。
48 我 を 棄 て 我 が 言 を 受 けぬ 者 を 審 く 者 あり、わが 語 れる 言 こそ 終 の 日 に 之 を 審 くなれ。
49 我 はおのれに 由 りて 語 れるにあらず、我 を 遣 し 給 ひし 父 みづから、我 が 言 ふべきこと 語 るべきことを 命 じ 給 ひし 故 なり。
50 我 その 命令 の 永遠 の 生命 たるを 知 る。されば 我 は 語 るに 我 が 父 の 我 に 言 ひ 給 ふままを 語 るなり』
Chapter 13
1 過越 のまつりの 前 に、イエスこの 世 を 去 りて 父 に 往 くべき 己 が 時 の 來 れるを 知 り、世 に 在 る 己 の 者 を 愛 して、極 まで 之 を 愛 し 給 へり。
2 夕餐 のとき、惡魔 早 くもシモンの 子 イスカリオテのユダの 心 に、イエスを 賣 らんとする 思 を 入 れたるが、
3 イエス 父 が 萬物 をおのが 手 にゆだね 給 ひしことと、己 の 神 より 出 でて 神 に 到 ることを 知 り、
4 夕餐 より 起 ちて 上衣 をぬぎ、手巾 をとりて 腰 にまとひ、
5 尋 で 盥 に 水 をいれて、弟子 たちの 足 をあらひ、纏 ひたる 手巾 にて 之 を 拭 ひはじめ 給 ふ。
6 かくてシモン・ペテロに 至 り 給 へば、彼 いふ『主 よ、汝 わが 足 を 洗 ひ 給 ふか』
7 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『わが 爲 すことを 汝 いまは 知 らず、後 に 悟 るべし』
8 ペテロ 言 ふ『永遠 に 我 が 足 をあらひ 給 はざれ』イエス 答 へ 給 ふ『我 もし 汝 を 洗 はずば、汝 われと 關係 なし』
9 シモン・ペテロ 言 ふ『主 よ、わが 足 のみならず、手 をも 頭 をも』
10 イエス 言 ひ 給 ふ『すでに 浴 したる 者 は 足 のほか 洗 ふを 要 せず、全身 きよきなり。斯 く 汝 らは 潔 し、されど 悉 とくは 然 らず』
11 これ 己 を 賣 る 者 の 誰 なるを 知 りたまふ 故 に『ことごとくは 潔 からず』と 言 ひ 給 ひしなり。
12 彼 らの 足 をあらひ、己 が 上衣 をとり、再 び 席 につきて 後 いひ 給 ふ『わが 汝 らに 爲 したることを 知 るか。
13 なんぢら 我 を 師 また 主 ととなふ、然 か 言 ふは 宜 なり、我 は 是 なり。
14 我 は 主 また 師 なるに、尚 なんぢらの 足 を 洗 ひたれば、汝 らも 互 に 足 を 洗 ふべきなり。
15 われ 汝 らに 模範 を 示 せり、わが 爲 ししごとく 汝 らも 爲 さんためなり。
16 誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、僕 はその 主 よりも 大 ならず。遣 されたる 者 は 之 を 遣 す 者 よりも 大 ならず。
17 汝 等 これらの 事 を 知 りて 之 を 行 はば 幸福 なり。
18 これ 汝 ら 凡 ての 者 につきて 言 ふにあらず、我 はわが 選 びたる 者 どもを 知 る。されど 聖書 に「我 とともにパンを 食 ふ 者、われに 向 ひて 踵 を 擧 げたり」と 云 へることは、必 ず 成就 すべきなり。
19 今 その 事 の 成 らぬ 前 に 之 を 汝 らに 告 ぐ、事 の 成 らん 時、わが 夫 なるを 汝 らの 信 ぜんためなり。
20 誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、わが 遣 す 者 を 受 くる 者 は 我 をうくるなり。我 を 受 くる 者 は 我 を 遣 し 給 ひし 者 を 受 くるなり』
21 イエス 此 等 のことを 言 ひ 終 へて、心 さわぎ 證 をなして 言 ひ 給 ふ『まことに 誠 に 汝 らに 告 ぐ、汝 らの 中 の 一人 われを 賣 らん』
22 弟子 たち 互 に 顏 を 見 合 せ、誰 につきて 言 ひ 給 ふかを 訝 る。
23 イエスの 愛 したまふ 一人 の 弟子、イエスの 御胸 によりそひ 居 たれば、
24 シモン・ペテロ 首 にて 示 し『誰 のことを 言 ひ 給 ふか、告 げよ』といふ。
25 彼 そのまま 御胸 によりかかりて『主 よ、誰 なるか』と 言 ひしに、
26 イエス 答 へ 給 ふ『わが 一撮 の 食物 を 浸 して 與 ふる 者 は 夫 なり』かくて 一撮 の 食物 を 浸 して、シモンの 子 イスカリオテのユダに 與 へたまふ。
27 ユダ 一撮 の 食物 を 受 くるや、惡魔 かれに 入 りたり。イエス 彼 に 言 ひたまふ『なんぢが 爲 すことを 速 かに 爲 せ』
28 席 に 著 きゐたる 者 は 一人 として、何 故 かく 言 ひ 給 ふかを 知 らず。
29 ある 人々 は、ユダが 財嚢 を 預 るによりて『祭 のために 要 する 物 を 買 へ』とイエスの 言 ひ 給 へるか、また 貧 しき 者 に 何 か 施 さしめ 給 ふならんと 思 へり。
30 ユダ 一撮 の 食物 を 受 くるや、直 ちに 出 づ、時 は 夜 なりき。
31 ユダの 出 でし 後、イエス 言 ひ 給 ふ『今 や 人 の 子、榮光 をうく、神 も 彼 によりて 榮光 をうけ 給 ふ。
32 神 かれに 由 りて 榮光 をうけ 給 はば、神 も 己 によりて 彼 に 榮光 を 與 へ 給 はん、直 ちに 與 へ 給 ふべし。
33 若子 よ、我 なほ 暫 く 汝 らと 偕 にあり、汝 らは 我 を 尋 ねん、されど 曾 てユダヤ 人 に「なんぢらは 我 が 往 く 處 に 來 ること 能 はず」と 言 ひし 如 く、今 汝 らにも 然 か 言 ふなり。
34 われ 新 しき 誡命 を 汝 らに 與 ふ、なんぢら 相 愛 すべし。わが 汝 らを 愛 せしごとく、汝 らも 相 愛 すべし。
35 互 に 相 愛 する 事 をせば、之 によりて 人 みな 汝 らの 我 が 弟子 たるを 知 らん』
36 シモン・ペテロ 言 ふ『主 よ、何處 にゆき 給 ふか』イエス 答 へ 給 ふ『わが 往 く 處 に、なんぢ 今 は 從 ふこと 能 はず。されど 後 に 從 はん』
37 ペテロ 言 ふ『主 よ、いま 從 ふこと 能 はぬは 何 故 ぞ、我 は 汝 のために 生命 を 棄 てん』
38 イエス 答 へ 給 ふ『なんぢ 我 がために 生命 を 棄 つるか、誠 にまことに 汝 に 告 ぐ、なんぢ 三度 われを 否 むまでは、鷄 鳴 かざるべし』
Chapter 14
1 『なんぢら 心 を 騷 がすな、神 を 信 じ、また 我 を 信 ぜよ。
2 わが 父 の 家 には 住處 おほし、然 らずば 我 かねて 汝 らに 告 げしならん。われ 汝 等 のために 處 を 備 へに 往 く。
3 もし 往 きて 汝 らの 爲 に 處 を 備 へば、復 きたりて 汝 らを 我 がもとに 迎 へん、わが 居 るところに 汝 らも 居 らん 爲 なり。
4 汝 らは 我 が 往 くところに 至 る 道 を 知 る』
5 トマス 言 ふ『主 よ、何處 にゆき 給 ふかを 知 らず、いかでその 道 を 知 らんや』
6 イエス 彼 に 言 ひ 給 ふ『われは 道 なり、眞理 なり、生命 なり、我 に 由 らでは 誰 にても 父 の 御許 にいたる 者 なし。
7 汝 等 もし 我 を 知 りたらば、我 が 父 をも 知 りしならん。今 より 汝 ら 之 を 知 る、既 に 之 を 見 たり』
8 ピリポ 言 ふ『主 よ、父 を 我 らに 示 し 給 へ、さらば 足 れり』
9 イエス 言 ひ 給 ふ『ピリポ、我 かく 久 しく 汝 らと 偕 に 居 りしに、我 を 知 らぬか。我 を 見 し 者 は 父 を 見 しなり、如何 なれば「我 らに 父 を 示 せ」と 言 ふか。
10 我 の 父 に 居 り、父 の 我 に 居給 ふことを 信 ぜぬか。わが 汝 等 にいふ 言 は、己 によりて 語 るにあらず、父 われに 在 して 御業 をおこなひ 給 ふなり。
11 わが 言 ふことを 信 ぜよ、我 は 父 にをり、父 は 我 に 居給 ふなり。もし 信 ぜずば、我 が 業 によりて 信 ぜよ。
12 誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、我 を 信 ずる 者 は 我 がなす 業 をなさん、かつ 之 よりも 大 なる 業 をなすべし、われ 父 に 往 けばなり。
13 汝 らが 我 が 名 によりて 願 ふことは、我 みな 之 を 爲 さん、父、子 によりて 榮光 を 受 け 給 はんためなり。
14 何事 にても 我 が 名 によりて 我 に 願 はば、我 これを 成 すべし。
15 汝 等 もし 我 を 愛 せば、我 が 誡命 を 守 らん。
16 われ 父 に 請 はん、父 は 他 に 助主 をあたへて、永遠 に 汝 らと 偕 に 居 らしめ 給 ふべし。
17 これは 眞理 の 御靈 なり、世 はこれを 受 くること 能 はず、これを 見 ず、また 知 らぬに 因 る。なんぢらは 之 を 知 る、彼 は 汝 らと 偕 に 居 り、また 汝 らの 中 に 居給 ふべければなり。
18 我 なんぢらを 遣 して 孤兒 とはせず、汝 らに 來 るなり。
19 暫 くせば 世 は 復 われを 見 ず、されど 汝 らは 我 を 見 る、われ 活 くれば 汝 らも 活 くべければなり。
20 その 日 には、我 わが 父 に 居 り、なんぢら 我 に 居 り、われ 汝 らに 居 ることを 汝 ら 知 らん。
21 わが 誡命 を 保 ちて 之 を 守 るものは、即 ち 我 を 愛 する 者 なり。我 を 愛 する 者 は 我 が 父 に 愛 せられん、我 も 之 を 愛 し、之 に 己 を 顯 すべし』
22 イスカリオテならぬユダ 言 ふ『主 よ、何 故 おのれを 我 らに 顯 して、世 には 顯 し 給 はぬか』
23 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『人 もし 我 を 愛 せば、わが 言 を 守 らん、わが 父 これを 愛 し、かつ 我等 その 許 に 來 りて 住處 を 之 とともにせん。
24 我 を 愛 せぬ 者 は、わが 言 を 守 らず。汝 らが 聞 くところの 言 は、わが 言 にあらず、我 を 遣 し 給 ひし 父 の 言 なり。
25 此 等 のことは 我 なんぢらと 偕 にありて 語 りしが、
26 助主 すなはちわが 名 によりて 父 の 遣 したまふ 聖 靈 は、汝 らに 萬 の 事 ををしへ、又 すべて 我 が 汝 らに 言 ひしことを 思 ひ 出 さしむべし。
27 われ 平安 を 汝 らに 遺 す、わが 平安 を 汝 らに 與 ふ。わが 與 ふるは 世 の 與 ふる 如 くならず、なんぢら 心 を 騷 がすな、また 懼 るな。
28 「われ 往 きて 汝 らに 來 るなり」と 云 ひしを 汝 ら 既 に 聞 けり。もし 我 を 愛 せば、父 にわが 往 くを 喜 ぶべきなり、父 は 我 よりも 大 なるに 因 る。
29 今 その 事 の 成 らぬ 前 に、これを 汝 らに 告 げたり、事 の 成 らんとき 汝 らの 信 ぜんためなり。
30 今 より 後 われ 汝 らと 多 く 語 らじ、この 世 の 君 きたる 故 なり。彼 は 我 に 對 して 何 の 權 もなし、
31 されど 斯 くなるは、我 の、父 を 愛 し、父 の 命 じ 給 ふところに 遵 ひて 行 ふことを、世 の 知 らん 爲 なり。起 きよ、いざ 此處 を 去 るべし。
Chapter 15
1 我 は 眞 の 葡萄 の 樹、わが 父 は 農夫 なり。
2 おほよそ 我 にありて 果 を 結 ばぬ 枝 は、父 これを 除 き、果 を 結 ぶものは、いよいよ 果 を 結 ばせん 爲 に 之 を 潔 めたまふ。
3 汝 らは 既 に 潔 し、わが 語 りたる 言 に 因 りてなり。
4 我 に 居 れ、さらば 我 なんぢらに 居 らん。枝 もし 樹 に 居 らずば、自 ら 果 を 結 ぶこと 能 はぬごとく、汝 らも 我 に 居 らずば 亦 然 り。
5 我 は 葡萄 の 樹、なんぢらは 枝 なり。人 もし 我 にをり、我 また 彼 にをらば、多 くの 果 を 結 ぶべし。汝 ら 我 を 離 るれば、何事 をも 爲 し 能 はず。
6 人 もし 我 に 居 らずば、枝 のごとく 外 に 棄 てられて 枯 る、人々 これを 集 め 火 に 投 げ 入 れて 燒 くなり。
7 汝 等 もし 我 に 居 り、わが 言 なんぢらに 居 らば、何 にても 望 に 隨 ひて 求 めよ、さらば 成 らん。
8 なんぢら 多 くの 果 を 結 ばば、わが 父 は 榮光 を 受 け 給 ふべし、而 して 汝 等 わが 弟子 とならん。
9 父 の 我 を 愛 し 給 ひしごとく、我 も 汝 らを 愛 したり、わが 愛 に 居 れ。
10 なんぢら 若 しわが 誡命 をまもらば、我 が 愛 にをらん、我 わが 父 の 誡命 を 守 りて、その 愛 に 居 るがごとし。
11 我 これらの 事 を 語 りたるは、我 が 喜悦 の 汝 らに 在 り、かつ 汝 らの 喜悦 の 滿 されん 爲 なり。
12 わが 誡命 は 是 なり、わが 汝 らを 愛 せしごとく 互 に 相 愛 せよ。
13 人 その 友 のために 己 の 生命 を 棄 つる、之 より 大 なる 愛 はなし。
14 汝 等 もし 我 が 命 ずる 事 をおこなはば、我 が 友 なり。
15 今 よりのち 我 なんぢらを 僕 といはず、僕 は 主人 のなす 事 を 知 らざるなり。我 なんぢらを 友 と 呼 べり、我 が 父 に 聽 きし 凡 てのことを 汝 らに 知 らせたればなり。
16 汝 ら 我 を 選 びしにあらず、我 なんぢらを 選 べり。而 して 汝 らの 往 きて 果 を 結 び、且 その 果 の 殘 らんために、又 おほよそ 我 が 名 によりて 父 に 求 むるものを、父 の 賜 はんために 汝 らを 立 てたり。
17 これらの 事 を 命 ずるは、汝 らの 互 に 相 愛 せん 爲 なり。
18 世 もし 汝 らを 憎 まば、汝 等 より 先 に 我 を 憎 みたることを 知 れ。
19 汝 等 もし 世 のものならば、世 は 己 がものを 愛 するならん。汝 らは 世 のものならず、我 なんぢらを 世 より 選 びたり。この 故 に 世 は 汝 らを 憎 む。
20 わが 汝 らに「僕 はその 主人 より 大 ならず」と 告 げし 言 をおぼえよ。人 もし 我 を 責 めしならば、汝 等 をも 責 め、わが 言 を 守 りしならば、汝 らの 言 をも 守 らん。
21 すべて 此 等 のことを 我 が 名 の 故 に 汝 らに 爲 さん、それは 我 を 遣 し 給 ひし 者 を 知 らぬに 因 る。
22 われ 來 りて 語 らざりしならば、彼 ら 罪 なかりしならん。されど 今 はその 罪 いひのがるべき 樣 なし。
23 我 を 憎 むものは 我 が 父 をも 憎 むなり。
24 我 もし 誰 もいまだ 行 はぬ 事 を 彼 らの 中 に 行 はざりしならば、彼 ら 罪 なかりしならん。されど 今 ははや 我 をも 我 が 父 をも 見 たり、また 憎 みたり。
25 これは 彼 らの 律法 に「ひとびと 故 なくして 我 を 憎 めり」と 録 したる 言 の 成就 せん 爲 なり。
26 父 の 許 より 我 が 遣 さんとする 助主、すなはち 父 より 出 づる 眞理 の 御靈 のきたらんとき、我 につきて 證 せん。
27 汝 等 もまた 初 より 我 とともに 在 りたれば 證 するなり。
Chapter 16
1 我 これらの 事 を 語 りたるは、汝 らの 躓 かざらん 爲 なり。
2 人 なんぢらを 除名 すべし、然 のみならず、汝 らを 殺 す 者 みな 自 ら 神 に 事 ふと 思 ふとき 來 らん。
3 これらの 事 をなすは、父 と 我 とを 知 らぬ 故 なり。
4 我 これらの 事 を 語 りたるは、時 いたりて 我 が 斯 く 言 ひしことを 汝 らの 思 ひいでん 爲 なり。初 より 此 等 のことを 言 はざりしは、我 なんぢらと 偕 に 在 りし 故 なり。
5 今 われを 遣 し 給 ひし 者 にゆく、然 るに 汝 らの 中、たれも 我 に「何處 にゆく」と 問 ふ 者 なし。
6 唯 これらの 事 を 語 りしによりて、憂 なんぢらの 心 にみてり。
7 されど、われ 實 を 汝 らに 告 ぐ、わが 去 るは 汝 らの 益 なり。我 さらずば 助主 なんぢらに 來 らじ、我 ゆかば 之 を 汝 らに 遣 さん。
8 かれ 來 らんとき、世 をして 罪 につき、義 につき、審判 につきて、過 てるを 認 めしめん。
9 罪 に 就 きてとは、彼 ら 我 を 信 ぜぬに 因 りてなり。
10 義 に 就 きてとは、われ 父 にゆき、汝 ら 今 より 我 を 見 ぬに 因 りてなり。
11 審判 に 就 きてとは、此 の 世 の 君 さばかるるに 因 りてなり。
12 我 なほ 汝 らに 告 ぐべき 事 あまたあれど、今 なんぢら 得 耐 へず。
13 されど 彼 すなはち 眞理 の 御靈 きたらん 時、なんぢらを 導 きて 眞理 をことごとく 悟 らしめん。かれ 己 より 語 るにあらず、凡 そ 聞 くところの 事 を 語 り、かつ 來 らんとする 事 どもを 汝 らに 示 さん。
14 彼 はわが 榮光 を 顯 さん、それは 我 がものを 受 けて 汝 らに示すべければなり。
15 すべて 父 の 有 ち 給 ふものは 我 がものなり、此 の 故 に 我 がものを 受 けて 汝 らに 示 さんと 云 へるなり。
16 暫 くせば 汝 ら 我 を 見 ず、また 暫 くして 我 を 見 るべし』
17 ここに 弟子 たちのうち 或 者 たがひに 言 ふ『「暫 くせば 我 を 見 ず、また 暫 くして 我 を 見 るべし」と 言 ひ、かつ「父 に 往 くによりて」と 言 ひ 給 へるは、如何 なることぞ』
18 復 いふ『この 暫 くとは 如何 なることぞ、我等 その 言 ひ 給 ふところを 知 らず』
19 イエスその 問 はんと 思 へるを 知 りて 言 ひ 給 ふ『なんぢら「暫 くせば 我 を 見 ず、また 暫 くして 我 を 見 るべし」と 我 が 言 ひしを 尋 ねあふか。
20 誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、なんぢらは 泣 き 悲 しみ、世 は 喜 ばん。汝 ら 憂 ふべし、然 れどその 憂 は 喜悦 とならん。
21 をんな 産 まんとする 時 は 憂 あり、その 期 いたるに 因 りてなり。子 を 産 みてのちは 苦痛 をおぼえず、世 に 人 の 生 れたる 喜悦 によりてなり。
22 斯 く 汝 らも 今 は 憂 あり、されど 我 ふたたび 汝 らを 見 ん、その 時 なんぢらの 心 よろこぶべし、その 喜悦 を 奪 ふ 者 なし。
23 かの 日 には 汝 ら 何事 をも 我 に 問 ふまじ。誠 にまことに 汝 らに 告 ぐ、汝 等 のすべて 父 に 求 むる 物 をば、我 が 名 によりて 賜 ふべし。
24 なんぢら 今 までは 何 をも 我 が 名 によりて 求 めたることなし。求 めよ、然 らば 受 けん、而 して 汝 らの 喜悦 みたさるべし。
25 我 これらの 事 を 譬 にて 語 りたりしが、また 譬 にて 語 らず、明白 に 父 のことを 汝 らに 告 ぐるとき 來 らん。
26 その 日 には 汝 等 わが 名 によりて 求 めん。我 は 汝 らの 爲 に 父 に 請 ふと 言 はず、
27 父 みづから 汝 らを 愛 し 給 へばなり。これ 汝 等 われを 愛 し、また 我 の 父 より 出 で 來 りしことを 信 じたるに 因 る。
28 われ 父 より 出 でて 世 にきたれり、また 世 を 離 れて 父 に 往 くなり』
29 弟子 たち 言 ふ『視 よ、今 は 明白 に 語 りて 聊 かも 譬 をいひ 給 はず。
30 我 ら 今 なんぢの 知 り 給 はぬ 所 なく、また 人 の 汝 に 問 ふを 待 ち 給 はぬことを 知 る。之 によりて 汝 の 神 より 出 できたり 給 ひしことを 信 ず』
31 イエス 答 へ 給 ふ『なんぢら 今、信 ずるか。
32 視 よ、なんぢら 散 されて 各自 おのが 處 にゆき、我 をひとり 遺 すとき 到 らん、否 すでに 到 れり。然 れど 我 ひとり 居 るにあらず、父 われと 偕 に 在 すなり。
33 此 等 のことを 汝 らに 語 りたるは、汝 ら 我 に 在 りて 平安 を 得 んが 爲 なり。なんぢら 世 にありては 患難 あり、されど 雄々 しかれ。我 すでに 世 に 勝 てり』
Chapter 17
1 イエスこれらの 事 を 語 りはて、目 を 擧 げ 天 を 仰 ぎて 言 ひ 給 ふ『父 よ、時 來 れり、子 が 汝 の 榮光 を 顯 さんために、汝 の 子 の 榮光 を 顯 したまへ。
2 汝 より 賜 はりし 凡 ての 者 に、永遠 の 生命 を 與 へしめんとて、萬民 を 治 むる 權威 を 子 に 賜 ひたればなり。
3 永遠 の 生命 は、唯一 の 眞 の 神 にいます 汝 と、なんぢの 遣 し 給 ひしイエス・キリストとを 知 るにあり。
4 我 に 成 さしめんとて 汝 の 賜 ひし 業 を 成 し 遂 げて、我 は 地上 に 汝 の 榮光 をあらはせり。
5 父 よ、まだ 世 のあらぬ 前 に、わが 汝 と 偕 にもちたりし 榮光 をもて、今 御前 にて 我 に 榮光 あらしめ 給 へ。
6 世 の 中 より 我 に 賜 ひし 人々 に、われ 御名 をあらはせり。彼 らは 汝 の 有 なるを 我 に 賜 へり、而 して 彼 らは 汝 の 言 を 守 りたり。
7 今 かれらは、凡 て 我 に 賜 ひしものの 汝 より 出 づるを 知 る。
8 我 は 我 に 賜 ひし 言 を 彼 らに 與 へ、彼 らは 之 を 受 け、わが 汝 より 出 でたるを 眞 に 知 り、なんぢの 我 を 遣 し 給 ひしことを 信 じたるなり。
9 我 かれらの 爲 に 願 ふ、わが 願 ふは 世 のためにあらず、汝 の 我 に 賜 ひたる 者 のためなり、彼 らは 即 ち 汝 のものなり。
10 我 がものは 皆 なんぢの 有、なんぢの 有 は 我 がものなり、我 かれらより 榮光 を 受 けたり。
11 今 より 我 は 世 に 居 らず、彼 らは 世 に 居 り、我 は 汝 にゆく。聖 なる 父 よ、我 に 賜 ひたる 汝 の 御名 の 中 に 彼 らを 守 りたまへ。これ 我等 のごとく、彼 らの 一 つとならん 爲 なり。
12 我 かれらと 偕 にをる 間、われに 賜 ひたる 汝 の 御名 の 中 に 彼 らを 守 り、かつ 保護 したり。其 のうち 一人 だに 亡 びず、ただ 亡 の 子 のみ 亡 びたり、聖書 の 成就 せん 爲 なり。
13 今 は 我 なんぢに 往 く、而 して 此 等 のことを 世 に 在 りて 語 るは、我 が 喜悦 を 彼 らに 全 からしめん 爲 なり。
14 我 は 御言 を 彼 らに 與 へたり、而 して 世 は 彼 らを 憎 めり、我 の 世 のものならぬごとく、彼 らも 世 のものならぬに 因 りてなり。
15 わが 願 ふは、彼 らを 世 より 取 り 給 はんことならず、惡 より 免 れさらせ 給 はんことなり。
16 我 の 世 のものならぬ 如 く、彼 らも 世 のものならず。
17 眞理 にて 彼 らを 潔 め 別 ちたまへ、汝 の 御言 は 眞理 なり。
18 汝 われを 世 に 遣 し 給 ひし 如 く、我 も 彼 らを 世 に 遣 せり。
19 また 彼 等 のために 我 は 己 を 潔 めわかつ、これ 眞理 にて 彼 らも 潔 め 別 たれん 爲 なり。
20 我 かれらの 爲 のみならず、その 言 によりて 我 を 信 ずる 者 のためにも 願 ふ。
21 これ 皆 一 つとならん 爲 なり。父 よ、なんぢ 我 に 在 し、我 なんぢに 居 るごとく、彼 らも 我 らに 居 らん 爲 なり、是 なんぢの 我 を 遣 し 給 ひしことを 世 の 信 ぜん 爲 なり。
22 我 は 汝 の 我 に 賜 ひし 榮光 を 彼 らに 與 へたり、是 われらの 一 つなる 如 く、彼 らも 一 つとならん 爲 なり。
23 即 ち 我 かれらに 居 り、汝 われに 在 し、彼 ら 一 つとなりて 全 くせられん 爲 なり、是 なんぢの 我 を 遣 し 給 ひしことと、我 を 愛 し 給 ふごとく 彼 らをも 愛 し 給 ふこととを、世 の 知 らん 爲 なり。
24 父 よ、望 むらくは、我 に 賜 ひたる 人々 の 我 が 居 るところに 我 と 偕 にをり、世 の 創 の 前 より 我 を 愛 し 給 ひしによりて、汝 の 我 に 賜 ひたる 我 が 榮光 を 見 んことを。
25 正 しき 父 よ、げに 世 は 汝 を 知 らず、されど 我 は 汝 を 知 り、この 者 どもも 汝 の 我 を 遣 し 給 ひしことを 知 れり。
26 われ 御名 を 彼 らに 知 らしめたり、復 これを 知 らしめん。これ 我 を 愛 し 給 ひたる 愛 の、彼 らに 在 りて、我 も 彼 らに 居 らん 爲 なり』
Chapter 18
1 此 等 のことを 言 ひ 終 へて、イエス 弟子 たちと 偕 にケデロンの 小川 の 彼方 に 出 でたまふ。彼処 に 園 あり、イエス 弟子 たちとともども 入 り 給 ふ。
2 ここは 弟子 たちと 屡々 あつまり 給 ふ 處 なれば、イエスを 賣 るユダもこの 處 を 知 れり。
3 かくてユダは 一組 の 兵隊 と 祭司長・パリサイ 人 等 よりの 下役 どもとを 受 けて、炬火・燈火・武器 を 携 へて 此處 にきたる。
4 イエス 己 に 臨 まんとする 事 をことごとく 知 り、進 みいでて 彼 らに 言 ひたまふ『誰 を 尋 ぬるか』
5 答 ふ『ナザレのイエスを』イエス 言 ひたまふ『我 はそれなり』イエスを 賣 るユダも 彼 らと 共 に 立 てり。
6 『我 はそれなり』と 言 ひ 給 ひし 時、かれら 後退 して 地 に 倒 れたり。
7 ここに 再 び『たれを 尋 ぬるか』と 問 ひ 給 へば『ナザレのイエスを』と 言 ふ。
8 イエス 答 へ 給 ふ『われは 夫 なりと 既 に 告 げたり、我 を 尋 ぬるならば 此 の 人々 の 去 るを 容 せ』
9 これさきに『なんぢの 我 に 賜 ひし 者 の 中 より、われ 一人 をも 失 はず』と 言 ひ 給 ひし 言 の 成就 せん 爲 なり。
10 シモン・ペテロ 劍 をもちたるが、之 を 拔 き 大 祭司 の 僕 を 撃 ちて、その 右 の 耳 を 斬 り 落 す、僕 の 名 はマルコスと 云 ふ。
11 イエス、ペテロに 言 ひたまふ『劍 を 鞘 に 收 めよ、父 の 我 に 賜 ひたる 酒杯 は、われ 飮 まざらんや』
12 ここにかの 兵隊・千卒長・ユダヤ 人 の 下役 ども、イエスを 捕 へて 縛 り、
13 先 づアンナスの 許 に 曳 き 往 く、アンナスはその 年 の 大 祭司 なるカヤパの 舅 なり。
14 カヤパはさきにユダヤ 人 に、一人、民 のために 死 ぬるは 益 なる 事 を 勸 めし 者 なり。
15 シモン・ペテロ 及 び 他 の 一人 の 弟子、イエスに 從 ふ。この 弟子 は 大 祭司 に 知 られたる 者 なれば、イエスと 共 に 大 祭司 の 庭 に 入 りしが、
16 ペテロは 門 の 外 に 立 てり。ここに 大 祭司 に 知 られたる 彼 の 弟子 いでて、門 を 守 る 女 に 物 言 ひてペテロを 連 れ 入 れしに、
17 門 を 守 る 婢女、ペテロに 言 ふ『なんぢも 彼 の 人 の 弟子 の 一人 なるか』かれ 言 ふ『然 らず』
18 時 寒 くして 僕・下役 ども 炭火 を 熾 し、その 傍 らに 立 ちて 煖 まり 居 りしに、ペテロも 共 に 立 ちて 煖 まりゐたり。
19 ここに 大 祭司、イエスにその 弟子 とその 教 とにつきて 問 ひたれば、
20 イエス 答 へ 給 ふ『われ 公然 に 世 に 語 れり、凡 てのユダヤ 人 の 相 集 ふ 會堂 と 宮 とにて 常 に 教 へ、密 には 何 をも 語 りし 事 なし。
21 何 ゆゑ 我 に 問 ふか、我 が 語 れることは 聽 きたる 人々 に 問 へ。視 よ、彼 らは 我 が 言 ひしことを 知 るなり』
22 かく 言 ひ 給 ふとき、傍 らに 立 つ 下役 の 一人、手掌 にてイエスを 打 ちて 言 ふ『かくも 大 祭司 に 答 ふるか』
23 イエス 答 へ 給 ふ『わが 語 りし 言 もし 惡 しくば、その 惡 しき 故 を 證 せよ。善 くば 何 とて 打 つぞ』
24 ここにアンナス、イエスを 縛 りたるままにて、大 祭司 カヤパの 許 に 送 れり。
25 シモン・ペテロ 立 ちて 煖 まり 居 たるに、人々 いふ『なんぢも 彼 が 弟子 の 一人 なるか』否 みて 言 ふ『然 らず』
26 大 祭司 の 僕 の 一人 にて、ペテロに 耳 を 斬 り 落 されし 者 の 親族 なるが 言 ふ『われ 汝 が 園 にて 彼 と 偕 なるを 見 しならずや』
27 ペテロまた 否 む 折 しも 鷄 鳴 きぬ。
28 かくて 人々 イエスをカヤパの 許 より 官邸 にひきゆく、時 は 夜明 なり。彼 ら 過越 の 食 をなさんために、汚穢 を 受 けじとて 己 らは 官邸 に 入 らず。
29 ここにピラト 彼 らの 前 に 出 でゆきて 言 ふ『この 人 に 對 して 如何 なる 訴訟 をなすか』
30 答 へて 言 ふ『もし 惡 をなしたる 者 ならずば 汝 に 付 さじ』
31 ピラト 言 ふ『なんぢら 彼 を 引取 り、おのが 律法 に 循 ひて 審 け』ユダヤ 人 いふ『我 らに 人 を 殺 す 權威 なし』
32 これイエス、己 が 如何 なる 死 にて 死 ぬるかを 示 して、言 ひ 給 ひし 御言 の 成就 せん 爲 なり。
33 ここにピラトまた 官邸 に 入 り、イエスを 呼 び 出 して 言 ふ『なんぢはユダヤ 人 の 王 なるか』
34 イエス 答 へ 給 ふ『これは 汝 おのれより 言 ふか、將 わが 事 を 人 の 汝 に 告 げたるか』
35 ピラト 答 ふ『我 はユダヤ 人 ならんや、汝 の 國人・祭司長 ら 汝 を 我 に 付 したり、汝 なにを 爲 ししぞ』
36 イエス 答 へ 給 ふ『わが 國 はこの 世 のものならず、若 し 我 が 國 この 世 のものならば、我 が 僕 ら 我 をユダヤ 人 に 付 さじと 戰 ひしならん。然 れど 我 が 國 は 此 の 世 よりのものならず』
37 ここにピラト 言 ふ『されば 汝 は 王 なるか』イエス 答 へ 給 ふ『われの 王 たることは 汝 の 言 へるごとし。我 は 之 がために 生 れ、之 がために 世 に 來 れり、即 ち 眞理 につきて 證 せん 爲 なり。凡 て 眞理 に 屬 する 者 は 我 が 聲 をきく』
38 ピラト 言 ふ『眞理 とは 何 ぞ』かく 言 ひて 再 びユダヤ 人 の 前 に 出 でて 言 ふ『我 この 人 に 何 の 罪 あるをも 見 ず。
39 過越 のとき 我 なんぢらに 一人 の 囚人 を 赦 す 例 あり、されば 汝 らユダヤ 人 の 王 をわが 赦 さんことを 望 むか』
40 彼 らまた 叫 びて『この 人 ならず、バラバを』と 言 ふ、バラバは 強盜 なり。
Chapter 19
1 ここにピラト、イエスをとりて 鞭 うつ。
2 兵卒 ども 茨 にて 冠冕 をあみ、その 首 にかむらせ、紫色 の 上衣 をきせ、
3 御許 に 進 みて 言 ふ『ユダヤ 人 の 王 やすかれ』而 して 手掌 にて 打 てり。
4 ピラト 再 び 出 でて 人々 にいふ『視 よ、この 人 を 汝 らに 引 出 す、これは 何 の 罪 あるをも 我 が 見 ぬことを 汝 らの 知 らん 爲 なり』
5 ここにイエス 茨 の 冠冕 をかむり、紫色 の 上衣 をきて 出 で 給 へば、ピラト 言 ふ『視 よ、この 人 なり』
6 祭司長・下役 どもイエスを 見 て 叫 びいふ『十字架 につけよ、十字架 につけよ』ピラト 言 ふ『なんぢら 自 らとりて 十字架 につけよ、我 は 彼 に 罪 あるを 見 ず』
7 ユダヤ 人 こたふ『我 らに 律法 あり、その 律法 によれば 死 に 當 るべき 者 なり、彼 はおのれを 神 の 子 となせり』
8 ピラトこの 言 をききて 増々 おそれ、
9 再 び 官邸 に 入 りてイエスに 言 ふ『なんぢは 何處 よりぞ』イエス 答 をなし 給 はず。
10 ピラト 言 ふ『われに 語 らぬか、我 になんぢを 赦 す 權威 あり、また 十字架 につくる 權威 あるを 知 らぬか』
11 イエス 答 へ 給 ふ『なんぢ 上 より 賜 はらずば、我 に 對 して 何 の 權威 もなし。この 故 に 我 をなんぢに 付 しし 者 の 罪 は 更 に 大 なり』
12 ここにおいてピラト、イエスを 赦 さんことを 力 む。されどユダヤ 人 さけびて 言 ふ『なんぢ 若 しこの 人 を 赦 さば、カイザルの 忠臣 にあらず、凡 そおのれを 王 となす 者 はカイザルに 叛 くなり』
13 ピラトこれらの 言 をききて、イエスを 外 にひきゆき、敷石(ヘブル 語 にてガバタ)といふ 處 にて 審判 の 座 につく。
14 この 日 は 過越 の 準備 日 にて、時 は 第六時 ごろなりき。ピラト、ユダヤ 人 にいふ『視 よ、なんぢらの 王 なり』
15 かれら 叫 びていふ『除 け、除 け、十字架 につけよ』ピラト 言 ふ『われ 汝 らの 王 を 十字架 につくべけんや』祭司長 ら 答 ふ『カイザルの 他 われらに 王 なし』
16 ここにピラト、イエスを 十字架 に 釘 くるために 彼 らに 付 せり。彼 らイエスを 受取 りたれば、
17 イエス 己 に 十字架 を 負 ひて、髑髏(ヘブル 語 にてゴルゴダ)といふ 處 に 出 でゆき 給 ふ。
18 其處 にて 彼 らイエスを 十字架 につく。又 ほかに 二人 の 者 をともに 十字架 につけ、一人 を 右 に、一人 を 左 に、イエスを 眞中 に 置 けり。
19 ピラト 罪標 を 書 きて 十字架 の 上 に 掲 ぐ『ユダヤ 人 の 王、ナザレのイエス』と 記 したり。
20 イエスを 十字架 につけし 處 は 都 に 近 ければ、多 くのユダヤ 人 この 標 を 讀 む、標 はヘブル、ロマ、ギリシヤの 語 にて 記 したり。
21 ここにユダヤ 人 の 祭司長 らピラトに 言 ふ『ユダヤ 人 の 王 と 記 さず、我 はユダヤ 人 の 王 なりと 自稱 せりと 記 せ』
22 ピラト 答 ふ『わが 記 したることは 記 したるままに』
23 兵卒 どもイエスを 十字架 につけし 後、その 衣 をとりて 四 つに 分 け、おのおの 其 の 一 つを 得 たり。また 下衣 を 取 りしが、下衣 は 縫目 なく、上 より 惣 て 織 りたる 物 なれば、
24 兵卒 ども 互 にいふ『これを 裂 くな、誰 がうるか 鬮 にすべし』これは 聖書 の 成就 せん 爲 なり。曰 く『かれら 互 にわが 衣 をわけ、わが 衣 を 鬮 にせり』兵卒 ども 斯 くなしたり。
25 さてイエスの 十字架 の 傍 らには、その 母 と 母 の 姉妹 と、クロパの 妻 マリヤとマグダラのマリヤと 立 てり。
26 イエスその 母 とその 愛 する 弟子 との 近 く 立 てるを 見 て、母 に 言 ひ 給 ふ『をんなよ、視 よ、なんぢの 子 なり』
27 また 弟子 に 言 ひたまふ『視 よ、なんぢの 母 なり』この 時 より、その 弟子 かれを 己 が 家 に 接 けたり。
28 この 後 イエス 萬 の 事 の 終 りたるを 知 りて、――聖書 の 全 うせられん 爲 に――『われ 渇 く』と 言 ひ 給 ふ。
29 ここに 酸 き 葡萄酒 の 滿 ちたる 器 あり、その 葡萄酒 のふくみたる 海綿 をヒソプに 著 けてイエスの 口 に 差附 く。
30 イエスその 葡萄酒 をうけて 後 いひ 給 ふ『事 畢 りぬ』遂 に 首 をたれて 靈 をわたし 給 ふ。
31 この 日 は 準備 日 なれば、ユダヤ 人、安息 日 に 屍體 を 十字架 のうへに 留 めおかじとて(殊 にこの 度 の 安息 日 は 大 なる 日 なるにより)ピラトに、彼 らの 脛 ををりて 屍體 を 取除 かんことを 請 ふ。
32 ここに 兵卒 ども 來 りて、イエスとともに 十字架 に 釘 けられたる 第一 の 者 と 他 のものとの 脛 を 折 り、
33 而 してイエスに 來 りしに、はや 死 に 給 ふを 見 て、その 脛 を 折 らず。
34 然 るに 一人 の 兵卒、鎗 にてその 脅 をつきたれば、直 ちに 血 と 水 と 流 れいづ。
35 之 を 見 しもの 證 をなす、其 の 證 は 眞 なり、彼 はその 言 ふことの 眞 なるを 知 る、これ 汝 等 にも 信 ぜしめん 爲 なり。
36 此 等 のことの 成 りたるは『その 骨 くだかれず』とある 聖 句 の 成就 せん 爲 なり。
37 また 他 に『かれら 己 が 刺 したる 者 を 見 るべし』と 云 へる 聖 句 あり。
38 この 後、アリマタヤのヨセフとて、ユダヤ 人 を 懼 れ 密 にイエスの 弟子 たりし 者、イエスの 屍體 を 引 取 らんことをピラトに 請 ひたれば、ピラト 許 せり、乃 ち 往 きてその 屍體 を 引取 る。
39 また 曾 て 夜 御許 に 來 りしニコデモも、沒藥・沈香 の 混和物 を 百 斤 ばかり 携 へて 來 る。
40 ここに 彼 らイエスの 屍體 をとり、ユダヤ 人 の 葬 りの 習慣 にしたがひて、香料 とともに 布 にて 卷 けり。
41 イエスの 十字架 につけられ 給 ひし 處 に 園 あり、園 の 中 にいまだ 人 を 葬 りしことなき 新 しき 墓 あり。
42 ユダヤ 人 の 準備 日 なれば、この 墓 の 近 きままに 其處 にイエスを 納 めたり。
Chapter 20
1 一週 のはじめの 日、朝 まだき 暗 きうちに、マグダラのマリヤ 墓 にきたりて、墓 より 石 の 取除 けあるを 見 る。
2 乃 ち 走 りゆき、シモン・ペテロとイエスの 愛 し 給 ひしかの 弟子 との 許 に 到 りて 言 ふ『たれか 主 を 墓 より 取去 れり、何處 に 置 きしか 我 ら 知 らず』
3 ペテロと、かの 弟子 といでて 墓 にゆく。
4 二人 ともに 走 りたれど、かの 弟子 ペテロより 疾 く 走 りて 先 に 墓 にいたり、
5 屈 みて 布 の 置 きたるを 見 れど、内 には 入 らず。
6 シモン・ペテロ 後 れ 來 り、墓 に 入 りて 布 の 置 きたるを 視、
7 また 首 を 包 みし 手拭 は 布 とともに 在 らず、他 のところに 卷 きてあるを 見 る。
8 先 に 墓 にきたれる 彼 の 弟子 もまた 入 り、之 を 見 て 信 ず。
9 彼 らは 聖書 に 録 したる、死人 の 中 よりその 甦 へり 給 ふべきことを 未 だ 悟 らざりしなり。
10 遂 に 二人 の 弟子 おのが 家 にかへれり。
11 然 れどマリヤは 墓 の 外 に 立 ちて 泣 き 居 りしが、泣 きつつ 屈 みて 墓 の 内 を 見 るに、
12 イエスの 屍體 の 置 かれし 處 に、白 き 衣 をきたる 二人 の 御使、首 の 方 にひとり 足 の 方 にひとり 坐 しゐたり。
13 而 してマリヤに 言 ふ『をんなよ、何 ぞ 泣 くか』マリヤ 言 ふ『誰 かわが 主 を 取去 れり、何處 に 置 きしか 我 しらず』
14 かく 言 ひて 後 に 振反 れば、イエスの 立 ち 居給 ふを 見 る、されどイエスたるを 知 らず。
15 イエス 言 ひ 給 ふ『をんなよ、何 ぞ 泣 く、誰 を 尋 ぬるか』マリヤは 園守 ならんと 思 ひて 言 ふ『君 よ、汝 もし 彼 を 取去 りしならば、何處 に 置 きしかを 告 げよ、われ 引取 るべし』
16 イエス『マリヤよ』と 言 ひ 給 ふ。マリヤ 振反 りて『ラボニ』(釋 けば 師 よ)と 言 ふ。
17 イエス 言 ひ 給 ふ『われに 觸 るな、我 いまだ 父 の 許 に 昇 らぬ 故 なり。我 が 兄弟 たちに 往 きて「我 はわが 父 すなはち 汝 らの 父、わが 神 すなはち 汝 らの 神 に 昇 る」といへ』
18 マグダラのマリヤ 往 きて 弟子 たちに『われは 主 を 見 たり』と 告 げ、また 云 々の 事 を 言 ひ 給 ひしと 告 げたり。
19 この 日 すなはち 一週 のはじめの 日 の 夕、弟子 たちユダヤ 人 を 懼 るるに 因 りて、居 るところの 戸 を 閉 ぢおきしに、イエスきたり 彼 らの 中 に 立 ちて 言 ひたまふ『平安 なんぢらに 在 れ』
20 斯 く 言 ひてその 手 と 脅 とを 見 せたまふ、弟子 たち 主 を 見 て 喜 べり。
21 イエスまた 言 ひたまふ『平安 なんぢらに 在 れ、父 の 我 を 遣 し 給 へるごとく、我 も 亦 なんぢらを 遣 す』
22 斯 く 言 ひて、息 を 吹 きかけ 言 ひたまふ『聖 靈 をうけよ。
23 なんじら 誰 の 罪 を 赦 すとも 其 の 罪 ゆるされ、誰 の 罪 を 留 むるとも 其 の 罪 とどめらるべし』
24 イエス 來 り 給 ひしとき、十二 弟子 の 一人 デドモと 稱 ふるトマスともに 居 らざりしかば、
25 他 の 弟子 これに 言 ふ『われら 主 を 見 たり』トマスいふ『我 はその 手 に 釘 の 痕 を 見、わが 指 を 釘 の 痕 にさし 入 れ、わが 手 をその 脅 に 差入 るるにあらずば 信 ぜじ』
26 八日 ののち 弟子 たちまた 家 にをり、トマスも 偕 に 居 りて 戸 を 閉 ぢおきしに、イエス 來 り、彼 らの 中 に 立 ちて 言 ひたまふ『平安 なんぢらに 在 れ』
27 またトマスに 言 ひ 給 ふ『なんぢの 指 をここに 伸 べて、わが 手 を 見 よ、汝 の 手 をのべて、我 が 脅 にさしいれよ、信 ぜぬ 者 とならで 信 ずる 者 となれ』
28 トマス 答 へて 言 ふ『わが 主 よ、わが 神 よ』
29 イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢ 我 を 見 しによりて 信 じたり、見 ずして 信 ずる 者 は 幸福 なり』
30 この 書 に 録 さざる 外 の 多 くの 徴 を、イエス 弟子 たちの 前 にて 行 ひ 給 へり。
31 されど 此 等 の 事 を 録 ししは、汝 等 をしてイエスの 神 の 子 キリストたることを 信 ぜしめ、信 じて 御名 により 生命 を 得 しめんが 爲 なり。
Chapter 21
1 この 後、イエス 復 テベリヤの 海邊 にて 己 を 弟子 たちに 現 し 給 ふ、その 現 れ 給 ひしこと 左 のごとし。
2 シモン・ペテロ、デドモと 稱 ふるトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの 子 ら 及 びほかの 弟子 二人 もともに 居 りしに、
3 シモン・ペテロ『われ 漁獵 にゆく』と 言 へば、彼 ら『われらも 共 に 往 かん』と 言 ひ、皆 いでて 舟 に 乘 りしが、その 夜 は 何 をも 得 ざりき。
4 夜明 の 頃 イエス 岸 に 立 ち 給 ふに、弟子 たち 其 のイエスなるを 知 らず。
5 イエス 言 ひ 給 ふ『子 どもよ、獲 物 ありしか』彼 ら『なし』と 答 ふ。
6 イエス 言 ひたまふ『舟 の 右 のかたに 網 をおろせ、然 らば 獲 物 あらん』乃 ち 網 を 下 したるに、魚 おびただしくして、網 を 曳 き 上 ぐること 能 はざりしかば、
7 イエスの 愛 し 給 ひし 弟子、ペテロに 言 ふ『主 なり』シモン・ペテロ『主 なり』と 聞 きて、裸 なりしを 上衣 をまとひて 海 に 飛 びいれり。
8 他 の 弟子 たちは 陸 を 離 るること 遠 からず、僅 に 五十間 ばかりなりしかば、魚 の 入 りたる 網 を 小舟 にて 曳 き 來 り、
9 陸 に 上 りて 見 れば、炭火 ありてその 上 に 肴 あり、又 パンあり。
10 イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢらの 今 とりたる 肴 を 少 し 持 ちきたれ』
11 シモン・ペテロ 舟 に 往 きて 網 を 陸 に 曳 き 上 げしに、百 五 十 三 尾 の 大 なる 魚 滿 ちたり、斯 く 多 かりしが 網 は 裂 けざりき。
12 イエス 言 ひ 給 ふ『きたりて 食 せよ』弟子 たちその 主 なるを 知 れば『なんぢは 誰 ぞ』と 敢 へて 問 ふ 者 もなし。
13 イエス 進 みてパンをとり 彼 らに 與 へ、肴 をも 然 なし 給 ふ。
14 イエス 死人 の 中 より 甦 へりてのち、弟子 たちに 現 れ 給 ひし 事、これにて 三度 なり。
15 かくて 食 したる 後、イエス、シモン・ペテロに 言 ひ 給 ふ『ヨハネの 子 シモンよ、汝 この 者 どもに 勝 りて 我 を 愛 するか』ペテロいふ『主 よ、然 り、わが 汝 を 愛 する 事 は、なんぢ 知 り 給 ふ』イエス 言 ひ 給 ふ『わが 羔羊 を 養 へ』
16 また 二度 いひ 給 ふ『ヨハネの 子 シモンよ、我 を 愛 するか』ペテロ 言 ふ『主 よ、然 り、わが 汝 を 愛 する 事 は、なんぢ、知 り 給 ふ』イエス 言 ひ 給 ふ『わが 羊 を 牧 へ』
17 三度 いひ 給 ふ『ヨハネの 子 シモンよ、我 を 愛 するか』ペテロ 三度『われを 愛 するか』と 言 ひ 給 ふを 憂 ひて 言 ふ『主 よ、知 りたまはぬ 處 なし、わが 汝 を 愛 する 事 は、なんぢ 識 りたまふ』イエス 言 ひ 給 ふ『わが 羊 をやしなへ。
18 まことに 誠 になんぢに 告 ぐ、なんぢ 若 かりし 時 は 自 ら 帶 して 欲 する 處 を 歩 めり、されど 老 いては 手 を 伸 べて 他 の 人 に 帶 せられ、汝 の 欲 せぬ 處 に 連 れゆかれん』
19 これペテロが 如何 なる 死 にて 神 の 榮光 を 顯 すかを 示 して 言 ひ 給 ひしなり。斯 く 言 ひて 後 かれに 言 ひ 給 ふ『われに 從 へ』
20 ペテロ 振反 りて、イエスの 愛 したまひし 弟子 の 從 ふを 見 る。これはさきに 夕餐 のとき 御胸 に 倚 りかかりて『主 よ、汝 を 賣 る 者 は 誰 か』と 問 ひし 弟子 なり。
21 ペテロこの 人 を 見 てイエスに 言 ふ『主 よ、この 人 は 如何 に』
22 イエス 言 ひ 給 ふ『よしや 我、かれが 我 の 來 るまで 留 るを 欲 すとも、汝 になにの 關係 あらんや、汝 は 我 に 從 へ』
23 ここに 兄弟 たちの 中 に、この 弟子 死 なずと 云 ふ 話 つたはりたり。されどイエスは 死 なずと 言 ひ 給 ひしにあらず『よしや 我、かれが 我 の 來 るまで 留 るを 欲 すとも、汝 になにの 關係 あらんや』と 言 ひ 給 ひしなり。
24 これらの 事 につきて、證 をなし、又 これを 録 しし 者 は、この 弟子 なり、我等 はその 證 の 眞 なるを 知 る。
25 イエスの 行 ひ 給 ひし 事 は、この 外 なほ 多 し、もし 一 つ 一 つ 録 さば、我 おもふに 世界 もその 録 すところの 書 を 載 するに 耐 へざらん。