Chapter 1
1 アブラハムの 子、ダビデの 子、イエス・キリストの 系圖。
2 アブラハム、イサクを 生 み、イサク、ヤコブを 生 み、ヤコブ、ユダとその 兄弟 らとを 生 み、
3 ユダ、タマルによりてパレスとザラとを 生 み、パレス、エスロンを 生 み、エスロン、アラムを 生 み、
4 アラム、アミナダブを 生 み、アミナダブ、ナアソンを 生 み、ナアソン、サルモンを 生 み、
5 サルモン、ラハブによりてボアズを 生 み、ボアズ、ルツによりてオベデを 生 み、オベデ、エツサイを 生 み、
6 エツサイ、ダビデ 王 を 生 めり。ダビデ、ウリヤの 妻 たりし 女 によりてソロモンを 生 み、
7 ソロモン、レハベアムを 生 み、レハベアム、アビヤを 生 み、アビヤ、アサを 生 み、
8 アサ、ヨサパテを 生 み、ヨサパテ、ヨラムを 生 み、ヨラム、ウジヤを 生 み、
9 ウジヤ、ヨタムを 生 み、ヨタム、アハズを 生 み、アハズ、ヒゼキヤを 生 み、
10 ヒゼキヤ、マナセを 生 み、マナセ、アモンを 生 み、アモン、ヨシヤを 生 み、
11 バビロンに 移 さるる 頃、ヨシヤ、エコニヤとその 兄弟 らとを 生 めり。
12 バビロンに 移 されて 後、エコニヤ、サラテルを 生 み、サラテル、ゾロバベルを 生 み、
13 ゾロバベル、アビウデを 生 み、アビウデ、エリヤキムを 生 み、エリヤキム、アゾルを 生 み、
14 アゾル、サドクを 生 み、サドク、アキムを 生 み、アキム、エリウデを 生 み、
15 エリウデ、エレアザルを 生 み、エレアザル、マタンを 生 み、マタン、ヤコブを 生 み、
16 ヤコブ、マリヤの 夫 ヨセフを 生 めり。此 のマリヤよりキリストと 稱 ふるイエス 生 れ 給 へり。
17 されば 總 て 世 をふる 事、アブラハムよりダビデまで 十四代、ダビデよりバビロンに 移 さるるまで 十四代、バビロンに 移 されてよりキリストまで 十四代 なり。
18 イエス・キリストの 誕生 は 左 のごとし。その 母 マリヤ、ヨセフと 許嫁 したるのみにて、未 だ 偕 にならざりしに、聖 靈 によりて 孕 り、その 孕 りたること 顯 れたり。
19 夫 ヨセフは 正 しき 人 にして、之 を 公然 にするを 好 まず、私 に 離縁 せんと 思 ふ。
20 かくて、これらの 事 を 思 ひ 囘 らしをるとき、視 よ、主 の 使、夢 に 現 れて 言 ふ『ダビデの 子 ヨセフよ、妻 マリヤを 納 るる 事 を 恐 るな。その 胎 に 宿 る 者 は 聖 靈 によるなり。
21 かれ 子 を 生 まん、汝 その 名 をイエスと 名 づくべし。己 が 民 をその 罪 より 救 ひ 給 ふ 故 なり』
22 すべて 此 の 事 の 起 りしは、預言者 によりて 主 の 云 ひ 給 ひし 言 の 成就 せん 爲 なり。曰 く、
23 『視 よ、處女 みごもりて 子 を 生 まん。その 名 はインマヌエルと 稱 へられん』之 を 釋 けば、神 われらと 偕 に 在 すといふ 意 なり。
24 ヨセフ 寐 より 起 き、主 の 使 の 命 ぜし 如 くして 妻 を 納 れたり。
25 されど 子 の 生 るるまでは、相 知 る 事 なかりき。かくてその 子 をイエスと 名 づけたり。
Chapter 2
1 イエスはヘロデ 王 の 時、ユダヤのベツレヘムに 生 れ 給 ひしが、視 よ、東 の 博士 たちエルサレムに 來 りて 言 ふ、
2 『ユダヤ 人 の 王 とて 生 れ 給 へる 者 は、何處 に 在 すか。我 ら 東 にてその 星 を 見 たれば、拜 せんために 來 れり』
3 ヘロデ 王 これを 聞 きて 惱 みまどふ、エルサレムも 皆 然 り。
4 王、民 の 祭司長・學者 らを 皆 あつめて、キリストの 何處 に 生 るべきを 問 ひ 質 す。
5 かれら 言 ふ『ユダヤのベツレヘムなり。それは 預言者 によりて、
6 「ユダの 地 ベツレヘムよ、汝 はユダの 長 たちの 中 にて 最 小 き 者 にあらず、汝 の 中 より 一人 の 君 いでて、わが 民 イスラエルを 牧 せん」と 録 されたるなり』
7 ここにヘロデ 密 に 博士 たちを 招 きて、星 の 現 れし 時 を 詳細 にし、
8 彼 らをベツレヘムに 遣 さんとして 言 ふ『往 きて 幼兒 のことを 細 にたづね、之 にあはば 我 に 告 げよ。我 も 往 きて 拜 せん』
9 彼 ら 王 の 言 をききて 往 きしに、視 よ、前 に 東 にて 見 し 星、先 だちゆきて、幼兒 の 在 すところの 上 に 止 る。
10 かれら 星 を 見 て、歡喜 に 溢 れつつ、
11 家 に 入 りて、幼兒 のその 母 マリヤと 偕 に 在 すを 見、平伏 して 拜 し、かつ 寶 の 匣 をあけて、黄金・乳香・沒藥 など 禮物 を 献 げたり。
12 かくて 夢 にてヘロデの 許 に 返 るなとの 御告 を 蒙 り、ほかの 路 より 己 が 國 に 去 りゆきぬ。
13 その 去 り 往 きしのち、視 よ、主 の 使、夢 にてヨセフに 現 れていふ『起 きて、幼兒 とその 母 とを 携 へ、エジプトに 逃 れ、わが 告 ぐるまで 彼處 に 留 れ。ヘロデ 幼兒 を 索 めて 亡 さんとするなり』
14 ヨセフ 起 きて、夜 の 間 に 幼兒 とその 母 とを 携 へて、エジプトに 去 りゆき、
15 ヘロデの 死 ぬるまで 彼處 に 留 りぬ。これ 主 が 預言者 によりて『我 エジプトより 我 が 子 を 呼 び 出 せり』と 云 ひ 給 ひし 言 の 成就 せん 爲 なり。
16 ここにヘロデ、博士 たちに 賺 されたりと 悟 りて、甚 だしく 憤 ほり、人 を 遣 し、博士 たちに 由 りて 詳細 にせし 時 を 計 り、ベツレヘム 及 び 凡 てその 邊 の 地方 なる、二 歳 以下 の 男 の 兒 をことごとく 殺 せり。
17 ここに 預言者 エレミヤによりて 云 はれたる 言 は 成就 したり。曰 く、
18 『聲 ラマにありて 聞 ゆ、慟哭 なり、いとどしき 悲哀 なり。ラケル 己 が 子 らを 歎 き、子 等 のなき 故 に 慰 めらるるを 厭 ふ』
19 ヘロデ 死 にてのち、視 よ、主 の 使、夢 にてエジプトなるヨセフに 現 れて 言 ふ、
20 『起 きて、幼兒 とその 母 とを 携 へ、イスラエルの 地 にゆけ。幼兒 の 生命 を 索 めし 者 どもは 死 にたり』
21 ヨセフ 起 きて、幼兒 とその 母 とを 携 へ、イスラエルの 地 に 到 りしに、
22 アケラオその 父 ヘロデに 代 りてユダヤを 治 むと 聞 き、彼處 に 往 くことを 恐 る。また 夢 にて 御告 を 蒙 り、ガリラヤの 地方 に 退 き、
23 ナザレといふ 町 に 到 りて 住 みたり。これは 預言者 たちに 由 りて、『彼 はナザレ 人 と 呼 ばれん』と 云 はれたる 言 の 成就 せん 爲 なり。
Chapter 3
1 その 頃 バプテスマのヨハネ 來 り、ユダヤの 荒野 にて 教 を 宣 べて 言 ふ
2 『なんぢら 悔改 めよ、天國 は 近 づきたり』
3 これ 預言者 イザヤによりて、斯 く 云 はれし 人 なり、曰 く『荒野 に 呼 はる 者 の 聲 す「主 の 道 を 備 へ、その 路 すぢを 直 くせよ」』
4 このヨハネは 駱駝 の 毛織衣 をまとひ、腰 に 皮 の 帶 をしめ、蝗 と 野蜜 とを 食 とせり。
5 ここにエルサレム 及 びユダヤ 全國、またヨルダンの 邊 なる 全地方 の 人々、ヨハネの 許 に 出 できたり、
6 罪 を 言 ひ 表 し、ヨルダン 川 にてバプテスマを 受 けたり。
7 ヨハネ、パリサイ 人 およびサドカイ 人 のバプテスマを 受 けんとて、多 く 來 るを 見 て、彼 らに 言 ふ『蝮 の 裔 よ、誰 が 汝 らに、來 らんとする 御怒 を 避 くべき 事 を 示 したるぞ。
8 さらば 悔改 に 相應 しき 果 を 結 べ。
9 汝 ら「われらの 父 にアブラハムあり」と 心 のうちに 言 はんと 思 ふな。我 なんぢらに 告 ぐ、神 は 此 らの 石 よりアブラハムの 子 らを 起 し 得給 ふなり。
10 斧 ははや 樹 の 根 に 置 かる。されば 凡 て 善 き 果 を 結 ばぬ 樹 は、伐 られて 火 に 投 げ 入 れらるべし。
11 我 は 汝 らの 悔改 のために、水 にてバプテスマを 施 す。されど 我 より 後 にきたる 者 は、我 よりも 能力 あり、我 はその 鞋 をとるにも 足 らず、彼 は 聖 靈 と 火 とにて 汝 らにバプテスマを 施 さん。
12 手 には 箕 を 持 ちて 禾場 をきよめ、その 麥 は 倉 に 納 め、殼 は 消 えぬ 火 にて 燒 きつくさん』
13 ここにイエス、ヨハネにバプテスマを 受 けんとて、ガリラヤよりヨルダンに 來 り 給 ふ。
14 ヨハネ 之 を 止 めんとして 言 ふ『われは 汝 にバプテスマを 受 くべき 者 なるに、反 つて 我 に 來 り 給 ふか』
15 イエス 答 へて 言 ひたまふ『今 は 許 せ、われら 斯 く 正 しき 事 をことごとく 爲遂 ぐるは、當然 なり』ヨハネ 乃 ち 許 せり。
16 イエス、バプテスマを 受 けて 直 ちに 水 より 上 り 給 ひしとき、視 よ、天 ひらけ、神 の 御靈 の、鴿 のごとく 降 りて 己 が 上 にきたるを 見 給 ふ。
17 また 天 より 聲 あり、曰 く『これは 我 が 愛 しむ 子、わが 悦 ぶ 者 なり』
Chapter 4
1 ここにイエス 御靈 によりて 荒野 に 導 かれ 給 ふ、惡魔 に 試 みられんとするなり。
2 四十 日 四十 夜 斷食 して、後 に 飢 ゑたまふ。
3 試 むる 者 きたりて 言 ふ『汝 もし 神 の 子 ならば、命 じて 此 等 の 石 をパンと 爲 らしめよ』
4 答 へて 言 ひ 給 ふ『「人 の 生 くるはパンのみに 由 るにあらず、神 の 口 より 出 づる 凡 ての 言 に 由 る」と 録 されたり』
5 ここに 惡魔 イエスを 聖 なる 都 につれゆき、宮 の 頂上 に 立 たせて 言 ふ、
6 『汝 もし 神 の 子 ならば 己 が 身 を 下 に 投 げよ。それは「なんぢの 爲 に 御使 たちに 命 じ 給 はん。彼 ら 手 にて 汝 を 支 へ、その 足 を 石 にうち 當 つること 無 からしめん」と 録 されたるなり』
7 イエス 言 ひたまふ『「主 なる 汝 の 神 を 試 むべからず」と、また 録 されたり』
8 惡魔 またイエスを 最 高 き 山 につれゆき、世 のもろもろの 國 と、その 榮華 とを 示 して 言 ふ、
9 『汝 もし 平伏 して 我 を 拜 せば、此 等 を 皆 なんぢに 與 へん』
10 ここにイエス 言 ひ 給 ふ『サタンよ、退 け「主 なる 汝 の 神 を 拜 し、ただ 之 にのみ 事 へ 奉 るべし」と 録 されたるなり』
11 ここに 惡魔 は 離 れ 去 り、視 よ、御使 たち 來 り 事 へぬ。
12 イエス、ヨハネの 囚 はれし 事 をききて、ガリラヤに 退 き、
13 後 ナザレを 去 りて、ゼブルンとナフタリとの 境 なる、海邊 のカペナウムに 到 りて 住 み 給 ふ。
14 これは 預言者 イザヤによりて 云 はれたる 言 の 成就 せん 爲 なり。曰 く
15 『ゼブルンの 地、ナフタリの 地、海 の 邊、ヨルダンの 彼方、異邦人 のガリラヤ、
16 暗 きに 坐 する 民 は、大 なる 光 を 見、死 の 地 と 死 の 蔭 とに 坐 する 者 に、光 のぼれり』
17 この 時 よりイエス 教 を 宣 べはじめて 言 ひ 給 ふ『なんぢら 悔改 めよ、天國 は 近 づきたり』
18 かくて、ガリラヤの 海邊 をあゆみて、二人 の 兄弟 ペテロといふシモンとその 兄弟 アンデレとが、海 に 網 うちをるを 見 給 ふ、かれらは 漁人 なり。
19 これに 言 ひたまふ『我 に 從 ひきたれ、さらば 汝 らを 人 を 漁 る 者 となさん』
20 かれら 直 ちに 網 をすてて 從 ふ。
21 更 に 進 みゆきて、また 二人 の 兄弟、ゼベダイの 子 ヤコブとその 兄弟 ヨハネとが、父 ゼベダイとともに 舟 にありて 網 を 繕 ひをるを 見 て 呼 び 給 へば、
22 直 ちに 舟 と 父 とを 置 きて 從 ふ。
23 イエスあまねくガリラヤを 巡 り、會堂 にて 教 をなし、御國 の 福音 を 宣 べつたへ、民 の 中 のもろもろの 病、もろもろの 疾患 をいやし 給 ふ。
24 その 噂 あまねくシリヤに 弘 り、人々 すべての 惱 めるもの、即 ちさまざまの 病 と 苦痛 とに 罹 れるもの、惡鬼 に 憑 かれたるもの、癲癇 および 中風 の 者 などを 連 れ 來 りたれば、イエス 之 を 醫 したまふ。
25 ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ 及 びヨルダンの 彼方 より、大 なる 群衆 きたり 從 へり。
Chapter 5
1 イエス 群衆 を 見 て、山 にのぼり、座 し 給 へば、弟子 たち 御許 にきたる。
2 イエス 口 をひらき、教 へて 言 ひたまふ、
3 『幸福 なるかな、心 の 貧 しき 者。天國 はその 人 のものなり。
4 幸福 なるかな、悲 しむ 者。その 人 は 慰 められん。
5 幸福 なるかな、柔和 なる 者。その 人 は 地 を 嗣 がん。
6 幸福 なるかな、義 に 飢 ゑ 渇 く 者。その 人 は 飽 くことを 得 ん。
7 幸福 なるかな、憐憫 ある 者。その 人 は 憐憫 を 得 ん。
8 幸福 なるかな、心 の 清 き 者。その 人 は 神 を 見 ん。
9 幸福 なるかな、平和 ならしむる 者。その 人 は 神 の 子 と 稱 へられん。
10 幸福 なるかな、義 のために 責 められたる 者。天國 はその 人 のものなり。
11 我 がために、人 なんぢらを 罵 り、また 責 め、詐 りて 各樣 の 惡 しきことを 言 ふときは、汝 ら 幸福 なり。
12 喜 びよろこべ、天 にて 汝 らの 報 は 大 なり。汝 等 より 前 にありし 預言者 たちをも、斯 く 責 めたりき。
13 汝 らは 地 の 鹽 なり、鹽 もし 效力 を 失 はば、何 をもてか 之 に 鹽 すべき。後 は 用 なし、外 にすてられて 人 に 蹈 まるるのみ。
14 汝 らは 世 の 光 なり。山 の 上 にある 町 は 隱 るることなし。
15 また 人 は 燈火 をともして 升 の 下 におかず、燈臺 の 上 におく。かくて 燈火 は 家 にある 凡 ての 物 を 照 すなり。
16 かくのごとく 汝 らの 光 を 人 の 前 にかがやかせ。これ 人 の 汝 らが 善 き 行爲 を 見 て、天 にいます 汝 らの 父 を 崇 めん 爲 なり。
17 われ 律法 また 預言者 を 毀 つために 來 れりと 思 ふな。毀 たんとて 來 らず、反 つて 成就 せん 爲 なり。
18 誠 に 汝 らに 告 ぐ、天 地 の 過 ぎ 往 かぬうちに、律法 の 一點、一畫 も 廢 ることなく、ことごとく 全 うせらるべし。
19 この 故 にもし 此 等 のいと 小 き 誡命 の 一 つをやぶり、且 その 如 く 人 に 教 ふる 者 は、天國 にて 最 小 き 者 と 稱 へられ、之 を 行 ひ、かつ 人 に 教 ふる 者 は、天國 にて 大 なる 者 と 稱 へられん。
20 我 なんぢらに 告 ぐ、汝 らの 義、學者・パリサイ 人 に 勝 らずば、天國 に 入 ること 能 はず。
21 古 への 人 に「殺 すなかれ、殺 す 者 は 審判 にあふべし」と 云 へることあるを 汝 等 きけり。
22 されど 我 は 汝 らに 告 ぐ、すべて 兄弟 を 怒 る 者 は、審判 にあふべし。また 兄弟 に 對 ひて、愚 者 よといふ 者 は、衆議 にあふべし。また 痴者 よといふ 者 は、ゲヘナの 火 にあふべし。
23 この 故 に 汝 もし 供物 を 祭壇 にささぐる 時、そこにて 兄弟 に 怨 まるる 事 あるを 思 ひ 出 さば、
24 供物 を 祭壇 のまへに 遺 しおき、先 づ 往 きて、その 兄弟 と 和睦 し、然 るのち 來 りて、供物 をささげよ。
25 なんぢを 訴 ふる 者 とともに 途 に 在 るうちに、早 く 和解 せよ。恐 らくは、訴 ふる 者 なんぢを 審判 人 にわたし、審判 人 は 下役 にわたし、遂 になんぢは 獄 に 入 れられん。
26 まことに 汝 に 告 ぐ、一 厘 ものこりなく 償 はずば、其處 をいづること 能 はじ。
27 「姦淫 するなかれ」と 云 へることあるを 汝 等 きけり。
28 されど 我 は 汝 らに 告 ぐ、すべて 色情 を 懷 きて 女 を 見 るものは、既 に 心 のうち 姦淫 したるなり。
29 もし 右 の 目 なんぢを 躓 かせば、抉 り 出 して 棄 てよ、五體 の 一 つ 亡 びて、全身 ゲヘナに 投 げ 入 れられぬは 益 なり。
30 もし 右 の 手 なんぢを 躓 かせば、切 りて 棄 てよ、五體 の 一 つ 亡 びて、全身 ゲヘナに 往 かぬは 益 なり。
31 また「妻 をいだす 者 は 離縁状 を 與 ふべし」と 云 へることあり。
32 されど 我 は 汝 らに 告 ぐ、淫行 の 故 ならで 其 の 妻 をいだす 者 は、これに 姦淫 を 行 はしむるなり。また 出 されたる 女 を 娶 るものは、姦淫 を 行 ふなり。
33 また 古 への 人 に「いつはり 誓 ふなかれ、なんぢの 誓 は 主 に 果 すべし」と 云 へる 事 あるを 汝 ら 聞 けり。
34 されど 我 は 汝 らに 告 ぐ、一切 ちかふな、天 を 指 して 誓 ふな、神 の 御座 なればなり。
35 地 を 指 して 誓 ふな、神 の 足臺 なればなり。エルサレムを 指 して 誓 ふな、大君 の 都 なればなり。
36 己 が 頭 を 指 して 誓 ふな、なんぢ 頭髮 一筋 だに 白 くし、また 黒 くし 能 はねばなり。
37 ただ 然 り 然 り、否 否 といへ、之 に 過 ぐるは 惡 より 出 づるなり。
38 「目 には 目 を、齒 には 齒 を」と 云 へることあるを 汝 ら 聞 けり。
39 されど 我 は 汝 らに 告 ぐ、惡 しき 者 に 抵抗 ふな。人 もし 汝 の 右 の 頬 をうたば、左 をも 向 けよ。
40 なんぢを 訟 へて 下衣 を 取 らんとする 者 には、上衣 をも 取 らせよ。
41 人 もし 汝 に 一里 ゆくことを 強 ひなば、共 に 二里 ゆけ。
42 なんぢに 請 ふ 者 にあたへ、借 らんとする 者 を 拒 むな。
43 「なんぢの 隣 を 愛 し、なんぢの 仇 を 憎 むべし」と 云 へることあるを 汝 等 きけり。
44 されど 我 は 汝 らに 告 ぐ、汝 らの 仇 を 愛 し、汝 らを 責 むる 者 のために 祈 れ。
45 これ 天 にいます 汝 らの 父 の 子 とならん 爲 なり。天 の 父 は、その 日 を 惡 しき 者 のうへにも 善 き 者 のうへにも 昇 らせ、雨 を 正 しき 者 にも 正 しからぬ 者 にも 降 らせ 給 ふなり。
46 なんぢら 己 を 愛 する 者 を 愛 すとも 何 の 報 をか 得 べき、取税人 も 然 するにあらずや。
47 兄弟 にのみ 挨拶 すとも 何 の 勝 ることかある、異邦人 も 然 するにあらずや。
48 さらば 汝 らの 天 の 父 の 全 きが 如 く、汝 らも 全 かれ。
Chapter 6
1 汝 ら 見 られんために 己 が 義 を 人 の 前 にて 行 はぬやうに 心 せよ。然 らずば、天 にいます 汝 らの 父 より 報 を 得 じ。
2 さらば 施濟 をなすとき、僞善者 が 人 に 崇 められんとて 會堂 や 街 にて 爲 すごとく、己 が 前 にラッパを 鳴 すな。誠 に 汝 らに 告 ぐ、彼 らは 既 にその 報 を 得 たり。
3 汝 は 施濟 をなすとき、右 の 手 のなすことを 左 の 手 に 知 らすな。
4 是 はその 施濟 の 隱 れん 爲 なり。さらば 隱 れたるに 見 たまふ 汝 の 父 は 報 い 給 はん。
5 なんぢら 祈 るとき、僞善者 の 如 くあらざれ。彼 らは 人 に 顯 さんとて、會堂 や 大路 の 角 に 立 ちて 祈 ることを 好 む。誠 に 汝 らに 告 ぐ、かれらは 既 にその 報 を 得 たり。
6 なんぢは 祈 るとき、己 が 部屋 にいり、戸 を 閉 ぢて 隱 れたるに 在 す 汝 の 父 に 祈 れ。さらば 隱 れたるに 見 給 ふなんぢの 父 は 報 い 給 はん。
7 また 祈 るとき、異邦人 の 如 くいたづらに 言 を 反復 すな。彼 らは 言 多 きによりて 聽 かれんと 思 ふなり。
8 さらば 彼 らに 效 ふな、汝 らの 父 は 求 めぬ 前 に、なんぢらの 必要 なる 物 を 知 りたまふ。
9 この 故 に 汝 らは 斯 く 祈 れ。「天 にいます 我 らの 父 よ、願 はくは 御名 の 崇 められん 事 を。
10 御國 の 來 らんことを。御意 の 天 のごとく 地 にも 行 はれん 事 を。
11 我 らの 日用 の 糧 を 今日 もあたへ 給 へ。
12 我 らに 負債 ある 者 を 我 らの 免 したる 如 く、我 らの 負債 をも 免 し 給 へ。
13 我 らを 嘗試 に 遇 はせず、惡 より 救 ひ 出 したまへ」
14 汝 等 もし 人 の 過失 を 免 さば、汝 らの 天 の 父 も 汝 らを 免 し 給 はん。
15 もし 人 を 免 さずば、汝 らの 父 も 汝 らの 過失 を 免 し 給 はじ。
16 なんぢら 斷食 するとき、僞善者 のごとく、悲 しき 面容 をすな。彼 らは 斷食 することを 人 に 顯 さんとて、その 顏 色 を 害 ふなり。誠 に 汝 らに 告 ぐ、彼 らは 既 にその 報 を 得 たり。
17 なんぢは 斷食 するとき、頭 に 油 をぬり、顏 をあらへ。
18 これ 斷食 することの 人 に 顯 れずして、隱 れたるに 在 す 汝 の 父 にあらはれん 爲 なり。さらば 隱 れたるに 見 たまふ 汝 の 父 は 報 い 給 はん。
19 なんぢら 己 がために 財寶 を 地 に 積 むな、ここは 蟲 と 錆 とが 損 ひ、盜人 うがちて 盜 むなり。
20 なんぢら 己 がために 財寶 を 天 に 積 め、かしこは 蟲 と 錆 とが 損 はず、盜人 うがちて 盜 まぬなり。
21 なんぢの 財寶 のある 所 には、なんぢの 心 もあるべし。
22 身 の 燈火 は 目 なり。この 故 に 汝 の 目 ただしくば、全身 あかるからん。
23 されど 汝 の 目 あしくば、全身 くらからん。もし 汝 の 内 の 光、闇 ならば、その 闇 いかばかりぞや。
24 人 は 二人 の 主 に 兼 ね 事 ふること 能 はず、或 はこれを 憎 み 彼 を 愛 し、或 はこれに 親 しみ 彼 を 輕 しむべければなり。汝 ら 神 と 富 とに 兼 ね 事 ふること 能 はず。
25 この 故 に 我 なんぢらに 告 ぐ、何 を 食 ひ、何 を 飮 まんと 生命 のことを 思 ひ 煩 ひ、何 を 著 んと 體 のことを 思 ひ 煩 ふな。生命 は 糧 にまさり、體 は 衣 に 勝 るならずや。
26 空 の 鳥 を 見 よ、播 かず、刈 らず、倉 に 收 めず、然 るに 汝 らの 天 の 父 は、これを 養 ひたまふ。汝 らは 之 よりも 遙 に 優 るる 者 ならずや。
27 汝 らの 中 たれか 思 ひ 煩 ひて 身 の 長 一尺 を 加 へ 得 んや。
28 又 なにゆゑ 衣 のことを 思 ひ 煩 ふや。野 の 百合 は 如何 にして 育 つかを 思 へ、勞 せず、紡 がざるなり。
29 されど 我 なんぢらに 告 ぐ、榮華 を 極 めたるソロモンだに、その 服裝 この 花 の 一 つにも 及 かざりき。
30 今日 ありて 明日 爐 に 投 げ 入 れらるる 野 の 草 をも、神 はかく 裝 ひ 給 へば、まして 汝 らをや、ああ 信仰 うすき 者 よ。
31 さらば 何 を 食 ひ、何 を 飮 み、何 を 著 んとて 思 ひ 煩 ふな。
32 是 みな 異邦人 の 切 に 求 むる 所 なり。汝 らの 天 の 父 は、凡 てこれらの 物 の 汝 らに 必要 なるを 知 り 給 ふなり。
33 まづ 神 の 國 と 神 の 義 とを 求 めよ、さらば 凡 てこれらの 物 は 汝 らに 加 へらるべし。
34 この 故 に 明日 のことを 思 ひ 煩 ふな、明日 は 明日 みづから 思 ひ 煩 はん。一日 の 苦勞 は 一日 にて 足 れり。
Chapter 7
1 なんぢら 人 を 審 くな、審 かれざらん 爲 なり。
2 己 がさばく 審判 にて 己 もさばかれ、己 がはかる 量 にて 己 も 量 らるべし。
3 何 ゆゑ 兄弟 の 目 にある 塵 を 見 て、おのが 目 にある 梁木 を 認 めぬか。
4 視 よ、おのが 目 に 梁木 のあるに、いかで 兄弟 にむかひて、汝 の 目 より 塵 をとり 除 かせよと 言 ひ 得 んや。
5 僞善者 よ、まづ 己 が 目 より 梁木 をとり 除 け、さらば 明 かに 見 えて、兄弟 の 目 より 塵 を 取 りのぞき 得 ん。
6 聖 なる 物 を 犬 に 與 ふな。また 眞珠 を 豚 の 前 に 投 ぐな。恐 らくは 足 にて 蹈 みつけ、向 き 返 りて 汝 らを 噛 みやぶらん。
7 求 めよ、さらば 與 へられん。尋 ねよ、さらば 見出 さん。門 を 叩 け、さらば 開 かれん。
8 すべて 求 むる 者 は 得、たづぬる 者 は 見 いだし、門 をたたく 者 は 開 かるるなり。
9 汝 等 のうち、誰 かその 子 パンを 求 めんに 石 を 與 へ、
10 魚 を 求 めんに 蛇 を 與 へんや。
11 さらば、汝 ら 惡 しき 者 ながら、善 き 賜物 をその 子 らに 與 ふるを 知 る。まして 天 にいます 汝 らの 父 は、求 むる 者 に 善 き 物 を 賜 はざらんや。
12 さらば 凡 て 人 に 爲 られんと 思 ふことは、人 にも 亦 その 如 くせよ。これは 律法 なり、預言者 なり。
13 狹 き 門 より 入 れ、滅 にいたる 門 は 大 きく、その 路 は 廣 く、之 より 入 る 者 おほし。
14 生命 にいたる 門 は 狹 く、その 路 は 細 く、之 を 見 出 す 者 すくなし。
15 僞 預言者 に 心 せよ、羊 の 扮裝 して 來 れども、内 は 奪 ひ 掠 むる 豺狼 なり。
16 その 果 によりて 彼 らを 知 るべし。茨 より 葡萄 を、薊 より 無花果 をとる 者 あらんや。
17 斯 く、すべて 善 き 樹 は 善 き 果 をむすび、惡 しき 樹 は 惡 しき 果 をむすぶ。
18 善 き 樹 は 惡 しき 果 を 結 ぶこと 能 はず、惡 しき 樹 はよき 果 を 結 ぶこと 能 はず。
19 すべて 善 き 果 を 結 ばぬ 樹 は、伐 られて 火 に 投 げ 入 れらる。
20 さらばその 果 によりて 彼 らを 知 るべし。
21 我 に 對 ひて 主 よ 主 よといふ 者、ことごとくは 天國 に 入 らず、ただ 天 にいます 我 が 父 の 御意 をおこなふ 者 のみ、之 に 入 るべし。
22 その 日 おほくの 者 われに 對 ひて「主 よ、主 よ、我 らは 汝 の 名 によりて 預言 し、汝 の 名 によりて 惡鬼 を 逐 ひいだし、汝 の 名 によりて 多 くの 能力 ある 業 を 爲 ししにあらずや」と 言 はん。
23 その 時 われ 明白 に 告 げん「われ 斷 えて 汝 らを 知 らず、不法 をなす 者 よ、我 を 離 れされ」と。
24 さらば 凡 て 我 がこれらの 言 をききて 行 ふ 者 を、磐 の 上 に 家 をたてたる 慧 き 人 に 擬 へん。
25 雨 ふり 流 みなぎり、風 ふきてその 家 をうてど 倒 れず、これ 磐 の 上 に 建 てられたる 故 なり。
26 すべて 我 がこれらの 言 をききて 行 はぬ 者 を、沙 の 上 に 家 を 建 てたる 愚 なる 人 に 擬 へん。
27 雨 ふり 流 みなぎり、風 ふきて 其 の 家 をうてば、倒 れてその 顛倒 はなはだし』
28 イエスこれらの 言 を 語 りをへ 給 へるとき、群衆 その 教 に 驚 きたり。
29 それは 學者 らの 如 くならず、權威 ある 者 のごとく 教 へ 給 へる 故 なり。
Chapter 8
1 イエス 山 を 下 り 給 ひしとき、大 なる 群衆 これに 從 ふ。
2 視 よ、一人 の 癩病人 みもとに 來 り、拜 して 言 ふ『主 よ、御意 ならば、我 を 潔 くなし 給 ふを 得 ん』
3 イエス 手 をのべ、彼 につけて『わが 意 なり、潔 くなれ』と 言 ひ 給 へば、癩病 ただちに 潔 れり。
4 イエス 言 ひ 給 ふ『つつしみて 誰 にも 語 るな、ただ 往 きて 己 を 祭司 に 見 せ、モーセが 命 じたる 供物 を 献 げて、人々 に 證 せよ』
5 イエス、カペナウムに 入 り 給 ひしとき、百卒長 きたり、
6 請 ひていふ『主 よ、わが 僕、中風 を 病 み、家 に 臥 しゐて 甚 く 苦 しめり』
7 イエス 言 ひ 給 ふ『われ 往 きて 醫 さん』
8 百卒長 こたへて 言 ふ『主 よ、我 は 汝 をわが 屋根 の 下 に 入 れまつるに 足 らぬ 者 なり。ただ 御言 のみを 賜 へ、さらば 我 が 僕 はいえん。
9 我 みづから 權威 の 下 にある 者 なるに、我 が 下 にまた 兵卒 ありて、此 に「ゆけ」と 言 へば 往 き、彼 に「きたれ」と 言 へば 來 り、わが 僕 に「これを 爲 せ」といへば 爲 すなり』
10 イエス 聞 きて 怪 しみ、從 へる 人々 に 言 ひ 給 ふ『まことに 汝 らに 告 ぐ、かかる 篤 き 信仰 はイスラエルの 中 の 一人 にだに 見 しことなし。
11 又 なんぢらに 告 ぐ、多 くの 人、東 より 西 より 來 り、アブラハム、イサク、ヤコブとともに 天國 の 宴 につき、
12 御國 の 子 らは 外 の 暗 きに 逐 ひ 出 され、そこにて 哀哭・切齒 することあらん』
13 イエス 百卒長 に『ゆけ、汝 の 信 ずるごとく 汝 になれ』と 言 ひ 給 へば、このとき 僕 いえたり。
14 イエス、ペテロの 家 に 入 り、その 外姑 の 熱 を 病 みて 臥 しをるを 見、
15 その 手 に 觸 り 給 へば、熱 去 り、女 おきてイエスに 事 ふ。
16 夕 になりて、人々、惡鬼 に 憑 かれたる 者 をおほく 御許 につれ 來 りたれば、イエス 言 にて 靈 を 逐 ひいだし、病 める 者 をことごとく 醫 し 給 へり。
17 これは 預言者 イザヤによりて『かれは 自 ら 我 らの 疾患 をうけ、我 らの 病 を 負 ふ』と 云 はれし 言 の 成就 せん 爲 なり。
18 さてイエス 群衆 の 己 を 環 れるを 見 て、ともに 彼方 の 岸 に 往 かんことを 弟子 たちに 命 じ 給 ふ。
19 一人 の 學者 きたりて 言 ふ『師 よ、何處 にゆき 給 ふとも、我 は 從 はん』。
20 イエス 言 ひたまふ『狐 は 穴 あり、空 の 鳥 は 塒 あり、されど 人 の 子 は 枕 する 所 なし』
21 また 弟子 の 一人 いふ『主 よ、先 づ、往 きて、我 が 父 を 葬 ることを 許 したまへ』
22 イエス 言 ひたまふ『我 に 從 へ、死 にたる 者 にその 死 にたる 者 を 葬 らせよ』
23 かくて 舟 に 乘 り 給 へば、弟子 たちも 從 ふ。
24 視 よ、海 に 大 なる 暴風 おこりて、舟 波 に 蔽 はるるばかりなるに、イエスは 眠 りゐ 給 ふ。
25 弟子 たち 御許 にゆき、起 して 言 ふ『主 よ、救 ひたまへ、我 らは 亡 ぶ』
26 彼 らに 言 ひ 給 ふ『なにゆゑ 臆 するか、信仰 うすき 者 よ』乃 ち 起 きて、風 と 海 とを 禁 め 給 へば、大 なる 凪 となりぬ。
27 人々 あやしみて 言 ふ『こは 如何 なる 人 ぞ、風 も 海 も 從 ふとは』
28 イエス 彼方 にわたり、ガダラ 人 の 地 にゆき 給 ひしとき、惡鬼 に 憑 かれたる 二人 のもの、墓 より 出 できたりて 之 に 遇 ふ。その 猛 きこと 甚 だしく、其處 の 途 を 人 の 過 ぎ 得 ぬほどなり。
29 視 よ、かれら 叫 びて 言 ふ『神 の 子 よ、われら 汝 と 何 の 關係 あらん、未 だ 時 いたらぬに、我 らを 責 めんとて 此處 にきたり 給 ふか』
30 遙 にへだたりて 多 くの 豚 の 一 群、食 しゐたりしが、
31 惡鬼 ども 請 ひて 言 ふ『もし 我 らを 逐 ひ 出 さんとならば、豚 の 群 に 遣 したまへ』
32 彼 らに 言 ひ 給 ふ『ゆけ』惡鬼 いでて 豚 に 入 りたれば、視 よ、その 群 みな 崖 より 海 に 駈 け 下 りて、水 に 死 にたり。
33 飼 ふ 者 ども 逃 げて 町 にゆき、すべての 事 と 惡鬼 に 憑 かれたりし 者 の 事 とを 告 げたれば、
34 視 よ、町 人 こぞりてイエスに 逢 はんとて 出 できたり、彼 を 見 て、この 地方 より 去 り 給 はんことを 請 へり。
Chapter 9
1 イエス 舟 にのり、渡 りて 己 が 町 にきたり 給 ふ。
2 視 よ、中風 にて 床 に 臥 しをる 者 を、人々 みもとに 連 れ 來 れり。イエス 彼 らの 信仰 を 見 て、中風 の 者 に 言 ひたまふ『子 よ、心 安 かれ、汝 の 罪 ゆるされたり』
3 視 よ、或 學者 ら 心 の 中 にいふ『この 人 は 神 を 瀆 すなり』
4 イエスその 思 を 知 りて 言 ひ 給 ふ『何 ゆゑ 心 に 惡 しき 事 をおもふか。
5 汝 の 罪 ゆるされたりと 言 ふと、起 きて 歩 めと 言 ふと、孰 か 易 き。
6 人 の 子 地 にて 罪 を 赦 す 權威 あることを 汝 らに 知 らせん 爲 に』――ここに 中風 の 者 に 言 ひ 給 ふ――『起 きよ、床 をとりて 汝 の 家 にかへれ』
7 彼 おきてその 家 にかへる。
8 群衆 これを 見 ておそれ、かかる 能力 を 人 にあたへ 給 へる 神 を 崇 めたり。
9 イエス 此處 より 進 みて、マタイといふ 人 の 收税所 に 坐 しをるを 見 て『我 に 從 へ』と 言 ひ 給 へば、立 ちて 從 へり。
10 家 にて 食事 の 席 につき 居給 ふとき、視 よ、多 くの 取税人・罪人 ら 來 りて、イエス 及 び 弟子 たちと 共 に 列 る。
11 パリサイ 人 これを 見 て 弟子 たちに 言 ふ『なに 故 なんぢらの 師 は、取税人・罪人 らと 共 に 食 するか』
12 之 を 聞 きて、言 ひたまふ『健 かなる 者 は 醫者 を 要 せず、ただ、病 める 者 これを 要 す。
13 なんぢら 往 きて 學 べ「われ 憐憫 を 好 みて、犧牲 を 好 まず」とは 如何 なる 意 ぞ。我 は 正 しき 者 を 招 かんとにあらで、罪人 を 招 かんとて 來 れり』
14 ここにヨハネの 弟子 たち 御許 にきたりて 言 ふ『われらとパリサイ 人 は 斷食 するに、何 故 なんぢの 弟子 たちは 斷食 せぬか』
15 イエス 言 ひたまふ『新郎 の 友 だち、新郎 と 偕 にをる 間 は、悲 しむことを 得 んや。されど 新郎 をとらるる 日 きたらん、その 時 には 斷食 せん。
16 誰 も 新 しき 布 の 裂 を 舊 き 衣 につぐことは 爲 じ、補 ひたる 裂 は、その 衣 をやぶりて、破綻 さらに 甚 だしかるべし。
17 また 新 しき 葡萄酒 をふるき 革嚢 に 入 るることは 爲 じ。もし 然 せば、嚢 はりさけ 酒 ほどばしり 出 でて、嚢 もまた 廢 らん。新 しき 葡萄酒 は 新 しき 革嚢 にいれ、かくて 兩 ながら 保 つなり』
18 イエス 此 等 のことを 語 りゐ 給 ふとき、視 よ、一人 の 司 きたり、拜 して 言 ふ『わが 娘 いま 死 にたり。されど 來 りて 御手 を 之 におき 給 はば 活 きん』
19 イエス 起 ちて 彼 に 伴 ひ 給 ふに、弟子 たちも 從 ふ。
20 視 よ、十 二年 血漏 を 患 ひゐたる 女、イエスの 後 にきたりて、御衣 の 總 にさはる。
21 それは、御衣 にだに 觸 らば 救 はれんと 心 の 中 にいへるなり。
22 イエスふりかへり、女 を 見 て 言 ひたまふ『娘 よ、心 安 かれ、汝 の 信仰 なんぢを 救 へり』女 この 時 より 救 はれたり。
23 かくてイエス 司 の 家 にいたり、笛 ふく 者 と 騷 ぐ 群衆 とを 見 て 言 ひたまふ、
24 『退 け、少女 は 死 にたるにあらず、寐 ねたるなり』人々 イエスを 嘲笑 ふ。
25 群衆 の 出 されし 後、いりてその 手 をとり 給 へば、少女 おきたり。
26 この 聲聞 あまねく 其 の 地 に 弘 りぬ。
27 イエス 此處 より 進 みたまふ 時、ふたりの 盲人 さけびて『ダビデの 子 よ、我 らを 憫 みたまへ』と 言 ひつつ 從 ふ。
28 イエス 家 にいたり 給 ひしに、盲人 ども 御許 に 來 りたれば、之 に 言 ひたまふ『我 この 事 をなし 得 と 信 ずるか』彼 等 いふ『主 よ、然 り』
29 爰 にイエスかれらの 目 に 觸 りて 言 ひたまふ『なんぢらの 信仰 のごとく 汝 らに 成 れ』
30 乃 ち 彼 らの 目 あきたり。イエス 嚴 しく 戒 めて 言 ひたまふ『愼 みて 誰 にも 知 らすな』
31 されど 彼 ら 出 でて、あまねくその 地 にイエスの 事 をいひ 弘 めたり。
32 盲人 どもの 出 づるとき、視 よ、人々、惡鬼 に 憑 かれたる 唖者 を 御許 につれきたる。
33 惡鬼 おひ 出 されて 唖者 ものいひたれば、群衆 あやしみて 言 ふ『かかる 事 は 未 だイスラエルの 中 に 顯 れざりき』
34 然 るにパリサイ 人 いふ『かれは 惡鬼 の 首 によりて 惡鬼 を 逐 ひ 出 すなり』
35 イエスあまねく 町 と 村 とを 巡 り、その 會堂 にて 教 へ、御國 の 福音 を 宣 べつたへ、もろもろの 病、もろもろの 疾患 をいやし 給 ふ。
36 また 群衆 を 見 て、その 牧 ふ 者 なき 羊 のごとく 惱 み、且 たふるるを 甚 く 憫 み、
37 遂 に 弟子 たちに 言 ひたまふ『收穫 はおほく 勞動人 はすくなし。
38 この 故 に 收穫 の 主 に、勞動人 をその 收穫場 に 遣 し 給 はんことを 求 めよ』
Chapter 10
1 かくてイエスその 十二 弟子 を 召 し、穢 れし 靈 を 制 する 權威 をあたへて、之 を 逐 ひ 出 し、もろもろの 病、もろもろの 疾患 を 醫 すことを 得 しめ 給 ふ。
2 十二 使徒 の 名 は 左 のごとし。先 づペテロといふシモン 及 びその 兄弟 アンデレ、ゼベダイの 子 ヤコブ 及 びその 兄弟 ヨハネ、
3 ピリポ 及 びバルトロマイ、トマス 及 び 取税人 マタイ、アルパヨの 子 ヤコブ 及 びタダイ、
4 熱心 黨 のシモン 及 びイスカリオテのユダ、このユダはイエスを 賣 りし 者 なり。
5 イエスこの 十二 人 を 遣 さんとて、命 じて 言 ひたまふ。『異邦人 の 途 にゆくな、又 サマリヤ 人 の 町 に 入 るな。
6 むしろイスラエルの 家 の 失 せたる 羊 にゆけ。
7 往 きて 宣 べつたへ「天國 は 近 づけり」と 言 へ。
8 病 める 者 をいやし、死 にたる 者 を 甦 へらせ、癩病人 をきよめ、惡鬼 を 逐 ひいだせ。價 なしに 受 けたれば 價 なしに 與 へよ。
9 帶 のなかに 金・銀 または 錢 をもつな。
10 旅 の 嚢 も、二 枚 の 下衣 も、鞋 も、杖 ももつな。勞動人 の、その 食物 を 得 るは 相應 しきなり。
11 いづれの 町 いづれの 村 に 入 るとも、その 中 にて 相應 しき 者 を 尋 ねいだして、立 ち 去 るまでは 其處 に 留 れ。
12 人 の 家 に 入 らば 平安 を 祈 れ。
13 その 家 もし 之 に 相應 しくば、汝 らの 祈 る 平安 はその 上 に 臨 まん。もし 相應 しからずば、その 平安 はなんぢらに 歸 らん。
14 人 もし 汝 らを 受 けず、汝 らの 言 を 聽 かずば、その 家 その 町 を 立 ち 去 るとき、足 の 塵 をはらへ。
15 まことに 汝 らに 告 ぐ、審判 の 日 には、その 町 よりもソドム、ゴモラの 地 のかた 耐 へ 易 からん。
16 視 よ、我 なんぢらを 遣 すは、羊 を 豺狼 のなかに 入 るるが 如 し。この 故 に 蛇 のごとく 慧 く、鴿 のごとく 素直 なれ。
17 人々 に 心 せよ、それは 汝 らを 衆議所 に 付 し、會堂 にて 鞭 うたん。
18 また 汝 等 わが 故 によりて、司 たち 王 たちの 前 に 曳 かれん。これは 彼 らと 異邦人 とに 證 をなさん 爲 なり。
19 かれら 汝 らを 付 さば、如何 に 何 を 言 はんと 思 ひ 煩 ふな、言 ふべき 事 は、その 時 さづけらるべし。
20 これ 言 ふものは 汝 等 にあらず、其 の 中 にありて 言 ひたまふ 汝 らの 父 の 靈 なり。
21 兄弟 は 兄弟 を、父 は 子 を 死 に 付 し、子 どもは 親 に 逆 ひて 之 を 死 なしめん。
22 又 なんぢら 我 が 名 のために 凡 ての 人 に 憎 まれん。されど 終 まで 耐 へ 忍 ぶものは 救 はるべし。
23 この 町 にて 責 めらるる 時 は、かの 町 に 逃 れよ。誠 に 汝 らに 告 ぐ、なんぢらイスラエルの 町々 を 巡 り 盡 さぬうちに 人 の 子 は 來 るべし。
24 弟子 はその 師 にまさらず、僕 はその 主 にまさらず、
25 弟子 はその 師 のごとく、僕 はその 主 の 如 くならば 足 れり。もし 家主 をベルゼブルと 呼 びたらんには、ましてその 家 の 者 をや。
26 この 故 に、彼 らを 懼 るな。蔽 はれたるものに 露 れぬはなく、隱 れたるものに 知 られぬは 無 ければなり。
27 暗黒 にて 我 が 告 ぐることを 光明 にて 言 へ。耳 をあてて 聽 くことを 屋 の 上 にて 宣 べよ。
28 身 を 殺 して 靈魂 をころし 得 ぬ 者 どもを 懼 るな、身 と 靈魂 とをゲヘナにて 滅 し 得 る 者 をおそれよ。
29 二 羽 の 雀 は 一錢 にて 賣 るにあらずや、然 るに、汝 らの 父 の 許 なくば、その 一 羽 も 地 に 落 つること 無 からん。
30 汝 らの 頭 の 髮 までも 皆 かぞへらる。
31 この 故 におそるな、汝 らは 多 くの 雀 よりも 優 るるなり。
32 されど 凡 そ 人 の 前 にて 我 を 言 ひあらはす 者 を、我 もまた 天 にいます 我 が 父 の 前 にて 言 ひ 顯 さん。
33 されど 人 の 前 にて 我 を 否 む 者 を、我 もまた 天 にいます 我 が 父 の 前 にて 否 まん。
34 われ 地 に 平和 を 投 ぜんために 來 れりと 思 ふな。平和 にあらず、反 つて 劍 を 投 ぜん 爲 に 來 れり。
35 それ 我 が 來 れるは、人 をその 父 より、娘 をその 母 より、嫁 をその 姑嫜 より 分 たん 爲 なり。
36 人 の 仇 はその 家 の 者 なるべし。
37 我 よりも 父 または 母 を 愛 する 者 は、我 に 相應 しからず。我 よりも 息子 または 娘 を 愛 する 者 は、我 に 相應 しからず。
38 又 おのが 十字架 をとりて 我 に 從 はぬ 者 は、我 に 相應 しからず。
39 生命 を 得 る 者 はこれを 失 ひ、我 がために 生命 を 失 ふ 者 はこれを 得 べし。
40 汝 らを 受 くる 者 は、我 を 受 くるなり。我 をうくる 者 は、我 を 遣 し 給 ひし 者 を 受 くるなり。
41 預言者 たる 名 の 故 に 預言者 をうくる 者 は、預言者 の 報 をうけ、義人 たる 名 のゆゑに 義人 をうくる 者 は、義人 の 報 を 受 くべし。
42 凡 そわが 弟子 たる 名 の 故 に、この 小 き 者 の 一人 に 冷 かなる 水 一杯 にても 與 ふる 者 は、まことに 汝 らに 告 ぐ、必 ずその 報 を 失 はざるべし』
Chapter 11
1 イエス 十二 弟子 に 命 じ 終 へてのち、町々 にて 教 へ、かつ、宣傳 へんとて、此處 を 去 り 給 へり。
2 ヨハネ 牢舍 にてキリストの 御業 をきき、弟子 たちを 遣 して、
3 イエスに 言 はしむ『來 るべき 者 は 汝 なるか、或 は、他 に 待 つべきか』
4 答 へて 言 ひたまふ『ゆきて、汝 らが 見 聞 する 所 をヨハネに 告 げよ。
5 盲人 は 見、跛者 はあゆみ、癩病人 は 潔 められ、聾者 はきき、死人 は 甦 へらせられ、貧 しき 者 は 福音 を 聞 かせらる。
6 おほよそ 我 に 躓 かぬ 者 は 幸福 なり』
7 彼 らの 歸 りたるをり、ヨハネの 事 を 群衆 に 言 ひ 出 でたまふ『なんぢら 何 を 眺 めんとて 野 に 出 でし、風 にそよぐ 葦 なるか。
8 さらば 何 を 見 んとて 出 でし、柔 かき 衣 を 著 たる 人 なるか。視 よ、やはらかき 衣 を 著 たる 者 は、王 の 家 に 在 り。
9 さらば 何 のために 出 でし、預言者 を 見 んとてか。然 り、汝 らに 告 ぐ、預言者 よりも 勝 る 者 なり。
10 「視 よ、わが 使 をなんぢの 顏 の 前 につかはす。彼 はなんぢの 前 に、なんぢの 道 をそなへん」と 録 されたるは 此 の 人 なり。
11 誠 に 汝 らに 告 ぐ、女 の 産 みたる 者 のうち、バプテスマのヨハネより 大 なる 者 は 起 らざりき。されど 天國 にて 小 き 者 も、彼 よりは 大 なり。
12 バプテスマのヨハネの 時 より 今 に 至 るまで、天國 は 烈 しく 攻 めらる、烈 しく 攻 むる 者 はこれを 奪 ふ。
13 凡 ての 預言者 と 律法 との 預言 したるは、ヨハネの 時 までなり。
14 もし 汝 等 わが 言 をうけんことを 願 はば、來 るべきエリヤは 此 の 人 なり、
15 耳 ある 者 は 聽 くべし。
16 われ 今 の 代 を 何 に 比 へん、童子、市場 に 坐 し、友 を 呼 びて、
17 「われら 汝 等 のために 笛 吹 きたれど、汝 ら 踊 らず、歎 きたれど、汝 ら 胸 うたざりき」と 言 ふに 似 たり。
18 それは、ヨハネ 來 りて 飮食 せざれば「惡鬼 に 憑 かれたる 者 なり」といひ、
19 人 の 子 來 りて 飮食 すれば、「視 よ、食 を 貪 り 酒 を 好 む 人、また 取税人・罪人 の 友 なり」と 言 ふなり。されど 智慧 は 己 が 業 によりて 正 しとせらる』
20 爰 にイエス 多 くの 能力 ある 業 を 行 ひ 給 へる 町々 の 悔改 めぬによりて、之 を 責 めはじめ 給 ふ、
21 『禍害 なる 哉 コラジンよ、禍害 なる 哉 ベツサイダよ、汝 らの 中 にて 行 ひたる 能力 ある 業 を、ツロとシドンとにて 行 ひしならば、彼 らは 早 く 荒布 を 著、灰 の 中 にて 悔改 めしならん。
22 されば 汝 らに 告 ぐ、審判 の 日 にはツロとシドンとのかた 汝 等 よりも 耐 へ 易 からん。
23 カペナウムよ、なんぢは 天 にまで 擧 げらるべきか、黄泉 にまで 下 らん。汝 のうちにて 行 ひたる 能力 ある 業 を、ソドムにて 行 ひしならば、今日 までもかの 町 は 遺 りしならん。
24 されば 汝 らに 告 ぐ、審判 の 日 にはソドムの 地 のかた 汝 よりも 耐 へ 易 からん』
25 その 時 イエス 答 へて 言 ひたまふ『天 地 の 主 なる 父 よ、われ 感謝 す、此 等 のことを 智 き 者 慧 き 者 にかくして、嬰兒 に 顯 し 給 へり。
26 父 よ、然 り、かくの 如 きは 御意 に 適 へるなり。
27 すべての 物 は 我 わが 父 より 委 ねられたり。子 を 知 る 者 は 父 の 外 になく、父 をしる 者 は 子 または 子 の 欲 するままに 顯 すところの 者 の 外 になし。
28 凡 て 勞 する 者・重荷 を 負 ふ 者、われに 來 れ、われ 汝 らを 休 ません。
29 我 は 柔和 にして 心 卑 ければ、我 が 軛 を 負 ひて 我 に 學 べ、さらば 靈魂 に 休息 を 得 ん。
30 わが 軛 は 易 く、わが 荷 は 輕 ければなり』
Chapter 12
1 その 頃 イエス 安息 日 に 麥 畠 をとほり 給 ひしに、弟子 たち 飢 ゑて 穗 を 摘 み、食 ひ 始 めたるを、
2 パリサイ 人 見 てイエスに 言 ふ『視 よ、なんぢの 弟子 は 安息 日 に 爲 まじき 事 をなす』
3 彼 らに 言 ひ 給 ふ『ダビデがその 伴 へる 人々 とともに 飢 ゑしとき、爲 しし 事 を 讀 まぬか。
4 即 ち 神 の 家 に 入 りて、祭司 のほかは、己 もその 伴 へる 人々 も 食 ふまじき 供 のパンを 食 へり。
5 また 安息 日 に 祭司 らは 宮 の 内 にて 安息 日 を 犯 せども、罪 なきことを 律法 にて 讀 まぬか。
6 われ 汝 らに 告 ぐ、宮 より 大 なる 者 ここに 在 り。
7 「われ 憐憫 を 好 みて 犧牲 を 好 まず」とは、如何 なる 意 かを 汝 ら 知 りたらんには、罪 なき 者 を 罪 せざりしならん。
8 それ 人 の 子 は 安息 日 の 主 たるなり』
9 イエス 此處 を 去 りて、彼 らの 會堂 に 入 り 給 ひしに、
10 視 よ、片手 なえたる 人 あり。人々 イエスを 訴 へんと 思 ひ、問 ひていふ『安息 日 に 人 を 醫 すことは 善 きか』
11 彼 らに、言 ひたまふ『汝 等 のうち 一匹 の 羊 をもてる 者 あらんに、もし 安息 日 に 穴 に 陷 らば、之 を 取 りあげぬか。
12 人 は 羊 より 優 るること 如何 ばかりぞ。さらば 安息 日 に 善 をなすは 可 し』
13 ここにかの 人 に 言 ひ 給 ふ『なんぢの 手 を 伸 べよ』かれ 伸 べたれば、他 の 手 のごとく 癒 ゆ。
14 パリサイ 人 いでていかにしてかイエスを 亡 さんと 議 る。
15 イエス 之 を 知 りて 此處 を 去 りたまふ。多 くの 人 したがひ 來 りたれば、ことごとく 之 を 醫 し、
16 かつ 我 を 人 に 知 らすなと 戒 め 給 へり。
17 これ 預言者 イザヤによりて 云 はれたる 言 の 成就 せんためなり。曰 く、
18 『視 よ、わが 選 びたる 我 が 僕、わが 心 の 悦 ぶ 我 が 愛 しむ 者、我 わが 靈 を 彼 に 與 へん、彼 は 異邦人 に 正義 を 告 げ 示 さん。
19 彼 は 爭 はず、叫 ばず、その 聲 を 大路 にて 聞 く 者 なからん。
20 正義 をして 勝 ち 遂 げしむるまでは、傷 へる 葦 を 折 ることなく、煙 れる 亞麻 を 消 すことなからん。
21 異邦人 も 彼 の 名 に 望 をおかん』
22 ここに 惡鬼 に 憑 かれたる 盲目 の 唖者 を 御許 に 連 れ 來 りたれば、之 を 醫 して、唖者 の 物 言 ひ 見 ゆるやうに 爲 し 給 ひぬ。
23 群衆 みな 驚 きて 言 ふ『これはダビデの 子 にあらぬか』
24 然 るにパリサイ 人 ききて 言 ふ『この 人、惡鬼 の 首 ベルゼブルによらでは、惡鬼 を 逐 ひ 出 すことなし』
25 イエス 彼 らの 思 を 知 りて 言 ひ 給 ふ『すべて 分 れ 爭 ふ 國 はほろび、分 れ 爭 ふ 町 また 家 はたたず。
26 サタンもしサタンを 逐 ひ 出 さば、自 ら 分 れ 爭 ふなり。さらばその 國 いかで 立 つべき。
27 我 もしベルゼブルによりて 惡鬼 を 逐 ひ 出 さば、汝 らの 子 は 誰 によりて 之 を 逐 ひ 出 すか。この 故 に 彼 らは 汝 らの 審判 人 となるべし。
28 されど 我 もし 神 の 靈 によりて 惡鬼 を 逐 ひ 出 さば、神 の 國 は 既 に 汝 らに 到 れるなり。
29 人 まづ 強 き 者 を 縛 らずば、いかで 強 き 者 の 家 に 入 りて、その 家財 を 奪 ふことを 得 ん、縛 りて 後 その 家 を 奪 ふべし。
30 我 と 偕 ならぬ 者 は 我 にそむき、我 とともに 集 めぬ 者 は 散 すなり。
31 この 故 に 汝 らに 告 ぐ、人 の 凡 ての 罪 と 瀆 とは 赦 されん、されど 御靈 を 瀆 すことは 赦 されじ。
32 誰 にても 言 をもて 人 の 子 に 逆 ふ 者 は 赦 されん、されど 言 をもて 聖 靈 に 逆 ふ 者 は、この 世 にても 後 の 世 にても 赦 されじ。
33 或 は 樹 をも 善 しとし、果 をも 善 しとせよ。或 は 樹 をも 惡 しとし、果 をも 惡 しとせよ。樹 は 果 によりて 知 らるるなり。
34 蝮 の 裔 よ、なんぢら 惡 しき 者 なるに、爭 で 善 きことを 言 ひ 得 んや。それ 心 に 滿 つるより 口 に 言 はるるなり。
35 善 き 人 は 善 き 倉 より 善 き 物 をいだし、惡 しき 人 は 惡 しき 倉 より 惡 しき 物 をいだす。
36 われ 汝 らに 告 ぐ、人 の 語 る 凡 ての 虚 しき 言 は、審判 の 日 に 糺 さるべし。
37 それは 汝 の 言 によりて 義 とせられ、汝 の 言 によりて 罪 せらるるなり』
38 ここに 或 學者・パリサイ 人 ら 答 へて 言 ふ『師 よ、われら 汝 の 徴 を 見 んことを 願 ふ』
39 答 へて 言 ひたまふ『邪曲 にして 不義 なる 代 は 徴 を 求 む、されど 預言者 ヨナの 徴 のほかに 徴 は 與 へられじ。
40 即 ち「ヨナが 三日 三夜、大魚 の 腹 の 中 に 在 りし」ごとく、人 の 子 も 三日 三夜、地 の 中 に 在 るべきなり。
41 ニネベの 人、審判 のとき 今 の 代 の 人 とともに 立 ちて 之 が 罪 を 定 めん、彼 らはヨナの 宣 ぶる 言 によりて 悔改 めたり。視 よ、ヨナよりも 勝 るもの 此處 に 在 り。
42 南 の 女王、審判 のとき 今 の 代 の 人 とともに 起 きて 之 が 罪 を 定 めん、彼 はソロモンの 智慧 を 聽 かんとて 地 の 極 より 來 れり。視 よ、ソロモンよりも 勝 る 者 ここに 在 り。
43 穢 れし 靈、人 を 出 づるときは、水 なき 處 を 巡 りて 休 を 求 む、而 して 得 ず。
44 乃 ち「わが 出 でし 家 に 歸 らん」といひ、歸 りて、その 家 の 空 きて 掃 き 淨 められ、飾 られたるを 見、
45 遂 に 往 きて 己 より 惡 しき 他 の 七 つの 靈 を 連 れきたり、共 に 入 りて 此處 に 住 む。されば 其 の 人 の 後 の 状 は 前 よりも 惡 しくなるなり。邪曲 なる 此 の 代 もまた 斯 くの 如 くならん』
46 イエスなほ 群衆 にかたり 居給 ふとき、視 よ、その 母 と 兄弟 たちと、彼 に 物 言 はんとて 外 に 立 つ。
47 或 人 イエスに 言 ふ『視 よ、なんぢの 母 と 兄弟 たちと、汝 に 物 言 はんとて 外 に 立 てり』
48 イエス 告 げし 者 に 答 へて 言 ひたまふ『わが 母 とは 誰 ぞ、わが 兄弟 とは 誰 ぞ』
49 かくて 手 をのべ、弟子 たちを 指 して 言 ひたまふ『視 よ、これは 我 が 母、わが 兄弟 なり。
50 誰 にても 天 にいます 我 が 父 の 御意 をおこなふ 者 は、即 ち 我 が 兄弟、わが 姉妹、わが 母 なり』
Chapter 13
1 その 日 イエスは 家 を 出 でて、海邊 に 坐 したまふ。
2 大 なる 群衆 みもとに 集 りたれば、イエスは 舟 に 乘 りて 坐 したまひ、群衆 はみな 岸 に 立 てり。
3 譬 にて 數多 のことを 語 りて 言 ひたまふ、『視 よ、種 播 く 者 まかんとて 出 づ。
4 播 くとき 路 の 傍 らに 落 ちし 種 あり、鳥 きたりて 啄 む。
5 土 うすき 磽地 に 落 ちし 種 あり、土 深 からぬによりて 速 かに 萠 え 出 でたれど、
6 日 の 昇 りし 時 やけて 根 なき 故 に 枯 る。
7 茨 の 地 に 落 ちし 種 あり、茨 そだちて 之 を 塞 ぐ。
8 良 き 地 に 落 ちし 種 あり、あるひは 百 倍、あるひは 六十 倍、あるひは 三十 倍 の 實 を 結 べり。
9 耳 ある 者 は 聽 くべし』
10 弟子 たち 御許 に 來 りて 言 ふ『なにゆゑ 譬 にて 彼 らに 語 り 給 ふか』
11 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢらは 天國 の 奧義 を 知 ることを 許 されたれど、彼 らは 許 されず。
12 それ 誰 にても、有 てる 人 は 與 へられて 愈々 豐 ならん。されど 有 たぬ 人 は、その 有 てる 物 をも 取 らるべし。
13 この 故 に 彼 らには 譬 にて 語 る、これ 彼 らは 見 ゆれども 見 ず、聞 ゆれども 聽 かず、また 悟 らぬ 故 なり、
14 かくてイザヤの 預言 は、彼 らの 上 に 成就 す。曰 く、「なんぢら 聞 きて 聞 けども 悟 らず、見 て 見 れども 認 めず。
15 この 民 の 心 は 鈍 く、耳 は 聞 くに 懶 く、目 は 閉 ぢたればなり。これ 目 にて 見、耳 にて 聽 き、心 にて 悟 り、飜 へりて、我 に 醫 さるる 事 なからん 爲 なり」
16 されど 汝 らの 目 なんぢらの 耳 は、見 るゆゑに 聞 くゆゑに、幸福 なり。
17 まことに 汝 らに 告 ぐ、多 くの 預言者・義人 は、汝 らが 見 る 所 を 見 んとせしが 見 ず、なんぢらが 聞 く 所 を 聞 かんとせしが 聞 かざりしなり。
18 されば 汝 ら 種 播 く 者 の 譬 を 聽 け。
19 誰 にても 天國 の 言 をききて 悟 らぬときは、惡 しき 者 きたりて、其 の 心 に 播 かれたるものを 奪 ふ。路 の 傍 らに 播 かれしとは 斯 かる 人 なり。
20 磽地 に 播 かれしとは、御言 をききて、直 ちに 喜 び 受 くれども、
21 己 に 根 なければ 暫 し 耐 ふるのみにて、御言 のために 艱難 あるひは 迫害 の 起 るときは、直 ちに 躓 くものなり。
22 茨 の 中 に 播 かれしとは、御言 をきけども、世 の 心勞 と 財貨 の 惑 とに、御言 を 塞 がれて 實 らぬものなり。
23 良 き 地 に 播 かれしとは、御言 をききて 悟 り、實 を 結 びて、あるひは 百 倍、あるひは 六十 倍、あるひは 三十 倍 に 至 るものなり』
24 また 他 の 譬 を 示 して 言 ひたまふ『天國 は 良 き 種 を 畑 にまく 人 のごとし。
25 人々 の 眠 れる 間 に、仇 きたりて 麥 のなかに 毒 麥 を 播 きて 去 りぬ。
26 苗 はえ 出 でて 實 りたるとき、毒 麥 もあらはる。
27 僕 ども 來 りて 家主 にいふ「主 よ、畑 に 播 きしは 良 き 種 ならずや、然 るに 如何 にして 毒 麥 あるか」
28 主人 いふ「仇 のなしたるなり」僕 ども 言 ふ「さらば 我 らが 往 きて 之 を 拔 き 集 むるを 欲 するか」
29 主人 いふ「いな、恐 らくは 毒 麥 を 拔 き 集 めんとて、麥 をも 共 に 拔 かん。
30 兩 ながら 收穫 まで 育 つに 任 せよ。收穫 のとき 我 かる 者 に「まづ 毒 麥 を 拔 きあつめて、焚 くために 之 を 束 ね、麥 はあつめて 我 が 倉 に 納 れよ」と 言 はん」』
31 また 他 の 譬 を 示 して 言 ひたまふ『天國 は 一粒 の 芥種 のごとし、人 これを 取 りてその 畑 に 播 くときは、
32 萬 の 種 よりも 小 けれど、育 ちては 他 の 野菜 よりも 大 く、樹 となりて、空 の 鳥 きたり 其 の 枝 に 宿 るほどなり』
33 また 他 の 譬 を 語 りたまふ『天國 はパンだねのごとし、女 これを 取 りて、三 斗 の 粉 の 中 に 入 るれば、ことごとく 脹 れいだすなり』
34 イエスすべて 此 等 のことを、譬 にて 群衆 に 語 りたまふ、譬 ならでは 何事 も 語 り 給 はず。
35 これ 預言者 によりて 云 はれたる 言 の 成就 せん 爲 なり。曰 く、『われ 譬 を 設 けて 口 を 開 き、世 の 創 より 隱 れたる 事 を 言 ひ 出 さん』
36 ここに 群衆 を 去 らしめて、家 に 入 りたまふ。弟子 たち 御許 に 來 りて 言 ふ『畑 の 毒 麥 の 譬 を 我 らに 解 きたまへ』
37 答 へて 言 ひ 給 ふ『良 き 種 を 播 く 者 は 人 の 子 なり、
38 畑 は 世界 なり、良 き 種 は 天國 の 子 どもなり、毒 麥 は 惡 しき 者 の 子 どもなり、
39 之 を 播 きし 仇 は 惡魔 なり、收穫 は 世 の 終 なり、刈 る 者 は 御使 たちなり。
40 されば 毒 麥 の 集 められて 火 に 焚 かるる 如 く、世 の 終 にも 斯 くあるべし。
41 人 の 子 その 使 たちを 遣 さん。彼 ら 御國 の 中 より 凡 ての 顛躓 となる 物 と 不法 をなす 者 とを 集 めて、
42 火 の 爐 に 投 げ 入 るべし、其處 にて 哀哭・切齒 することあらん。
43 其 のとき 義人 は 父 の 御國 にて 日 のごとく 輝 かん。耳 ある 者 は 聽 くべし。
44 天國 は 畑 に 隱 れたる 寶 のごとし。人 見出 さば、之 を 隱 しおきて、喜 びゆき、有 てる 物 をことごとく 賣 りて 其 の 畑 を 買 ふなり。
45 また 天國 は 良 き 眞珠 を 求 むる 商人 のごとし。
46 價 たかき 眞珠 一 つを 見出 さば、往 きて 有 てる 物 をことごとく 賣 りて、之 を 買 ふなり。
47 また 天國 は、海 におろして 各樣 のものを 集 むる 網 のごとし。
48 充 つれば 岸 にひきあげ、坐 して 良 きものを 器 に 入 れ、惡 しきものを 棄 つるなり。
49 世 の 終 にも 斯 くあるべし。御使 たち 出 でて、義人 の 中 より 惡人 を 分 ちて、
50 之 を 火 の 爐 に 投 げ 入 るべし。其處 にて 哀哭・切齒 することあらん。
51 汝 等 これらの 事 をみな 悟 りしか』彼 等 いふ『然 り』
52 また 言 ひ 給 ふ『この 故 に、天國 のことを 教 へられたる 凡 ての 學者 は、新 しき 物 と 舊 き 物 とをその 倉 より 出 す 家主 のごとし』
53 イエスこれらの 譬 を 終 へて 此處 を 去 りたまふ。
54 己 が 郷 にいたり、會堂 にて 教 へ 給 へば、人々 おどろきて 言 ふ『この 人 はこの 智慧 と 此 等 の 能力 とを 何處 より 得 しぞ。
55 これ 木匠 の 子 にあらずや、其 の 母 はマリヤ、其 の 兄弟 はヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダにあらずや。
56 又 その 姉妹 も 皆 われらと 共 にをるに 非 ずや。然 るに 此 等 のすべての 事 は 何處 より 得 しぞ』
57 遂 に 人々 かれに 躓 けり。イエス 彼 らに 言 ひたまふ『預言者 は、おのが 郷 おのが 家 の 外 にて 尊 ばれざる 事 なし』
58 彼 らの 不 信仰 によりて 其處 にては 多 くの 能力 ある 業 を 爲 し 給 はざりき。
Chapter 14
1 そのころ、國守 ヘロデ、イエスの 噂 をききて、
2 侍臣 どもに 言 ふ『これバプテスマのヨハネなり。かれ 死人 の 中 より 甦 へりたり、さればこそ 此 等 の 能力 その 内 に 働 くなれ』
3 ヘロデ 先 に、己 が 兄弟 ピリポの 妻 ヘロデヤの 爲 にヨハネを 捕 へ、縛 りて 獄 に 入 れたり。
4 ヨハネ、ヘロデに『かの 女 を 納 るるは 宜 しからず』と 言 ひしに 因 る。
5 かくてヘロデ、ヨハネを 殺 さんと 思 へど、群衆 を 懼 れたり。群衆 ヨハネを 預言者 とすればなり。
6 然 るにヘロデの 誕生日 に 當 り、ヘロデヤの 娘 その 席上 に 舞 をまひてヘロデを 喜 ばせたれば、
7 ヘロデ 之 に 何 にても 求 むるままに 與 へんと 誓 へり。
8 娘 その 母 に 唆 かされて 言 ふ『バプテスマのヨハネの 首 を 盆 に 載 せてここに 賜 はれ』
9 王 憂 ひたれど、その 誓 と 席 に 在 る 者 とに 對 して、之 を 與 ふることを 命 じ、
10 人 を 遣 し 獄 にてヨハネの 首 を 斬 り、
11 その 首 を 盆 にのせて 持 ち 來 らしめ、之 を 少女 に 與 ふ。少女 はこれを 母 に 捧 ぐ。
12 ヨハネの 弟子 たち 來 り、屍體 を 取 りて 葬 り、往 きて、イエスに 告 ぐ。
13 イエス 之 を 聞 きて 人 を 避 け、其處 より 舟 にのりて 寂 しき 處 に 往 き 給 ひしを 群衆 ききて 町々 より 徒歩 にて 從 ひゆく。
14 イエス 出 でて 大 なる 群衆 を 見、これを 憫 みて、その 病 める 者 を 醫 し 給 へり。
15 夕 になりたれば、弟子 たち 御許 に 來 りて 言 ふ『ここは 寂 しき 處、はや 時 も 晩 し、群衆 を 去 らしめ、村々 に 往 きて、己 が 爲 に 食物 を 買 はせ 給 へ』
16 イエス 言 ひ 給 ふ『かれら 往 くに 及 ばず、汝 ら 之 に 食物 を 與 へよ』
17 弟子 たち 言 ふ『われらが 此處 にもてるは、唯 五 つのパンと 二 つの 魚 とのみ』
18 イエス 言 ひ 給 ふ『それを 我 に 持 ちきたれ』
19 かくて 群衆 に 命 じて 草 の 上 に 坐 せしめ、五 つのパンと 二 つの 魚 とを 取 り、天 を 仰 ぎて 祝 し、パンを 裂 きて、弟子 たちに 與 へ 給 へば、弟子 たち 之 を 群衆 に 與 ふ。
20 凡 ての 人 食 ひて 飽 く、裂 きたる 餘 を 集 めしに 十二 の 筐 に 滿 ちたり。
21 食 ひし 者 は、女 と 子供 とを 除 きて 凡 そ 五 千 人 なりき。
22 イエス 直 ちに 弟子 たちを 強 ひて 舟 に 乘 らせ、自 ら 群衆 をかへす 間 に、彼方 の 岸 に 先 に 往 かしむ。
23 かくて 群衆 を 去 らしめてのち、祈 らんとて 竊 に 山 に 登 り、夕 になりて 獨 そこにゐ 給 ふ。
24 舟 ははや 陸 より 數丁 はなれ、風 逆 ふによりて 波 に 難 されゐたり。
25 夜明 の 四時 ごろ、イエス 海 の 上 を 歩 みて、彼 らに 到 り 給 ひしに、
26 弟子 たち 其 の 海 の 上 を 歩 み 給 ふを 見 て 心 騷 ぎ、變化 の 者 なりと 言 ひて 懼 れ 叫 ぶ。
27 イエス 直 ちに 彼 らに 語 りて 言 ひたまふ『心 安 かれ、我 なり、懼 るな』
28 ペテロ 答 へて 言 ふ『主 よ、もし 汝 ならば 我 に 命 じ、水 を 蹈 みて 御許 に 到 らしめ 給 へ』
29 『來 れ』と 言 ひ 給 へば、ペテロ 舟 より 下 り、水 の 上 を 歩 みてイエスの 許 に 往 く。
30 然 るに 風 を 見 て 懼 れ、沈 みかかりければ、叫 びて 言 ふ『主 よ、我 を 救 ひたまへ』
31 イエス 直 ちに 御手 を 伸 べ、これを 捉 へて 言 ひ 給 ふ『ああ 信仰 うすき 者 よ、何 ぞ 疑 ふか』
32 相 共 に 舟 に 乘 りしとき、風 やみたり。
33 舟 に 居 る 者 どもイエスを 拜 して 言 ふ『まことに 汝 は 神 の 子 なり』
34 遂 に 渡 りてゲネサレの 地 に 著 きしに、
35 その 處 の 人々 イエスを 認 めて、あまねく 四方 に 人 をつかはし、又 すべての 病 める 者 を 連 れきたり、
36 ただ 御衣 の 總 にだに 觸 らしめ 給 はんことを 願 ふ、觸 りし 者 はみな 醫 されたり。
Chapter 15
1 ここにパリサイ 人・學者 ら、エルサレムより 來 りてイエスに 言 ふ、
2 『なにゆゑ 汝 の 弟子 は、古 への 人 の 言傳 を 犯 すか、食事 のときに 手 を 洗 はぬなり』
3 答 へて 言 ひ 給 ふ『なにゆゑ 汝 らは、また 汝 らの 言傳 によりて 神 の 誡命 を 犯 すか。
4 即 ち 神 は「父 母 を 敬 へ」と 言 ひ「父 または 母 を 罵 る 者 は 必 ず 殺 さるべし」と 言 ひたまへり。
5 然 るに 汝 らは「誰 にても 父 または 母 に 對 ひて、我 が 負 ふ 所 のものは 供物 となりたりと 言 はば、
6 父 または 母 を 敬 ふに 及 ばず」と 言 ふ。斯 くその 言傳 によりて 神 の 言 を 空 しうす。
7 僞善者 よ、宜 なる 哉、イザヤは 汝 らに 就 きて 能 く 預言 せり。曰 く、
8 「この 民 は 口唇 にて 我 を 敬 ふ、されど 其 の 心 は 我 に 遠 ざかる。
9 ただ 徒 らに 我 を 拜 む。人 の 訓誡 を 教 とし 教 へて」』
10 かくて 群衆 を 呼 び 寄 せて 言 ひたまふ『聽 きて 悟 れ。
11 口 に 入 るものは 人 を 汚 さず、されど 口 より 出 づるものは、これ 人 を 汚 すなり』
12 ここに 弟子 たち 御許 に 來 りていふ『御言 をききてパリサイ 人 の 躓 きたるを 知 り 給 ふか』
13 答 へて 言 ひ 給 ふ『わが 天 の 父 の 植 ゑ 給 はぬものは、みな 拔 かれん。
14 彼 らを 捨 ておけ、盲人 を 手引 する 盲人 なり、盲人 もし 盲人 を 手引 せば、二人 とも 穴 に 落 ちん』
15 ペテロ 答 へて 言 ふ『その 譬 を 我 らに 解 き 給 へ』
16 イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢらも 今 なほ 悟 りなきか。
17 凡 て 口 に 入 るものは 腹 にゆき、遂 に 厠 に 棄 てらるる 事 を 悟 らぬか。
18 されど 口 より 出 づるものは 心 より 出 づ、これ 人 を 汚 すものなり。
19 それ 心 より 惡 しき 念 いづ、すなはち 殺人・姦淫・淫行・竊盜・僞證・誹謗、
20 これらは 人 を 汚 すものなり、されど 洗 はぬ 手 にて 食 する 事 は 人 を 汚 さず』
21 イエスここを 去 りてツロとシドンとの 地方 に 往 き 給 ふ。
22 視 よ、カナンの 女 その 邊 より 出 できたり、叫 びて『主 よ、ダビデの 子 よ、我 を 憫 み 給 へ、わが 娘、惡鬼 につかれて 甚 く 苦 しむ』と 言 ふ。
23 されどイエス 一言 も 答 へ 給 はず。弟子 たち 來 り 請 ひて 言 ふ『女 を 歸 したまへ、我 らの 後 より 叫 ぶなり』
24 答 へて 言 ひたまふ『我 はイスラエルの 家 の 失 せたる 羊 のほかに 遣 されず』
25 女 きたり 拜 して 言 ふ『主 よ、我 を 助 けたまへ』
26 答 へて 言 ひたまふ『子供 のパンをとりて 小狗 に 投 げ 與 ふるは 善 からず』
27 女 いふ『然 り、主 よ、小狗 も 主人 の 食卓 よりおつる 食屑 を 食 ふなり』
28 ここにイエス 答 へて 言 ひたまふ『をんなよ、汝 の 信仰 は 大 なるかな、願 のごとく 汝 になれ』娘 この 時 より 癒 えたり。
29 イエス 此處 を 去 り、ガリラヤの 海邊 にいたり、而 して 山 に 登 り、そこに 坐 し 給 ふ。
30 大 なる 群衆、跛者・不具・盲人・唖者 および 他 の 多 くの 者 を 連 れ 來 りて、イエスの 足下 に 置 きたれば、醫 し 給 へり。
31 群衆 は、唖者 の 物 いひ、不具 の 癒 え、跛者 の 歩 み、盲人 の 見 えたるを 見 て 之 を 怪 しみ、イスラエルの 神 を 崇 めたり。
32 イエス 弟子 たちを 召 して 言 ひ 給 ふ『われ 此 の 群衆 をあはれむ、既 に 三日 われと 偕 にをりて 食 ふべき 物 なし。飢 ゑたるままにて 歸 らしむるを 好 まず、恐 らくは 途 にて 疲 れ 果 てん』
33 弟子 たち 言 ふ『この 寂 しき 地 にて、斯 く 大 なる 群衆 を 飽 かしむべき 多 くのパンを、何處 より 得 べき』
34 イエス 言 ひ 給 ふ『パン 幾 つあるか』彼 らいふ『七 つ、また 小 き 魚 すこしあり』
35 イエス 群衆 に 命 じて 地 に 坐 せしめ、
36 七 つのパンと 魚 とを 取 り、謝 して 之 をさき 弟子 たちに 與 へ 給 へば、弟子 たちこれを 群衆 に 與 ふ。
37 凡 ての 人 くらひて 飽 き、裂 きたる 餘 を 拾 ひしに、七 つの 籃 に 滿 ちたり。
38 食 ひし 者 は、女 と 子供 とを 除 きて 四千 人 なりき。
39 イエス 群衆 をかへし、舟 に 乘 りてマガダンの 地方 に 往 き 給 へり。
Chapter 16
1 パリサイ 人 とサドカイ 人 と 來 りてイエスを 試 み、天 よりの 徴 を 示 さんことを 請 ふ。
2 答 へて 言 ひたまふ『夕 には 汝 ら「空 あかき 故 に 晴 ならん」と 言 ひ、
3 また 朝 には「そら 赤 くして 曇 る 故 に、今日 は 風雨 ならん」と 言 ふ。なんぢら 空 の 氣色 を 見分 くることを 知 りて、時 の 徴 を 見分 くること 能 はぬか。
4 邪曲 にして 不義 なる 代 は 徴 を 求 む、されどヨナの 徴 の 外 に 徴 は 與 へられじ』かくて 彼 らを 離 れて 去 り 給 ひぬ。
5 弟子 たち 彼方 の 岸 に 到 りしに、パンを 携 ふることを 忘 れたり。
6 イエス 言 ひたまふ『愼 みてパリサイ 人 とサドカイ 人 とのパン 種 に 心 せよ』
7 弟子 たち 互 に『我 らはパンを 携 へざりき』と 語 り 合 ふ。
8 イエス 之 を 知 りて 言 ひ 給 ふ『ああ 信仰 うすき 者 よ、何 ぞパン 無 きことを 語 り 合 ふか。
9 未 だ 悟 らぬか、五 つのパンを 五 千 人 に 分 ちて、その 餘 を 幾籃 ひろひ、
10 また 七 つのパンを 四千 人 に 分 ちて、その 餘 を 幾籃 ひろひしかを 覺 えぬか。
11 我 が 言 ひしはパンの 事 にあらぬを 何 ぞ 悟 らざる。唯 パリサイ 人 とサドカイ 人 とのパンだねに 心 せよ』
12 ここに 弟子 たちイエスの 心 せよと 言 ひ 給 ひしは、パンの 種 にはあらで、パリサイ 人 とサドカイ 人 との 教 なることを 悟 れり。
13 イエス、ピリポ・カイザリヤの 地方 にいたり、弟子 たちに 問 ひて 言 ひたまふ『人々 は 人 の 子 を 誰 と 言 ふか』
14 彼 等 いふ『或 人 はバプテスマのヨハネ、或 人 はエリヤ、或 人 はエレミヤ、また 預言者 の 一人』
15 彼 らに 言 ひたまふ『なんぢらは 我 を 誰 と 言 ふか』
16 シモン・ペテロ 答 へて 言 ふ『なんぢはキリスト、活 ける 神 の 子 なり』
17 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『バルヨナ・シモン、汝 は 幸福 なり、汝 に 之 を 示 したるは 血肉 にあらず、天 にいます 我 が 父 なり。
18 我 はまた 汝 に 告 ぐ、汝 はペテロなり、我 この 磐 の 上 に 我 が 教會 を 建 てん、黄泉 の 門 はこれに 勝 たざるべし。
19 われ 天國 の 鍵 を 汝 に 與 へん、凡 そ 汝 が 地 にて 縛 ぐ 所 は 天 にても 縛 ぎ、地 にて 解 く 所 は 天 にても 解 くなり』
20 ここにイエス、己 がキリストなる 事 を 誰 にも 告 ぐなと、弟子 たちを 戒 め 給 へり。
21 この 時 よりイエス・キリスト、弟子 たちに、己 のエルサレムに 往 きて、長老・祭司長・學者 らより 多 くの 苦難 を 受 け、かつ 殺 され、三日 めに 甦 へるべき 事 を 示 し 始 めたまふ。
22 ペテロ、イエスを 傍 にひき 戒 め 出 でて 言 ふ『主 よ、然 あらざれ、此 の 事 なんぢに 起 らざるべし』
23 イエス 振反 りてペテロに 言 ひ 給 ふ『サタンよ、我 が 後 に 退 け、汝 はわが 躓物 なり、汝 は 神 のことを 思 はず、反 つて 人 のことを 思 ふ』
24 ここにイエス 弟子 たちに 言 ひたまふ『人 もし 我 に 從 ひ 來 らんと 思 はば、己 をすて、己 が 十字架 を 負 ひて、我 に 從 へ。
25 己 が 生命 を 救 はんと 思 ふ 者 は、これを 失 ひ、我 がために 己 が 生命 をうしなふ 者 は、之 を 得 べし。
26 人、全世界 を 贏 くとも、己 が 生命 を 損 せば、何 の 益 あらん、又 その 生命 の 代 に 何 を 與 へんや。
27 人 の 子 は 父 の 榮光 をもて、御使 たちと 共 に 來 らん。その 時 おのおのの 行爲 に 隨 ひて 報 ゆべし。
28 まことに 汝 らに 告 ぐ、ここに 立 つ 者 のうちに、人 の 子 のその 國 をもて 來 るを 見 るまでは、死 を 味 はぬ 者 どもあり』
Chapter 17
1 六日 の 後、イエス、ペテロ、ヤコブ 及 びヤコブの 兄弟 ヨハネを 率 きつれ、人 を 避 けて 高 き 山 に 登 りたまふ。
2 かくて 彼 らの 前 にてその 状 かはり、其 の 顏 は 日 のごとく 輝 き、その 衣 は 光 のごとく 白 くなりぬ。
3 視 よ、モーセとエリヤとイエスに 語 りつつ 彼 らに 現 る。
4 ペテロ 差出 でてイエスに 言 ふ『主 よ、我 らの 此處 に 居 るは 善 し。御意 ならば 我 ここに 三 つの 廬 を 造 り、一 つを 汝 のため、一 つをモーセのため、一 つをエリヤの 爲 にせん』
5 彼 なほ 語 りをるとき、視 よ、光 れる 雲 かれらを 覆 ふ。また 雲 より 聲 あり、曰 く『これは 我 が 愛 しむ 子、わが 悦 ぶ 者 なり、汝 ら 之 に 聽 け』
6 弟子 たち 之 を 聞 きて 倒 れ 伏 し、懼 るること 甚 だし。
7 イエスその 許 にきたり 之 に 觸 りて『起 きよ、懼 るな』と 言 ひ 給 へば、
8 彼 ら 目 を 擧 げしに、イエス 一人 の 他 は 誰 も 見 えざりき。
9 山 を 下 るとき、イエス 彼 らに 命 じて 言 ひたまふ『人 の 子 の 死人 の 中 より 甦 へるまでは、見 たることを 誰 にも 語 るな』
10 弟子 たち 問 ひて 言 ふ『さらばエリヤ 先 づ 來 るべしと 學者 らの 言 ふは 何 ぞ』
11 答 へて 言 ひたまふ『實 にエリヤ 來 りて 萬 の 事 をあらためん。
12 我 なんぢらに 告 ぐ、エリヤは 既 に 來 れり。されど 人々 これを 知 らず、反 つて 心 のままに 待 へり。かくのごとく 人 の 子 もまた 人々 より 苦 しめらるべし』
13 ここに 弟子 たちバプテスマのヨハネを 指 して 言 ひ 給 ひしなるを 悟 れり。
14 かれら 群衆 の 許 に 到 りしとき、或 人 御許 にきたり 跪 づきて 言 ふ、
15 『主 よ、わが 子 を 憫 みたまへ。癲癇 にて 難 み、しばしば 火 の 中 に、しばしば 水 の 中 に 倒 るるなり。
16 之 を 御弟子 たちに 連 れ 來 りしに、醫 すこと 能 はざりき』
17 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『ああ 信 なき 曲 れる 代 なるかな、我 いつまで 汝 らと 偕 にをらん、何時 まで 汝 らを 忍 ばん。その 子 を 我 に 連 れきたれ』
18 遂 にイエスこれを 禁 め 給 へば、惡鬼 いでてその 子 この 時 より 癒 えたり。
19 ここに 弟子 たち 竊 にイエスに 來 りて 言 ふ『われらは 何 故 に 逐 ひ 出 し 得 ざりしか』
20 彼 らに 言 ひ 給 ふ『なんぢら 信仰 うすき 故 なり。まことに 汝 らに 告 ぐ、もし 芥種 一粒 ほどの 信仰 あらば、この 山 に「此處 より 彼處 に 移 れ」と 言 ふとも 移 らん、かくて 汝 ら 能 はぬこと 無 かるべし』
21 [なし]
22 彼 らガリラヤに 集 ひをる 時、イエス 言 ひたまふ『人 の 子 は 人 の 手 に 付 され、
23 人々 は 之 を 殺 さん、かくて 三日 めに 甦 へるべし』弟子 たち 甚 く 悲 しめり。
24 彼 らカペナウムに 到 りしとき、納金 を 集 むる 者 どもペテロに 來 りて 言 ふ『なんぢらの 師 は 納金 を 納 めぬか』
25 ペテロ『納 む』と 言 ひ、やがて 家 に 入 りしに、逸速 くイエス 言 ひ 給 ふ『シモンいかに 思 ふか、世 の 王 たちは 税 または 貢 を 誰 より 取 るか、己 が 子 よりか、他 の 者 よりか』
26 ペテロ 言 ふ『ほかの 者 より』イエス 言 ひ 給 ふ『されば 子 は 自由 なり。
27 されど 彼 らを 躓 かせぬ 爲 に、海 に 往 きて 釣 をたれ、初 に 上 る 魚 をとれ、其 の 口 をひらかば 銀貨 一 つを 得 ん、それを 取 りて 我 と 汝 との 爲 に 納 めよ』
Chapter 18
1 そのとき 弟子 たちイエスに 來 りて 言 ふ『しからば 天國 にて 大 なるは 誰 か』
2 イエス 幼兒 を 呼 び、彼 らの 中 に 置 きて 言 ひ 給 ふ
3 『まことに 汝 らに 告 ぐ、もし 汝 ら 飜 へりて 幼兒 の 如 くならずば、天國 に 入 るを 得 じ。
4 されば 誰 にても 此 の 幼兒 のごとく 己 を 卑 うする 者 は、これ 天國 にて 大 なる 者 なり。
5 また 我 が 名 のために、かくのごとき 一人 の 幼兒 を 受 くる 者 は、我 を 受 くるなり。
6 されど 我 を 信 ずる 此 の 小 き 者 の 一人 を 躓 かする 者 は、寧 ろ 大 なる 碾臼 を 頸 に 懸 けられ、海 の 深處 に 沈 められんかた 益 なり。
7 この 世 は 躓物 あるによりて 禍害 なるかな。躓物 は 必 ず 來 らん、されど 躓物 を 來 らする 人 は 禍害 なるかな。
8 もし 汝 の 手 または 足 なんぢを 躓 かせば、切 りて 棄 てよ。不具 または 蹇跛 にて 生命 に 入 るは、兩手 兩足 ありて 永遠 の 火 に 投 げ 入 れらるるよりも 勝 るなり。
9 もし 汝 の 眼 なんぢを 躓 かせば、拔 きて 棄 てよ。片眼 にて 生命 に 入 るは、兩眼 ありて 火 のゲヘナに 投 げ 入 れらるるよりも 勝 るなり。
10 汝 ら 愼 みて 此 の 小 き 者 の 一人 をも 侮 るな。我 なんぢらに 告 ぐ、彼 らの 御使 たちは 天 にありて、天 にいます 我 が 父 の 御顏 を 常 に 見 るなり。
11 [なし]
12 汝 等 いかに 思 ふか、百匹 の 羊 を 有 てる 人 あらんに、若 しその 一匹 まよはば、九 十 九 匹 を 山 に 遺 しおき、往 きて 迷 へるものを 尋 ねぬか。
13 もし 之 を 見出 さば、まことに 汝 らに 告 ぐ、迷 はぬ 九 十 九 匹 に 勝 りて 此 の 一匹 を 喜 ばん。
14 かくのごとく 此 の 小 き 者 の 一人 の 亡 ぶるは、天 にいます 汝 らの 父 の 御意 にあらず。
15 もし 汝 の 兄弟 罪 を 犯 さば、往 きてただ 彼 とのみ 相 對 して 諫 めよ。もし 聽 かば 其 の 兄弟 を 得 たるなり。
16 もし 聽 かずば、一人・二人 を 伴 ひ 往 け、これ 二 三 の 證人 の 口 に 由 りて、凡 ての 事 の 慥 められん 爲 なり。
17 もし 彼 等 にも 聽 かずば、教會 に 告 げよ。もし 教會 にも 聽 かずば、之 を 異邦人 または 取税人 のごとき 者 とすべし。
18 まことに 汝 らに 告 ぐ、すべて 汝 らが 地 にて 縛 ぐ 所 は 天 にても 縛 ぎ、地 にて 解 く 所 は 天 にても 解 くなり。
19 また 誠 に 汝 らに 告 ぐ、もし 汝 等 のうち 二人、何 にても 求 むる 事 につき 地 にて 心 を 一 つにせば、天 にいます 我 が 父 は 之 を 成 し 給 ふべし。
20 二三人 わが 名 によりて 集 る 所 には、我 もその 中 に 在 るなり。
21 ここにペテロ 御許 に 來 りて 言 ふ『主 よ、わが 兄弟 われに 對 して 罪 を 犯 さば 幾 たび 赦 すべきか、七度 までか』
22 イエス 言 ひたまふ『否、われ「七度 まで」とは 言 はず「七度 を 七 十 倍 するまで」と 言 ふなり。
23 この 故 に、天國 はその 家來 どもと 計算 をなさんとする 王 のごとし。
24 計算 を 始 めしとき、一萬 タラントの 負債 ある 家來 つれ 來 られしが、
25 償 ひ 方 なかりしかば、其 の 主人、この 者 とその 妻 子 と 凡 ての 所有 とを 賣 りて 償 ふことを 命 じたるに、
26 その 家來 ひれ 伏 し 拜 して 言 ふ「寛 くし 給 へ、さらば 悉 とく 償 はん」
27 その 家來 の 主人 あはれみて 之 を 解 き、その 負債 を 免 したり。
28 然 るに 其 の 家來 いでて、己 より 百 デナリを 負 ひたる 一人 の 同僚 にあひ、之 をとらへ、喉 を 締 めて 言 ふ「負債 を 償 へ」
29 その 同僚 ひれ 伏 し、願 ひて「寛 くし 給 へ、さらば 償 はん」と 言 へど、
30 肯 はずして 往 き、その 負債 を 償 ふまで 之 を 獄 に 入 れたり。
31 同僚 ども 有 りし 事 を 見 て 甚 く 悲 しみ、往 きて 有 りし 凡 ての 事 をその 主人 に 告 ぐ。
32 ここに 主人 かれを 呼 び 出 して 言 ふ「惡 しき 家來 よ、なんぢ 願 ひしによりて、かの 負債 をことごとく 免 せり。
33 わが 汝 を 憫 みしごとく、汝 もまた 同僚 を 憫 むべきにあらずや」
34 斯 くその 主人、怒 りて、負債 をことごとく 償 ふまで 彼 を 獄卒 に 付 せり。
35 もし 汝 等 おのおの 心 より 兄弟 を 赦 さずば、我 が 天 の 父 も 亦 なんぢらに 斯 のごとく 爲 し 給 ふべし』
Chapter 19
1 イエスこれらの 言 を 語 り 終 へて、ガリラヤを 去 り、ヨルダンの 彼方 なるユダヤの 地方 に 來 り 給 ひしに、
2 大 なる 群衆 したがひたれば、此處 にて 彼 らを 醫 し 給 へり。
3 パリサイ 人 ら 來 り、イエスを 試 みて 言 ふ『何 の 故 にかかはらず、人 その 妻 を 出 すは 可 きか』
4 答 へて 言 ひたまふ『人 を 造 り 給 ひしもの、元始 より 之 を 男 と 女 とに 造 り、而 して、
5 「かかる 故 に 人 は 父 母 を 離 れ、その 妻 に 合 ひて、二人 のもの 一體 となるべし」と 言 ひ 給 ひしを 未 だ 讀 まぬか。
6 されば、はや 二人 にはあらず、一體 なり。この 故 に 神 の 合 せ 給 ひし 者 は、人 これを 離 すべからず』
7 彼 らイエスに 言 ふ『さらば 何 故 モーセは 離縁状 を 與 へて 出 すことを 命 じたるか』
8 彼 らに 言 ひ 給 ふ『モーセは 汝 の 心 つれなきによりて 妻 を 出 すことを 許 したり。されど 元始 より 然 にはあらぬなり。
9 われ 汝 らに 告 ぐ、おほよそ 淫行 の 故 ならで 其 の 妻 をいだし 他 に 娶 る 者 は、姦淫 を 行 ふなり』
10 弟子 たちイエスに 言 ふ『人 もし 妻 のことに 於 てかくのごとくば、娶 らざるに 如 かず』
11 彼 らに 言 ひたまふ『凡 ての 人 この 言 を 受 け 容 るるにはあらず、ただ 授 けられたる 者 のみなり。
12 それ 生 れながらの 閹人 あり、人 に 爲 られたる 閹人 あり、また 天國 のために 自 らなりたる 閹人 あり、之 を 受 け 容 れうる 者 は 受 け 容 るべし』
13 ここに 人々 イエスの 手 をおきて 祈 り 給 はんことを 望 みて、幼兒 らを 連 れ 來 りしに、弟子 たち 禁 めたれば、
14 イエス 言 ひたまふ『幼兒 らを 許 せ、我 に 來 るを 止 むな、天國 はかくのごとき 者 の 國 なり』
15 かくて 手 を 彼 らの 上 におきて 此處 を 去 り 給 へり。
16 視 よ、或 人 みもとに 來 りて 言 ふ『師 よ、われ 永遠 の 生命 をうる 爲 には、如何 なる 善 き 事 を 爲 すべきか』
17 イエス 言 ひたまふ『善 き 事 につきて 何 ぞ 我 に 問 ふか、善 き 者 は 唯 ひとりのみ。汝 もし 生命 に 入 らんと 思 はば 誡命 を 守 れ』
18 彼 いふ『孰 を』イエス 言 ひたまふ『「殺 すなかれ」「姦淫 するなかれ」「盜 むなかれ」「僞證 を 立 つる 勿 れ」
19 「父 と 母 とを 敬 へ」また「己 のごとく 汝 の 隣 を 愛 すべし」』
20 その 若者 いふ『我 みな 之 を 守 れり、なほ 何 を 缺 くか』
21 イエス 言 ひたまふ『なんぢ 若 し 全 からんと 思 はば、往 きて 汝 の 所有 を 賣 りて 貧 しき 者 に 施 せ、さらば 財寶 を 天 に 得 ん。かつ 來 りて 我 に 從 へ』
22 この 言 をききて、若者 悲 しみつつ 去 りぬ。大 なる 資産 を 有 てる 故 なり。
23 イエス 弟子 たちに 言 ひ 給 ふ『まことに 汝 らに 告 ぐ、富 める 者 の 天國 に 入 るは 難 し。
24 復 なんぢらに 告 ぐ、富 める 者 の 神 の 國 に 入 るよりは、駱駝 の 針 の 孔 を 通 るかた 反 つて 易 し』
25 弟子 たち 之 をきき、甚 だしく 驚 きて 言 ふ『さらば 誰 か 救 はるることを 得 ん』
26 イエス 彼 らに 目 を 注 めて 言 ひ 給 ふ『これは 人 に 能 はねど、神 は 凡 ての 事 をなし 得 るなり』
27 ここにペテロ 答 へて 言 ふ『視 よ、われら 一切 をすてて 汝 に 從 へり、されば 何 を 得 べきか』
28 イエス 彼 らに 言 ひ 給 ふ『まことに 汝 らに 告 ぐ、世 あらたまりて 人 の 子 その 榮光 の 座位 に 坐 するとき、我 に 從 へる 汝 等 もまた 十二 の 座位 に 坐 して、イスラエルの 十二 の 族 を 審 かん。
29 また 凡 そ 我 が 名 のために、或 は 家、あるひは 兄弟、あるひは 姉妹、あるひは 父、あるひは 母、あるひは 子、あるひは 田畑 を 棄 つる 者 は、數倍 を 受 け、また 永遠 の 生命 を 嗣 がん。
30 されど 多 くの 先 なる 者 後 に、後 なる 者 先 になるべし。
Chapter 20
1 天國 は 勞動人 を 葡萄園 に 雇 ふために、朝 早 く 出 でたる 主人 のごとし。
2 一日 一 デナリの 約束 をなして、勞動人 どもを 葡萄園 に 遣 す。
3 また 九時 ごろ 出 でて 市場 に 空 しく 立 つ 者 どもを 見 て、
4 「なんぢらも 葡萄園 に 往 け、相當 のものを 與 へん」といへば、彼 らも 往 く。
5 十二 時 頃 と 三時 頃 とに 復 いでて 前 のごとくす。
6 五 時 頃 また 出 でしに、なほ 立 つ 者 どものあるを 見 ていふ「何 ゆゑ 終日 ここに 空 しく 立 つか」
7 かれら 言 ふ「たれも 我 らを 雇 はぬ 故 なり」主人 いふ「なんぢらも 葡萄園 に 往 け」
8 夕 になりて 葡萄園 の 主人 その 家 司 に 言 ふ「勞動人 を 呼 びて、後 の 者 より 始 め、先 の 者 にまで 賃銀 をはらへ」
9 かくて 五 時 ごろに 雇 はれしもの 來 りて、おのおの 一 デナリを 受 く。
10 先 の 者 きたりて、多 く 受 くるならんと 思 ひしに、之 も 亦 おのおの 一 デナリを 受 く。
11 受 けしとき、家主 にむかひ 呟 きて 言 ふ、
12 「この 後 の 者 どもは 僅 に 一 時間 はたらきたるに、汝 は 一日 の 勞 と 暑 さとを 忍 びたる 我 らと 均 しく 之 を 遇 へり」
13 主人 こたへて 其 の 一人 に 言 ふ「友 よ、我 なんぢに 不正 をなさず、汝 は 我 と 一 デナリの 約束 をせしにあらずや。
14 己 が 物 を 取 りて 往 け、この 後 の 者 に 汝 とひとしく 與 ふるは、我 が 意 なり。
15 わが 物 を 我 が 意 のままにするは 可 からずや、我 よきが 故 に 汝 の 目 あしきか」
16 かくのごとく 後 なる 者 は 先 に、先 なる 者 は 後 になるべし』
17 イエス、エルサレムに 上 らんとし 給 ふとき、竊 に 十二 弟子 を 近 づけて、途 すがら 言 ひ 給 ふ、
18 『視 よ、我 らエルサレムに 上 る、人 の 子 は 祭司長・學者 らに 付 されん。彼 ら 之 を 死 に 定 め、
19 また 嘲弄 し、鞭 うち、十字架 につけん 爲 に 異邦人 に 付 さん、かくて 彼 は 三日 めに 甦 へるべし』
20 ここにゼベダイの 子 らの 母、その 子 らと 共 に 御許 にきたり、拜 して 何事 か 求 めんとしたるに、
21 イエス 彼 に 言 ひたまふ『何 を 望 むか』かれ 言 ふ『この 我 が 二人 の 子 が 汝 の 御國 にて、一人 は 汝 の 右 に、一人 は 左 に 坐 せんことを 命 じ 給 へ』
22 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢらは 求 むる 所 を 知 らず、我 が 飮 まんとする 酒杯 を 飮 み 得 るか』かれら 言 ふ『得 るなり』
23 イエス 言 ひたまふ『實 に 汝 らは 我 が 酒杯 を 飮 むべし、されど 我 が 右 左 に 坐 することは、これ 我 の 與 ふべきものならず、我 が 父 より 備 へられたる 人 こそ 與 へらるるなれ』
24 十 人 の 弟子 これを 聞 き、二人 の 兄弟 の 事 によりて 憤 ほる。
25 イエス 彼 らを 呼 びて 言 ひたまふ『異邦人 の 君 のその 民 を 宰 どり、大 なる 者 の 民 の 上 に 權 を 執 ることは、汝 らの 知 る 所 なり。
26 汝 らの 中 にては 然 らず、汝 らの 中 に 大 ならんと 思 ふ 者 は、汝 らの 役者 となり、
27 首 たらんと 思 ふ 者 は 汝 らの 僕 となるべし。
28 かくのごとく、人 の 子 の 來 れるも 事 へらるる 爲 にあらず、反 つて 事 ふることをなし、又 おほくの 人 の 贖償 として 己 が 生命 を 與 へん 爲 なり』
29 彼 らエリコを 出 づるとき、大 なる 群衆 イエスに 從 へり。
30 視 よ、二人 の 盲人、路 の 傍 らに 坐 しをりしが、イエスの 過 ぎ 給 ふことを 聞 き、叫 びて 言 ふ『主 よ、ダビデの 子 よ、我 らを 憫 みたまへ』
31 群衆 かれらを 禁 めて 默 さしめんとしたれど、愈々 叫 びて 言 ふ『主 よ、ダビデの 子 よ、我 らを 憫 み 給 へ』
32 イエス 立 ちどまり、彼 らを 呼 びて 言 ひ 給 ふ『わが 汝 らに 何 を 爲 さんことを 望 むか』
33 彼 ら 言 ふ『主 よ、目 の 開 かれんことなり』
34 イエスいたく 憫 みて 彼 らの 目 に 觸 り 給 へば、直 ちに 物 見 ることを 得 て、イエスに 從 へり。
Chapter 21
1 彼 らエルサレムに 近 づき、オリブ 山 の 邊 なるベテパゲに 到 りし 時、イエス 二人 の 弟子 を 遣 さんとして 言 ひ 給 ふ、
2 『向 の 村 にゆけ、やがて 繋 ぎたる 驢馬 のその 子 とともに 在 るを 見 ん、解 きて 我 に 牽 ききたれ。
3 誰 かもし 汝 らに 何 とか 言 はば「主 の 用 なり」と 言 へ、さらば 直 ちに 之 を 遣 さん』
4 此 の 事 の 起 りしは、預言者 によりて 云 はれたる 言 の 成就 せん 爲 なり。曰 く、
5 『シオンの 娘 に 告 げよ、「視 よ、汝 の 王、なんぢに 來 り 給 ふ。柔和 にして 驢馬 に 乘 り、軛 を 負 ふ 驢馬 の 子 に 乘 りて」』
6 弟子 たち 往 きて、イエスの 命 じ 給 へる 如 くして、
7 驢馬 とその 子 とを 牽 ききたり、己 が 衣 をその 上 におきたれば、イエス 之 に 乘 りたまふ。
8 群衆 の 多 くはその 衣 を 途 にしき、或 者 は 樹 の 枝 を 伐 りて 途 に 敷 く。
9 かつ 前 にゆき 後 にしたがふ 群衆 よばはりて 言 ふ『ダビデの 子 にホサナ、讃 むべきかな、主 の 御名 によりて 來 る 者。いと 高 き 處 にてホサナ』
10 遂 にエルサレムに 入 り 給 へば、都 擧 りて 騷 立 ちて 言 ふ『これは 誰 なるぞ』
11 群衆 いふ『これガリラヤのナザレより 出 でたる 預言者 イエスなり』
12 イエス 宮 に 入 り、その 内 なる 凡 ての 賣買 する 者 を 逐 ひいだし、兩替 する 者 の 臺、鴿 を 賣 る 者 の 腰掛 を 倒 して 言 ひ 給 ふ、
13 『「わが 家 は 祈 の 家 と 稱 へらるべし」と 録 されたるに、汝 らは 之 を 強盜 の 巣 となす』
14 宮 にて 盲人・跛者 ども 御許 に 來 りたれば、之 を 醫 したまへり。
15 祭司長・學者 らイエスの 爲 し 給 へる 不思議 なる 業 と、宮 にて 呼 はり『ダビデの 子 にホサナ』と 言 ひをる 子 等 とを 見、憤 ほりて、
16 イエスに 言 ふ『なんぢ 彼 らの 言 ふところを 聞 くか』イエス 言 ひ 給 ふ『然 り「嬰兒 乳兒 の 口 に 讃美 を 備 へ 給 へり」とあるを 未 だ 讀 まぬか』
17 遂 に 彼 らを 離 れ、都 を 出 でてベタニヤにゆき、そこに 宿 り 給 ふ。
18 朝 早 く 都 にかへる 時、イエス 飢 ゑたまふ。
19 路 の 傍 なる 一 もとの 無花果 の 樹 を 見 て、その 下 に 到 り 給 ひしに、葉 のほかに 何 をも 見出 さず、之 に 對 ひて『今 より 後 いつまでも 果 を 結 ばざれ』と 言 ひ 給 へば、無花果 の 樹 たちどころに 枯 れたり。
20 弟子 たち 之 を 見、怪 しみて 言 ふ『無花果 の 樹 の 斯 く 立刻 に 枯 れたるは 何 ぞや』
21 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『まことに 汝 らに 告 ぐ、もし 汝 ら 信仰 ありて 疑 はずば、啻 に 此 の 無花果 の 樹 にありし 如 きことを 爲 し 得 るのみならず、此 の 山 に「移 りて 海 に 入 れ」と 言 ふとも 亦 成 るべし。
22 かつ 祈 のとき 何 にても 信 じて 求 めば、ことごとく 得 べし』
23 宮 に 到 りて 教 へ 給 ふとき、祭司長・民 の 長老 ら 御許 に 來 りて 言 ふ『何 の 權威 をもて 此 等 の 事 をなすか、誰 がこの 權威 を 授 けしか』
24 イエス 答 へて 言 ひたまふ『我 も 一言 なんぢらに 問 はん、もし 夫 を 告 げなば、我 もまた 何 の 權威 をもて 此 等 のことを 爲 すかを 告 げん。
25 ヨハネのバプテスマは 何處 よりぞ、天 よりか、人 よりか』かれら 互 に 論 じて 言 ふ『もし 天 よりと 言 はば「何 故 かれを 信 ぜざりし」と 言 はん。
26 もし 人 よりと 言 はんか、人 みなヨハネを 預言者 と 認 むれば、我 らは 群衆 を 恐 る』
27 遂 に 答 へて『知 らず』と 言 へり。イエスもまた 言 ひたまふ『我 も 何 の 權威 をもて 此 等 のことを 爲 すか 汝 らに 告 げじ。
28 なんぢら 如何 に 思 ふか、或 人 ふたりの 子 ありしが、その 兄 にゆきて 言 ふ「子 よ、今日、葡萄園 に 往 きて 働 け」
29 答 へて「主 よ、我 ゆかん」と 言 ひて 終 に 往 かず。
30 また 弟 にゆきて 同 じやうに 言 ひしに、答 へて「往 かじ」と 言 ひたれど、後 くいて 往 きたり。
31 この 二人 のうち 孰 か 父 の 意 を 爲 しし』彼 らいふ『後 の 者 なり』イエス 言 ひ 給 ふ『まことに 汝 らに 告 ぐ、取税人 と 遊女 とは 汝 らに 先 だちて 神 の 國 に 入 るなり。
32 それヨハネ 義 の 道 をもて 來 りしに、汝 らは 彼 を 信 ぜず、取税人 と 遊女 とは 信 じたり。然 るに 汝 らは 之 を 見 し 後 も、なほ 悔改 めずして 信 ぜざりき。
33 また 一 つの 譬 を 聽 け、ある 家主、葡萄園 をつくりて 籬 をめぐらし、中 に 酒槽 を 掘 り、櫓 を 建 て、農夫 どもに 貸 して 遠 く 旅立 せり。
34 果期 ちかづきたれば、その 果 を 受取 らんとて 僕 らを 農夫 どもの 許 に 遣 ししに、
35 農夫 どもその 僕 らを 執 へて、一人 を 打 ちたたき、一人 をころし、一人 を 石 にて 撃 てり。
36 復 ほかの 僕 らを 前 よりも 多 く 遣 ししに、之 をも 同 じやうに 遇 へり。
37 「わが 子 は 敬 ふならん」と 言 ひて、遂 にその 子 を 遣 ししに、
38 農夫 ども 此 の 子 を 見 て 互 に 言 ふ「これは 世嗣 なり、いざ 殺 して、その 嗣業 を 取 らん」
39 かくて 之 をとらへ、葡萄園 の 外 に 逐 ひ 出 して 殺 せり。
40 さらば 葡萄園 の 主人 きたる 時、この 農夫 どもに 何 を 爲 さんか』
41 かれら 言 ふ『その 惡人 どもを 飽 くまで 滅 し、果期 におよびて 果 を 納 むる 他 の 農夫 どもに 葡萄園 を 貸 し 與 ふべし』
42 イエス 言 ひたまふ『聖書 に、「造家者 らの 棄 てたる 石 は、これぞ 隅 の 首石 となれる、これ 主 によりて 成 れるにて、我 らの 目 には 奇 しきなり」とあるを 汝 ら 未 だ 讀 まぬか。
43 この 故 に 汝 らに 告 ぐ、汝 らは 神 の 國 をとられ、其 の 果 を 結 ぶ 國人 は、之 を 與 へらるべし。
44 この 石 の 上 に 倒 るる 者 はくだけ、又 この 石、人 のうへに 倒 るれば、其 の 人 を 微塵 とせん』
45 祭司長・パリサイ 人 ら、イエスの 譬 をきき、己 らを 指 して 語 り 給 へるを 悟 り、
46 イエスを 執 へんと 思 へど 群衆 を 恐 れたり、群衆 かれを 預言者 とするに 因 る。
Chapter 22
1 イエスまた 譬 をもて 答 へて 言 ひ 給 ふ
2 『天國 は 己 が 子 のために 婚筵 を 設 くる 王 のごとし。
3 婚筵 に 招 きおきたる 人々 を 迎 へんとて 僕 どもを 遺 ししに、來 るを 肯 はず。
4 復 ほかの 僕 どもを 遣 すとて 言 ふ「招 きたる 人々 に 告 げよ、視 よ、晝餐 は 既 に 備 りたり。我 が 牛 も 肥 えたる 畜 も 屠 られて、凡 ての 物 備 りたれば、婚筵 に 來 れと」
5 然 るに 人々 顧 みずして、或 者 は 己 が 畑 に、或 者 は 己 が 商賣 に 往 けり。
6 また 他 の 者 は 僕 を 執 へて、辱 しめかつ 殺 したれば、
7 王 怒 りて 軍勢 を 遣 し、かの 兇行者 を 滅 して 其 の 町 を 燒 きたり。
8 かくて 僕 どもに 言 ふ「婚筵 は 既 に 備 りたれど、招 きたる 者 どもは 相應 しからず。
9 されば 汝 ら 街 に 往 きて、遇 ふほどの 者 を 婚筵 に 招 け」
10 僕 ども 途 に 出 でて、善 きも 惡 しきも 遇 ふほどの 者 をみな 集 めたれば、婚禮 の 席 は 客 にて 滿 てり。
11 王、客 を 見 んとて 入 り 來 り、一人 の 禮服 を 著 けぬ 者 あるを 見 て、
12 之 に 言 ふ「友 よ、如何 なれば 禮服 を 著 けずして 此處 に 入 りたるか」かれ 默 しゐたり。
13 ここに 王、侍者 らに 言 ふ「その 手 足 を 縛 りて 外 の 暗黒 に 投 げいだせ、其處 にて 哀哭・切齒 することあらん」
14 それ 招 かるる 者 は 多 かれど、選 ばるる 者 は 少 し』
15 ここにパリサイ 人 ら 出 でて、如何 にしてかイエスを 言 の 羂 に 係 けんと 相 議 り、
16 その 弟子 らをヘロデ 黨 の 者 どもと 共 に 遺 して 言 はしむ『師 よ、我 らは 知 る、なんじは 眞 にして、眞 をもて 神 の 道 を 教 へ、かつ 誰 をも 憚 りたまふ 事 なし、人 の 外貌 を 見 給 はぬ 故 なり。
17 されば 我 らに 告 げたまへ、貢 をカイザルに 納 むるは 可 きか、惡 しきか、如何 に 思 ひたまふ』
18 イエスその 邪曲 なるを 知 りて 言 ひたまふ『僞善者 よ、なんぞ 我 を 試 むるか。
19 貢 の 金 を 我 に 見 せよ』彼 らデナリ 一 つを 持 ち 來 る。
20 イエス 言 ひ 給 ふ『これは 誰 の 像、たれの 號 なるか』
21 彼 ら 言 ふ『カイザルのなり』ここに 彼 らに 言 ひ 給 ふ『さらばカイザルの 物 はカイザルに、神 の 物 は 神 に 納 めよ』
22 彼 ら 之 を 聞 きて 怪 しみ、イエスを 離 れて 去 り 往 けり。
23 復活 なしといふサドカイ 人 ら、その 日 みもとに 來 り 問 ひて 言 ふ
24 『師 よ、モーセは「人 もし 子 なくして 死 なば、其 の 兄弟 かれの 妻 を 娶 りて、兄弟 のために 世嗣 を 擧 ぐべし」と 云 へり。
25 我 らの 中 に 七人 の 兄弟 ありしが、兄 めとりて 死 に、世嗣 なくして 其 の 妻 を 弟 に 遺 したり。
26 その 二 その 三 より、その 七 まで 皆 かくの 如 く 爲 し、
27 最後 にその 女 も 死 にたり。
28 されば 復活 の 時、その 女 は 七人 のうち 誰 の 妻 たるべきか、彼 ら 皆 これを 妻 としたればなり』
29 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢら 聖書 をも 神 の 能力 をも 知 らぬ 故 に 誤 れり。
30 それ 人 よみがへりの 時 は、娶 らず 嫁 がず、天 に 在 る 御使 たちの 如 し。
31 死人 の 復活 に 就 きては、神 なんぢらに 告 げて、
32 「我 はアブラハムの 神、イサクの 神、ヤコブの 神 なり」と 言 ひ 給 へることを 未 だ 讀 まぬか。神 は 死 にたる 者 の 神 にあらず、生 ける 者 の 神 なり』
33 群衆 これを 聞 きて 其 の 教 に 驚 けり。
34 パリサイ 人 ら、イエスのサドカイ 人 らを 默 さしめ 給 ひしことを 聞 きて 相 集 り、
35 その 中 なる 一人 の 教法師、イエスを 試 むる 爲 に 問 ふ
36 『師 よ、律法 のうち 孰 の 誡命 が 大 なる』
37 イエス 言 ひ 給 ふ『「なんぢ 心 を 盡 し、精神 を 盡 し、思 を 盡 して 主 なる 汝 の 神 を 愛 すべし」
38 これは 大 にして 第一 の 誡命 なり。
39 第二 もまた 之 にひとし「おのれの 如 くなんぢの 隣 を 愛 すべし」
40 律法 全體 と 預言者 とは 此 の 二 つの 誡命 に 據 るなり』
41 パリサイ 人 らの 集 りたる 時、イエス 彼 らに 問 ひて 言 ひ 給 ふ
42 『なんぢらはキリストに 就 きて 如何 に 思 ふか、誰 の 子 なるか』かれら 言 ふ『ダビデの 子 なり』
43 イエス 言 ひ 給 ふ『さらばダビデ 御靈 に 感 じて 何 故 かれを 主 と 稱 ふるか。曰 く
44 「主 わが 主 に 言 ひ 給 ふ、われ 汝 の 敵 を 汝 の 足 の 下 に 置 くまでは、我 が 右 に 坐 せよ」
45 斯 くダビデ 彼 を 主 と 稱 ふれば、爭 でその 子 ならんや』
46 誰 も 一言 だに 答 ふること 能 はず、その 日 より 敢 へて 復 イエスに 問 ふ 者 なかりき。
Chapter 23
1 ここにイエス 群衆 と 弟子 たちとに 語 りて 言 ひ 給 ふ、
2 『學者 とパリサイ 人 とはモーセの 座 を 占 む。
3 されば 凡 てその 言 ふ 所 は 守 りて 行 へ、されどその 所作 には 效 ふな、彼 らは 言 ふのみにて 行 はぬなり。
4 また 重 き 荷 を 括 りて 人 の 肩 にのせ、己 は 指 にて 之 を 動 かさんともせず。
5 凡 てその 所作 は 人 に 見 られん 爲 にするなり。即 ちその 經札 を 幅 ひろくし、衣 の 總 を 大 くし、
6 饗宴 の 上席、會堂 の 上座、
7 市場 にての 敬禮、また 人 にラビと 呼 ばるることを 好 む。
8 されど 汝 らはラビの 稱 を 受 くな、汝 らの 師 は 一人 にして、汝 等 はみな 兄弟 なり。
9 地 にある 者 を 父 と 呼 ぶな、汝 らの 父 は 一人、すなはち 天 に 在 す 者 なり。
10 また 導師 の 稱 を 受 くな、汝 らの 導師 はひとり、即 ちキリストなり。
11 汝 等 のうち 大 なる 者 は、汝 らの 役者 とならん。
12 凡 そおのれを 高 うする 者 は 卑 うせられ、己 を 卑 うする 者 は 高 うせらるるなり。
13 禍害 なるかな、僞善 なる 學者、パリサイ 人 よ、なんぢらは 人 の 前 に 天國 を 閉 して 自 ら 入 らず、入 らんとする 人 の 入 るをも 許 さぬなり。
14 [なし]
15 禍害 なるかな、僞善 なる 學者、パリサイ 人 よ、汝 らは 一人 の 改宗者 を 得 んために 海 陸 を 經 めぐり、既 に 得 れば、之 を 己 に 倍 したるゲヘナの 子 となすなり。
16 禍害 なるかな、盲目 なる 手引 よ、なんぢらは 言 ふ「人 もし 宮 を 指 して 誓 はば 事 なし、宮 の 黄金 を 指 して 誓 はば 果 さざるべからず」と。
17 愚 にして 盲目 なる 者 よ、黄金 と 黄金 を 聖 ならしむる 宮 とは 孰 か 貴 き。
18 なんぢら 又 いふ「人 もし 祭壇 を 指 して 誓 はば 事 なし、其 の 上 の 供物 を 指 して 誓 はば 果 さざるべからず」と。
19 盲目 なる 者 よ、供物 と 供物 を 聖 ならしむる 祭壇 とは 孰 か 貴 き。
20 されば 祭壇 を 指 して 誓 ふ 者 は、祭壇 とその 上 の 凡 ての 物 とを 指 して 誓 ふなり。
21 宮 を 指 して 誓 ふ 者 は、宮 とその 内 に 住 みたまふ 者 とを 指 して 誓 ふなり。
22 また 天 を 指 して 誓 ふ 者 は、神 の 御座 とその 上 に 坐 したまふ 者 とを 指 して 誓 ふなり。
23 禍害 なるかな、僞善 なる 學者、パリサイ 人 よ、汝 らは 薄荷・蒔蘿・クミンの 十分 の 一 を 納 めて、律法 の 中 にて 尤 も 重 き 公平 と 憐憫 と 忠信 とを 等閑 にす。されど 之 は 行 ふべきものなり、而 して、彼 もまた 等閑 にすべきものならず。
24 盲目 なる 手引 よ、汝 らは 蚋 を 漉 し 出 して 駱駝 を 呑 むなり。
25 禍害 なるかな、僞善 なる 學者、パリサイ 人 よ、汝 らは 酒杯 と 皿 との 外 を 潔 くす、されど 内 は 貪慾 と 放縱 とにて 滿 つるなり。
26 盲目 なるパリサイ 人 よ、汝 まづ 酒杯 の 内 を 潔 めよ、さらば 外 も 潔 くなるべし。
27 禍害 なるかな、僞善 なる 學者、パリサイ 人 よ、汝 らは 白 く 塗 りたる 墓 に 似 たり、外 は 美 しく 見 ゆれども、内 は 死人 の 骨 とさまざまの 穢 とにて 滿 つ。
28 かくのごとく 汝 らも 外 は 人 に 正 しく 見 ゆれども、内 は 僞善 と 不法 とにて 滿 つるなり。
29 禍害 なるかな、僞善 なる 學者、パリサイ 人 よ、汝 らは 預言者 の 墓 をたて、義人 の 碑 を 飾 りて 言 ふ、
30 「我 らもし 先祖 の 時 にありしならば、預言者 の 血 を 流 すことに 與 せざりしものを」と。
31 かく 汝 らは 預言者 を 殺 しし 者 の 子 たるを 自 ら 證 す。
32 なんぢら 己 が 先祖 の 桝目 を 充 せ。
33 蛇 よ、蝮 の 裔 よ、なんぢら 爭 でゲヘナの 刑罰 を 避 け 得 んや。
34 この 故 に 視 よ、我 なんぢらに 預言者・智者・學者 らを 遣 さんに、其 の 中 の 或 者 を 殺 し、十字架 につけ、或 者 を 汝 らの 會堂 にて 鞭 うち、町 より 町 に 逐 ひ 苦 しめん。
35 之 によりて 義人 アベルの 血 より、聖所 と 祭壇 との 間 にて 汝 らが 殺 ししバラキヤの 子 ザカリヤの 血 に 至 るまで、地上 にて 流 したる 正 しき 血 は、皆 なんぢらに 報 い 來 らん。
36 まことに 汝 らに 告 ぐ、これらの 事 はみな 今 の 代 に 報 い 來 るべし。
37 ああエルサレム、エルサレム、預言者 たちを 殺 し、遣 されたる 人々 を 石 にて 撃 つ 者 よ、牝鷄 のその 雛 を 翼 の 下 に 集 むるごとく、我 なんぢの 子 どもを 集 めんとせしこと 幾度 ぞや、されど 汝 らは 好 まざりき。
38 視 よ、汝 らの 家 は 廢 てられて 汝 らに 遺 らん。
39 われ 汝 らに 告 ぐ「讃 むべきかな、主 の 名 によりて 來 る 者」と、汝 等 のいふ 時 の 至 るまでは、今 より 我 を 見 ざるべし』
Chapter 24
1 イエス 宮 を 出 でてゆき 給 ふとき、弟子 たち 宮 の 建造物 を 示 さんとて 御許 に 來 りしに、
2 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢら 此 の 一切 の 物 を 見 ぬか。誠 に 汝 らに 告 ぐ、此處 に 一 つの 石 も 崩 されずしては 石 の 上 に 遺 らじ』
3 オリブ 山 に 坐 し 給 ひしとき、弟子 たち 竊 に 御許 に 來 りて 言 ふ『われらに 告 げ 給 へ、これらの 事 は 何時 あるか、又 なんぢの 來 り 給 ふと 世 の 終 とには、何 の 兆 あるか』
4 イエス 答 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢら 人 に 惑 されぬやうに 心 せよ。
5 多 くの 者 わが 名 を 冒 し 來 り「我 はキリストなり」と 言 ひて 多 くの 人 を 惑 さん。
6 又 なんぢら 戰爭 と 戰爭 の 噂 とを 聞 かん、愼 みて 懼 るな。かかる 事 はあるべきなり、されど 未 だ 終 にはあらず。
7 即 ち「民 は 民 に、國 は 國 に 逆 ひて 起 たん」また 處々 に 饑饉 と 地震 とあらん、
8 此 等 はみな 産 の 苦難 の 始 なり。
9 そのとき 人々 なんぢらを 患難 に 付 し、また 殺 さん、汝 等 わが 名 の 爲 に、もろもろの 國人 に 憎 まれん。
10 その 時 おほくの 人 つまづき、且 たがひに 付 し、互 に 憎 まん。
11 多 くの 僞 預言者 おこりて、多 くの 人 を 惑 さん。
12 また 不法 の 増 すによりて、多 くの 人 の 愛 ひややかにならん。
13 されど 終 まで 耐 へしのぶ 者 は 救 はるべし。
14 御國 のこの 福音 は、もろもろの 國人 に 證 をなさんため 全世界 に 宣傅 へられん、而 してのち 終 は 至 るべし。
15 なんぢら 預言者 ダニエルによりて 言 はれたる「荒 す 惡 むべき 者」の 聖 なる 處 に 立 つを 見 ば(讀 む 者 さとれ)
16 その 時 ユダヤに 居 る 者 どもは 山 に 遁 れよ。
17 屋 の 上 に 居 る 者 はその 家 の 物 を 取 り 出 さんとして 下 るな。
18 畑 にをる 者 は 上衣 を 取 らんとて 歸 るな。
19 その 日 には 孕 りたる 者 と 乳 を 哺 まする 者 とは 禍害 なるかな。
20 汝 らの 遁 ぐることの 冬 または 安息 日 に 起 らぬように 祈 れ。
21 そのとき 大 なる 患難 あらん、世 の 創 より 今 に 至 るまでかかる 患難 はなく、また 後 にも 無 からん。
22 その 日 もし 少 くせられずば、一人 だに 救 はるる 者 なからん、されど 選民 の 爲 にその 日 少 くせらるべし。
23 その 時 あるひは「視 よ、キリスト 此處 にあり」或 は「此處 にあり」と 言 ふ 者 ありとも 信 ずな。
24 僞 キリスト・僞 預言者 おこりて、大 なる 徴 と 不思議 とを 現 し、爲 し 得 べくば 選民 をも 惑 さんとするなり。
25 視 よ、あらかじめ 之 を 汝 らに 告 げおくなり。
26 されば 人 もし 汝 らに「視 よ、彼 は 荒野 にあり」といふとも 出 で 往 くな「視 よ、彼 は 部屋 にあり」と 言 ふとも 信 ずな。
27 電光 の 東 より 出 でて 西 にまで 閃 きわたる 如 く、人 の 子 の 來 るも 亦 然 らん。
28 それ 死骸 のある 處 には 鷲 あつまらん。
29 これらの 日 の 患難 ののち 直 ちに 日 は 暗 く、月 は 光 を 發 たず、星 は 空 より 隕 ち、天 の 萬象 ふるひ 動 かん。
30 そのとき 人 の 子 の 兆、天 に 現 れん。そのとき 地上 の 諸族 みな 嘆 き、かつ 人 の 子 の 能力 と 大 なる 榮光 とをもて、天 の 雲 に 乘 り 來 るを 見 ん。
31 また 彼 は 使 たちを 大 なるラッパの 聲 とともに 遣 さん。使 たちは 天 の 此 の 極 より 彼 の 極 まで、四方 より 選民 を 集 めん。
32 無花果 の 樹 よりの 譬 をまなべ、その 枝 すでに 柔 かくなりて 葉 芽 ぐめば、夏 の 近 きを 知 る。
33 かくのごとく 汝 らも 此 等 のすべての 事 を 見 ば、人 の 子 すでに 近 づきて 門邊 に 到 るを 知 れ。
34 誠 に 汝 らに 告 ぐ、これらの 事 ことごとく 成 るまで、今 の 代 は 過 ぎ 往 くまじ。
35 天 地 は 過 ぎゆかん、されど 我 が 言 は 過 ぎ 往 くことなし。
36 その 日 その 時 を 知 る 者 なし、天 の 使 たちも 知 らず、子 も 知 らず、ただ 父 のみ 知 り 給 ふ。
37 ノアの 時 のごとく 人 の 子 の 來 るも 然 あるべし。
38 曾 て 洪水 の 前 ノア 方舟 に 入 る 日 までは、人々 飮 み 食 ひ、娶 り 嫁 がせなどし、
39 洪水 の 來 りて 悉 とく 滅 すまでは 知 らざりき、人 の 子 の 來 るも 然 あるべし。
40 そのとき 二人 の 男 畑 にをらんに、一人 は 取 られ 一人 は 遺 されん。
41 二人 の 女 磨 ひき 居 らんに、一人 は 取 られ 一人 は 遺 されん。
42 されば 目 を 覺 しをれ、汝 らの 主 のきたるは、何 れの 日 なるかを 知 らざればなり。
43 汝 等 これを 知 れ、家主 もし 盜人 いづれの 時 きたるかを 知 らば、目 をさまし 居 て、その 家 を 穿 たすまじ。
44 この 故 に 汝 らも 備 へをれ、人 の 子 は 思 はぬ 時 に 來 ればなり。
45 主人 が 時 に 及 びて 食物 を 與 へさする 爲 に、家 の 者 のうへに 立 てたる 忠實 にして 慧 き 僕 は 誰 なるか。
46 主人 のきたる 時、かく 爲 し 居 るを 見 らるる 僕 は 幸福 なり。
47 まことに 汝 らに 告 ぐ、主人 すべての 所有 を 彼 に 掌 どらすべし。
48 もしその 僕 惡 しくして、心 のうちに 主人 は 遲 しと 思 ひて、
49 その 同輩 を 扑 きはじめ、酒徒 らと 飮食 を 共 にせば、
50 その 僕 の 主人 おもはぬ 日 しらぬ 時 に 來 りて、
51 之 を 烈 しく 笞 うち、その 報 を 僞善者 と 同 じうせん。其處 にて 哀哭・切齒 することあらん。
Chapter 25
1 このとき 天國 は、燈火 を 執 りて 新郎 を 迎 へに 出 づる、十 人 の 處女 に 比 ふべし。
2 その 中 の 五 人 は 愚 にして 五 人 は 慧 し。
3 愚 なる 者 は 燈火 をとりて 油 を 携 へず、
4 慧 きものは 油 を 器 に 入 れて 燈火 とともに 携 へたり。
5 新郎 遲 かりしかば、皆 まどろみて 寢 ぬ。
6 夜半 に「やよ、新郎 なるぞ、出 で 迎 へよ」と 呼 はる 聲 す。
7 ここに 處女 みな 起 きてその 燈火 を 整 へたるに、
8 愚 なる 者 は 慧 きものに 言 ふ「なんぢらの 油 を 分 けあたへよ、我 らの 燈火 きゆるなり」
9 慧 きもの 答 へて 言 ふ「恐 らくは 我 らと 汝 らとに 足 るまじ、寧 ろ 賣 るものに 往 きて 己 がために 買 へ」
10 彼 ら 買 はんとて 往 きたる 間 に 新郎 きたりたれば、備 へをりし 者 どもは 彼 とともに 婚筵 にいり、而 して 門 は 閉 されたり。
11 その 後 かの 他 の 處女 ども 來 りて「主 よ、主 よ、われらの 爲 にひらき 給 へ」と 言 ひしに、
12 答 へて「まことに 汝 らに 告 ぐ、我 は 汝 らを 知 らず」と 言 へり。
13 されば 目 を 覺 しをれ、汝 らは 其 の 日 その 時 を 知 らざるなり。
14 また 或 人 とほく 旅立 せんとして、其 の 僕 どもを 呼 び、之 に 己 が 所有 を 預 くるが 如 し。
15 各人 の 能力 に 應 じて、或 者 には 五 タラント、或 者 には 二 タラント、或 者 には 一 タラントを 與 へ 置 きて 旅立 せり。
16 五 タラントを 受 けし 者 は、直 ちに 往 き、之 をはたらかせて 他 に 五 タラントを 贏 け、
17 二 タラントを 受 けし 者 も 同 じく 他 に 二 タラントを 贏 く。
18 然 るに 一 タラントを 受 けし 者 は、往 きて 地 を 掘 り、その 主人 の 銀 をかくし 置 けり。
19 久 しうして 後 この 僕 どもの 主人 きたりて 彼 らと 計算 したるに、
20 五 タラントを 受 けし 者 は 他 に 五 タラントを 持 ちきたりて 言 ふ「主 よ、なんぢ 我 に 五 タラントを 預 けたりしが、視 よ、他 に 五 タラントを 贏 けたり」
21 主人 いふ「宜 いかな、善 かつ 忠 なる 僕、なんぢは 僅 なる 物 に 忠 なりき。我 なんぢに 多 くの 物 を 掌 どらせん、汝 の 主人 の 勸喜 に 入 れ」
22 二 タラントを 受 けし 者 も 來 りて 言 ふ「主 よ、なんぢ 我 に 二 タラントを 預 けたりしが、視 よ、他 に 二 タラントを 贏 けたり」
23 主人 いふ「宜 いかな、善 かつ 忠 なる 僕、なんぢは 僅 なる 物 に 忠 なりき。我 なんぢに 多 くの 物 を 掌 どらせん、汝 の 主人 の 勸喜 にいれ」
24 また 一 タラントを 受 けし 者 もきたりて 言 ふ「主 よ、我 はなんぢの 嚴 しき 人 にて、播 かぬ 處 より 刈 り、散 らさぬ 處 より 斂 むることを 知 るゆゑに、
25 懼 れてゆき、汝 のタラントを 地 に 藏 しおけり。視 よ、汝 はなんぢの 物 を 得 たり」
26 主人 こたへて 言 ふ「惡 しくかつ 惰 れる 僕、わが 播 かぬ 處 より 刈 り、散 さぬ 處 より 斂 むることを 知 るか。
27 さらば 我 が 銀 を 銀行 にあづけ 置 くべかりしなり、我 きたりて 利子 とともに 我 が 物 をうけ 取 りしものを。
28 されば 彼 のタラントを 取 りて 十 タラントを 有 てる 人 に 與 へよ。
29 すべて 有 てる 人 は、與 へられて 愈々 豐 ならん。されど 有 たぬ 者 は、その 有 てる 物 をも 取 らるべし。
30 而 して 此 の 無 益 なる 僕 を 外 の 暗黒 に 逐 ひいだせ、其處 にて 哀哭・切齒 することあらん」
31 人 の 子 その 榮光 をもて、もろもろの 御使 を 率 ゐきたる 時、その 榮光 の 座位 に 坐 せん。
32 かくてその 前 にもろもろの 國人 あつめられん、之 を 別 つこと 牧羊者 が 羊 と 山羊 とを 別 つ 如 くして、
33 羊 をその 右 に、山羊 をその 左 におかん。
34 ここに 王 その 右 にをる 者 どもに 言 はん「わが 父 に 祝 せられたる 者 よ、來 りて 世 の 創 より 汝 等 のために 備 へられたる 國 を 嗣 げ。
35 なんぢら 我 が 飢 ゑしときに 食 はせ、渇 きしときに 飮 ませ、旅人 なりし 時 に 宿 らせ、
36 裸 なりしときに 衣 せ、病 みしときに 訪 ひ、獄 に 在 りしときに 來 りたればなり」
37 ここに、正 しき 者 ら 答 へて 言 はん「主 よ、何時 なんぢの 飢 ゑしを 見 て 食 はせ、渇 きしを 見 て 飮 ませし。
38 何時 なんぢの 旅人 なりしを 見 て 宿 らせ、裸 なりしを 見 て 衣 せし。
39 何時 なんぢの 病 みまた 獄 に 在 りしを 見 て、汝 にいたりし」
40 王 こたへて 言 はん「まことに 汝 らに 告 ぐ、わが 兄弟 なる 此 等 のいと 小 き 者 の 一人 になしたるは、即 ち 我 に 爲 したるなり」
41 かくてまた 左 にをる 者 どもに 言 はん「詛 はれたる 者 よ、我 を 離 れて 惡魔 とその 使 らとのために 備 へられたる 永遠 の 火 に 入 れ。
42 なんぢら 我 が 飢 ゑしときに 食 はせず、渇 きしときに 飮 ませず、
43 旅人 なりしときに 宿 らせず、裸 なりしときに 衣 せず、病 みまた 獄 にありしときに 訪 はざればなり」
44 ここに 彼 らも 答 へて 言 はん「主 よ、いつ 汝 の 飢 ゑ、或 は 渇 き、或 は 旅人、あるひは 裸、あるひは 病 み、或 は 獄 に 在 りしを 見 て 事 へざりし」
45 ここに 王 こたへて 言 はん「誠 になんぢらに 告 ぐ、此 等 のいと 小 きものの 一人 に 爲 さざりしは、即 ち 我 になさざりしなり」と。
46 かくて、これらの 者 は 去 りて 永遠 の 刑罰 にいり、正 しき 者 は 永遠 の 生命 に 入 らん』
Chapter 26
1 イエスこれらの 言 をみな 語 りをへて、弟子 たちに 言 ひ 給 ふ
2 『なんぢらの 知 るごとく、二日 の 後 は 過越 の 祭 なり、人 の 子 は 十字架 につけられん 爲 に 賣 らるべし』
3 そのとき 祭司長・民 の 長老 ら、カヤパといふ 大 祭司 の 中庭 に 集 り、
4 詭計 をもてイエスを 捕 へ、かつ 殺 さんと 相 議 りたれど、
5 又 いふ『まつりの 間 は 爲 すべからず、恐 らくは 民 の 中 に 亂 起 らん』
6 イエス、ベタニヤにて 癩病人 シモンの 家 に 居給 ふ 時、
7 ある 女、石膏 の 壺 に 入 りたる 貴 き 香 油 を 持 ちて、近 づき 來 り、食事 の 席 に 就 き 居給 ふイエスの 首 に 注 げり。
8 弟子 たち 之 を 見 て 憤 ほり 言 ふ『何 故 かく 濫 なる 費 をなすか。
9 之 を 多 くの 金 に 賣 りて、貧 しき 者 に 施 すことを 得 たりしものを』
10 イエス 之 を 知 りて 言 ひたまふ『何 ぞこの 女 を 惱 すか、我 に 善 き 事 をなせるなり。
11 貧 しき 者 は 常 に 汝 らと 偕 にをれど、我 は 常 に 偕 に 居 らず。
12 この 女 の 我 が 體 に 香 油 を 注 ぎしは、わが 葬 りの 備 をなせるなり。
13 まことに 汝 らに 告 ぐ、全世界 いずこにても、この 福音 の 宣傅 へらるる 處 には、この 女 のなしし 事 も 記念 として 語 らるべし』
14 ここに 十二 弟子 の 一人 イスカリオテのユダといふ 者、祭司長 らの 許 にゆきて 言 ふ
15 『なんぢらに 彼 を 付 さば、何 ほど 我 に 與 へんとするか』彼 ら 銀 三十 を 量 り 出 せり。
16 ユダこの 時 よりイエスを 付 さんと 好 き 機 を 窺 ふ。
17 除酵祭 の 初 の 日、弟子 たちイエスに 來 りて 言 ふ『過越 の 食 をなし 給 ふために、何處 に 我 らが 備 ふる 事 を 望 み 給 ふか』
18 イエス 言 ひたまふ『都 にゆき、某 のもとに 到 りて「師 いふ、わが 時 近 づけり。われ 弟子 たちと 共 に 過越 を 汝 の 家 にて 守 らん」と 言 へ』
19 弟子 たちイエスの 命 じ 給 ひし 如 くして、過越 の 備 をなせり。
20 日 暮 れて 十二 弟子 とともに 席 に 就 きて、
21 食 するとき 言 ひ 給 ふ『まことに 汝 らに 告 ぐ、汝 らの 中 の 一人 われを 賣 らん』
22 弟子 たち 甚 く 憂 ひて、おのおの『主 よ、我 なるか』と 言 ひいでしに、
23 答 へて 言 ひたまふ『我 とともに 手 を 鉢 に 入 るる 者 われを 賣 らん。
24 人 の 子 は 己 に 就 きて 録 されたる 如 く 逝 くなり。されど 人 の 子 を 賣 る 者 は 禍害 なるかな、その 人 は 生 れざりし 方 よかりしものを』
25 イエスを 賣 るユダ 答 へて 言 ふ『ラビ、我 なるか』イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢの 言 へる 如 し』
26 彼 ら 食 しをる 時、イエス、パンをとり、祝 してさき、弟子 たちに 與 へて 言 ひ 給 ふ『取 りて 食 へ、これは 我 が 體 なり』
27 また 酒杯 をとりて 謝 し、彼 らに 與 へて 言 ひ 給 ふ『なんぢら 皆 この 酒杯 より 飮 め。
28 これは 契約 のわが 血 なり、多 くの 人 のために、罪 の 赦 を 得 させんとて 流 す 所 のものなり。
29 われ 汝 らに 告 ぐ、わが 父 の 國 にて 新 しきものを 汝 らと 共 に 飮 む 日 までは、われ 今 より 後 この 葡萄 の 果 より 成 るものを 飮 まじ』
30 彼 ら 讃美 を 歌 ひて 後 オリブ 山 に 出 でゆく。
31 ここにイエス 弟子 たちに 言 ひ 給 ふ『今宵 なんぢら 皆 われに 就 きて 躓 かん「われ 牧羊者 を 打 たん、さらば 群 の 羊 散 るべし」と 録 されたるなり。
32 されど 我 よみがへりて 後、なんぢらに 先 だちてガリラヤに 往 かん』
33 ペテロ 答 へて 言 ふ『假令 みな 汝 に 就 きて 躓 くとも 我 はいつまでも 躓 かじ』
34 イエス 言 ひ 給 ふ『まことに 汝 に 告 ぐ、こよひ 鷄 鳴 く 前 に、なんぢ 三 たび 我 を 否 むべし』
35 ペテロ 言 ふ『我 なんぢと 共 に 死 ぬべき 事 ありとも 汝 を 否 まず』弟子 たち 皆 かく 言 へり。
36 ここにイエス 彼 らと 共 にゲツセマネといふ 處 にいたりて、弟子 たちに 言 ひ 給 ふ『わが 彼處 にゆきて 祈 る 間、なんぢら 此處 に 坐 せよ』
37 かくてペテロとゼベダイの 子 二人 とを 伴 ひゆき、憂 ひ 悲 しみ 出 でて 言 ひ 給 ふ、
38 『わが 心 いたく 憂 ひて 死 ぬばかりなり。汝 ら 此處 に 止 りて 我 と 共 に 目 を 覺 しをれ』
39 少 し 進 みゆきて、平伏 し 祈 りて 言 ひ 給 ふ『わが 父 よ、もし 得 べくば 此 の 酒杯 を 我 より 過 ぎ 去 らせ 給 へ。されど 我 が 意 の 儘 にとにはあらず、御意 のままに 爲 し 給 へ』
40 弟子 たちの 許 にきたり、その 眠 れるを 見 てペテロに 言 ひ 給 ふ『なんぢら 斯 く 一 時 も 我 と 共 に 目 を 覺 し 居 ること 能 はぬか。
41 誘惑 に 陷 らぬやう、目 を 覺 しかつ 祈 れ。實 に 心 は 熱 すれども 肉體 よわきなり』
42 また 二度 ゆき 祈 りて 言 ひ 給 ふ『わが 父 よ、この 酒杯 もし 我 飮 までは 過 ぎ 去 りがたくば、御意 のままに 成 し 給 へ』
43 復 きたりて 彼 らの 眠 れるを 見 たまふ、是 その 目 疲 れたるなり。
44 また 離 れゆきて、三 たび 同 じ 言 にて 祈 り 給 ふ。
45 而 して 弟子 たちの 許 に 來 りて 言 ひ 給 ふ『今 は 眠 りて 休 め。視 よ、時 近 づけり、人 の 子 は 罪人 らの 手 に 付 さるるなり。
46 起 きよ、我 ら 往 くべし。視 よ、我 を 賣 るもの 近 づけり』
47 なほ 語 り 給 ふほどに、視 よ、十二 弟子 の 一人 なるユダ 來 る、祭司長・民 の 長老 らより 遣 されたる 大 なる 群衆、劍 と 棒 とをもちて 之 に 伴 ふ。
48 イエスを 賣 る 者 あらかじめ 合圖 を 示 して 言 ふ『わが 接吻 する 者 はそれなり、之 を 捕 へよ』
49 かくて 直 ちにイエスに 近 づき『ラビ、安 かれ』といひて 接吻 したれば、
50 イエス 言 ひたまふ『友 よ、何 とて 來 る』このとき 人々 すすみてイエスに 手 をかけて 捕 ふ。
51 視 よ、イエスと 偕 にありし 者 のひとり、手 をのべ 劍 を 拔 きて、大 祭司 の 僕 をうちて、その 耳 を 切 り 落 せり。
52 ここにイエス 彼 に 言 ひ 給 ふ『なんぢの 劍 をもとに 收 めよ、すべて 劍 をとる 者 は 劍 にて 亡 ぶるなり。
53 我 わが 父 に 請 ひて、十二 軍 に 餘 る 御使 を 今 あたへらるること 能 はずと 思 ふか。
54 もし 然 せば、斯 くあるべく 録 したる 聖書 はいかで 成就 すべき』
55 この 時 イエス 群衆 に 言 ひ 給 ふ『なんぢら 強盜 に 向 ふごとく 劍 と 棒 とをもち、我 を 捕 へんとて 出 で 來 るか。我 は 日々 宮 に 坐 して 教 へたりしに、汝 ら 我 を 捕 へざりき。
56 されどかくの 如 くなるは、みな 預言者 たちの 書 の 成就 せん 爲 なり』ここに 弟子 たち 皆 イエスを 棄 てて 逃 げさりぬ。
57 イエスを 捕 へたる 者 ども、學者・長老 らの 集 り 居 る 大 祭司 カヤパの 許 に 曳 きゆく。
58 ペテロ 遠 く 離 れ、イエスに 從 ひて 大 祭司 の 中庭 まで 到 り、その 成行 を 見 んとて、そこに 入 り 下役 どもと 共 に 坐 せり。
59 祭司長 らと 全 議會 と、イエスを 死 に 定 めんとて、いつはりの 證據 を 求 めたるに、
60 多 くの 僞證者 いでたれども 得 ず。後 に 二人 の 者 いでて 言 ふ
61 『この 人 は「われ 神 の 宮 を 毀 ち 三日 にて 建 て 得 べし」と 云 へり』
62 大 祭司 たちてイエスに 言 ふ『この 人々 が 汝 に 對 して 立 つる 證據 に 何 をも 答 へぬか』
63 されどイエス 默 し 居給 ひたれば、大 祭司 いふ『われ 汝 に 命 ず、活 ける 神 に 誓 ひて 我 らに 告 げよ、汝 はキリスト、神 の 子 なるか』
64 イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢの 言 へる 如 し。かつ 我 なんぢらに 告 ぐ、今 より 後、なんぢら 人 の 子 の 全能者 の 右 に 坐 し、天 の 雲 に 乘 りて 來 るを 見 ん』
65 ここに 大 祭司 おのが 衣 を 裂 きて 言 ふ『かれ 瀆言 をいへり、何 ぞ 他 に 證人 を 求 めん。視 よ、なんぢら 今 この 瀆言 をきけり。
66 いかに 思 ふか』答 へて 言 ふ『かれは 死 に 當 れり』
67 ここに 彼 等 その 御顏 に 唾 し、拳 にて 搏 ち、或 者 どもは 手掌 にて 批 きて 言 ふ
68 『キリストよ、我 らに 預言 せよ、汝 をうちし 者 は 誰 なるか』
69 ペテロ 外 にて 中庭 に 坐 しゐたるに、一人 の 婢女 きたりて 言 ふ『なんぢもガリラヤ 人 イエスと 偕 にゐたり』
70 かれ 凡 ての 人 の 前 に 肯 はずして 言 ふ『われは 汝 の 言 ふことを 知 らず』
71 かくて 門 まで 出 で 往 きたるとき、他 の 婢女 かれを 見 て、其處 にをる 者 どもに 向 ひて『この 人 はナザレ 人 イエスと 偕 にゐたり』と 言 へるに、
72 重 ねて 肯 はず、契 ひて『我 はその 人 を 知 らず』といふ。
73 暫 くして 其處 に 立 つ 者 ども 近 づきてペテロに 言 ふ『なんぢも 慥 にかの 黨與 なり、汝 の 國訛 なんぢを 表 せり』
74 ここにペテロ 盟 ひかつ 契 ひて『我 その 人 を 知 らず』と 言 ひ 出 づるをりしも、鷄 鳴 きぬ。
75 ペテロ『にはとり 鳴 く 前 に、なんぢ 三度 われを 否 まん』と、イエスの 言 ひ 給 ひし 御言 を 思 ひだし、外 に 出 でて 甚 く 泣 けり。
Chapter 27
1 夜明 けになりて、凡 ての 祭司長・民 の 長老 ら、イエスを 殺 さんと 相 議 り、
2 遂 に 之 を 縛 り、曳 きゆきて 總督 ピラトに 付 せり。
3 ここにイエスを 賣 りしユダ、その 死 に 定 められ 給 ひしを 見 て 悔 い、祭司長・長老 らに、かの 三十 の 銀 をかへして 言 ふ、
4 『われ 罪 なきの 血 を 賣 りて 罪 を 犯 したり』彼 らいふ『われら 何 ぞ 干 らん、汝 みづから 當 るべし』
5 彼 その 銀 を 聖所 に 投 げすてて 去 り、ゆきて 自 ら 縊 れたり。
6 祭司長 らその 銀 をとりて 言 ふ『これは 血 の 價 なれば、宮 の 庫 に 納 むるは 可 からず』
7 かくて 相 議 り、その 銀 をもて 陶工 の 畑 を 買 ひ、旅人 らの 墓地 とせり。
8 之 によりて 其 の 畑 は、今 に 至 るまで 血 の 畑 と 稱 へらる。
9 ここに 預言者 エレミヤによりて 云 はれたる 言 は 成就 したり。曰 く『かくて 彼 ら 値積 られしもの、即 ちイスラエルの 子 らが 値積 りし 者 の 價 の 銀 三十 をとりて、
10 陶工 の 畑 の 代 に 之 を 與 へたり。主 の 我 に 命 じ 給 ひし 如 し』
11 さてイエス、總督 の 前 に 立 ち 給 ひしに、總督 問 ひて 言 ふ『なんぢはユダヤ 人 の 王 なるか』イエス 言 ひ 給 ふ『なんぢの 言 ふが 如 し』
12 祭司長・長老 ら 訴 ふれども、何 をも 答 へ 給 はず。
13 ここにピラト 彼 に 言 ふ『聞 かぬか、彼 らが 汝 に 對 して 如何 におほくの 證據 を 立 つるを』
14 されど 總督 の 甚 く 怪 しむまで、一言 をも 答 へ 給 はず。
15 祭 の 時 には、總督 群衆 の 望 にまかせて、囚人 一人 を 之 に 赦 す 例 あり。
16 ここにバラバといふ 隱 れなき 囚人 あり。
17 されば 人々 の 集 れる 時、ピラト 言 ふ『なんぢら 我 が 誰 を 赦 さんことを 願 ふか。バラバなるか、キリストと 稱 ふるイエスなるか』
18 これピラト 彼 らのイエスを 付 ししは 嫉 に 因 ると 知 る 故 なり。
19 彼 なほ 審判 の 座 にをる 時、その 妻、人 を 遣 して 言 はしむ『かの 義人 に 係 ることを 爲 な、我 けふ 夢 の 中 にて 彼 の 故 にさまざま 苦 しめり』
20 祭司長・長老 ら、群衆 にバラバの 赦 されん 事 を 請 はしめ、イエスを 亡 さんことを 勸 む。
21 總督 こたへて 彼 らに 言 ふ『二人 の 中 いづれを 我 が 赦 さん 事 を 願 ふか』彼 らいふ『バラバなり』
22 ピラト 言 ふ『さらばキリストと 稱 ふるイエスを 我 いかにすべきか』皆 いふ『十字架 につくべし』
23 ピラト 言 ふ『かれ 何 の 惡事 をなしたるか』彼 ら 烈 しく 叫 びていふ『十字架 につくべし』
24 ピラトは 何 の 效 なく 反 つて 亂 にならんとするを 見 て、水 をとり 群衆 のまへに 手 を 洗 ひて 言 ふ『この 人 の 血 につきて 我 は 罪 なし、汝 等 みづから 當 れ』
25 民 みな 答 へて 言 ふ『其 の 血 は、我 らと 我 らの 子孫 とに 歸 すべし』
26 ここにピラト、バラバを 彼 らに 赦 し、イエスを 鞭 うちて、十字架 につくる 爲 に 付 せり。
27 ここに 總督 の 兵卒 ども、イエスを 官邸 につれゆき、全 隊 を 御許 に 集 め、
28 その 衣 をはぎて、緋色 の 上衣 をきせ、
29 茨 の 冠冕 を 編 みて、その 首 に 冠 らせ、葦 を 右 の 手 にもたせ、且 その 前 に 跪 づき、嘲弄 して 言 ふ『ユダヤ 人 の 王、安 かれ』
30 また 之 に 唾 し、かの 葦 をとりて 其 の 首 を 叩 く。
31 かく 嘲弄 してのち、上衣 を 剥 ぎて、故 の 衣 をきせ、十字架 につけんとて 曳 きゆく。
32 その 出 づる 時、シモンといふクレネ 人 にあひしかば、強 ひて 之 にイエスの 十字架 をおはしむ。
33 かくてゴルゴタといふ 處、即 ち 髑髏 の 地 にいたり、
34 苦味 を 混 ぜたる 葡萄酒 を 飮 ませんとしたるに、嘗 めて、飮 まんとし 給 はず。
35 彼 らイエスを 十字架 につけてのち、籤 をひきて 其 の 衣 をわかち、
36 且 そこに 坐 して、イエスを 守 る。
37 その 首 の 上 に『これはユダヤ 人 の 王 イエスなり』と 記 したる 罪標 を 置 きたり。
38 ここにイエスとともに 二人 の 強盜、十字架 につけられ、一人 はその 右 に、一人 はその 左 におかる。
39 往來 の 者 どもイエスを 譏 り、首 を 振 りていふ、
40 『宮 を 毀 ちて 三日 のうちに 建 つる 者 よ、もし 神 の 子 ならば 己 を 救 へ、十字架 より 下 りよ』
41 祭司長 らもまた 同 じく、學者・長老 らとともに 嘲弄 して 言 ふ、
42 『人 を 救 ひて 己 を 救 ふこと 能 はず。彼 はイスラエルの 王 なり、いま 十字架 より 下 りよかし、さらば 我 ら 彼 を 信 ぜん。
43 彼 は 神 に 依 り 頼 めり、神 かれを 愛 しまば 今 すくひ 給 ふべし「我 は 神 の 子 なり」と 云 へり』
44 ともに 十字架 につけられたる 強盜 どもも、同 じ 事 をもてイエスを 罵 れり。
45 晝 の 十二 時 より 地 の 上 あまねく 暗 くなりて、三時 に 及 ぶ。
46 三時 ごろイエス 大聲 に 叫 びて『エリ、エリ、レマ、サバクタニ』と 言 ひ 給 ふ。わが 神、わが 神、なんぞ 我 を 見 棄 て 給 ひしとの 意 なり。
47 そこに 立 つ 者 のうち 或 人々 これを 聞 きて『彼 はエリヤを 呼 ぶなり』と 言 ふ。
48 直 ちにその 中 の 一人 はしりゆきて 海綿 をとり、酸 き 葡萄酒 を 含 ませ、葦 につけてイエスに 飮 ましむ。
49 その 他 の 者 ども 言 ふ『まて、エリヤ 來 りて 彼 を 救 ふや 否 や、我 ら 之 を 見 ん』
50 イエス 再 び 大聲 に 呼 はりて 息 絶 えたまふ。
51 視 よ、聖所 の 幕、上 より 下 まで 裂 けて 二 つとなり、また 地震 ひ、磐 さけ、
52 墓 ひらけて、眠 りたる 聖徒 の 屍體 おほく 活 きかへり、
53 イエスの 復活 ののち 墓 をいで、聖 なる 都 に 入 りて、多 くの 人 に 現 れたり。
54 百卒長 および 之 と 共 にイエスを 守 りゐたる 者 ども、地震 とその 有 りし 事 とを 見 て 甚 く 懼 れ『實 に 彼 は 神 の 子 なりき』と 言 へり。
55 その 處 にて 遙 に 望 みゐたる 多 くの 女 あり、イエスに 事 へてガリラヤより 從 ひ 來 りし 者 どもなり。
56 その 中 には、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの 母 マリヤ、及 びゼベダイの 子 らの 母 などもゐたり。
57 日 暮 れて、ヨセフと 云 ふアリマタヤの 富 める 人 きたる。彼 もイエスの 弟子 なるが、
58 ピラトに 往 きてイエスの 屍體 を 請 ふ。ここにピラト 之 を 付 すことを 命 ず。
59 ヨセフ 屍體 をとりて 淨 き 亞麻 布 につつみ、
60 岩 にほりたる 己 が 新 しき 墓 に 納 め、墓 の 入口 に 大 なる 石 を 轉 しおきて 去 りぬ。
61 其處 にはマグダラのマリヤと 他 のマリヤと 墓 に 向 ひて 坐 しゐたり。
62 あくる 日、即 ち 準備 日 の 翌日、祭司長 らとパリサイ 人 らとピラトの 許 に 集 りて 言 ふ、
63 『主 よ、かの 惑 すもの 生 き 居 りし 時「われ 三日 の 後 に 甦 へらん」と 言 ひしを、我 ら 思 ひいだせり。
64 されば 命 じて 三日 に 至 るまで 墓 を 固 めしめ 給 へ、恐 らくはその 弟子 ら 來 りて 之 を 盜 み、「彼 は 死人 の 中 より 甦 へれり」と 民 に 言 はん。然 らば 後 の 惑 は 前 のよりも 甚 だしからん』
65 ピラト 言 ふ『なんぢらに 番兵 あり、往 きて 力 限 り 固 めよ』
66 乃 ち 彼 らゆきて 石 に 封印 し、番兵 を 置 きて 墓 を 固 めたり。
Chapter 28
1 さて 安息 日 をはりて、一週 の 初 の 日 のほの 明 き 頃、マグダラのマリヤと 他 のマリヤと 墓 を 見 んとて 來 りしに、
2 視 よ、大 なる 地震 あり、これ 主 の 使、天 より 降 り 來 りて、かの 石 を 轉 し 退 け、その 上 に 坐 したるなり。
3 その 状 は 電光 のごとく 輝 き、その 衣 は 雪 のごとく 白 し。
4 守 の 者 ども 彼 を 懼 れたれば、戰 きて 死人 の 如 くなりぬ。
5 御使 こたへて 女 たちに 言 ふ『なんぢら 懼 るな、我 なんぢらが 十字架 につけられ 給 ひしイエスを 尋 ぬるを 知 る。
6 此處 には 在 さず、その 言 へる 如 く 甦 へり 給 へり。來 りてその 置 かれ 給 ひし 處 を 見 よ。
7 かつ 速 かに 往 きて、その 弟子 たちに「彼 は 死人 の 中 より 甦 へり 給 へり。視 よ、汝 らに 先 だちてガリラヤに 往 き 給 ふ、彼處 にて 謁 ゆるを 得 ん」と 告 げよ。視 よ、汝 らに 之 を 告 げたり』
8 女 たち 懼 と 大 なる 歡喜 とをもて、速 かに 墓 を 去 り、弟子 たちに 知 らせんとて 走 りゆく。
9 視 よ、イエス 彼 らに 遇 ひて『安 かれ』と 言 ひ 給 ひたれば、進 みゆき、御足 を 抱 きて 拜 す。
10 ここにイエス 言 ひたまふ『懼 るな、往 きて 我 が 兄弟 たちに、ガリラヤにゆき、彼處 にて 我 を 見 るべきことを 知 らせよ』
11 女 たちの 往 きたるとき、視 よ、番兵 のうちの 數人、都 にいたり、凡 て 有 りし 事 どもを 祭司長 らに 告 ぐ。
12 祭司長 ら、長老 らと 共 に 集 りて 相 議 り、兵卒 どもに 多 くの 銀 を 與 へて 言 ふ、
13 『なんぢら 言 へ「その 弟子 ら 夜 きたりて、我 らの 眠 れる 間 に 彼 を 盜 めり」と。
14 この 事 もし 總督 に 聞 えなば、我 ら 彼 を 宥 めて 汝 らに 憂 なからしめん』
15 彼 ら 銀 をとりて 言 ひ 含 められたる 如 くしたれば、此 の 話 ユダヤ 人 の 中 にひろまりて、今日 に 至 れり。
16 十 一 弟子 たちガリラヤに 往 きて、イエスの 命 じ 給 ひし 山 にのぼり、
17 遂 に 謁 えて 拜 せり。されど 疑 ふ 者 もありき。
18 イエス 進 みきたり、彼 らに 語 りて 言 ひたまふ『我 は 天 にても 地 にても 一切 の 權 を 與 へられたり。
19 されば 汝 ら 往 きて、もろもろの 國人 を 弟子 となし、父 と 子 と 聖 靈 との 名 によりてバプテスマを 施 し、
20 わが 汝 らに 命 ぜし 凡 ての 事 を 守 るべきを 教 へよ。視 よ、我 は 世 の 終 まで 常 に 汝 らと 偕 に 在 るなり』